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カタツムリが、おしえてくれる! 自然のすごさに学ぶ、究極のモノづくり/赤池学他

キーワードはネイチャーテック(nature-tech)。
自然を参考にした持続可能な技術でありながら、既成の技術よりも遙かに優れた機能をもつものを、こう呼ぶらしい。
陶器メーカーから総合ハウジング企業へ飛躍したINAXの取り組みを通して、ネイチャーテックの持つ社会的な意義を広く浅く肩肘張らずに読んで理解できる入門書。

プロジェクトX風の文章スタイルがやや鼻につくが、こうした番組が気にならない人なら大丈夫だろう。しかし企業ルポの重点が大きすぎて、技術的な事を知りたい人には向かない。提示される情報は一方通行で、論拠も示されない。また、図表などのレベルが低く本としての完成度が低いと言わざるを得ない。少なくともwebから取って貼り付けたような画像は勘弁して欲しい。この著者の前著でも同じような物を見かけた覚えがある。

カタツムリ云々は、「カタツムリの殻は、どうして汚れていないのか?」という素朴な疑問から出発し、汚れに強い表面コーティング技術の開発に結実するまでの小話によっている。

関係ないが、INAXは昔は伊奈製陶という社名で、便器には「ina」と銘が入っていた。が、小学生の頃は、この「a」の字体がなぜか小文字の「d」に見えてしかたなかったので、どうしてこんなにインド製の便器が多いのか、と不思議に思っていたものだ。

著者: 赤池 学, 金谷 年展
タイトル: カタツムリが、おしえてくれる!―自然のすごさに学ぶ、究極のモノづくり

オンエアバトル爆笑編/NHK総合

2005年2月5日放送分

今日は最初から全部見る事ができた。
今回は好きな芸人が多くて良かった。

結構ネタの素材がカブっていて面白かった。床屋・オレオレ詐欺など。5番6番のとき、周りを虫が飛び交っていて大変そうだった。最後怒ってたし。タカアンドトシが早速ネタにしていた。

磁石は、もとから結構好きだが今回のネタも良かった。あの表情の変わらないひょうひょうとしたボケがいい。個人的には「~振り込んでオレオレ」のオレオレ詐欺ネタがGOOD。
ダイアンはもっさりしたしゃべりのボケが、そんなに好みではないが、今回はまあまあか。突然無関係ボケはいまいち。いないいないバー→肘のネタは不要。
火災報知器は素で並んでいると印象がないのだけど、特異なボケ女性キャラを見るとすぐ思い出す。北別府か、と言うようなぼそっと地味なつっこみがなかなか良いと思った。広くは受けないと思うけど。
5番6番は好きなコンビだけに、今回はいまいちと辛め。もう少し世相系で毒舌寄りの方が好み。特にネタの前振り時などに、両者がちゃんと観客に語りかけるようにしているところが好感が持てる。ボケの猫背具合も良い。
タカアンドトシ。最初がおっさんネタだったけど、最後の方がおっさんが出てこなくて残念。そのため繋がり感がなかった。このコンビは時々はいる逆つっこみが良い。

富豪刑事/ABC

第4回 2005年2月3日放送

今回は誘拐事件もの。これまでになくまとまっていて、あらも少なく、内容が濃かったと思う。カーチェイスなどもあり面白かった。
誘拐された少年の、思わせぶりなラストの描写もよい。
敢えて難を挙げれば、展開にちょっと無理がある点か。誘拐犯の動きを封じ逮捕しやすくするという目的の為に、こちらから身代金の増額を誘導し、札束の重量でそれを為そうという富豪発想なのだが、ここでうまく誘導できるかどうかがポイントなのに、さらっと流してしまっていて、それでは巧く行きすぎだ、と思わざるを得ない。でも1時間では仕方ないのかも知れない。

今回も、最後には「勝手に帰るな」を入れて欲しかったね。

義妹が、松崎の愛のメモリーを知っているそうで、びっくり。で、ミッチーよりも本家の方が良いらしい。一回聴いてみたいもんだ。

φは壊れたね/森博嗣

噂の森ミステリ新シリーズ第1弾?

というか、いい加減新しい設定を考えて下さいな。同じような設定で引っ張りすぎ。しかもS&M設定の使い方が中途半端ので、ファンにはがっかりだろう。ちょっとしか出てこないし、出てきても意味無いし、では辛い。
期待の新主役陣?も、どこかで見たようなキャラクターばかりだ。

森さん、なにも無理に書かなくても。と言うのが本音か。ま、図書館で借りて只なら読みますが。

ストーリーや設定の不整合は、わざとなのかも知れないが、そうだとしても実効上の意味があるのか疑問。現実はそんなに整合しない、と言いたいのか?
舟元の代理行為についての言及が揺れるのは、ミスリードを誘うためか?
彼はメガネなしで平気で行動してますが、コンタクト?あの変な探偵は何の意味があるのだろうか?冒頭のVTRの遠隔録画操作の話もミスリード用?ビデオカメラに、ベランダへ出る動作音が記録されていないのはなぜ?戸川は、外出する舟元を見ているのに計画中止しなかったのはなぜ?…etc
見えている物だけが真実ではないし、見えた物も真実とは限らない、と言いたいらしい。

トリックは、半日考えて見破り度95%(妻評価)だった。中の下、やや簡単、と言ったところか。さすがに動機は分からなかった。というか、森ミステリは動機は推理してもムダだね。

タイトルの意味については、読者それぞれでいろいろ考えどころがあると思う。
自分の場合、φと来たらまず思い浮かぶのは、やはり量子力学の波動関数だ。φが壊れたときいて、真っ先に波束の収縮を考えた人も多いだろう。
波束の収縮、つまり物理的な観測が(カメラによって)おこなわれた、と言う意味だ。量子力学的スケールの世界では、粒子の位置や速度などの物理量が、本質的に不定量として存在する。ある一定の位置にある粒子と言う物は実在しない。そこにあるのは存在確率の分布なのだ。観測を行う事により、はじめてある位置に粒子が見いだされる。この位置は、存在確率分布に統計的に従う。φで表される確率分布の波が、観測によって一点のみを表すスカラーになる事を、波束の収縮という。
芸大生4人の間に渦巻く人間関係。読み切れぬ他人および自分の心。様々な憶測。予想されうる幾多の未来。複雑に絡んで耐えきれない繋がりの力学系。こうした不確定な現在から、どれかは分からないが、少なくとも確定した一つの状態を生み出す「観測」という名の創作活動を、彼らは行ったのであり、そのアナロジーとしてのタイトルだったのではないか。おそらくタイトルを決めたのは町田。彼は自分が死ぬかも知れない事を十分に知っていたろう。また、ある種の大岡裁きのような展開も期待しただろう。真実を知りたいという願い。そして、どちらに転んでも、そうした葛藤の過程そのものを作品として残す意志。そしてそのタイトルの意味に込められた諦観と矜持。
殺される瞬間、彼は幸福だったのかも知れない。また、絶望の底に沈んでいたのかも知れない。それはこの物語が書かれた時には、まだ、決定されてはいない。φのように揺らいでいるのだ。読者がこの物語を読んだ、まさにその瞬間、町田の状態は決まる。読者によって決まるのだ。これが読書という行為の本質であって、φが壊れるという意味は、読書と観測の2重のアナロジーになっているのだろう。読む事によって壊れるものが小説なのだ。

著者: 森 博嗣
タイトル: Φは壊れたね

PS/ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち/エニックス

やっと先日クリアした。約100時間ちょっと。

妻がこんなに経験値稼ぎを楽しむとは意外だった。

内容について。
とにかく、神、神、うるさい。くどい。特に後半以降。台詞の10%ぐらいが神にまつわる単語という勢いだ。さすがにここまでくどいと辟易する。世界観が平面的すぎ。いくら小学生からがプレイする国民的ゲームという看板を背負っているとは言え、もう少し階層を持たせても良かったのではないか。
石版を使ったミニストーリーと、さらにそれを時間的に隔てた地点から再度見せる事により、時間の流れを感じさせる作りはうまい。素直に胸を打つきれいな話がいくつもあった。また、過去と現在のタイムスパンがだんだん縮まっていく様はスリリングですらあった。こうした複雑なストーリーテリングの手法は満足行くものだ。
しかし、それらの物語が収斂していく先のラストが、それまでの冒険を受け止めるだけの重量感がない。拍子抜け。ラスボスとの戦闘にしてもそうだ。弱すぎ。魔王を倒して神様が復活してよかったね。では弱いよ。特に、その「単純な繰り返し」のままでは、逆にあっけにとられる。

主人公が、つぼを割りまくり物を盗みまくるのはもはや伝統かも知れないが、それだけ世界のリアリティが失われる効果しかない。たった今、悲壮な会話を交わした人物の目の前で、盗みを働くとはどういう了見だ?また、世界を救う英雄から金を取るな。武器も只で使わせろ。

短くても風景や人物の心情が匂ってくるような台詞回しはさすがに素晴らしい。ただ、これは世界観や設定が悪いのだが、リアリティのない台詞が多い。大陸を一つ吹き飛ばせるようなモンスターや、まして全知全能の魔王などに、生身の人間が勝てるわけ無いだろう。また、人の死、の悲しさが語られるストーリーが多いのだが、なぜ主人公は、そうした死んでしまった人々に、ザオラルなどの生き返らせる呪文をかけてあげないのだろう?戦闘時にどんどん死んでは魔法で生き返る事を繰り返していれば、誰でも疑問に思うのではないか?
結局、世界観とシステムとストーリーがきちんと融合していないのだと思う。ミニストーリーや台詞回しは秀逸なのだから、過去の遺産にこだわらずにきちんとまとめて欲しかった。

疑似3Dマップと操作は、最後まで苦労した。角に引っかかってイライラする時が多い。人に話しかける時にも位置と角度が合わない事が時々あった。ただ、LR2ボタンの定量回転は良かった。メニューの操作体系や、反応性は優良だ。セーブロードも速いと思う。ただし、プレイ中、1、2回、ハングアップした点は残念だ。

ほとんどマッピングしなくてもすいすい進める一本道ダンジョンの難易度は、プレイヤー層を考えての事だとは思うが、便利でよいと思う反面、物足りなさも否めない。特に塔の低さにはしょんぼりだ。説くべき謎も、当然、同様だ。ただし、難易度と達成感は単純に比例しているわけではないので、誰でも解ける簡単な謎で、大きな達成感を味あわせる、と言う点がポイントだろう。その点が若干いまいちかな、と思わざるを得なかった。

しかし、肩の力を抜いて、気軽に安心して楽しめるゲームではある。

メーカー: エニックス
タイトル: ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち

富豪刑事/ABC

第3回

犯行方法を推理するHowダニットもの。
密室に酸素を送り込んで充満させ、普通なら問題のない葉巻やランプの火を大火にして、焼死させるというトリック。
当然こういう法螺話なので、トリックのリアリティなどは、不問にすべきだ。
しかしどうしても気になってしまうのが、なぜ犯人が、「ターゲットがエアコンを使わない」事をとても気にしているのか?だ。
ひょっとして、エアコンを使うとせっかく送り込んだ酸素が外に抜けてしまう、とでも思っているのか?原作ではどうなっているか気になるところ。こういう点というのは、撮影現場の人間は誰も指摘しないものなのだろうか。

さすがに、こうした、いくらなんでも、と思わざるを得ない点があると気になって楽しめない。
それを吹き飛ばすような壮大な富豪ぶりでも見せつけてぐいぐい引っ張っていってくれれば嬉しいが、富豪ぶりも若干トーンダウンしたような気配。
次回、盛り上げて欲しい。

じーさん、寄付はいやなのか?

ところで、及川光博の主題歌「愛のメモリー」がとても良い。奥さんは知ってるようだったが、僕は知らない曲だったので調べてみると、松崎しげるの77年のヒットだった。小学校入学前ではしらんよ…。シングル出るみたいでヒットの予感。

文学賞メッタ斬り!/大森望他

もとより、まともな文学論・文学賞論だとは誰も思っていないだろう。業界人が文学賞をどうとらえているのか、居酒屋的なだべりを楽しむ本だ。山のようにある文学賞についていろいろうんちくを得られるのも良い。

書評・選評というものについての怖さが分かる。このブログの駄文は書評などではなく単なる感想文だが、本当の書評を書くのは難しい事だとつくづく思う。
どんなものであれ、何かについて語る事は、自分を語る事だ。選考委員のとんちんかんな選評を元に評者をメッタ切りしている二者は、その同じ文章で彼ら自身をもメッタ切りにしている。血を噴き出しながら笑っている著者たちの様を観ると、なるほどこれは斬られ芸だと得心した。しかもヤタラメッタラに振り回す刀が見事に、両者のコネクション関係を紙一重で避ける高等技術は、もはや芸術的ですらある。

この本は評論ではなく文芸であるので、内容について文句を言っても仕方がないが、終盤の「毒舌は文学への愛故」という言説には萎えた。

著者: 大森 望, 豊崎 由美
タイトル: 文学賞メッタ斬り!

オンエアバトル爆笑編/NHK総合

2005年1月22日放送分

またしても最初の方を見逃した。
今回はいまいち。

麒麟のネタは、M-1で観たものだった。先日の笑金のネタの方が良かったな。
チョップリンは、異様な塾講師が良かった。
ハイキングウォーキングは、初出場。まま、面白かった。一言で言うと、ハマカーンとアンガールズを足して2で割った感じ。ただし、本物の小学生の研究発表は、実際に卒業式の発声形式に似ているのだ。
チーモンチョウチュウは、彼女欲しいネタ。いまいち。
ロケット団は、ほとんど見逃して、印象無し。失礼。

精子の話/毛利秀雄

有性生殖を行う生物、もちろん人間を含めて、には精子は卵子とともに無くてはならない存在だ。種の命運を卵子と2分して担っている事は誰でも知っている。

しかし、現代社会において、声高に精子について語られる事は、まず無い。精子=性=性行為=タブーとする風潮がそうさせるわけだ。生殖細胞のパートナーである「卵」という単語を見聞きすることなく日常生活を送る事は不可能であるにもかかわらずだ。本文でも触れられていたが、著者のように精子の研究者にとっては忸怩たる状況だろうと思う。

考えてみれば、子供向け生殖科学の本を除いて、寡聞ながら精子の出てくる童話・童謡は無いようだ。衣類・おもちゃのデザインやキャラクターでもそうだ。そうした分野における「卵」の扱いとは比べるべくもない。

もちろん理由はある。タブー以前に、精子は小さすぎて見えなかったからだ。発見には光学顕微鏡の発達する17世紀後半まで待たなければならなかった。発見後も単なる寄生虫と見なされたりしてその本質が理解されるまでにはまた時間が掛かっている。
しかし、もう2百年だ。状況が変わっていっても良いと思う。

精子鞭毛の構造と動作の解説は興味深かった。今まで恥ずかしながら、有名な鞭毛モーター方式で動いているのだと思いこんでいたのだ。そうではなく、鞭毛の各部が協調して屈曲し波打って動く仕組みと知って驚いた。そして、それらの組織へのATP供給は、酵素の濃度勾配による自然拡散ではないか(仮説)との話のあたりが面白い。

著者: 毛利 秀雄
タイトル: 精子の話

富豪刑事/ABC

第2回

今日も面白かった。山下慎司最高。
筒井ファミリーと言う事でなのか、岡田真澄登場。今日も最後にやっちゃんが出ていました。おまけに舞台は七瀬を冠する美術館でした。これは原作もそうなのかな?

実はここだけの話、中学生の頃に市毛良枝にあこがれていたので、執事?ばあや?の役で出ている点もポイントだ。

ところで、このプロットは原作に忠実なのか?よくこれだけすさまじく穴だらけのお話を通せるものだと愕然とした。テレビドラマ特にサスペンスモノなどは全く観ないから分からないが、TVではこの程度の内容でも苦情が出ないのだろうかと心配になる。

また穿ちすぎかも知れないが、逆に、これだけ嫌でも目に付く穴だらけのプロットを対置させる事によって、「富豪刑事」という存在矛盾を目立たなくし、とけ込ませているのではないだろうか。実際、そうした効果はあると思う。もしそうであれば、この番組で本当に楽しむべき点はプロットではないのだから、その目論見は成功だとして評価したい点だ。