税理士が教える得するパートタイマーBOOK/米津晋次 | 読んだり観たり聴いたりしたもの

税理士が教える得するパートタイマーBOOK/米津晋次

パートとしてスタッフを募集していると、面接時にしばしばこんな質問を受けた。
「給与が扶養の範囲内になるよう、勤める日時を調整してもらえますか?」

言っている意味は分かっている。

世の制度には扶養という概念がある。私の家族は稼ぎが少ないので、私の稼ぎで養っています、という意味だ。稼ぎをまるまる一人で使う単身者より、家族を扶養している人の方が何かと物入りで大変だろうし皆で助けようよ、と言う理由で、扶養する家族がいる事によって各種の手当てや控除などの特典が受けられる仕組みが多数ある。
そして、各種制度によってそれぞれ、これだけの稼ぎ以下なら扶養と認める、というラインがあり、それを超えると扶養と認められず、特典は受けられない。
山のように給与がもらえるのであれば何の問題もないが、もしも扶養認定ラインを僅か超えるような額の稼ぎだった場合、僅かに増えた給与より、失う特典の金額の方が大きくなる場合がある。
従って、給与所得者の稼ぎの集計期限である年末が近づいた頃に、今年のこれまでの稼ぎと今後の予定を計算し、もしもラインを僅かに超えて止まるような稼ぎが見込まれた場合には、わざと仕事を休んで稼ぎを減らし、何とか特典を確保しようと言う作戦に出る訳だ。

あなたの職場ではそう言う休みを取る作戦を認めてくれますか?と言うのが冒頭の質問だ。

雇う側からすれば、年末の忙しい時期にふざけんな、というのが本音だが、うちのような零細にはそもそも来てくれる人さえ少ない訳であるから、何とか逃さないようにと、笑顔が引きつらないように気を付けながら「ええ、何とか対応できると思います」と返すしかない。

もちろん求人応募者が決して無理難題を言っている訳ではない事も分かる。僅か一日分、数千円の給料をもらってしまったが為に、税金や保険料が数万円も余計に掛かるようになってしまっては大損だ。そりゃ、自分だって同じ立場なら同じ事を考えるだろう。

例えば、こうした「壁」のうち、現状で最少額のものは、住民税100万円の壁であるのだが、そもそも去年までのうちのスタッフの労働条件では皆勤でも総額100万未満となるため全く気にする必要はなかったのだ。ところが、昨年末より賞与が復活し、昇給もし、おまけに所定の勤務時間を延長した。新人さんも給与をベースアップしたので、今年からは新人でも皆勤+ボーナスで120万前後になる見込みなのだ。と言う事で今年初めて壁問題が発生し、面接では対応を迫られるハメになったと言う事である。

このような所謂「扶養の壁」はもちろんよく知られた問題である。自分も存在やその原理はよく知っていた。しかし、いざ具体的にいくらの給料だと何がいくら損でいくらならOKなのか、と訊かれると即答できなかったりする。
ネットで調べても縦割りの情報が分散して分かりづらい。
そこで手に取ったのがこの本であるが、発行が2006年とやや古い点を除けば、このような「壁」問題に専門的に絞って解説しており、非常に網羅的で分かりやすい。雇用側ではなく、一般の主婦パートを想定して文字も大きく、文章も易しく書かれており、働く被扶養者は一度目を通しておいて損はないだろうという内容だ。
難点は強いて挙げるなら、極めてレアケースかも知れないが、社会保障等の減免措置を受けているような場合のギャップに触れても良かったかも知れないが、自治体等で大きく変わる物だし難しいかも知れない。

結局、我が職場のケースでは、今のスタッフさんには大した壁は存在しない事が分かり、休まず働いてもらえそうな事が分かったのでホッとした。
また、採用が決まった新人さんは、「扶養の範囲とか関係なくバリバリ働けます!むしろ早出や残業とか無いですか!?」という働く意欲満点の人だったので非常にラッキーだった。

本書を読んで一言だけ書いておくと、中でも書かれているように「壁」の言葉が一人歩きしていて、「超えたらダメ!絶対!」かの如くの風潮がある点は問題だ。もちろん、ケースによっては十数万の壁もある。しかし、僅か数千円の壁もあるのだ。壁と思っている物は本当に壁なのか、ちゃんと調べる必要があるだろう。

米津晋次
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