ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ | geezenstacの森

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ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~
 
著者 三上 延
発行 KADOKAWA メディアワークス文庫
 
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 ビブリア古書堂に迫る影。太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた老獪な道具商の男。彼はある一冊の古書を残していく―。奇妙な縁に導かれ、対峙することになった劇作家ウィリアム・シェイクスピアの古書と謎多き仕掛け。青年店員と美しき女店主は、彼女の祖父によって張り巡らされていた巧妙な罠へと嵌っていくのだった…。人から人へと受け継がれる古書と、脈々と続く家族の縁。その物語に幕引きのときがおとずれる。---データベース---
 
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 一応のシリーズ完結編です。今回のお題はシェイクスピア。本物のファースト・フォリオを当てるという試練を通して二人の絆が深まるという展開です。「ファーストフォリオ」、初めてその存在を知りました。なんでも、シェイクスピアの戯曲をまとめて出版した最初の作品集。正式な題は「ウィリアム・シェイクスピアの喜劇、史劇、悲劇」("Mr. William Shakespeares Comedies, Histories & Tragedies")というそうです。戯曲や舞台劇にはとんと興味の無い小生ですが、その昔、卒業旅行でシェークスピアの聖地、ストラトフォード・アポン・エイボンへ行ったことがあります。と言っても通過しただけですけどね。途中にはオックスフォード大学があり、そこに寄り道しながらレンタカーで出掛けました。バックパック旅行で、仲間が4人集まったので出掛けようという事になりました。多分その4人のうちの一人が「ストラトフォード・アポン・エイボン」をリクエストしたのだと思います。ちなみに小生は「ストーンヘイジ」をリクエストしてそこにも寄ってきました。卒業旅行は行きの一泊の宿と帰りの宿が決まっているだけで後はまったくフリーでした。今思えば、そこでであった仲間はシェイクスピアに興味があったんでしょうなぁ。小生は行ったと言う記憶だけで、シェイクスピアの偉大さも何も気がついていませんでした。今思えば残念なことです。
 
 さて、今作は母智恵子の失踪の原因となった世界的な稀覯本シェイクスピアの戯曲集ファースト・フォリオをめぐる話です。冒頭に置かれたプロローグでは、智恵子の父・久我山尚大が後を継がせる資格があるかと四冊の複製本の中の本物の一冊を当てさせるゲームを企てます。しかし、智恵子はそのゲームを拒否し後を継ぐことを拒否します。その久我山尚大の復讐劇がこの巻のテーマとなっているのです。なにが復讐なのか・・・それはこの本を読んでのお楽しみです。
 
 最終巻ということで、これまでの登場人物も勢ぞろいします。まあ、オールスターですから本の顔見せ程度の登場になってしまいますが、いいキャラなのにセドリ屋の志田の登場の仕方がちょっと唐突なのが残念です。冒頭では、また太宰治の自家製の「晩年」が登場します。第1巻からの因縁もこの巻でふたたび登場というわけです。とかと、それはし序章に過ぎません。何となれば後ろなシェイクスピアが控えているからです。第1巻で母親が台湾にいたことが解ったのも、このシェイクスピアの「ファースト・フォリオ」がらみだったことが明らかになって行きます。
 
 例によって古書会館での入札の攻防で大きな取引が動きます。篠原栞子はネットワークを駆使して最初に出品された黒い表紙の「ファースト・フォリオ」を落札します。残りは青、白、赤の「ファースト・フォリオ」です。しかし、今度はオークション形式での入札です。一体いくらで落札されるのか見当もつきません。そんな中、栞子は母との競り合いの中で白いファースト・フォリオを落札してしまいます。これは本命ではないはずです。ストーリー展開の中でなぜ、こんな間違いを犯してしまうのかちょっと展開が読めなかったのも確かです。
 
 そして、資金的にも苦しい中、最後の赤いファースト・フォリオも何とか落札します。これで勝負はついたのかと思うとここからが栞子の名推理が始まります。この展開いいですねぇ。まあ、結末はハッピーに大団円です。同じ血をひく祖父母も明らかになり栞子さんと母との関係も少しずつ良い方向に行きそうですし、伏線である栞子と大輔の恋愛の結末にも大きな進展がありました。そんな本を愛する栞子さんが大輔君に長いシェイクスピアの物語を語って聴かせるラストが良いですなぁ。この巻の巻頭に家系図が表示されています。これで、栞子に関わる相関関係が一望出来、なるほどねと納得してしまいます。
 
 この小説、テレビドラマ化はされましたが、映画化の話も進行しています。主演は黒木華と野村周平で、監督は第41回モントリオール世界映画祭コンペティション部門で審査員特別賞に輝いた「幼な子われらに生まれ」を手がけた三島有紀子監督がメガホンを取っています。作品は既にクランクアップしており、公開は2018年の予定です。そして、閉口してアニメドラマも制作されているようですが。こちらはまだ情報不足です。
 
 テレビドラマが少々不発だったので、映画化はどうなんでしょうかね。