ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち | geezenstacの森

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ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち 

 

著者:三上延

出版:角川 メディアワークス文庫

 

 

 

ある夫婦が営む古書店がある。鎌倉の片隅にひっそりと佇む「ビブリア古書堂」。その店主は古本屋のイメージに合わない、きれいな女性だ。そしてその傍らには、女店主にそっくりな少女の姿があった--。女店主は少女へ、静かに語り聞かせる。一冊の古書から紐解かれる不思議な客人たちの話を。古い本に詰まっている、絆と秘密の物語を。人から人へと受け継がれる本の記憶。その扉が今再び開かれる。---データベース---

 

 2018年に出版されたシリーズ第2部の冒頭を飾る一冊です。前シリーズから7年間の時が流れています。そんなことで、栞子と大輔のゴールインしてからの後日談で、二人の間に生まれた娘・扉子に栞子が古本にまつわるエピソードを語っていくという短編集になっています。まあ、第2部が設定が同じということはありませんから、この空白の7年間はこれから少しずつ埋められていくという形を取るのでしょう。第1シリーズで出てきた坂口夫婦や志田さんなども登場するし、栞子たち家族の仲睦まじい様子も想像でき、ビブリア古書堂シリーズを読破した者からすると嬉しいのひと言の続編です。章立ては以下のようになっています。

 

ブロローグ

第一話 北原白秋 与田準一編「からたちの花 北原白秋童謡集」(新潮文庫)

第二話 「俺と母さんの思い出の本」

第三話 佐々木丸美「雪の断章」(講談社)

第四話 内田百聞「王様の背中」(樂浪書院)

エピローグ

 

 当初の構想は第1シリーズのスピンオフ作品ということで、二人の間には扉子という娘が出来たことで、今までの大輔による視点から栞子が娘に語るスタイルに変化しています。この本のタイトルはそもそも【事件手帖】ですからその形に沿ってエピソードが語られて生きます。骨格は大輔がしおりこの母の仕事を手伝うという形で海外に出かけます。その時うっかりと忘れた大輔の手帳を探すというスタイルの中で娘が興味を持った本とともにそれにまつわる事件を噛み砕きながら語って聞かせるという形で書く話が進んで行きます。

 

 そして、スピンアウトですから以前の買取をした夫婦が再登場するなどシリーズを読んでないとちよっと楽しめない内容でもあります。それもあり、冒頭の「からたちの花」は意外な展開になります。第二話のゲームの話は興味深く読んだものの、その裏には幼い頃の母親との確執と思われた部分がのちの人生に図らずも役に立っているという流れで、ぜんざいも働く身にあると、確かに体験してきたことは今の仕事にも役立つものだと実感する部分があります。

 

 第三話ではセドリの志田が絡んできます。ふらっと消えたことはみんなが気にかかっていましたが、その失踪の裏には志田のもう一つの人生が絡んでいます。最後の一話は前シリーズのシェイクスピアのファースト・フォリオで敗北した男の息子も出てくるのですが、ここに大輔も少しだけ絡んで登場します。

 

 この第2シリーズは続巻も出ていますが、全てのタイトルに娘の扉子の名前が踊っています。それにしても娘の扉子はまだ6歳の小学一年生です。この娘が大人顔負けに本の話に関わってくるのですから本好きということでは親の栞子を凌駕しているのではないでしょうか。

 

過去に取り上げたブログ、全巻読んでいますが全てを取り上げているわけではありません。