二月も半ばを過ぎ温かかったり寒かったりの日々が続きます。三寒四温とはうまく言い得た言葉だと思います。
先日開催した自由俳句「風薫」句会の作品を掲載します。 兼題は「制服」でした。いよいよ卒業の季節になりますね。
私たちもここに至るまでにそれぞれいくつもの何がしかからの卒業を経てきたかと思うと感慨深いものです。
高崎志朗
制服のサイズ膨らむ春麗
節子さんメールで祝ふバースデー
鬼の面逃げ方忘る親父かな
東風吹かば水面踊りて早瀬かな
疋田 勇
バレンタイン見ただけのチョコうまかろな
春吹雪剪定の手の痺れかな
ホッカイロ昼の気温や春日向
隣家より目刺の香り飯二杯
稽古着の姿勢正して春一番
山 多華子
幼稚園制服着納め初桜
この春も行かむ白河小峰城
春の灯や御魂の温もりの如し
針納め着物姿の揃いたる
アルストロメリア四色それぞれ春きざす
渡辺 健志
銀世界右往左往の受験生
銀世界制服縒れし車掌かな
ポカポカのLRT降り冴返る
春浅し那須山の路輝けり
大竹 和音
学ランの裏地の龍虎卒業す
三味線の小唄ゆかしき梅が香よ
借り手なきバラック十棟猫さかる
寅さんのやうな人ねと花衣
ブランコやママーと泣く児あやしたり
半凶の御神籤引けば春の雷
悪役の斬られてもまた竹の秋
小林泰子
スカーフの膨らみととのえ卒業式
春の空靴ひも軽やかにゆらす
友のふみ文字なぞり笑む春の星
名もなき小川ひっそりとクレソンの群れ
白石 洋一
六十四歳目前死なずに済んだだけでも
学ランは六年間の普段着だった
制服姿の君を今でも思い出す
平穏な生活は数秒で変わる
セーラー服の娘はもう思い出
制服が蟻列のごと坂下る
映画の様には生きられないけどね
時が流れただけか自分が老いただけか
ワールドロックナウ聴き逃しで
義母米寿ラーメン屋に集まり祝う
刈谷 見南國
直筆の行き交ふ時代うららけし
左四つ全盛時代冴返る
取りかへせない投函ひとつ春の宵
立春やズレて固まる切手かな
下級生来て卒業の羽根胸元に
バレンタインデー先に舟唄歌はれる
ビー玉の溜まる窪みや春浅し
下請けの下請け直に梅の花
濃密なとき経て疎遠朧かな
福冨 陽子
春の朝慣れぬ制服バスは揺る
三年間制服纏ひ孵化を待つ
春の雨そわかそわかと丑の刻
蕗の薹妖艶なる葉苦々し
小傘咲く玉砂利軋む春日和
花冷えや顔洗へば袖濡らす
春禽や工事止む昼鳴き交はし
春てんとう目覚むる朝はひとりぼち
薄紅梅「九十二歳になりました」
バレンタイン冷やかしに見る高級品
もうすぐ雛祭
