ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」 今日の一枚 04/24 | geezenstacの森

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ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」




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 ショスタコーヴィチを取り上げるのは2回目ですがこの交響曲第7番は一番聴く機会の多い作品です。先回紹介した12番より曲としては好きです。LP時代には2枚組で発売されコストパフォーマンスの低さが問題だったのですが、CDになって1枚で聴けるようになって俄然有利になりました。何せ、全曲の演奏に70分以上ということでそうそうは録音されることも無かったんですから。

 カタログて調べても、LP時代にあったのは当時のソ連系の所謂東側の指揮者による演奏がほとんどでした。ムラヴィンスキー、コンドラシン、スヴェトラーノフ、ロジェストヴェンスキーにアンチェルなどが一般に手に入るところでした。そして、西側に分類される指揮者では、唯一このバーンスタイン盤がステレオで聴ける唯一*と言っていい録音でした。80年代に入りハイティンクが全集録音をしてようやくこの曲のレコーディングに拍車がかかりました。

 バーンスタインは後年シカゴ交響楽団とデジタルで再録音を行っています。そちらも優れた演奏なのですが、小生にはこの旧録音の方が気に入っています。どうも昨今は、ニューヨークフィル時代の録音が忘れ去られているような気がするのが残念です。どうしてどうして、作曲家としての視点を持っているバーンスタインがはつらつとして取り組んだこの録音は、この曲を実にうまく料理し、弦は重すぎず軽すぎず、管はうるさ過ぎず節度を持って響き何よりも全体に音のバランスがいいのです。 この録音は1962年10月22,23日にフィルハーモニック・ホール(現在のアヴェリー・フィッシャー・ホール)で行われました。初演から20年後のことです**。CBSがこういう録音もしていたのかと思えるほどブリリアントな響きで、どちらかというとウォームトーンで、戦争交響曲と呼ばれるこの曲をぎすぎすした鋭角に録音ではなくまるでマーラーの交響曲のような響かせ方で全体を統一しています。だから聴く方も変にタイトルに縛られること無く純粋に交響曲として鑑賞することができます。

 第1楽章はややゆっくり目のテンポの序奏で始まります。じっくりとこの曲を料理しますよというシェフのうまい語り口です。1分も立たないうちにバーンスタインの術中に嵌ります。シカゴ響とはもっとゆっくりになりますが、このくらいがちょうどいいと思います。例のボレロのように繰り返される戦争の主題の盛り上がりも、小気味よいテンポとリズムの上昇カーブで頂点まで登り詰めていくので、わくわくしながらクライマックスを味えます。
ただなぜだか第1楽章展開部の第3変奏(練習番号25~29)がカットされているのが残念です。これって編集ミスなんでしょうかね。

 一転して、モデラートの第2楽章はしっとりとしたテンポで、母親が子供に物語りを聴かせるようなうまい語り口で引き込まれます。

 第3楽章はショスタコーヴィチの自伝の中で「広大な祖国」を表しているという記述をしていますがバーンスタインもダイナミックなテンポの緩急で広大なロシアの大地の自然を巧みに描写しています。

 第4楽章はバーンスタインの覇気が感じられる快演で勝利の雄叫びが高らかに響きます。熱く盛り上がりながらバランスを崩さずコーダに突き進み、最後のクライマックスではバーンスタインの平和への雄叫びのようなものが聴き取れる熱い演奏になっています。

 この曲を聴き終えて、ハッピーな気分にさせてくれるのはこのバーンスタインの演奏が最高です。それとともに音楽の楽しみを我々に分ち与えてくれている気がしてなりません。

* 1974年にパーヴォ・ベルグルンドがボーンマス交響楽団とEMIに商業録音している。CDC747651

** 1942年3月5日の初演は大成功で、アメリカでも著名な指揮者がアメリカ初演を巡って争い、マイクロフィルムら収められたスコアにより7月19日にはトスカニーニ/NBC交響楽団の演奏で全米にラジオ中継されたという。