六月も下旬となり、関東地方も梅雨入りに。これからしばらくは常に傘を携えているようですね。いずれにしても六月は一年の折り返し月。心に残る日常の景色をたくさん見ておきましょう。
先日、自由俳句「風薫」の定例句会を開催しました。兼題は「駅」。たまにはと電車に乗ってゆっくりと旅をしてみたいものです。
高崎志朗
二時間後目覚めてみれば同じ駅
七夕やフランス語聞く青森駅
浴衣の娘湯あがりビール酌くれる
青大将卵呑み込み青嵐
疋田 勇
冷麦茶露天でひと息また歩く
蛍道たどれば日没蛍筋
鮎釣や我慢比べの胴長長靴
足尾駅歴史刻みて半夏生
山 多華子
風薫る心地良きまま木々は揺れ
青時雨雫に映る緑深し
夏きざす水面は稲色に変わり
夏霧や北の地の花濡れ咲く
海霧の街四人で座る蕎麦屋なり
弱冷車乗り継ぎ駅も選び乗る
渡辺 健志
水馬や水遁術で潜水す
海見ゆる駅でぼんやり夏の星
人気なき峠の端のシャガの花
炎天や木陰に潜む鳩の群れ
空梅雨や死花堕つる紫落つる羽州街道
静寂や涼しさ沁みる夜半かな
大竹 和音
見納めの木造駅舎夕焼雲
梅雨入や野外ライヴの日の予報
花札と賽子出して梅雨に入る
渋滞を右へ左へ走り梅雨
芥子の花昭和の空き家かたむきて
あいみょんや生歌とちり夏満月
民宿の狭き風呂場や青蛙
分校はロケ地となりてホトトギス
小林泰子
緑陰に混じり混じりて吾の影も
万緑や父の三歩半前歩く
無音無風の無人駅の記憶は
蓮の葉や滴溜め込みめかし込む
蓮の花光に焦がれ凛と咲く
白石 洋一
サニーレタス葉を外側から千切って
梅もどきの花びら舞う小雪の様
墨を硯で擦る時間が好きだ
予定が決まると生きなきゃと思う
コジュケイと雉の声響く庭先
AIは偽物信じるに及ばぬ
ちょっとこォい と繰り返す声する朝
無人駅にも紫陽花の白しげれり
トマト詰め放題の道の駅
雨に紫陽花ジャガイモは枯れる
刈谷 見南國
帰る駅見つからぬ夢夏ひばり
セッターの対角にゐる雲の峰
短夜や先つぽの銀紙取つて
短夜やテープの中の変声期
青焼きの回路図めくり夏空へ
ほたるぶくろハグのかすかな隙間かな
ほたるぶくろ幼なじみといふ偶然
亡友の家の灯りやほととぎす
三味線の音途絶へたり夏至の雨
福冨 陽子
検札鋏もてあます駅員は日焼け
南宇都宮駅よ吾の思春期自動記録機
駅の大けやき消へみなしごハッチ
コスモスのひとつ咲ひたりフライング
身づくろひ猫の首根のもどかしさ
紫陽花や福だけ招き渋滞路
どうだんのてっぺんの蜥蜴の孤独
虫干しをしてくださいと本の声
カムイより新聞届く梅漬ける
三味線の稽古難し夏の雨
自分の葉に写るあじさいの花影