今日は伏見に行った帰り、7月末にサンロードにも開店した「名北飯店」へ少し早めの夕食を食べに入りました。野菜たっぷりのカイコー飯(980円)とうす皮餃子(450円)をいただきます。少し薄味ですが唐揚げがいいアクセントになってとてもおいしいです♪お店の名物の餃子もグッド!おいしかったです。ごちそうさまでした♪。

 

名北飯店 サンロード店

名古屋市中村区名駅4 名駅地下街サンロード

 

 

 

あらすじ
南房総沖で漂流している男性の遺体が発見された。全国の警察で照会が行われた結果、同居女性から行方不明者届けが出されていた男性がこの遺体の有力候補として浮上した。警察は、行方不明者届けを出した同居女性「島内園香」に連絡を取ろうとしたが、連絡が取れなくなっていた。失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。
第1作『探偵ガリレオ』から、『予知夢』、『容疑者Xの献身』、『ガリレオの苦悩』、『聖女の救済』、『真夏の方程式』、『虚像の道化師』、『禁断の魔術』、『沈黙のパレード』そしてシリーズ10作目の『透明な螺旋』。「愛する人を守ることは罪なのか」ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる。


ひと言
科学的なトリックがなく、これを湯川学のガリレオシリーズとしてやる必要性を感じませんでした。強いていえば、これを警察官である加賀恭一郎でやるわけにはいかないということでしょうか。「容疑者Xの献身」の湯川学とは別人格の設定でした。これが(愛する人を守ることは罪なのか)ということなのでしょうか。

「どうして私たちを助けてくれたの?」「さっきいったでしょ。警察に任せたくなかったんです。でも ――」学は首を傾げ、肩をすくめた。「それは口実ですね。本当のところは自分なりに辿ってみたかったのかもしれません。松永奈江の人生を。彼女が何を思い、どんなふうに生きてきたかを知りたかった」奈江は顎を引き、上目遣いをした。「それで……何かわかった?」「ほんの少しですがわかったような気はしています。身寄りのない子供たちに紙芝居を見せていたのも、新座で隣家の息子を我が子のようにかわいがったのも、遠い過去と無関係ではないのでは、と考えています」「懺悔、なんてことをいったら大げさよね。我が子を手放したことに対するちょっとした罪滅ぼし。自己満足なんだけど」
ふふ、と薄く笑った。学も瞳を揺らして口元を緩めた後、その唇を開いた。「僕も懺悔はしています」奈汪は首を傾げて学を見た。「どうして?」「家を覚えていますか」「家?」「僕が両親たちと暮らしていた古い家です」奈汪は頷いた。「忘れるわけないでしょ。あなたを取り戻そうとして、訪ねていった家だもの」「あの家は、両親たちが横須賀のマンションに引っ越した数年後に取り壊されました。その知らせを聞いた時、こう思ったんです。今ここにいる自分は、あの家で従順な息子のふりをしていた少年とは別人だ。あそこにいた少年は、あの家でとうに死んでしまっている。だからあの家には、その少年の見えない死体が横たわっているに違いない、と」「そんな悲しいことを……」「でも大間違いでした。それから何十年も経ち、様々な人の様々な生き方を見てきた今は、あの時の自分がいかに愚かだったかがよくわかります。人は誰もひとりでは生きられない。今の僕があるのは、多くの人たちのおかげです。育ててくれた両親には心の底から感謝しています。それと同様に、僕を産み、あの両親に委ねてくれた人にも感謝すべきなんです。あの時……どちらかを選べといわれた時、僕はこう答えるべきでした。そんなことはできない、どちらも僕の親だ、と」学が真っ直ぐに奈江を見つめてきた。「会えたなら、お詫びをいおうと思っていました。申し訳ありませんでした、と」奈江の胸に何かがこみ上げてきた。それを堪えるために唾を呑み込み、学の視線を受け止めた。「さっき、別の機会、といったわね。事件の詳しい説明は別の機会にって。つまり、また会ってもらえるのかしら」「もちろんです。だって僕たちは親子じやないですか」学は微笑み、そして続けた。「そうでしょう、お母さん」息が止まりそうなほど胸が熱くなった。
(19)
 

 

あらすじ
将来に対する漠とした不安を抱えながらも、自分のやるべきこともやりたいことも見つけられずに何もせず、無気力に過ごしていた平凡な高校生の僕のもとに、ある夏の日、美しい女の子がやってきた。そして、彼女から、その後の僕の人生を変える教えを聞くことになる。いつしか彼女に恋心を募らせていた彼の前に次第に明らかになっていく彼女の秘密とは……


ひと言
喜多川 泰さんの本は今までも数冊読みましたが、本書「君と会えたから…」(2006年)は「賢者の書」(2005年)に続く著者2冊目の本です。
以前に Amazonの「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」の欄でこの本を見つけ、評価が高かったので図書館に予約を入れました。書かれたことを実践に移すのはなかなか簡単ではありませんが、元気をもらえる本でした。

人間は未来のことを考えるときに、うまくいったらこうなるということ以外に、うまくいかなかったらどうしよう、それどころか、どうせうまくいくはずがないといったこともいっしよに考えてから、自分のやるべきことを決めてしまう。大きな夢を抱けば抱くほど、そうだ。そうしてうまくいく確率のほうが低いと決めつけ、夢に向けて行動を続けることを、宝くじと同等の非常に確率の低いものに投資する行為と見なしてしまう。そして結局、夢へ向けての行動をとろうとしない。
(長い一週間)

「だって考えてみて。ある少年が子どもの頃からの夢たったプロ野球選手になれたとしても、なっただけで、その人が野球選手になることによって手に入れようとしたものか満たされるわけではないわ」ハルカから言われるまでは考えもしなかったが、確かに当たり前のことだった。大事なのは、プロの選手になることそのものよりも、その後の選手生活だ。……。すべてにおいて成功しているのはプロ野球選手の中でもほんの一握りの人たちだけ。しかも相当活躍している時期だけで、翌年ちょっとでも成績が下がるとすぐに状況は変わる。プロ野球選手になるのが夢たった少年が、実際にそれになれたとしても、夢が実現したとは言えないのだ。「確かに、なっただけでは、もともとの目的は、何一つ達成されていないね」「でしょ。それより、職業はプロ野球選手でなくても、野球選手になることによって人が手に入れようとするものすべてを手にしている人は、世の中にたくさんいるわ。その人たちはプロ野球選手という職業には就くことはできなかったけれども、自分の夢をすべて実現できたと満足しているに違いないと思わない?」「そうか! つまり、職業を夢だとは考えないほうがいいってことなんだ! そうか、そうだったんだ!」「そうね。ある職業に就くということは、自分の夢を実現するための一つの手段を手に入れるということでしかないと思うわ」
(第五講 手段を目的にするな)

「幼い動物はね、首輪や脚輪をされても暴れるらしいの。なんとか逃れようとして。時に自分が傷つくくらい暴れようとするわけ。ところがそのうち首輪をつけると暴れなくなるの。どうしてだがわかる?」「動物にだって知恵がある。彼らなりに学習するからだろ。『これをやられたときに暴れても、疲れて、自分が傷つくだけで、何も得がない。何もしないのがいちばんの賢い選択だ』って考えるようになるんだろうな」「そうなのよ。……それって、私だちと似てない?」「えっ?」「動物は成長して大きくなるから、本気になれば鎖や縄、打ちつけてある杭を引き抜くことだってできるはずよ。できる動物がたくさんいる。でも、しない。絶対に暴れないの。首輪をつけた瞬間におとなしくなるそうだわ。それって、小さい頃から、何度も首輪をつけられて、それを外そうとしても外れないということを繰り返して経験してきたからでしょ。ヨウスケ君が言うように、『これをつけられたら身動きがとれない』って思い込んじゃってるから」……。
「なんだってそうだけど、人生におけるはじめの二十年でできなかったからといって、自分にはできないと決めつけてしまうのはあまりにも早すぎるわ。五年後にはなんの苦心なくできるようになっているかもしれないもの。でも多くの人は、昨日までできなかったことを理由に、自分は一生それができない人間だと決めつけてしまうの。昨日までできなかったという事実が、今日もできないという理由になんかならないのよ。そうしてはいけないの。人間は日々成長して変わっているんだから。そのことをパパは私に教えてくれたの」
(第六講 できないという先入観を捨てる)

ハルカから教わった七つの教え
・自分の本当に欲しいものを知る
・夢を実現させる方法を知る
・経済的成功の真実を知る
・魅力溢れる人になる
・手段を目的にしない
・できないという先入観を捨てる
・人生において決してできないことなどない
(勝利の女神)

 

 

あらすじ
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人のもとにかかってきた一本の脅迫電話。それが惨劇の始まりだった。昭和の終わり、藤原家に降りかかった「母の不審死」と「毒殺事件」。真相を解き明かすべく、幸人は姉の亜沙実らとともに、30年の時を経て、因習残る故郷へと潜入調査を試みる。すべては、19歳の一人娘・夕見を守るために……。なぜ、母は死んだのか。父は本当に「罪」を犯したのか。村の伝統祭〈神鳴講〉が行われたあの日、事件の発端となった一筋の雷撃。後に世間を震撼させる一通の手紙。父が生涯隠し続けた一枚の写真。そして、現代で繰り広げられる新たな悲劇。

ひと言
途中まで、何が何だかよくわからないのに、どんどん引き込まれて読み進めました。鱩鰰、キノコ、雪と雷、アザミと亜沙実 いろいろと考えられた設定で楽しく読ませてもらいました。

「”ハタハタを二つ並べて雷神様”ってね」「……何です?」「ハタハタてえ魚、こう書くが」主人はそばにあったチラシとボールペンを取り、意外な達筆で「鱩」「鰰」と書きつける。「これ、どっちも一文字でハタハタって読むちゃ。そんでほら、左側を隠すと、見てみこれ」人差し指で二つの魚へんを隠すと、たしかに「雷神」と読めた。聞いたことのない言葉遊びだが、私が知らなかっただけだろうか。それとも主人のオリジナルだろうか。
(第三章 真相の解明と雷撃)

「昔からこの羽田上村で雷神を祀っているのは、雷が落ちた場所にキノコがよく生えると言われてるからですが ――」それが科学的事実だということ。雷が落ちたあとには実際にキノコがよく生え、ときには二倍以上の収穫量になること。その理由は、電流を感じたキノコが、子実体、いわゆる笠の部分を急激に成長させ、多くの子孫をつくろうとするからだということ。「キノコにとって落雷は自分たちを全滅させるかもしれない恐ろしいものですから、その前に分身をたくさん残しておかねばということで、自動的に子実体を成長させるようになったんじゃないかという説が有力です。ほかの作物、たとえば稲なんかも落雷があると豊作になることがあるんですよ。日本で昔から雷を神聖なものとして見ていたのは、そのためのようです。語源も”神が鳴る”で雷なんだとか。よしできた」
(第三章 真相の解明と雷撃)


手紙を改竄(かいざん)するとき、おそらく父は文字を消しもしなければ書き加えもしなかった。そんなことをすれば、母親の字を見慣れている希恵には容易に気づかれてしまうから。だが、手紙の内容を大きく変えるには、文字を書く必要も消す必要もなかったのだ。私の考えが正しいとすれば、父がやったのはただ一つ、太良部容子の文章に二本の線を書き加えるという行為だけだった。すべてをはっきりさせるには、この目で手紙を見るしかない。
(第五章 映像の暗示と遺体)
 

 

あらすじ
台湾は、2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID-19)の封じ込めに唯一成功しました。本書は、その中心的な役割を担った若きデジタル担当政務委員(閣僚)が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIと社会・イノベーション、そして日本へのメッセージを、自身の言葉で語りつくします。

ひと言
新型コロナにおけるマスク在庫管理システムの開発、IQ180の天才プログラマー、本を1ページを0.2秒で読む、トランスジェンダー、19歳でシリコンバレーで起業、などなど 常識を逸したプロフィールを持つオードリー・タン。いろいろと心に残る記述が多かったが、台湾の政府と国民との信頼関係があったからこそ感染拡大を防ぐことができた。という記述が一番心に残りました。とてもいい国ですね。コロナが終息して海外にも旅行ができるようになったら、訪れてみたいなぁと思いました。


最初から「誰かが違反するだろう」などという先入観を持って強制的なやり方を選択するのは、いい方法ではありません。誰も感染などしたくないのですから、「どのようにすればお互い協力できるのか」ということを考えるべきなのです。それが政府と人々の重要な信頼の源になるわけで、両者の間に相互信頼があったことが、台湾において感染拡大を防いだ最大の理由であったと言っていいと思います。
(序章 信頼をデジタルでつないだ台湾のコロナ対策)

「公共の利益を達成する」という考え方と、自分と他人を比べてどちらが優れているかを判断しようとするのは、まったく異なる二つの概念です。隣の人よりも少し上手にできたことに達成感を求めるよりも、隣の人と協力して社会問題を解決することのほうが、私は喜びの度合いが大きいと思います。
(第一章 AIが開く新しい社会 デジタルを活用してより良い人間社会を作る)

何かを学ぶことができた人は、誰かに教えることもできるのです。「少数の人だけが便利に使っていて、大多数の人は学ぶことができない」という手法では意味がありません。デジタル技術は「誰もが使うことができる」ということが重要なのです。それが社会のイノベーションにつながります。
(第一章 AIが開く新しい社会 デジタルを活用してより良い人間社会を作る)

私か非常に尊敬するプログラマーの先輩がいます。その人は「プログラムをどれだけ上手に書けるかどうかは、母国語の運用能力がどれだけ優れているかにかかっている」「文才があればあるほど、プログラムがうまく書ける」と断言していました。理想的なプログラムを書き上げるためには、頭の中にある概念を文字に変換していかなければいけません。これは文学と同じです。プログラミングのコードと、文学における韻を踏むことが異なるだけです。
(第五章 プログラミング思考 デジタル時代に役立つ「素養」を身につける)
 

 

今日、娘が高浜の方に行った帰り、高浜名物の「魚松」のとりめし(450円 中300g)を買ってきてくれました。前から食べてみたかった高浜のとりめしです。さすが私の娘。鶏肉、油揚げ、牛蒡 と具材はいたってシンプルですが、細かく刻んであり、秘伝のたれとマッチしてとてもおいしいです♪。おすすめの食べ方の紙が入っていてひつまぶし風の食べ方もおすすめとのことなので、ねぎ、海苔、わさびをトッピングしてお茶をかけていただきましたがこれもグッド!。

 

 

だし汁セット(100円)も販売しているみたいなので、次はだし汁でも食べてみたいです。とにかくおいしいとりめしでした。高浜の方へ行く用事があるときは是非予約を入れて伺いたいです。ごちそうさまでした♪。

 

魚松

愛知県高浜市屋敷町7

 

 

あらすじ
この先に「月に一番近い場所」があるんです――。樹海を目指した男が、そこで見たものは? 「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。『月まで三キロ』。「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性が、小学生の娘に伝えたかったこと。『エイリアンの食堂』。「僕ら火山学者は、できるだけ細かく、山を刻むんです」。姑の誕生日に家を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする―。『山を刻む』。折れそうな心に寄り添う六つの物語。


ひと言
前に読んだ「八月の銀の雪」がとてもよかったので、読み終えてすぐ、伊与原さんのこの本の予約を図書館に入れました。もっともっと読んでいたいと思わせてくれるほんとうに心に寄り添う6つの物語でした。こういう素敵な本との出会いがあるから、読書って止めれませんね。素敵な物語をありがとう。


「知ってました?」また運転手が言った。どこか得意げな、屈託のない声だ。「大昔はね、月に表も裏もなかったんですよ。月は今より速く自転していましたから、あらゆる面を地球に見せてたんです。とはいえ、見ていた人間はいやしません。ほんとの大昔、たぶん何十億年も前のことですからねえ」何十億年 ―― ぴんとこない話だ。運転手は楽しそうに続ける。「よく誤解されてるんですがね、今の月が同じ面を地球に向けているのは、自転してないからじゃないんです。月の自転周期が、公転周期と一致してるからなんですよ。月は二十七・三日で地球のまわりを一周しますよね。同じく二十七・三日かけて、月自身も一回転する。とてもゆっくりです。太古の月はもっと速く、くるくる自転していた。それが、地球が及ぼす潮汐力のせいで ―― 正確にいうと潮汐トルクのせいで、自転にブレーキがかかったんです。そのブレーキは、月の自転周期が公転周期と一致するまでかかり続ける。この現象を潮汐ロックといいまして、多くの衛星で一般的に ――」
(月まで三キロ)

ずっと川面を見つめて話していた戸川が、視線を朋樹に向けた。話に引き込まれていたので、何の反応もできない。朋樹は身じろぎもせず次の言葉を待った。「私はそのとき思い知った。わかるための鍵は常に、わからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず、何がわからないかを知らなければならない。つまり、わかるとわからないを、きちんとわけるんだ」
(アンモナイトの探し方)

背伸びをした鈴花が、柵の向こうに手をのばした。空気をつかむようにして確かめる。「水素、ここにもある?」「あるよ。水蒸気としてそこらじゅうにある」それを聞いた鈴花は、安心したようにうなずいた。まだほんの幼い頃、謙介と望美によく見せてくれていた、そんな表情に見えた。鈴花は両手をのばしたまま、愛おしげに空気を撫で続けている。その横顔を見つめているうちに、謙介の目に涙があふれてきた。さりげなく背を向け、こぼれ落ちないよう歯をくいしばる。鈴花は、ないものねだりなどしていなかった。鈴花の中で、望美は今も生きている。鈴花はただ、その存在をいつも感じていたいだけなのだ。神秘の世界に誘われ、眠れなくなるほどそこに思いを巡らせていたのは、母親の感触を確かめる術を探し求めていたからなのだ。謙介は違った。望美の死を、その不在を、ひたすら嘆いていた。望美さえいてくれたら ―― そんな空虚な願いにとらわれ続けていた。そう。ないものねだりをしていたのは、むしろ自分のほうだ ――。
(エイリアンの食堂)

ひときわ強く吹きつけてきた風を正面に受け、わたしの左で学生さんが両手を広げる。「あー、気持ちいいー」疲れた体の芯から出たような声だった。わたしの右で先生が首を回す。「な?」「何すか? な、って」学生さんはわたしの頭越しに訊き返した。先生が、目尻にしわを寄せて言う。「山って、いいだろ」聞いた瞬間、わたしの足だけが止まった。山って、いいでしょ――。その台詞を、わたしは言ったことがない。なぜにわたしは、今まで一度も、あの子たちを山に連れてきてやらなかったのか。なぜわたしは、自分の人生を生きているところを、あの子たちに見せてやらなかったのか。なぜわたしは、二人の前で、押しつけがましいほどに山の魅力を語ってやらなかったのか。わたしの一番大きな失敗は、きっとそれなのだ ――。先生と学生さんが、驚いた顔でこっちを見ていた。わたしは「すみません、何でもないんです」と言いながら、小走りで追いつく。今からでも、間に合うだろうか。いや、間に合わせたい。説明などいらないのだ。あの子たちにかける言葉は、それだけでいい。わたしの心は、決まった。……。
わたしはザックの頭からスマホを取り出し、先生に言った。「電話を一本かけてもいいですか」「ご家族にですか」わたしは「いえ」と小さく答えながら、発信履歴にその番号を探す。また心が揺れないうちに、伝えてしまいたかった。数回の呼び出し音のあと、向こうの受話器が上がった。電話に出たのは本人だった。ふた言ほど言葉を交わしたあと、わたしは告げた。「わたし、決めました。来週にでも、そちらに参ります」先方の問いかけに二つほど答え、最後にわたしが「よろしくお願いします」と言って、通話はあっさり終わった。ほっとしたわたしが微笑みかけたので、訊いてもいいと思ったのだろう。先生が言った。「何を決めたんですか?」「山小屋を買うんです」「え!?」先生が目を丸くする。「ど、どこの!?」「南アルプス」……。
もちろん、家族に伝えるのはこれからだが――。わたしの話を聞き終えると、先生はまだ信じられないという表情で、ゆっくりかぶりを振った。「ここ数年で聞いた中では、断トツで一番うらやましい話ですよ」 そこへ、学生さんが戻ってきた。派手なデザインのぺットボトルを握っている。「おい、今度、山へ行くぞ」先生が出し抜けに言った。[は? 今下りてきたばっかだし」「石採りじゃねーよ。この人の山小屋に泊まるんだ。南アルプス。最高だぞ」学生さんは、何言ってんの、という顔で首をかしげ、ペットボトルのふたをねじ開けた。プシュッといい音が響く。……。
わたしは想像する。
晴彦は、わたしの山小屋に来てくれるだろうか。ぜえぜえ言いながらザックを下ろし、わたしが手渡した水を飲みほして、あんな顔を見せてくれるだろうか。そしたらわたしは、「山って、いいでしょ」と笑顔で言ってやるのだ。「まあ、思ってたよりは」とでも答えたら、次はこう言ってみよう。「山小屋の仕事を手伝ってみない?」と。麻衣は、来てくれるだろうか。フランス人の彼と、もしかしたら、金髪のかわいい子どもを連れて。山小屋で食べるカレーライスが、あの子の勤める高級ホテルのフレンチに負けないぐらい美味しいと、思ってくれるだろうか。夫は、来てくれるだろうか。眠れない山小屋でも、一泊ぐらいはしてくれるだろうか。あのときのように、わたしのためにやせ我慢をして。難しいとは思うけれど、うちの食卓を山小屋に持っていきたい。食堂の隅っこにでも置いて、わたしと家族専用のテーブルにするのだ。細かな傷が刻まれたあの食卓を、家族みんなで囲むことが、またあるだろうか。
(山を刻む)


 

人間の可能性と感動を与えてくれたパラリンピックが閉幕しました。

 

 

今までパラリンピックをこんなにしっかりと観たことはありませんでした。ラケットを口にくわえて卓球競技に出場したエジプトのイブラヒーム エルフセイニ・ハマドトゥ選手。視覚障害があるのに、66歳の年齢もものともせず 42.195kmもの距離を走りきった西島美保子さん。同じく視覚障害の道下美里さんはリオでのリベンジを果たして金メダル 表彰台で道下さんが金メダルを先に伴走者の青山由佳さんの首にかけたシーンはとても感動的でした。車椅子ラグビーで男子に混じってコートを駆け抜けた倉橋香衣さん。もう一歩のところで金メダルを逃したけれど世界一のアメリカと堂々と渡り合った車椅子バスケットボール。他にも書ききれないほどの感動と勇気を与えてくれた選手がいっぱい。

日本でパラリンピックが開催されてほんとうによかった♪ もう言葉にすることができないほど ARIGATO

 

 

 

あらすじ
従順な妻と優秀な娘にめぐまれ、完璧な人生を送っているように見える大澤正樹には秘密がある。有名中学に合格し、医師を目指していたはずの長男の翔太が、七年間も部屋に引きこもったままなのだ。夜中に家中を徘徊する黒い影。次は、窓ガラスでなく自分が壊される。「引きこもり100万人時代」に必読の絶望と再生の物語。


ひと言
関心のある8050問題を取り扱った小説ということで、図書館に予約を入れてやっと借りることができました。内容もおもしろく、読みやすくて一気に読み進みましたが、第一章以降は、ある意味8050問題なのかもしれませんが、これはいじめ、引きこもりを取り扱った本で、8050問題から離れていくような感じが否めません。最後の最後で「このまま五十のおっさんになったら、サイテーじゃん……」と8050問題に戻したような書き方になっていますが……、「小説8050」というタイトルで、この本を買ったり、図書館に予約したりという人もいると思うので、このタイトルはちょっとどうかなぁ……。


「やっぱり、おじいちゃん、おばあちゃんのお葬式って、孫がちょろちょろしていて、こらっ、なんて怒られて、にぎやかなのがいいわよね ―」節子は栃木の出身である。正樹は妻の身内の、幾つかの葬式を思い出した。確かに近所の人たちに加え、小学生や幼児の孫が行儀悪くあちこち走りまわっていた。が、あれは確かにいい
光景であった。新しい生命体はキラキラと光輝やいていて、死んでいったものの命を引き継いでいくのを、はっきりと見たような気がした。
(第一章 はじまり)

「何とかならないから、こんなに社会問題になってるんじゃないの」由依はピンク色の唇を思いきりゆがめた。「ほら、8050よ。知ってるでしよ。親が八十歳になっても、子どもは五十歳でパラサイト
している。引きこもりのまま中年になっているのよ。おっそろしい話よね。親の年金をあてにして生きてる。たいていが男よ。五十になっても、就職も結婚も出来ない、小汚ないさえない初老のオヤジになってくのよ」こんなに口がまわる娘だったかと、正樹は唖然と見ている。「どうしてかわかる? 親が甘やかして育てるからよ。今の世の中、女の方がずっと厳しく育てられてるわよね。女だからちゃんと勉強しなさい。一人で生きていける人になりなさいってね。……。
(第一章 はじまり)

「どうして進学しないならせめて働け、って言わないの。どうしてうちから追い出さないの」そしてつけ加える。「うちの娘が同じことしたら、私なら出てけーって蹴とばしてやるわ」引きこもりと縁のない子どもを持つ親は、必ずこう言うのだ。私ならもっと強気に出る、子どもをそんなに甘やかしたりしないと。しかしいったいどんな親が、いきなり子どもを外に追いやることが出来るだろうか。もう頼る人がいないからといって、一人発奮して日雇いにでも行くと思っているのか。親に捨てられたことに絶望して、自殺するかもしれないのだ。その前に犯罪に巻き込まれる可能性もある。だいいちそんな強い人間に育てなかったことは、親がいちばん知っている。外で死なれることを怖れて、ずっとうちの中で好きにさせてきたのだ。そして息子は二十歳になった。
(第一章 はじまり)

「ご存知だと思いますが、今はかなりの大学がAO入試を導入しています。芸能人がやたら名門私大に入れるのもそのためです。これには、引きこもりをした塾生というのはとても有利なんです。うちでは小論文の書き方と面接を徹底的に教え込みます。わかりますか。自分はこうやって立ち直った、つらい体験をした自分だからこそ、ここで学び、いずれは社会の役に立ちたいのだと。これでコロッといかない試験官はいませんよ。わかりますか。うちは引きこもりを、有利な材料に変えてみせるんです。こんなことが出来るのはうちだけなんです」夫婦は同時に頷いた。節子の喉がごくっと鳴っているのがわかる。ここよ、そうよ、ここなのよ、私たちが探していたのは。喉がそう語っているようだ。
(第一章 はじまり)

「だけど翔太君は、その時もまた弱気なところを見せたようです。悪ふざけでやったことだから、先生には黙っててくれって言ったそうです」「まさか……」「どうしてそんな極限状態までいっても黙っていたかですか? 僕はやっぱり親に知られたくなかったからだと思います。あの、僕は今サークルのボランティアで、時々学童支援の勉強見てます。その子たち見ててわかります。小学生ならともかく、中学生ともなると、いじめられたことを、絶対親には言いません。言ったりすると、自分の存在がガラガラと崩れてしまうような気がするんですよね」「まるでわからないよ。どうして親に相談してくれないのか」「たぶん、プライドっていうのと、それからいじめられている世界と、家庭での世界を重ねたくないんじゃないでしょうか」いかにも彼は文学青年らしい言い方をした。「うちの中は平穏で変わりないものであって欲しい。そのために、こちら側のイヤな世界は自分の力で食い止める、って思うんじゃないでしょうかね」
(第一章 はじまり)

「……。自殺する子がいますよね、いじめられて。僕はそういうニュースを聞くたび、かわいそうだけど、ちっともわかってないんだなあってせつなくなります。死んだ子は、自分をいじめた子たちは、このことで一生世間から責められ、罪人として一生過ごすに違いないって考えるはずです。でも違うんですよ。いじめた子は、未成年だから名前が出ることもありません。その時は泣くぐらいのことはするかもしれないけど、すぐに忘れます。そして学校出て大人になって、いじめた子のことなんか、どこか遠くへいくんですよ。そしてのうのうと、ふつうに生きてくんです」
(第一章 はじまり)
 

 

名古屋名物のあんかけスパのお店「あんかけ太郎」が約1カ月前に名駅のサンロードにもオープンしたので食べに行ってきました。人気No.1のミラカン レギュラー 400g(960円)をいただきます。もちろんご存じだと思いますが、ミラカンとはウインナー・ハム・ベーコンなどをのせた肉系のトッピング「ミラネーズ」と、たまねぎ・ピーマン・マッシュルームなど野菜をのせた「カントリー」から 頭の二文字ずつを取った名古屋飯のあんかけスパの代表メニューです。やっぱりあんかけスパはミラカンだよなぁ。甘くなくスパイシーなソースなのであっという間に400g完食。次は100円増しのラージ 550g か150円増しのジャンボ 650g を食べてみよかなぁ。ごちそうさまでした♪

 

あんかけ太郎 名駅サンロード店

名古屋市中村区 名駅地下街サンロード