読んだり観たり聴いたりしたもの -129ページ目

彼氏彼女の事情/津田雅美

これも最初妻がお奨めコミックスと言う事で調べてきて図書館で借りていた漫画。
だが、またしても1巻を読み逃してしまい、それっきり。妻は結構おもしろがって読んでいた。

そんなある日、図書館へ本を返しに行く途中、何気なく暇つぶしに7巻を開いて読み出したら、途中にもかかわらず面白くて、とうとうその足で1巻を借りて帰ってきた。
で、読んでみると1巻からハイペースで面白いではないか。すっかりファンになってしまった。
ギャグの面白さもさることながら、展開の密度が半端無い。1巻と言っても、後ろ1/3は読み切りが入っているのにも関わらず、ブリーチで言うなら5巻分ぐらいの読み応え。
こんな面白いマンガを危うく読み逃す所だったとは恐ろしい。

既に完結しているようだし、これからがりがりと読んでいきたい。

津田雅美
彼氏彼女の事情

ロボットとの付き合い方、おしえます。 14歳の世渡り術/瀬名秀明

実は、著者のあの有名な小説「パラサイト・イヴ」はまだ読んだ事がない。
その小説を元にした同名のゲームも同じく未プレイである(閑話だが、その3作目は原作からのあまりの乖離に著者からタイトルの使用を禁じられたとか。ゲームの主人公は小説と異なるオリジナル設定だが、その名「アヤ」は当時スクウェア在籍でプロデューサーの坂口さんの娘の名から取られているとの事)。
どちらもそのうち、とは思っているが、なかなか。

が、小説は読んでないが、書評や科学エッセイなどは、割合テイストが好きである。幹を押さえつつ、俯瞰的に文章に軽みを配することができる視点があると思う。そんな著者は最近ロボット系に入れあげているらしいが、この本は、14歳向け、と言う事で、現在のロボットに関する研究開発の総合的な解説である。

当然主な読者として中学生をターゲットにしていると言う事で、平易な文章で読みやすく工夫されているし、ちゃんと難しい大事なポイントも入れつつ網羅的に書かれており、ロボットの事を知りたいと思う大人にも十分勧められる。


瀬名秀明
ロボットとの付き合い方、おしえます。 14歳の世渡り術

本格インド料理 カルマ/カレー

ポスティングで近所の料理屋の割引券が入っていたので、珍しく休みに早起きして妻と出かけた。
しかし、目的のその某料理屋は、外観からどうも怪しげな感じで入りづらく、遠巻きに一周して止す事にした。

しかし昼時でお腹はすいているので、別の店で何か食べる事とし、久々ATCで行ったのが、このインド料理屋。
前から一回行きたいなと思いつつ、なかなか行けずにいた店である。

店外のメニューを見ると、ナンとライス、カレーの食べ放題で1200円のCセットが目に付いた。セット内容は、ナン&サフランライス、カレー×3(野菜・チキン・ほうれん草)、ミニタンドリーチキン×2、サラダ、マンゴーヨーグルト、ドリンク、と初期状態でもかなりのボリューム。妻は無理せず、ちょっと少なめのBセット990円に変更。
ちなみに、インド料理は器の盛りが小さく見え、いざ食べると結構ボリュームがあって驚く事が多いから、初めての人は、少々少なめに頼んで後でお代わりする方が無難。

オーダーすると、割とすぐに料理が出た。まずはナン。焼きたては当然ながら、割と甘めの味付けで、中はもちもち、そして外がぱりっとしてかなり美味しい方だと思う。
そしてメインのカレー。割と落ち着いた味で、非常に好感を持った。辛さは、辛すぎずに食べた後じんわり辛くなる程度。辛好きな向きは、テーブルにある唐辛子パウダーを好きなだけ掛けると良いだろう。素材とスパイスの持ち味を活かした味付けで、美味しいのはもちろんだけど、それに加えて味付けが優しいので、よそのカレー屋みたいに、食後に胃がもたれたり、後になってやたら喉が渇いたり、という事がないのが良かった。

カレーを2つ、ナンとライスを1つずつお代わりして、大満足。
安くて旨くて、ボリュームも満点。文句なし。

店員さんもはきはき笑顔で好感だし、店の雰囲気も良かった。これで横の席で煙草を吸うアホさえいなければ完璧だったろうに。早く飲食店全面禁煙を法制化して欲しいものだ。


本格インド料理 カルマ

税理士が教える得するパートタイマーBOOK/米津晋次

パートとしてスタッフを募集していると、面接時にしばしばこんな質問を受けた。
「給与が扶養の範囲内になるよう、勤める日時を調整してもらえますか?」

言っている意味は分かっている。

世の制度には扶養という概念がある。私の家族は稼ぎが少ないので、私の稼ぎで養っています、という意味だ。稼ぎをまるまる一人で使う単身者より、家族を扶養している人の方が何かと物入りで大変だろうし皆で助けようよ、と言う理由で、扶養する家族がいる事によって各種の手当てや控除などの特典が受けられる仕組みが多数ある。
そして、各種制度によってそれぞれ、これだけの稼ぎ以下なら扶養と認める、というラインがあり、それを超えると扶養と認められず、特典は受けられない。
山のように給与がもらえるのであれば何の問題もないが、もしも扶養認定ラインを僅か超えるような額の稼ぎだった場合、僅かに増えた給与より、失う特典の金額の方が大きくなる場合がある。
従って、給与所得者の稼ぎの集計期限である年末が近づいた頃に、今年のこれまでの稼ぎと今後の予定を計算し、もしもラインを僅かに超えて止まるような稼ぎが見込まれた場合には、わざと仕事を休んで稼ぎを減らし、何とか特典を確保しようと言う作戦に出る訳だ。

あなたの職場ではそう言う休みを取る作戦を認めてくれますか?と言うのが冒頭の質問だ。

雇う側からすれば、年末の忙しい時期にふざけんな、というのが本音だが、うちのような零細にはそもそも来てくれる人さえ少ない訳であるから、何とか逃さないようにと、笑顔が引きつらないように気を付けながら「ええ、何とか対応できると思います」と返すしかない。

もちろん求人応募者が決して無理難題を言っている訳ではない事も分かる。僅か一日分、数千円の給料をもらってしまったが為に、税金や保険料が数万円も余計に掛かるようになってしまっては大損だ。そりゃ、自分だって同じ立場なら同じ事を考えるだろう。

例えば、こうした「壁」のうち、現状で最少額のものは、住民税100万円の壁であるのだが、そもそも去年までのうちのスタッフの労働条件では皆勤でも総額100万未満となるため全く気にする必要はなかったのだ。ところが、昨年末より賞与が復活し、昇給もし、おまけに所定の勤務時間を延長した。新人さんも給与をベースアップしたので、今年からは新人でも皆勤+ボーナスで120万前後になる見込みなのだ。と言う事で今年初めて壁問題が発生し、面接では対応を迫られるハメになったと言う事である。

このような所謂「扶養の壁」はもちろんよく知られた問題である。自分も存在やその原理はよく知っていた。しかし、いざ具体的にいくらの給料だと何がいくら損でいくらならOKなのか、と訊かれると即答できなかったりする。
ネットで調べても縦割りの情報が分散して分かりづらい。
そこで手に取ったのがこの本であるが、発行が2006年とやや古い点を除けば、このような「壁」問題に専門的に絞って解説しており、非常に網羅的で分かりやすい。雇用側ではなく、一般の主婦パートを想定して文字も大きく、文章も易しく書かれており、働く被扶養者は一度目を通しておいて損はないだろうという内容だ。
難点は強いて挙げるなら、極めてレアケースかも知れないが、社会保障等の減免措置を受けているような場合のギャップに触れても良かったかも知れないが、自治体等で大きく変わる物だし難しいかも知れない。

結局、我が職場のケースでは、今のスタッフさんには大した壁は存在しない事が分かり、休まず働いてもらえそうな事が分かったのでホッとした。
また、採用が決まった新人さんは、「扶養の範囲とか関係なくバリバリ働けます!むしろ早出や残業とか無いですか!?」という働く意欲満点の人だったので非常にラッキーだった。

本書を読んで一言だけ書いておくと、中でも書かれているように「壁」の言葉が一人歩きしていて、「超えたらダメ!絶対!」かの如くの風潮がある点は問題だ。もちろん、ケースによっては十数万の壁もある。しかし、僅か数千円の壁もあるのだ。壁と思っている物は本当に壁なのか、ちゃんと調べる必要があるだろう。

米津晋次
税理士が教える得するパートタイマーBOOK

PSP/カルネージハート エクサ/アートディンク

その後の話を。

まず、発売日から1日遅れてサントラ付の初回版がAmazonから届いたので、すぐにプレイ開始した。
そもそも、何度も書いているようにカルネージシリーズ、特にCHP系は、ストーリーはほんのおまけなのである。実際、熱狂的カルネージファンの中には、ストーリーゲームなどプレイする気ゼロ、という猛者も多数いる。妻なども、前作のCHPはストーリーゲームは一応プレイした物の、シナリオシーンは、「長い」と言って、全てボタン連打でスキップしていた。当然それだと物語の流れなど1ミリも分からない訳だが、シナリオ展開の合間に入るバトルシーンだけをこつこつやってクリアはしていたようだ。
そんな不遇なカルネージのストーリーゲームだが、今作では、これが丸々膨大なチュートリアルとなっており、特にシリーズ初心者に対して、ここまで説明したからには分からないとは言わせねえ!と胸ぐらを掴まれる勢いの丁寧さで、これならプログラムって何ですか?レベルの初心者も4人に一人ぐらいは拾えるんじゃ無いかと思わせるほどの力作となっている。あくまでシナリオ付チュートリアルな訳だが、じっくりプレイすれば20~30時間掛かるだろう。
戦闘ロボット作成ゲームの完全なチュートリアルをフルボイスで自然にストーリーに落とし込む、という離れ業を見事にやり遂げており、非常に感嘆した。そうした点を除外し、単にシナリオの出来として見ても、ありがちな内容ながら普通程度には良かったと思う。パルティータの心情にはちょっとぐっと来た所もあった。
個人的には、ファンとしては少数派となるがカルネージのシナリオは結構好きな方なので、今作でも内容的な所も期待していたのだが、かなり期待に応える物だったと思う。
ただし、せっかくのフルボイスだが、声優のレベルは、今作予算の台所事情がかいま見えるかのようなものだった。まあ慣れれば何とか聴けるし、実際そこまで気にするようなファンはほぼいないと思うのでこの予算配分は正解である。
また、最後の展開だけは問題があるだろう。マザーグースが自爆装置を搭載したニーズヘッグなどに自らを移動させる訳がない。つまりはニーズヘッグは囮なのであって、その事を明示的に暗示する(難しい日本語だ)シーンをきちんと入れても良かったのではないか。
しかし、総評として、ストーリーゲームはかなり楽しめたと言っていい。

ついで、ストーリーゲームとバトルゲームのバトルアリーナを全て金メダルでクリアし、機体を2,3作って、公式のレーティングに登録したり大会に出してみたりした。
年末にかけてあまり時間も取れなかった事もあり、まだたったの60時間程度しかプレイできてない。筋金入りのカルネージファンに言わせれば、多分、これはまだ殆ど何も遊んでいないのと同義だろう。

初回版に付いてきたサントラ「鋼鉄の調べ」だが、大ボリュームな上に出来が良すぎて吃驚した。こちらは一時期はまって、仕事中ずっとかけていたので、下手をするとプレイ時間よりサントラを聴いていた時間の方が長いかもしれない。

その後急展開が。
義弟に話した所、かなり興味を持ったらしく、今作で搭載された通信対戦を使用して遊びたいねという話になった。そこで、昔ジャンクで買って趣味で修理しておいたPSPとDL版エクサを年末に一緒にプレゼントした。その直前に、妻用にと仕事場からPSPを1台ゲットしていたので、これでちょうど3台で遊べる事になった。エクサの通信対戦はアドホックのみであるので、正月に集まった際に少々プレイしてみたのだがなかなか楽しかった。当初は操作型を使ってと考えていたが、自律型の対戦をみんなで見ているだけでも十分楽しい。
さて、それでは離れていてもアドホックできるようにと、ひとまずkaiでの通信を試みたが、いろいろ試した物の上手くいかず、また同時に行っているスカイプが不安定になるなどしたため諦め、やむなく、安定しているだろうPS3でのアドホックパーティでの対戦を目指す事にした。幸い、義弟はPS3をもっているため、こちらが早急にPS3を購入するという計画で一旦保留に。ゲーム予算も無限にある訳でないので悩ましい所だが、3DSを延期する事になったため、PS3にお鉢が回り、結果オーライか。
問題は、アドパのために購入するPS3だが、折角なのでついでに遊ぶゲームを何にしようか、という本末転倒もいい所の悩みである。マルチタイトルは大概360版が安くて出来も良いので、そちらを買うべきだし、オリジナルタイトルでは、Heavy Rain、アンチャーテッドシリーズ、LBPシリーズ、などが興味あるかな。MGS4は安ければプレイしたいがPS2タイトルを先にやっておくべきかもしれない。本当は、トルネがもう少し多機能であったらうちの古いレコーダーと入れ替えても良いかと思っていたのだが、そこまでの物ではなかったのが残念。今後のアップデートに期待したい。

とりあえず、次回対戦のルールが多脚縛りと言う事で、こつこつ暇を見てグラスホッパーをいじっているが、一向に強くなる気配がないので、諦めて他の機体にするか思案中である。


アートディンク
カルネージハート エクサ

るくるく/あさりよしとお

時折思い出したようにこつこつコミックスを買っていた。
先日8~10巻をまとめて買ってみたら、いつの間にか完結巻となっていた。
で、読んだ訳だが、一言で言うと、終わらせなくても良かったのではないか、というのが真っ先に出る感想。

コミカルな日常の裏でシリアスベースが徐々に立ち上がって来るという作りはワッハマンと同じだが、なまじ同じ方向性を取ってしまうと、ファンはモロに期待してしまうだろう。しかしキレもインパクトも深みも、やはりワッハマンには及ばないので、がっくり来てしまう。及ばないどころではなく、ちょっと投げ出しすぎではないだろうか。少なくとも個人的には意味不明なエンドとしか評せられない。
これなら淡々と続けて突然終わった方が潔く、無理に終わりのお話を入れなくとも、と思ってしまう。

あさりよしとお
るくるく

シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち/ロバート・カーソン

お奨め本で取り上げられていたので読んでみたが、ミステリ風ノンフィクションで結構面白かった。

内容については副題に書いてある通りの本である。
アメリカ東海岸で深海の沈没船を探索し遺留物を収集するレックダイビングという趣味に興じる男達が、1991年、それまで知られていなかった未知の沈没船を発見した。どうも潜水艦らしいと言う事で興奮する彼らだったが、水深70m超という非常に危険で困難なダイビングや各種文献調査を行っても、この潜水艦の正体は謎に包まれたまま分からなかった。ハーケンクロイツの付いた食器を発見した事もあり第2次世界大戦のUボートではないかと調べるのだが、軍籍にあるはずのこの潜水艦の記録が、アメリカ側にもドイツ側にも存在しないという異常な事態に謎は深まるばかり。しかしそんな困難を乗り越え、誰に頼まれた訳でもなく報酬が出る訳でもないのに自身の信念だけを便りに、10年以上の歳月を掛け、主に2人のダイバーが、謎のUボートの歴史を探り当てる、そんな話である。

読後に振り返って考えると、事件の内容的規模的にはそう大した物ではないと思う。
行方不明のUボートを発見し、ダイビングで特定するための証拠を探し、文献や識者に当たって行方不明の原因を推理し、ついに特定したというそれだけの事である。
しかし、それにまつわる様々な事象を丁寧に取材し生き生きと書き起こしているので、ミステリ調の構成も手伝って、手に汗握る読み物となっており、その厚さにもかかわらずかなりすいすいと読み進める事ができる。

この本を読んで特に感銘を受けたのは、レックダイビングというマイナースポーツの、その過酷さである。
それは珊瑚礁に潜るようなリクリエーションダイビングとは、全く異質のものである。
実際、このUボート調査の間に、レックダイバー数名が命を落としているのだ。
もちろんリクリエーションダイビングとてなめてかかれば命に関わるし、海の中には危険が潜んでいるだろう。
しかしレックダイビングの場合には、危険は潜んでなどいない。それはむき出しで常にそこら中にあり、ダイバーがほんの小さなミスを犯すのを今か今かと待ちかまえているのだ。
そして作中に何度も出てくる言葉。ダイバーはミスを犯して死ぬのではない、パニックで死ぬのだ。

アクアラングを使ったダイビングでは、ボンベの空気がある限り、そう危険な目には遭わないような気がしてしまうが、実はそうではないのだと知って目から鱗を落とした。

潜水病・減圧症については多少は知っていた。地上で1気圧に慣れた人間には、水中では10m潜る毎に1気圧ずつ圧力が加わるので、血液や体液に吸った空気がどんどん溶け込んでいく。そのため急に浮上すると溶け込んだ気体が炭酸飲料の泡ように生じ、血管などが詰まり組織が破壊され、場合によっては死に至る事となる。
その為、深海から浮上しようとするダイバーは、所定の深度で所定の時間を過ごし、少しずつ減圧に慣らしながら浮上しなければならない。例えば海面からわずか1~2分で水深70mまで潜行し、そこで十数分を過ごしたダイバーは、1時間半も掛けて浮上しなければならない、と言うように減圧には非常に時間が掛かるものらしい。
つまりは、ダイバーはその間の空気をすべてボンベで持って行かなければならない訳だが、ここに非常に怖い点がある。それは、水深70mの8気圧の海底では、ボイル=シャルルの法則通り、気体の体積は1/8となり、つまり、呼吸による空気の消費量が8倍になるのだ。このような深海でパニックを起こして暴れまくり荒い呼吸でゼイハーやると、目に見えるスピードでボンベの残量メモリが減っていくのである。
そしてもう一つの恐怖は、深海で数分余計に過ごせば、それだけ減圧に掛けるべき時間も比例的に増えていってしまう、という点だ。
何かのミスのためにパニックになり必至で動いて空気を大量消費した上、時間を数分オーバーした事で、減圧に必要な膨大な時間に水中で呼吸するだけの空気が、もうボンベには無い、という事がいとも容易に起こりうるのである。
しかし、水面まではたった70m。普通に泳げば容易に1,2分で移動できる距離なのである。こんなときダイバーはどうしたらよいのだろうか?
レックダイバー達は、その状態では彼はもう死んでいる、と言う。死んでるが、本人がまだそれに気づいていないだけだ、と。減圧を無視して浮上するぐらいなら、俺ならその場で喉を掻き切るね、とも言う。それだけ減圧症とは酷い事になるのだ。
そして、それが分かっていても、パニックになっていれば特に、ダイバーは減圧を無視して浮上してしまう。
Uボートの調査時にも、このようにパニックで減圧を無視して浮上したダイバーが2名死んでいる。

落ち着いて予定通りに行動すれば良いし、何か起こっても冷静に判断すればパニックにはならないのでは、と思うだろう。
しかしこの当時のダイビングでは窒素酔いと言う物がダイバー達を非常に悩ませていた。これは高圧下で血中に溶け込んだ窒素が、まるでアルコール酔いのように、視野狭窄や判断力・思考力の著しい低下を及ぼすなどの作用の事である。70mの深海とはただでさえ危険な世界なのに、そこでは人は非常にパニックに陥りやすい状態となってしまうのだ。
例えば、熟練のダイバーは言う。ナイフは安物を持っていけ、と。これは、深海でうっかり高価なナイフを落としてしまった時に、ボンベの空気の残りや減圧に掛かる時間をすっかり忘れてナイフを探してしまう事故を防ぐためである。落としても諦められるような安物でないと生きて帰ってこれないのだ。熟練のダイバーがこんな事で死ぬような世界なのである。入り組んだ沈没船の中の帰り道を忘れるなどよくある事で、空気切れの恐怖感から、もう一本背負ってるボンベの事をなぜか思い出せなかったり、パニックの結果ボンベを捨ててしまったりすることもある程だ。また、一緒に潜っている友人を殺してボンベを奪い取るような事故も起こっているらしい。そのため、リクリエーションダイビングがバディ制をとり基本二人で潜るのに対し、レックダイビングでは巻き添えを食わないよう基本的に一人で潜る人が多いそうだ。

また光の届かない70mの深海で、入り組んだ沈没船に潜り込むのである。元々暗黒の世界の上に、視野狭窄にもなっており、おまけに、普通に泳いだだけで堆積物が舞い上がりあっと言う間に視界ゼロとなってしまう。帰り道は、来た時の道順の記憶と事前調査で頭にたたき込んだ横倒しになった船体の構造図を思い出し、シミュレーションを繰り返した手順を冷静に実行するのである。道を忘れたり迷ったりしたダイバーの末路は明かであろう。
沈没船は、当然破損している事が多いし、また経年劣化も進んでいる。うっかり触ったり動かしたりして船体が崩れてくる事もある。飛び出している棒や針金などに、装備が引っかかってしまう事もある。鋭利な破片がアクアラングのホースを斬ってしまう事もある。
地上の冷静な頭のままで対処できれば、なんて事のない問題かも知れない。しかし、自分の命を天秤に載せながら、パニックを押さえつつ迅速に対処する事はこの環境では難しいだろう。パニックで数分暴れてしまえば凄い勢いで死が近づいてくる。
ダイビング船から沈没船へは、アンカーに付けたロープをたどって降りてくる。減圧時もロープに掴まりながらでないと、正確な深度を保てないし、そもそも潮に流されてしまう。だから、暗闇で帰り道を間違え、アンカーロープを見つけられなかったダイバーも非常に危険である。仮にきちんと減圧を行えたとしても、1時間半のうちには数キロ以上は流されてしまう。いくらダイビングスーツを着て海面に漂っていたとしても、じわじわ体温を奪われて長い事はもたない。

このように、レックダイビングとは、驚くほど危険なスポーツなのだ。辛い物好きが高じて信じられないほど唐辛子を料理にかける人のように、ある意味危険という麻薬に感覚が麻痺してしまった人達なのではないかと思う。
しかし、自分自身のために、またUボートに眠る多数の乗組員の為に、事実そのもの以外には何の見返りも求めず、長い年月に渡って困難な調査を進めた人達の精神力には脱帽するほか無い。仕事でやっている訳ではないただの一般人なのだ(職業ダイバーもいるが、Uボート調査は仕事ではない)。家族に向けるべき情熱をUボートにかけるあまり様々なトラブルを背負い込む事もあり、離婚や不和など打ちのめされる事もあったが、それでもやり遂げた彼らの偉業はすばらしいし、元乗組員の家族をドイツに訪ねる終章は胸を打つ。


ロバート・カーソン
シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち

マンガホニャララ/ブルボン小林

昨年出た本だが、とりあえず借りて読んでみた。
相変わらずのブルボン節で、そうした著者のマンガエッセイを読みたいという向きには良いだろう。

取り上げているマンガは極度に偏っているし、相変わらずの無取材主義だし、基本的に彼の著作は、対象物を語りたいのではなく、対象物を語る私を語りたい、という色調が濃いので、普通のマンガ好きが癖のないマンガエッセイを期待すると非常に違和感を感じるだろう。

マンガの善し悪しの見分けについては、結構いい目を持っていると思うので、そこは割合安心しても良い。


ブルボン小林
マンガホニャララ

君に届け/椎名軽穂

人気のある漫画と言う事は知っていた。映画化されたり、DSでゲーム化されたりしていたので、設定のような物も何となく漏れ聞いているような状態だった。まあ機会があれば読んでみようか、という感じだった。

そしたら、先日職場で1巻を拾ったので、早速読んでみた。

これは面白すぎる。1巻を何度か読み返した上、続きは図書館で借りようとしたら数ヶ月待ちだったので買ってしまった。

一体何が面白いのか。
まず、健気な爽子がいじらしい訳だが、著者が柱か後書きで書いていたように、まさにその距離感が孫のような感覚なのである。それは多分読者の年齢とは関係ない。
爽子の特異なキャラはもちろん最大のポイントだが、その生い立ちや風貌より、幸か不幸か他人の影響を受けていない純粋さや、あくまで前向きな意志、異様な打たれ強さと意外な根性、そうした真っ直ぐな精神に非常に心打たれるのだ。
そして、基本的に善人しかでてこない(んだろうなと予想される)環境で、爽子のいじらしい努力が少しずつ実っていく様を見るのは、まさに孫の成長を見守る気分である。

言葉にしてしまうと簡単なことである。人と関わりたい・友だちが欲しいと願い、ある人をきっかけに努力してそれを手に入れていく話。そしてきっと最後は風早君とくっついてハッピーエンドだろう。ありふれた詰まらない展開である。
そしてそのなんて事無い展開のお話が、信じられないほど、非常に読みたくて溜まらないのだ。
それは、このマンガでは、話が展開するための登場人物間の言葉のやりとり気持ちのやり取りを、非常に丁寧にしかも具体的に描いているからだろう。言葉尻のとらえ方一つで一晩悩むような、そんなある意味リアルな繊細さんばかりなのだ。マンガの展開なんて、強引に進めようと思えばいくらでも描けるだろう。しかしこんな繊細さん達が、如何にして気持ちを伝え合うのかその細部にこだわって描かれているから、そのじりじりとした展開のプロセスそのものが珠玉なのであって、展開してどうなったかなどそれに比べれば大した意味がないのである。
しかしそんな感動のプロセスも、普通の人間が演じたのでは、嘘っぽく、水っぽくなってしまう。だから一見嘘っぽいキャラである爽子という細く見えて実は太い芯が通る事で、逆にリアリティが増し共感が増すのだろう。この兼ね合いが絶妙なのだと思う。爽子の造形にしてもいろんな二面性が見て取れる。

まだ連載中だし、まだ2巻しか読んでないので、今後もこの珠玉のバランスが持続する事を願ってやまないが、それは結構難しいだろうし、作品が途中から迷走しないよう祈るばかりだ。


椎名軽穂
君に届け

ビジネス用語の常識・非常識/水野俊哉

特に期待せず、何となく手にとって読んでみたら、結構凄い内容の本だった。
いわゆる当たりである。
内容を一言で言うと、ビジネス書・成功本などの実例で引くビジネス用語辞典+ビジネス本豆書評という感じ。
新書で薄ので手軽にさくっと読めるし、内容も信憑性がありそうだ。
この本を起点に、気になるジャンルで紹介された本を順に読んでいけば、効率よく良書だけをたどる事ができるだろう。
73年生まれの著者は同年代のためか、語り口や例示にも親近感がある。しかし逆に言うと高齢・若年層では違和感だろう。その辺大丈夫なのかとふと心配になった。
まあそれをさしおいても論旨のしっかりした解説や評は読み応えもあり、万人に勧められると思う。


水野俊哉
ビジネス用語の常識・非常識