精子の話/毛利秀雄 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

精子の話/毛利秀雄

有性生殖を行う生物、もちろん人間を含めて、には精子は卵子とともに無くてはならない存在だ。種の命運を卵子と2分して担っている事は誰でも知っている。

しかし、現代社会において、声高に精子について語られる事は、まず無い。精子=性=性行為=タブーとする風潮がそうさせるわけだ。生殖細胞のパートナーである「卵」という単語を見聞きすることなく日常生活を送る事は不可能であるにもかかわらずだ。本文でも触れられていたが、著者のように精子の研究者にとっては忸怩たる状況だろうと思う。

考えてみれば、子供向け生殖科学の本を除いて、寡聞ながら精子の出てくる童話・童謡は無いようだ。衣類・おもちゃのデザインやキャラクターでもそうだ。そうした分野における「卵」の扱いとは比べるべくもない。

もちろん理由はある。タブー以前に、精子は小さすぎて見えなかったからだ。発見には光学顕微鏡の発達する17世紀後半まで待たなければならなかった。発見後も単なる寄生虫と見なされたりしてその本質が理解されるまでにはまた時間が掛かっている。
しかし、もう2百年だ。状況が変わっていっても良いと思う。

精子鞭毛の構造と動作の解説は興味深かった。今まで恥ずかしながら、有名な鞭毛モーター方式で動いているのだと思いこんでいたのだ。そうではなく、鞭毛の各部が協調して屈曲し波打って動く仕組みと知って驚いた。そして、それらの組織へのATP供給は、酵素の濃度勾配による自然拡散ではないか(仮説)との話のあたりが面白い。

著者: 毛利 秀雄
タイトル: 精子の話