炎昼や人の霊さえ飲み込んで | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 先日は定例句会の予定でしたが諸事情で開催は中止となりました。集まった作品を掲載します。兼題(テーマ)はオノマトペ。耳をすませばあちこちにオノマトペは存在します。気に留めるか留めないかのわずかな差違が「気づき」に遭遇できるものだと改めて思います。

 心に余裕!これが俳句作りの最強の秘訣でしょう。

 暑過ぎる日々はまだまだ続きそうですね。みなさま、どうぞご自愛ください。

 

 

高崎志朗

ガタゴトと夏風ドキドキ上野駅   

雷鳴に猫はおののく四畳半

停電や従兄弟と燥ぐ蚊帳ん中

初デート七夕飾りと涙雨

金入れの蛇の抜け殻夢を買う

 

 

疋田 勇

百合の花山の恋しき窓辺かな

コスモスに恙まれし駐在所

黙祷にザアザア雨の原爆碑

 

 

山 多華子

線状降水帯擬音に胸騒ぎ

梅雨出水地滑り多発リュック買う

紫陽花や運も天気も速変わり

梅雨晴間歯科医のジャズ足拍子

山開き頂きの尊厳抱く

 

 

渡辺健志

ざあざあと驟雨の駅に人集ひ

雨宿り猫の顔色曇りがち

カンカンのお日様恋しい涼雨かな

ぽつぽつと葉っぱの打楽器夏の雨

雨上がりポッチャンと語る潦

白靴や玄関の箱入り娘

梅雨寒や袖が恋しき古書店

 

 

大竹和音

ラヂオからサイケなシンセ蚊遣香

梅雨の朝やまぬ昨夜のジャズドラム

草笛を父のやうには吹けぬまま 

日焼けしたルンペンに祖母握る飯

片蔭やゾンビ群がる喫煙所

 

 

小林泰子

御神輿やうねりうねりと写真ぶれ

べべまとい抱かれて眠る囃子の音

ヨーヨーびょんびょんバチンバチンしぼむ

ラムネ瓶ビー玉に幼き目の吾

 

 

白石洋一

足の冷たさが今年は無い

畑の男爵と胡瓜とラッキョウでポテトサラダ

サッシのガラスに猫の足跡

長雨や壁越しに聞くぽたりぽちゃ

コーヒー紙フィルターをリンスする

ヤンチャな仔猫必死で咥える新米母

小チョロとチョロと二矢子

死んだらどうなるのですか?

除湿機フル稼働ジメジメジメ

歯茎ズキズキ歯はグラグラ

 

 

刈谷見南國

みずくらげ或ひはミシン踏む時間

プシユーツとパソコン果つる夜の秋

出棺のクラクシヨンふうわりと虹

薔薇ぐるぐる渦巻き遠くなる棺

薬刈り気づかないふりして一日

 

 

福冨陽子

神輿太鼓ライブの声をかつさらひ

曖昧な茄子の顔した鏡の吾

スズムシや生まれた箱が棲家なり

蟷螂の斧わたしは仕舞つたままだつた

入道雲たらふく闇を飲み込めば

カラカラと吊し瓢箪泣く夜半

 

 天王祭塙田みこし