パーヴォ・ベルグルンド
ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」
曲目/
ショスタコーヴィチ交響曲第7番ハ長調Op.60「レニングラード」
1. Allegretto 26:51
2. Moderato (Poco Allegretto) 10:44
3. Adagio 18:47
4. Allegro Non Troppo 17:02
指揮/パーヴォ・ベルグルンド
演奏/ボーンマス交響楽団
録音/197401/13,14 ギルドホール サザンプトン
P:デヴィッド・モットレー
E:ステュアート・エルサム
EMI CDC7476512
このCDは1987年に発売されていますが、国内盤はセラフィムシリーズで1992年に発売されたようです。しかし、レコード時代には発売された形跡がありません。多分第5番だけはレコードとして発売されたようですが、その他の曲目は未発売で終わりました。ちなみに録音は5、6、7、8、10、11が残されています。レコード時代は2枚組で発売されましたが、ジャケットデザインはこの写真が使われています。面白いもので、この1987年にはCDとLPが同時に再発されています。その、レコードは当時の最新技術を使ったDMM(ダイレクト・メタル・マスタリング)方式で発売されています。下がその写真です。
このジャケットで使われているのはレニングラードの「ピスカリョフ墓地」の写真です。ベルグルンドは一般にはシベリウス指揮者ということで、評価されることが多いのですが、このボーンマス時代にはEMIの一翼を担っていました。ただ、商業ベースには乗らなかったようですなぁ。残念な限りです。
この第一楽章は実に緻密な音楽づくりをしています。冒頭はやや速めのテンポですが、アタックが強く、切れ味鋭い響きで邁進していきます。EMIにしてはホールトーンがうまく処理されていて、聞きごたえがあります。「人間の主題」、「平和な生活の主題」の後に登場する「戦争の主題」に置き換えられた展開部に突入します。この「戦争の主題」は小太鼓のリズムにのって楽器を変えながら12回繰り返されますが、この盛り上げ方も実にドラマチックで、速めのテンポで畳み掛けるように突き進んでいきます。オーケストラも上手いの一言です。この部分とそれに続く再現部の葬送行進曲である戦争の犠牲者へのレクエイムとの対比も見事です。
第一楽章とはうって変わり、第二楽章は作曲者自身が「回想」と名付けたように木管による哀愁を帯びた主題が印象的です。中間部の金管の咆哮との対比も見事で、モデラートとポコ・アレグレットの指示を明確に聴き取ることができます。
ショスタコ特有のコラールが響き渡る楽章です。ベルグルンドはアダージョの世界を美しい弦の響きに乗せて切々と歌い混んでいます。「クラシック・ジャーナル」誌によるショスタコーヴィチのディスク聴き比べで、7番のベスト1に輝いたのはナヌートでしたが、次いで2位はロジェストヴェンスキー盤、3位はバーンスタインのシカゴ響とのライブ盤、4位にベルグルンド、5位がスヴェトラーノフの68年盤が取り上げられていました。この記事は現在では、「ショスタコーヴィチ評盤記」としても流通しています。この評価には異論はありません。
第四楽章はアタッカで三楽章から続いています。見事な音楽の流れです。多分目隠しテストで聴かされたら、ベルグルンドの指揮だとは気がつかないのではないでしょうか。この濃密さ、粘り強さ。それでいて独り善がりではない客観性。ここではベルグルンドという指揮者の芸術性を聴くことができます。単にシベリウス指揮者ではなかったということを再認識させてくれます。ニールセンの交響曲全集も聞きごたえがありますが、この「レニングラード」はベルグルンドの残したショスタコーヴィチ録音の中でも最も評価される名盤と言えるのではないでしょうか。
これまでに取り上げた「レニングラード」の数々。
アマゾンには中古ですが国内盤がリストされていました。