第10回神戸国際フルートコンクール 優勝記念演奏会
【日時】
2023年2月23日(木祝) 開演 19:00 (開場 18:20)
【会場】
神戸文化ホール
【演奏】
フルート:ラファエル・アドバス・バヨグ
フルート:マリオ・ブルーノ
ピアノ:鈴木華重子
ヴァイオリン:西尾恵子
ヴァイオリン:井上隆平
ヴィオラ:亀井宏子
チェロ:伝田正則
【プログラム】
W.F.バッハ:2つのフルートのための二重奏曲第1番 ホ短調 Fk. 54 (アドバス・バヨグ, ブルーノ)
ジャレル:無伴奏フルートのための「3つの小品」 (ブルーノ)
ドブリエール:5つの不思議な小品 (ブルーノ, 鈴木)
シュルホフ:フルート・ソナタ (アドバス・バヨグ, 鈴木)
アドバス・バヨグ:ミュージック・イズ・ライフ より (アドバス・バヨグ)
フランセ:五重奏 (ブルーノ, 鈴木, 西尾, 井上, 伝田)
モーツァルト:フルート四重奏 二長調 K.285 (アドバス・バヨグ, 西尾, 亀井, 伝田)
ドップラー:「ハンガリーの羊飼いの歌」による幻想曲 (アドバス・バヨグ, ブルーノ, 鈴木)
※アンコール
モーツァルト:「魔笛」 より 私は鳥刺し (アドバス・バヨグ, ブルーノ)
ドリーブ:花のデュエット (アドバス・バヨグ, ブルーノ, 鈴木)
第10回神戸国際フルートコンクールの優勝記念演奏会を聴きに行った。
今大会では優勝者が2人いたが、特にマリオ・ブルーノはきわめて美しい音色を持っており、ぜひ生で聴いてみたいと思ったのだった。
ちなみに、第10回神戸国際フルートコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第10回神戸国際フルートコンクール 第1次審査通過者発表)
(第10回神戸国際フルートコンクール 第2次審査通過者発表)
(第10回神戸国際フルートコンクール 第3次審査通過者発表)
遅れて行ったため、私が聴けたのはシュルホフのソナタ以降の曲である。
マリオ・ブルーノが演奏したフランセの五重奏は、私にはなじみのない曲。
フランスらしく軽快でこじゃれて聴きやすいけれども、さらさらしてあまり耳には残らないような音楽、といったら言い過ぎか。
それでも、ブルーノの華やかかつ上品な音色は十分に堪能できた。
昨今日本や韓国から若き名手たちが輩出しているが、こういう音が出せる人はなかなかいない。
もう一人の優勝者、ラファエル・アドバス・バヨグは、この日唯一の有名曲、モーツァルトのフルート四重奏曲第1番を演奏した。
この曲で私の好きな録音は
●H.レズニチェク(Fl) A.カンパー(Vn) E.ヴァイス(Va) F.クヴァルダ(Vc) 1949年セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●J.ベイカー(Fl) R.マン(Vn) R.ヒリヤー(Va) A.ウィノグラード(Vc) 1950年10月29日ワシントンライヴ盤(Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
●E.パユ(Fl) C.ポッペン(Vn) H.シュリヒティヒ(Va) J-G.ケラス(Vc) 1999年5月セッション盤(NML/CD/YouTube1/2/3)
●K-H.シュッツ(Fl) A.ダナイローヴァ(Vn) T.リー(Va) T.ヴァルガ(Vc) 2014年6月セッション盤(Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
あたりである。
ハンス・レズニチェクとジュリアス・ベイカーは、20世紀のフルート奏者の二大巨頭だと私は考えている(マルセル・モイーズでもジャン=ピエール・ランパルでもオーレル・ニコレでもなく)。
これぞウィーンというべき優雅でまろやかなレズニチェクの音、陽の光のように輝かしいベイカーの音。
彼らほど朗々と明るく鳴り響いて耳を惹きつける音の持ち主を、私は他に知らない。
そして現在、ウィーン系ではカール=ハインツ・シュッツ、非ウィーン系ではエマニュエル・パユ、この2人をもって21世紀のフルート奏者の二大巨頭と称しても差し支えないかもしれない。
美しい音色に繊細な表現力を併せ持つのが2人の特長である。
前置きが長くなったが、これらの名盤と比べてしまうと、今回のアドバス・バヨグの演奏は残念ながら分が悪い。
音はときどきかすれ気味で、ヴィブラートはやや大味、高音もキーンと硬く響く。
正直なところ、この曲をブルーノが演奏してくれたらどんなにか美しかったろう、とつい思ってしまった。
とはいえ、アドバス・バヨグの音は押し出しがいいというか、ブルーノの柔和な音とはまた別の良さがある。
彼の個性がよく発揮されたのが自作曲「ミュージック・イズ・ライフ」で、尺八を模した音出しや、叫び声、足のステップ音、唸り声とフルートとの重音奏法など、普段のフルート曲では聴かれない様々な技法を駆使していて楽しかった(聴衆の拍手もとりわけ大きかった)。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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