颪来る残る紅葉の舞ひ支度 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 立冬を過ぎ、さすがに寒くなりました。北風も冷たくなり、昨夜は天気予報ではくもりでしたが句会の後に一杯飲もうということで出かけ、帰りは時雨に濡れながら歩いて帰ってきました。つい先日まで暑い日があったせいか、街行く人も軽装が多かったですね。風邪をひかないよう、私たちも冬めいていきましょう。今回は兼題無しの句会でした。

 

 

高崎志朗

 

警戒の堀三十七人ダイブする

霜月や百年振りの夏日とは

寒風やテニスコートの葉を集む

冬耕や牛を操る頬被り

冬三日月弓矢番へるキューピッド

 

 

疋田 勇

 

光徳牧場朝日は射して霜溶ける

風邪の神ゆずを頼りに追払ひ

冬将軍日光連山の道ふさぎ

鼻水を垂らす子どもら朝げいこ

 

 

山 多華子

 

干氷下魚むしる棲家は宇都宮

篝火や星空霞むイオマンテ

空也忌や句をもって念仏とす

夜鳴蕎麦せつなき由来一味振る

 

 

渡辺 健志

 

芒の舞観賞するもあぁ渋滞

凩や御洒落着のみをさらひゆく

落葉添へ白冠かぶる逆富士

藁葺の古民家隠す散紅葉

富士の笠雲駿府の空は晴れてゐる

 

 

大竹 和音

 

弾き語る前座三組ぬくき冬

帰国した兄と銭湯デカジャンパー

過激派に焼かれた寺の落葉風

フィルのギターアヴァンギャルドに狂ひ咲く

冬の花カルト映画は客三人

冷酷な目覚ましの声雪女

オリオン座息子と遊ぶ浅き夢

転勤の美女見送れば冬銀漢

 

 

小林泰子

 

本読みてかさつく指をすり合わす

小春日や空いた和室に祖父のMD

 

 

白石 洋一

 

ひんやりした朝こたつを予熱する

初穂つむ嫁いだ娘よ寂しさよ

大蒜植える上空をオスプレイ二機

十割そば啜り良く噛んで味わう

ローマ字からあいうえ配列に変えてみた

梅もどき真っ赤な実だけが賑やかし

ステージからの景色が蘇る

陽だまり庭先仔猫四匹戯れ

断酒は健康診断前の一週間

土を均して分葱を植えたのは一昨日

 

 

刈谷 見南國

 

笹鳴きやひらがなツメるピンセツト

かわらぬ顔とわからぬ顔や石蕗の花

綿虫や喪主自転車で来てゐたり

白髭の左右均等桜桃忌

十一月屋根づれてると若ひ人

湯冷めして廊下のスタア写真展

 

 

福冨 陽子

 

つわぶきや月の色して月を見る

雨降れば雨の味濃しハヤトウリ

堕とされた枝恋しひや冬羽虫

無口人呑めば呂律の(ほた)火かな

寒風や骸らを転がしていく

立冬や五百円玉洗ふ洗濯機

小夜時雨夢は夢を重ね着し

オリオン座傾きすぎて首痛し

短日や毛布を知らぬ仔猫逃ぐ

つわぶき