前回の続きなので、記事のほとんどは自分メモに終始している。
■「個数問題」とかいう欠陥問題
……とはいえ、全部が全部「自分メモ」では味気ないので、勉強していてちょっと思ったことを書いてみたいと思う。「個数問題って欠陥問題じゃないか?」という話だ。
司法書士試験は、択一式が70問、記述式が2問で構成されている。配点からいっても、択一式は全体の3/4を占めるから、「択一式が司法書士試験のメイン」だと言っていいだろう。
⇒前回も述べたとおり、この「択一式」というのは、5択の中から正しいものを1つ選べという形式の問題のことである。
で、この択一式なのだが、時代の流れとともに問題形式が少しずつ変化してきた。
「5択問題の形式が変化してきたってどういう事??」と思うかもしれないので、もう少し詳しく述べる。
いま、自分は過去問を解いて勉強をしている。科目によってボリュームはまちまちだが、中には過去40年ぶんぐらい遡るものもある。
つまり、昭和末期~令和2年までの過去問を見ているのだが、問題を解いているうちに「なんか昔と問題形式変わってね?」という事に気が付く。
具体的には、以下の流れで問題の「トレンド」が変化しているのである。
①単純正誤問題
②個数問題
③組み合わせ問題
■①単純正誤問題
昭和~平成中期ぐらいにかけて主力だった形式。単純に、「以下の5つの中から正しいもの(あるいは誤っているもの)を選べ」というものである。
たとえば、以下のような問題だ。
******** 例題 *********
以下の(1)から(5)のうち、図鑑に登録されている体重が100kgを超えるものはどれか。
(1) ラグラージ
(2) ダンバル
(3) ヨノワール
(4) コータス
(5) ローブシン
***********************
「5択」という言葉の意味から考えれば、これが最もシンプルであろうとは思う。だがこの単純正誤問題、やってみると分かるが、けっこう欠点も多いのだ。
【欠点その1】「急所の肢を知っているかどうか」になってしまいがち
たとえば、正解の肢が3だったとしよう。この場合、3が〇だと知っていれば、話はそれで終わりである。
仮に、1から順番に正誤(〇か×か)を検討していった場合、4と5の肢は読む必要すらない。
しかし「能力を考査する」ための資格試験において、それでいいのか?という気が、若干しなくもない。
これが一番顕著に表れるのは、正解が1だったときである。「1が〇」だと判断できてしまえば、残りの4つは全く知らなくても正解できてしまうからだ。
つまり極論、たった20%の知識だけで合格できてしまう。
これが「急所の肢を知っているかどうか」になってしまいがち、という事の意味である。
要するに、「正しいものを選べ」では〇の肢を、「誤っているものを選べ」では×の肢を、それぞれ見抜きさえすればいい。
【欠点その2】読まなくていい肢が大量にうまれる
【欠点その3】「急所の肢」とそれ以外の重要度が違いすぎる
上記から、さらにこの2つの欠点が導き出される。特に、「欠点その3」はちょっと問題だろうと思う。
たとえば3が〇だったとして、「3が〇」だと知っている人は、それだけで正解できる。これはまだいい。
問題は、「1と2と4が×」だと知っている人である。
この人は、5つのうち3つも正誤が判断できるにも関わらず、まだ正解には辿り着けない。3と5の二者択一を迫られる。
つまり単純正誤問題というのは、1つの正誤判断だけで正解できる人を生み出す一方で、3つの正誤判断ができても不正解になる人を生み出すタイプの問題なのである。
だから、「正しいものを選べ」という問題では、「〇の肢」と「×の肢」の重要性に、大きな隔たりができることになる。
何しろ、「〇の肢」で正解を導くにはたった1つの正誤だけを判断すればいいが、「×の肢」で正解を導こう(つまり、「消去法」で解こう)と思ったら、5つの内4つの正誤を判断しなければならないのだから。
単純に言って、「急所の肢」とそれ以外の肢で、重要度に4倍もの隔たりが生まれることになってしまう。同じように並んだ5つの肢だが、その価値は全然ちがうのだ。
ということは、単純正誤問題においては、自分の知っている知識が運よく「急所の肢」になってくれれば「勝ち」、それ以外の肢に紛れ込んでしまえば「負け」という、一種バクチの様相を呈してしまうことになる。
⇒もちろん5択である以上、ある程度バクチの要素が入ってくることは避けられない。しかし、これは「自分の知っている知識がどれだけ急所で尋ねてこられるか」という、また違うタイプの「バクチ」である。
これに対して、「その急所の肢というのは試験官が1番聞きたかったことだから、肢によって重要度に差が出てしまうのは当然だ」という意見もあるかもしれない。
が、実際に過去問を解いてみると分かるが、司法書士試験のような「範囲がべらぼうに広く」、また「肢ごとの関連が特にない」試験においては、急所の肢だけが重要論点を尋ねているなどという事はまったくない。
どちらかと言えば、その急所の肢は「たまたま急所の肢に選ばれてしまった」だけであり、それ以外の肢にも大量の重要論点が仕込まれている。
が、それらの論点は、たまたま急所の肢に選ばれなかったというだけで、「あまり重要ではない肢」になってしまうのである。
また、欠点その2「読まなくていい肢が大量にうまれる」というのも、試験官の側からすれば問題だろうと思う。
何しろ、テストを作る側が「この知識は大切だろう」と思って仕込んだはずの肢が、どんどん読み飛ばされていくのだから。1を正解にするなら、2~5は読み飛ばされる覚悟で問題を作らなければならない。
とはいえ5択である以上、1を正解から外すわけにもいかない。単純に言って、1/5は「1」が正解にならないとおかしい。
⇒でも、心なしか、1が正解になる確率は他より低いような気がする。やっぱり「1に正解は置きにくい」という人間の心理が働くのだろうか。
そんなわけで、この単純正誤問題、時代の流れとともに徐々に姿を消していくことになる。
■②個数問題
単純正誤問題の欠点を克服すべく「発明」されたのが、この個数問題である。平成初期のあたりからポツポツと姿を見せ始め、平成の末期まで残り続けた。
たとえば、以下のような問題である。
******** 例題 ********
以下の(ア)から(オ)までのユニットのうち、斧を使えるものは幾つあるか。
(ア) アイク(神将)
(イ) アイク(ロード)
(ウ) アシュナード(デイン国王)
(エ) 漆黒の騎士(ジェネラル)
(オ) イングリット(ファルコンナイト)
(1) 1個 (2) 2個 (3) 3個 (4) 4個 (5) 5個
**********************
その名のとおり、正しいもの、あるいは誤っているものの「個数」を選ぶ問題である。
この問題の良いところは、何といっても「問題をすべて読まなければならない」ことだろう。
1~4の正誤を正しく判断できたとしても、まだ正解には辿り着けない。5つの正誤を判断して、ようやく正解を導き出すことができる。
受験生にとっては大変だが、試験官からすれば「この知識は大切だろう」と思って仕込んだ肢を、読み飛ばされずに済む。
また、肢による重要度の「格差」が生まれないのも長所だろう。
何しろ、5つの肢をすべて読まなければ正解には辿り着けないのだから、「急所の肢」もヘッタクレもない。「自分の知っている知識が急所で尋ねられるかどうか」というバクチに賭けなくて済む。
まさに単純正誤問題の欠点を克服した、新たなタイプの問題だと言えるだろう。
が、しかし。
だがしかし、である。ちょっと考えると分かるが、この個数問題、あまりにも重大な欠陥を抱えている。
ひと言でいえば、4つ正誤を判断できる人が一番損をするのである。
たとえばある問題が「〇×〇×〇」で、正解が「3個」だったとしよう。
このとき、「〇×〇×」まで判断できても、まだ正解には辿り着けない。5つ目を「〇」だと判断した人は正解だし、「×」だと判断した人は不正解となる。
つまり、五分五分である。
単純正誤問題のときは、たとえ「急所の肢」が分からなかったとしても、5つ中4つの正誤を判断できれば、消去法で必ず正解できた。
が、個数問題ではそうはいかない。5つ中5つの正誤を判断できなければ、どうあがいても「確かな正解」には辿り着けない。
だが、それはまだいい。問題は「〇×〇」までを判断できた場合である。
この後、「×〇」と判断すれば正解、「〇〇」「××」と判断すれば不正解となる。これは当然だろう。だが問題は、「〇×」と判断した者は正解になってしまうことである。だって、〇の数が3個であることには変わりないのだから。
「×〇」「〇×」と判断すれば正解、「〇〇」「××」と判断すれば正解。つまり五分五分である。
要するに、個数問題は1つミスした人は不正解なのに、2つミスした人は正解になる可能性がある問題なのである。実に不公平極まりない。
⇒さらに言えば、5つ中1つしか正誤を判断できなかった「全然ダメな奴」でも、場合によってはほとんど正解率が変わらない。5つ中4つを判断できる実力のある人が、5つ中1しか判断できなかった「全然ダメな奴」に負けたら、泣くに泣けないだろう。
単純正誤問題であれば、ここまでの理不尽は生じない。
たとえ「急所の肢」が分からなくとも、5つ中4つの正誤を判断できれば100%正解できるし、3つを判断できれば二者択一、2つなら三者択一である。
3つ以下しか正誤を判断できなかった人は「運ゲー」になってはしまうが、それでも、3つ判断できた人は、1つや2つしか判断できなかった人よりは「運ゲー率が下がる」のだから、いくらか実力が反映された結果にはなる。
「急所の肢」が分かるかどうかという不公平は生じるものの、より多くを間違えた人が正解になってしまう個数問題に比べれば、ナンボかマシだ。
だが、それも当然といえば当然だろう。個数問題というのは「〇だと思った『個数』」を尋ねているだけだから、たとえその内容がメチャクチャでも、最終的な個数さえ帳尻が合ってしまえば、「正解」の判定が下されてしまうのである。
自分も、過去問を解いていて何度もこの理不尽にぶつかった事がある。5つ中4つの正誤は判断できるのに、最後の1つのせいで答えがズレて涙を呑んだことは1度や2度ではない。
逆に、5つのうち3つしか合っていないのに、「間違え方がよかった」せいで正解になってしまった事も何度もある。だが、そんな形で正解できてもこれっぽっちも嬉しくない。せいぜい、「個数問題なんて欠陥問題を出してくるからこんな事になっちゃうんだろ、ケッ」と斜に構えて終わりである。
さらにこの個数問題が良くないのは、難しい肢が1つ紛れ込んだだけで運否天賦になってしまうことだ。
何しろ、5つ中4つの正誤を判断できる実力を持った人でさえ、1つ分からない肢があっただけで、もう「全然ダメな奴」とほとんど変わらない正解率になってしまうのだから。
こんな問題で本当にちゃんと実力が計れているのか、甚だ疑問である。
もちろん、試験官側もこの程度のことを把握していないはずはなく、個数問題が出題の主力となったことは1度もない。
平成中期までは①単純正誤問題が、それ以降は③組み合わせ問題がメインである。
個数問題は、それらの合間を埋めるようにポツポツと紛れ込むような形で出題される。
それでもやはり、「個数問題は理不尽だ」と判断されたのだろうか、ここ最近になって個数問題の出題は、ほとんど消滅することとなった。
■③組み合わせ問題
平成中期以降、主力となっているタイプの問題である。
たとえば、以下のような問題である。
******** 例題 ********
以下の(ア)から(オ)までの職業のうち、Lv.99時のAGIの値がSTRより高いものの組み合わせは、後記(1)から(5)までのうちどれか。ただし装備および宝典については考慮しないものとする。
(ア) ソードマン
(イ) ダンサー
(ウ) スナイパー
(エ) メディック
(オ) ミスティック
(1) アウ (2)アエ (3)イエ (4)イオ (5)ウオ
**********************
このように、ア~オまでの「組み合わせ」によって正解を導くタイプの問題である。
また、注目してほしいのは、(1)~(5)の選択肢の中にア~オが必ず2回ずつ登場しているという事である。
これにより、①単純正誤問題や②個数問題にあった数々の欠点が、大きく改善されている。
【長所その1】最低でも2つは肢を読む必要がある
たとえ「イが〇」だと判断できたとしても、それだけでは絶対に正解に辿り着けない。「(3)イエ」と「(4)イオ」の二者択一だからだ。
これは、①単純正誤問題にあった「1つの『急所の肢』さえ分かってしまえば、それだけで話が終わる」という欠点を緩和している。
「急所の肢」が2つになった、と言ってもいい。少なくとも、20%の知識しかない「全然ダメな奴」がバクチに勝って合格するなどという事はなくなる。
【長所その2】肢の間に、それほど「格差」が生まれない
「イが〇」だと判断できた人は、「(3)イエ」と「(4)イオ」の2択になるわけだから、ぐっと正解に近づく。
だが、「アが×」だと判断できた人も、それほど損をするわけではない。
なぜなら、(1)~(5)の中にアの含まれた肢が必ず2つあるからだ。その2つは絶対に正解になり得ないのだから、残りは3択となる。
つまり、急所の肢とそれ以外の肢でも、重要度の「格差」はせいぜい1.5倍程度でしかない。
これは、①単純正誤問題において重要度の格差が4倍だったことに比べれば、劇的な改善である。
【長所その3】分からない肢があってもいい
ちょっと考えてみると分かるが、この組み合わせ問題は、5つ中4つの正誤が判断できれば100%正解できるようになっている。
さらに、場合によっては5つ中2つの正誤判断で正解できることもある。
「急所の肢」が2つとも分かれば話はそれで終わりだし、そうでなくとも、「組み合わせの運がよければ」正解できる事がある。
たとえば上の例題の組み合わせなら、「アが×」「オが×」だと判断できれば、必然的に正解は(3)しかあり得ない。
これは、1つでも難しい肢が混じったらもう運否天賦になっていた②個数問題に比べ、かなり「受験生側にやさしい」問題だと言えるだろう。
急所の肢が分からなくても、他の肢から答えを導き出せばいいのだ。
ただし、この組み合わせ問題にも欠点がなくはない。1番の欠点は「組み合わせ運に左右される」ことだろう。
上の例でいえば、たしかに「アが×」「オが×」だと判断できた人は、100%正解できる。
しかし、「アが×」「ウが×」だと判断した人は、まだ正解できない。「(3)イエ」「(4)イオ」の2択である。
⇒もっと言えば、そこからさらに「イが〇」だと判断できても、まだ2択のままである。
要するに、組み合わせ問題というのは組み合わせのパターンによって、同じ数の正誤を判断できた人の中でも正解率が変動してしまう問題なのである。
とはいえ、基本的には2つより3つ、3つより4つの正誤を判断できた人が有利なことには間違いないから、①単純正誤問題や②個数問題ほどの理不尽さは感じない。
また、この組み合わせ問題は、試験官の側から見たときにもメリットがある。それは「急所の肢を難しくできる」ことだ。
①単純正誤問題では、「急所の肢」を難しくすると、途端に難易度が跳ね上がる。残る4つの肢を使って消去法で解くしかないからだ。
②個数問題に至っては、どれか1つでも難しい肢が混じってしまうと途端に運否天賦になってしまうから、そもそも難しい肢を混ぜること自体タブーである。
が、この組み合わせ問題ではそれができる。たとえ「急所の肢」が分からなかったとしても、他の肢や組み合わせを検討することで、まだまだチャンスが残されているからだ。
そういう訳で、様々な面で優れた「③組み合わせ問題」は、①単純正誤問題や②個数問題を押しのけ、最近の主流となっている。
実際、これは受験生にとっても有難いことである。
解いてみると分かるが、③組み合わせ問題は1つや2つ分からない肢があっても、まだまだ挽回のチャンスがあるので、解いていてどこか安心できる。
これに対し、個数問題が出てきたときなど「うげっ、個数問題が出やがった」と警戒してしまう。それぐらい心理的な負担に差がある。
では、組み合わせ問題が主流となった最近の司法書士試験は、昔に比べ易しくなったのか?
答えはまったくNOである。過去問をパラパラめくってみると分かるが、最近の司法書士試験は、昔に比べて明らかに問題文がインフレしているからだ。
昭和時代の問題は、その多くが非常に簡潔である。問題文のほとんどは1~2行程度であり、少なくとも、「読むのに時間がかかる」ということはない。
⇒ただし、「解くのに時間がかかる」ことはよくある。むしろ、問題文の中にトラップを仕掛けにくいぶん、「重箱のスミを突いてくる」という意味では、平成以降より昭和の問題のほうが厳しい。
しかし、最近の問題になればなるほど、過去の問題のパワーアップ版や後続論点(※)が出題されることが多くなる。
⇒※ 過去に「○○のときは××となる」という問題が出されたとして、後年、「○○のときは××となるが、その場合、△△である」のように、「その後に続く論点」が出題されるということ。
要するに、内容がより深掘りされ、問題に「ヒネリ」が加わってくるのである。必然、問題文はどんどん長くなる。
特に平成末期以降は、問題文が4~5行に及ぶことも珍しくない。しかもそれが5つもズラリと並ぶのである。そのため、どうしても「読むのに時間がかかる」。
そのくせ、(前回の記事でも言ったが)司法書士試験というのは、根本的に「時間が足りていない」。
実際、40年前に司法書士試験に合格した某氏は「時間が足りないと感じたことはない。むしろ余裕だった」と言っていた。
これに対し、今の受験生は問題を読む・解くスピードが、かなり求められている。
組み合わせ問題の登場によって、昔のような「問題の理不尽さ」は軽減されたが、それは問題のインフレと引換えだと言っていいだろう。
結局、昔だろうと今だろうと、変わらず司法書士試験は難しいのである。
■過去問(ここから自分メモ)
前回の記事で述べたように、過去問を解くときは、正解率8割を目標にしている。
過去問を解くときの実力というのは、ちょっと「盛られて」いるから、初めて過去問を解いたときに8割ぐらいは正解できないとマズいぞ、という話である。
そして、「会社法・商法、商業登記法が難しい。これ8割は厳しいんじゃないか……?」という話もした。
この予感は(嬉しくないけど)的中し、会社法・商法、商業登記法については正解率8割を達成できなかった。他の科目については、今のところ達成できている。
会社法・商法、商業登記法は「2度読み」までしているのに、他のマイナー科目より正解率が低い。いかにこいつが難しいかがよく分かる。
※ 2度読み
主要科目(民法、不動産登記法、会社法・商法、商業登記法の4つ)は、1回テキストを読み、まとめるだけでなく、過去問を解くときにもう一度内容を見返すようにしている。重要な論点が多く、おさらいの必要があると思うからだ。
これに対し、他のマイナー科目では「2度読み」はしていない。1回テキストを読み、まとめたら、そのまま過去問に入っている。さほど重要な論点がないからである。
■会社法・商法(40年ぶん)
・商法総則 8/14 正答率57.1%
・商行為法 9/14 正答率64.2%
いきなり厳しいスタートになってしまった。商法はもう今のトレンドではないとはいえ、最近は問35(つまり午前のラスト)に、商業登記法の絡まない「純粋商法」が1問出されることが多く、油断できない。
・株式会社 161/225 正答率71.6%
8割は厳しいだろうと思っていたが、ギリギリ7割で食らいついた、という感じ。会社法の出題はほぼほぼ株式会社メインなので、ここが取れないとかなりマズい。やはり、会社法商法、商業登記法が1番の難関になりそう……。
・持分会社 21/24 正答率87.5%
・社債 15/17 正答率88.2%
この辺は大した論点ないし覚えることも少ないのでラク。まあ、持分会社とか1年に1問出るかどうかだけど。
・組織再編 16/20 正答率80.0%
この辺覚えること多いくせに出題数少ないから嫌い。組織変更・吸収合併・新設合併・吸収分割・新設分割・株式交換・株式移転とか種類多すぎ。しかも令和3年から株式交付まで追加される。
・会社法全般 23/29 正答率79.3%
・特例有限会社 15/21 正答率71.4%
■合計 268/364 正答率73.6%
■商業登記法(40年ぶん)
・商業登記総論 35/45 正答率77.8%
・個人商人の登記 12/13 正答率92.3%
・株式会社の登記 82/105 正答率78.1%
商業登記法においても、最も重要な分野は「株式会社」である。これについて、会社法・商法よりちょっと正解率が上がった。これは、商業登記法のほうが得意だからではなく、会社法・商法で1度復習できたからだろう。
・持分会社の登記 15/17 正答率88.2%
・外国会社の登記 3/5 正答率60.0%
持分会社とかあんまり得意なつもりないのだが、なんか正解率は高い。
・会社の登記全般 25/31 正答率80.6%
・法人登記 25/30 正答率83.3%
・商業登記全般 17/26 正答率65.4%
・特例有限会社の登記 12/13 正答率92.3%
■全体 223/285 正答率78.2%
会社法・商法、商業登記法、いずれも他の科目に比べ正解率が低い。実際、テキストを読んでいても「これ難しいな」と思う。
まず民法と違って内容がつまらない上に、ややこしい論点もてんこ盛り、そのうえボリュームも満点とあっては、どうしても頭に詰め込むのに時間がかかる。
そのぶん、明確な弱点であることはハッキリしているので、直前はここを重点的に潰していくことになるだろう。
■民事訴訟法・民事執行法・民事保全法(39年ぶん)
・訴訟の主体 17/23 正答率73.9%
・訴訟の開始 14/16 正答率87.5%
この辺の法律はあまり改正されていないのか、没問がほとんどない(会社法・商法は没問だらけだったのに)。
・訴訟の審理 50/63 正答率79.4%
民事訴訟法は内容が面白いので、1回テキストを読んでまとめただけでもまあまあ取れている。これに比べて民事執行法がマジでつまらんかった。
・訴訟の終了 27/32 正答率84.4%
・複雑訴訟形態 16/18 正答率88.9%
・不服申立手続 5/7 正答率71.4%
・簡易な訴訟手続 17/23 正答率73.9%
・総合問題 16/18 正答率88.9%
■民事訴訟法 162/200 正答率81.0%
2度読みしていないのに、2度読みをした「会社法・商法」よりずっと正答率が高い。会社法・商法にいかに手こずっているかがよく分かる……。
■民事執行法 45/51 正答率88.2%
民事執行法はテキストを読んだ時点では「なんかよー分からん」という感じだったので全然ダメだと思っていたのだが、意外とできた。
というか、問題がさほど難しくない。ちょっとでも難しい問題を出されたら手も足も出なかったと思うのだが、試験官もそれを配慮してくれたのか、相応に問題が易しくなっており、ほとんど基本的なことしか聞かれなかった。
■民事保全法 32/33 正答率97.0%
最初の1問以外は全部あっていた。民訴法・民執法に比べれば遥かに論点が少なく、また簡単である。
これを見ても、やっぱりマイナー科目って手を抜けないなと思う。たしかに1問しか出題されない科目ではあるが、そのぶん、少ない勉強時間でも十分に得点できる。
それに、1つ1つの出題数は少なくとも、マイナー科目を合計すれば70問中17問になる。チリも積もれば山となるとはこの事だろう。
■供託法(39年ぶん)
・供託の制度 7/10 正答率70.0%
・弁済供託の要件 29/30 正答率96.7%
最初でつまづいた(4問中3問ミスってしまった)が、それ以降は調子いい。
・供託の手続 46/52 正答率88.5%
・民事執行法にかかわる供託 24/24 正答率100.0%
「正答率100%」と書くとまるで完璧に理解しているかのようだが、まったくそんな事はなく、分からない肢や理解のあいまいな肢が大量にあった。組み合わせの関係や消去法を駆使して、何とか正解に辿り着けたという感じ。
解いているときの感覚としては、むしろ「弁済供託の要件」「供託の手続」のほうが自信をもって解くことができた。ただでさえ民事執行法は理解がイマイチなので、ここはもう1度復習する必要があると思う。
・供託物払渡請求権の変動 4/7 正答率57.1%
■全体 110/123 正答率89.4%
あと1問正解できていれば9割いけたのに……。実際、「これ9割いけるんじゃないか!?」と思いながら解いていたので、最後に続けて3つもミスしてしまった時は「ぐわああああああ」とリアルに変な声出た。
何をそんなにミスしたかというと、「消滅時効」。大した話じゃないと思ってサラッと読み進めてしまったのだが、いざ問題を解いてみると意外とややこしい論点が紛れ込んでいることが分かった……。
■司法書士法(18年ぶん)
■司法書士法 18/18 正答率100.0%
論点ほぼなし。民事保全法と同等か、あるいはそれ以上に覚えることは少ない。司法書士の業務と司法書士法人さえ押さえてしまえば、ほとんどの問題は解ける。
が、心配なのは最近、昔の試験で出されていたような古い問題が出題され始めているという事である。
たとえば令和元年。テキストを読んでいたから正解できたが、試験本番の初見でこれを正解できた人はスゴいと思う。
それだけに、直近18年といわず、もっと昔の問題も掲載してほしいのだが……この辺は過去問よりもテキストの読み直しがメインになるか?
さて、残るは2つ、「刑法」と「憲法」である。
民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、供託法、司法書士法とずーーっと手続法が続いていたところで、久方ぶりの実体法である。
まだちょろっとテキストを読んだだけだが、やっぱり面白い。会社法の100倍は面白い。
それだけに、テキストを読んだだけで内容がすんなり頭に入ってくれると有難い。
もちろん目標は正解率8割である。過去問を解き終えたら、ここに結果を追記しようと思う。
(※ 2021/4/6追記)
■刑法(41年ぶん)
・刑法総論 71/78 正答率91.0%
・財産に対する罪 33/36 正答率91.7%
・社会的法益に関する罪 17/17 正答率100.0%
・国家的法益に関する罪 7/8 正答率87.5%
・各種の犯罪全般 20/20 正答率100.0%
■全体 148/159 正答率93.1%
かなりできた。ほぼ全ての分野で正答率9割強、うち2つはパーフェクト。
勉強法そのものは、他のマイナー科目とまったく変わらない(1回テキストを読んだだけ)。それなのに、どうして刑法だけこれほど正答率が伸びたのか?
その理由は、恐らく2つある。1つはテキストの構成がよかったこと。
例題で基礎的な知識を押さえ、さらに練習問題でひっかかりやすい論点を潰していく。いずれも「問題を解く」形式なので頭に残るし、この方法なら、1回テキストを読んだだけでもかなりの過去問に対応することができる。
もう1つは、刑法という科目が、現実の社会と密接にリンクした法律であること。
何しろ人の刑罰を定めた法律なので、その多くは、現実的なイメージに落とし込むことが容易い。そしてイメージさえできれば、理解はスムーズに進む(「抵当権の仮登記」なんて言われても興味のない人にはサッパリだろうが、「窃盗罪」といえば大体のイメージは沸くだろう)。
また、民法と同等か、それ以上に事例が豊富なのもうれしい。事例と関連づけて覚えた知識は、ただ詰め込んだ知識より遥かに記憶に残りやすく、また引き出しやすくなる。
この中でミス率が高かったのは、「科刑上一罪」と「執行猶予」。特に執行猶予はややこしい。ここさえ潰せば、あとはバッチリだと思う。
■憲法(18年ぶん)
■全体 48/54 正答率88.9%
テキストを読んでいるときは「なんかよー分からんな。ホントに憲法の知識が身に付いてんのか?」という感じだったのだが、正解率は悪くない。
最大の理由は問題がカンタンだったこと。司法書士試験における憲法では、他の科目に比べ、基礎的なことしか聞いてこない。会社法でこの理解度だったら、たぶん5割も取れていないだろう。
また、推論型の問題が非常に多いのも憲法という科目の特徴である。他の科目より明らかに学説問題の比率が高い。
だから、仮に法律知識がほとんどなかったとしても、単純な国語力や、一般常識で答えを出すことができる。そこが正答率に繋がったのではないかと思う(ちなみに自分は理系だが、高校時代は国語が1番得意だった)。
そのため、司法書士試験における憲法は、他の科目に比べると1段、2段難易度が低いと言えると思う。
これで、全科目のインプット、ならびに1回目の過去問演習が終了した。
|
科目 |
年数 |
問題数 |
正解数 |
正答率 |
1 |
民法 |
31年 |
515 |
412 |
80.0% |
2 |
不動産登記法 |
38年 |
600 |
499 |
83.2% |
3 |
会社法・商法 |
40年 |
364 |
268 |
73.6% |
4 |
商業登記法 |
40年 |
285 |
223 |
78.2% |
5 |
民事訴訟法 |
39年 |
200 |
162 |
81.0% |
6 |
民事執行法 |
39年 |
51 |
45 |
88.2% |
7 |
民事保全法 |
39年 |
33 |
32 |
97.0% |
8 |
供託法 |
39年 |
123 |
110 |
89.4% |
9 |
司法書士法 |
18年 |
18 |
18 |
100.0% |
10 |
刑法 |
41年 |
159 |
148 |
93.1% |
11 |
憲法 |
18年 |
54 |
48 |
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会社法・商法、商業登記法が弱いことは明らかだが、1~5は全体的に正答率が十分とは言えないし、また記憶が抜けてもいる。
「1.民法」「2.不動産登記法」「5.民事訴訟法」、この辺はさほど苦手意識はないが、「3.会社法・商法」「4.商業登記法」は「いや、難しいなこれ!」と思っている段階なので、まず徹底的にテキストを読み返し、問題を解き、苦手意識を払拭していく必要があるだろう。
試験本番まで、あと約3ヶ月となった。
「会社法・商法、商業登記法の基礎を固め、得意科目へと昇華する」「記述式で少しでも点数を稼げるよう、毎日練習を続ける」。この2つが、試験本番までの、自分の主題となるだろう。