哀悼 ラルス・フォークト/ラトルのベートーヴェン | geezenstacの森

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哀悼 ラルス・フォークト

ベートーヴェン

ピアノ協奏曲第1番、第2番

 

曲目/ベートーヴェン

ベートーヴェン ピアノ協奏曲 No.1 ハ長調 Op.15 (1798) 

1. Allegro con brio (Cadenza by Beethoven)    18:10

2. Largo    10:45

3. Rondo. Allegro scherzando (Cadenza by Beethoven)    8:31

ベートーヴェン ピアノ協奏曲 No.2 変ロ長調 Op.19 (1790) 

1. Allegro con brio (Cadenza by Beethoven)    14:06

2. Adagio    8:47

3. Rondo. Allegro molto    5:55

 

ピアノラルス・フォークト

指揮/サイモン・ラトル

演奏/バーミンガム市交響楽団

 

録音/1995/10/03,05

  バターワース・ホール、ウォーウィック・アーツ・センター

P:ダヴィッド・グローヴス

E:マイケル・シャディ

 

 

 ラルス・フォークト氏の訃報が流れました。以下ニュースのピックアップです。

 

{{ ドイツのピアニストで指揮者のラルス・フォークトさんが、2022年9月5日(月)午後、自宅で家族に見守られながらに51歳で亡くなりました。フォークトさんは2021年初頭、喉と肝臓に腫瘍が見つかり、癌と診断され、治療をしながら演奏活動を続けていました。来月来日し新日本フィルハーモニー交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢と共演予定でした。

 90年、リーズ国際コンクールで2位入賞。明晰(めいせき)な解釈と叙情性あふれるタッチで、ベートーベンなどのドイツ古典を得意とした。ベルリン・フィルとの関係がとりわけ深く、03年に同楽団として初のピアニスト・イン・レジデンスに就任。最近は指揮者としても活動していた。98年からは独シュパヌンゲン音楽祭を主宰。20年、パリ室内管弦楽団の音楽監督に就任。}}

 

 最近は指揮活動も活発だったんですなぁ。パリ室内管弦楽団との契約を2025年まで延長したというニュースが流れていただけにびっくりというか、残念で惜別の念に堪えません。

 

 そんなことで、手元にある音源を確認したらこんな演奏がありました。このフォークトとラトルの組み合わせのベートーヴェンのピアノ協奏曲はこの一枚しかありません。何となれはフォークとは指揮者兼ピアニストとして弾き振りでノーザンシンフォニアと全集を完成させたからです。

 

 しかし、この録音が発売された当時は2枚組で、協奏曲の第1番は別録音として1954年のグレン・グールドのカデンツァを使ったバージョンもボーナスでついていました。上のジャケットは2010年に発売されたラトルのベートーヴェンボックスに収められたものですが、7枚目のCDにその別バージョンも収録されています。

 

 先に紹介されている通り、ラルス・フォークトは1970年生まれのドイツ人。1990年のリーズ国際ピアノ・コンクールで第2位となるも、サイモン・ラトルは優勝を主張したといいます。1995年の録音というから、フォークトは25歳、ラトルは40歳の演奏ということになります。

 

 

 

 

 聴いていてわかることは、新しいものにチャレンジしようというベクトルがひしひしと感じられることです。第一楽章の出だしはPの指示ですが実際にはPPぐらいの音量で開始されます。しかし。クレッシェンドしていくと歯切れのいい演奏で、ティンパニは硬めのマットで叩かれるという現代的なアプローチでびっくりさせられます。のちにラトルはブレンデルと組んでウィーンフィルとともに全集を録音していますが、こちらはいたって平凡でがっかりさせられました。

 

 ここでの若い二人による新鮮なアプローチは、ピリオド奏法的な響きでそれなりに刺激的です。対向配置の上、多分オーケストラも室内楽的な編成に絞り込んで演奏しているように聴こえます。1992年、ラトルはピリオド演奏のエイジ・オブ・エンライトンメント管弦楽団の首席客演指揮者になっていますからねぇ。

 

 ベートーヴェンのカデンツァを採用したバージョンは多分ラトルの意志を尊重したアプローチなのでしょう。それに反してカデンツァにグールドのものを持ち込んだのはフォークトでしょう。等のグールドはゴルシュマンと組んで録音していますがテンポは無茶苦茶早く、第一楽章は12分台で駆け抜けています。ここでも、フォークトはグールドほどではありませんが速めのテンポで15分台で演奏しています。グールドのアプローチはやはり早いテンポがあっているのでしょう。なを、グールドのカデンツァは多分にバッハ的なアプローチで、グールドの原点がバッハにあったろうことを納得させられます。したがそのグールドのカデンツァで演奏されたバージョンです。

 

 

 

 

 どういうわけか、1997年から97年にかけてラトルはプレンデルと組んでフィリップスにベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音しています。個人的にはほとんど評価していない録音で、それよりもこのフォークトと組んだ全集を完成させて欲しかったなぁと思います。

 

 

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