行く春や閑散として葉桜並木 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 あれよと思う間に晩春となり、もうすぐ立夏という頃になりました。俳句を詠むには題材が多いのはありがたいものです。それでも日常の忙しさにかまけ、見逃してしまう風景もあります。心落ち着いて毎日をよく見て味わっていきたいものです。

 今回の風薫の兼題は「動物や生き物の子ども」でした。

 

 

高崎  志朗

花弁の蝶と化してやテニスコート

配達の弁当守る春小雨

小雨来てテニス中止のメール来る

満金留男米寿のゴルフひばり鳴く

そよ風に小舟引き裂く花筏

 

 

疋田 勇

田楽の串ぐらぐらと八幡山

山登り這いつくばりて百千鳥

石鹸玉色変へながら雲となる

蕗の薹刻めば苦しさぞ苦し

 

 

山 多華子

初桜月光に観る横顔よ

夜桜や麗し子猫あらわれる

芝桜佇む女美しく

散る桜競輪選手くだりくる

 

 

渡辺 健志

酔ひどれの客に媚び売る子猫かな

散歩道桜吹雪に足停まり

春颯天守に続く花の道

水堀の桜着飾る逆さ城

二の丸も客間に変えし花筵

満開も三日見ぬ間に花筏

黄昏の伊豆湾に落つ桜かな

 

 

大竹 和音

兄の背を追ひて登校すゞめの子

春眠や妣の気配の奥座敷

朧月ねぼけよろめく吸血鬼

丸太橋おそるおそると春の沢

くず鉄も要塞となり燕の巣

約束の夜に駆け出す春嵐

退学し家を出た日の桜蕊

ネモフィラの青は悲恋の青ぢやなく

おしおきの納屋はまつくら子猫くる

 

 

小林  泰子

春コート靡かせて一段抜かし

菜の花やランドセルの列のまばら

猫の子や草木の影に伸びる手々

 

 

白石 洋一

弟より先に死ぬぞと誓います

遠雷や闇夜に慣れし視線かな

ゼンマイの盆栽を見た風呂上がり

メガネの子の神楽舞

釈迦木の花 鼻が酸っぱい

ホーホケキョチュンチュンチュンチッチッチ

見て貰えぬ桜花咲く畑脇

年輪を一つ重ねた事を思う日

蜘蛛の糸水を纏い宙の線

飛行機雲四筋空の道の下の

 

 

刈谷 見南國

水道工事人の雑談聞くや雀の子

十キロの巨猫身構へ雀の子

おばちやんの丁度来る頃雀の子

班長に戸惑ふ家に雀の子

蠅生まるぶるぶると翅ととのへて

ジェリーもペギーも歌謡史となり蠅生まる

原曲はポール・アンカか蝌蚪の紐

 

 

福冨 陽子

空清き返事さらはれ呼子鳥

もんしろちょうひらがなになりあたりまで

楓の花ヘリコプターを見てをり

茎立に鎌の手止める春陽ざし

花鳥の散らす径端は風の止み

うぐひすのひそかに鳴くを猫と聞く

一羽づつパン屑与ふ親雀

雨の宵耳に初蚊の邪音かな

御衣黄を見上ぐればこれ夏近し

八幡山、蒲生神社の御衣黄さくら

(花びらが緑黄色)