ナヌートの「レニングラード」 | geezenstacの森

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ショスタコーヴィチ
交響曲第7番「レニングラード」

指揮/アントン・ナヌート
演奏/リュブリアナ交響楽団
P:不明
E不明
録音:1988/12
フィルハーモニー・ホール,スロヴェニア

 

STRADIVARI SCD-6044

 

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 ナヌートのCDは、一時期ポニー・キャニオンからかなり纏めて発売された時期があります(このCDはPCCL00064として1990/02に発売されています)が、日本ではとんと話題にも上らず、また売れなかったと見えて直ぐに廃盤になってしまったようです。以後、海賊盤まがいのレーベルにソースが流れぽつぽつ散見されましたがそれも今ではほとんど店頭で見かける機会が少なくなりました。

 

 このCDはオーストラリアに旅行した折りに「CHANDLERS」というCDショップのワゴンセール品の中で偶然見つけたものです。アーティストもさながら、曲目がお気に入りのショスターコーヴィチの「レニングラード」だったので迷わず買いました。ナヌートという名前は知ってはいましたが未知の指揮者でした。価格もオーストラリアドルで$9.99と手軽でした。まあ、期待して買ったものではなかったのですが、これが意外と掘り出し物でした。これだからワゴンセール漁りは止められません。なを、小生の所有盤は英PRTのライセンス発売盤です。

 

 第1楽章はそんなに深刻ぶった表情ではなくこころもち速いテンポで開始されますが軽すぎることはありません。この曲ではベルグルンドの指揮したものも所有していますが、ベルグルンドはBGM的に抵抗感も無くあっさりしています。ナヌートは、その辺りはユーゴスラヴィアの歴史的背景を意識してかなり踏み込んだ表情付けで、弦のスタッカートもはっきり刻み金管の咆哮もメリハリを付けて鳴らしています。行進曲風の主題の描き方も丁寧で、ここではテンポを遅めに設定してじっくりと歌わせる盛り上げは巧いものです。録音もデジタルで、バランスが取れていて聴きやすい音質です。

 

 第2楽章も好感の持てる演奏で、第1主題ではしっとりと弦を歌わせ、反対に中間部ではくっきりとクラリネットの主旋律を浮かび上がらせながら、全奏では盛り上げ方も堂に入っています。ここでのピッコロはやや強調して扱われ特色をだしています。

 

 第3楽章も緊張感の漂った良い演奏で、ショスターコーヴィチ独特の節回しのコラールが高々と謳い上げられています。ここではトランペットの突き刺すような生々しい咆哮が主旋律の上を駆け巡りますが、決してパランスは崩れていません。計算された中で、ナヌートは自己主張しているように思われます。

 

 第4楽章も、序奏の後の第1テーマはたたみかけるような迫力の演奏で興奮させられます。全体は18分弱とそんなに早くはないのですが、緩急のメリハリがついていてそう感じさせるのでしょう。そしてクライマックスとなる厳粛な第2のテーマは一転、重厚な表現で劇的に盛り上げていきます。ただ、ロシアのオーケストラのように力ずくで金管バリバリの演奏でなくあくまでバランスの取れた表現で嫌みが無りません。

 

 

 

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 ナヌートはマイナーながら、1981以後常任をしているリュブリアナ交響楽団と既に150枚以上のCDをリリースしているようで、そのほとんどは「Stradivali」に録音しています。結構しっかりした音楽を作る人でどれも水準以上の演奏を期待出来ますが、とりわけこのショスタコーヴィチの交響曲第7番は優れた演奏で小生の所有ライブラリィの中でもベスト5にはいる好演です。日本に正式な形で紹介されないのは誠に惜しい気がします。

 

 どこかのオーケストラが客演に呼んでくれても良さそうな気がするが如何なものでしょうか。
 
追記
 この後ナヌートは紀尾井シンフォニエッタを指揮するために来日しています。