一年の喜怒哀楽を蕎麦に混ぜ | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 自由俳句「風薫」、2023年の詠み納め句会を開催しました。このところの寒さがこたえます。 いよいよ今年も終わっていく感じが日に日に実感となってきたところです。謹んで詠み納めたく思います。

兼題は「記念日」でした。 

 このブログを読んでいただいた皆々様、ありがとうございました。また新しき年もよろしくお願いいたします。

 

高崎志朗
大掃除妻指させば茶がらあり
寒烏母の訃報を教ヘたり
オアフ島日の丸戦隊幻影か
ライトレール初めて乗れば冬麗

 

疋田 勇
クリスマスローズその香り記念日に
壺の底動かぬ水の冬メダカ
北風や音も集めて吹き溜まり
春待てば草の子並ぶ石垣や
刃研ぐ居合魂春を待つ

 

山 多華子
デイ記念日厚着の夫婦見送られ
師走失恋記念日十七回忌
寒風や香灰舞いて墓前経
出世坂登る小春日験担ぎ
拡大鏡三つ編み極む冬日かな
葉牡丹や渦まく色は日に映えて

 

大竹 和音
聖誕祭一度に姪の誕生会
キャンドルの星屑集む聖夜の子
結ひ髪を膝まで垂らす雪女
焼杉の家ひとけなし枯芭蕉
ⅭⅮデビュー今年こそはとはや師走
禁煙のビストロ出れば寒の雨
はなむけの歌とかんざし寒三日月
もてあます寂しみもなき師走かな
野兎や歩を休むれば月は笑む
やもめ多き店にマドンナおでん酒

 

小林泰子
冬空に白雲描く工業団地
冬鷺や行く先の先みつめたり
凩や不浄のものを祓いけり
記念日や靴紐ぎゅっと締め上げる

 

白石 洋一
忘れ得ぬ日は産まれた娘の顔
霜降りて仔猫は畠駆け回る
便座を電気で温める此処で生きる
畠の韮の卵とじ玄米で食して
今年も肝臓は合格なり
独りごと言いながら床につく寒い
朝散歩仔猫ゾロゾロ引き連れて
あの世の扉を開けて覗きたい
息絶えてこの世はさよならさようなら
癌再発無し三年の月日乗り切って

 

刈谷 見南國
戦火と消へし映画フイルム年忘れ
寒椿庭師の大家また庭に
記念日のマフラーとぐろ巻ひて床
レコードの針飛ぶ海や千鳥来る
子より孫少なき父や寒卵
雪だるま一文字赤入れ脱稿
探梅や面影なにもない戸塚
自分を出しすぎて海鼠横たはる

 

福冨 陽子
記念日の過ぐれば凡日冬の星
忘れゆく記念日増へて饂飩煮る
記念日を作る人の言葉優し
寒風に葉を差し出して降参し
白菜や割れば初心(うぶ)なる野心かな
竹箒逆さ姿の影の伸ぶ
やや斜めケーキ予約の大ポスター
これやこのドレスの柄よ寒椿
南天や難を飲んでか赤赤し

万両の実