期待値と評価は比例しない シン・仮面ライダー感想 | 司法書士のゲームブログ

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先日、友人と映画を観に行った。

お目当ては「シン・仮面ライダー」である。最近、めっきり映画を観る機会が減っていたが、「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」大好きの自分としては、この作品は絶対に外せない。

とはいえ、休日に映画を1本観るだけでは時間を持て余す。

そこで、「これまで気になってはいたけど、なんだかんだで結局観てなかった映画」をまとめて観てしまおうという話になった。

上映時間との兼ね合いもあり、1つの映画館で観られる作品数は限られている。しかし、近場にある3つの映画館をハシゴする事により1日に4本の映画を観に行けることが分かった。


① シン・仮面ライダー
 ~ 昼食 ~
② すずめの戸締り
③ スラムダンク
 ~ 夕食 ~
④ RRR


これが、苦心の末に編み出した鑑賞スケジュールである。朝9時に集合し、夜は10時過ぎまで1日どっぷり映画漬け。

我ながらアホな事してるなあとは思うのだが、そのぶん、気になっていた映画を1日ですべて網羅することができる。


期待値としては、シン・仮面ライダー>スラムダンク≒RRR>すずめの戸締りといった所だろうか。

今回の主目的でもある「シン・仮面ライダー」の期待値が高いのは当然として、「スラムダンク」「RRR」は人から面白いと勧めてもらった作品であり、評判もいいので気になっていた。

最も期待値が低かったのは「すずめの戸締り」。「君の名は」や「天気の子」で知っている監督なので、ついでに観に行こうかという程度の期待値でしかない。


なお、観に行ったのはシン・仮面ライダーが公開されてすぐ(つまり、1ヶ月以上前)なので、内容に関しては一部うろ覚えになっている部分がある。




■シン・仮面ライダー



シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンほど面白くなかった。

まあ、この2つが好きすぎてハードルが高くなっていた面もあると思う。

全体的な特徴として、ほぼエンタメに振り切っていたゴジラ&ウルトラに比べると、割とドラマ部分にも尺が割かれているのだが、まずこのドラマ部分があまり面白くない。

2時間という短い尺にあれもこれもと詰め込んだせいで人物の掘り下げが足りておらず、陰気なキャラクターばかりで魅力も薄いため、感情移入ができない。

その証拠に、本作屈指の盛り上がりであろう「ビデオレター」も、いいシーンだとは思いつつどこか「長え……」「さっさと先に進んでくれよ」と思ってしまっている自分がいる。

前半キャラクターに感情移入できないまま先に進むので、物語後半、因縁のある敵たちが現れてもやっぱり盛り上がりに欠けてしまう。ハチオーグやチョウオーグとのやり取りも、どこか第三者として、冷めた目線で見てしまうのである。

「シン・ゴジラ」は邦画にありがちなこの手のシーンを徹底的に排除したことで評価された映画だと思うのだが、今回は一転してドラマ部分に力を入れている。しかし、その試みはあまり上手くいってなかったように思う。


ではアクション・映像面はどうかというとこれもイマイチで、2号ライダーとの空中戦や、ハチオーグとの殺陣は正直「これがベストなの?」と思ってしまうほど安っぽい。これならキングオージャー第1話のCGのほうがよっぽど見応えがある。十分な予算があるはずなのに、テレビシリーズに迫力で負けてしまうとは一体どういう事か。
 ⇒ もちろん「あえて安っぽくした」「オマージュとしてあえてそうした」というのは、観る側にその良さが伝わらなければ何の言い訳にもならない。

終盤は予算が尽きたのか暗くて分かりにくい映像が続くし、ラスボスに至っては急に弱体化して駄々をこねた子供同士のケンカみたいになるしで、全体的に映像の満足度は低い。
 ⇒ 一応、ラスボスが弱体化する事に関してはちゃんと理由がある。が、ついさっきまで圧倒的な強さを誇っていたラスボスの戦闘描写としては、明らかに物足りない。



敵の魅力が薄い、というのも本作の致命的な欠点だろう。ゴジラやウルトラ怪獣と異なり、仮面ライダーの敵は等身大の元人間なので、一歩間違えるとコスプレした変なおっさんみたいになってしまう。

そしてその予感は悪い意味で的中する。クモオーグはともかく、コウモリオーグはまさにコスプレした変なおっさんという風体で、しかも弱い。不利になるとすぐ逃げ出し、油断したところをあっさり仮面ライダーに仕留められる。

もっと酷いのがサソリオーグである。高笑いをしながら奇抜な衣装で登場、特殊部隊に包囲されるが、当然そんな奴らに負けるはずもなく余裕の笑み……と思いきや、そのまま数の暴力によって鎮圧されてしまう。

 

つまり、このオーグという敵は「訓練した人間が銃を持てば勝てる程度の相手」だったのである。じゃあもう仮面ライダーいらないじゃん。っていうかさっきまでの余裕綽々な態度は一体何だったのか……。

同じ「かませ」でもシン・ウルトラマンのネロンガは、人間にはどうしようもない脅威として描かれていたので「ザコ」という印象はなかったし、むしろウルトラマンの超人的な強さを存分に引き立たせる役割を果たした。

これに対しコウモリオーグ、サソリオーグは単にキャラクターとして魅力に欠けるだけでなく、「人間でもどうにかなってしまう程度の敵」という認識を視聴者に与え、以降戦闘に迫力も緊張感もなくなってしまう。

ハチオーグあたりからようやく敵側の描写にも気合いが入ってくるのだが、既に述べたように、主人公たちへの感情移入ができないまま「因縁の敵」を出しても今ひとつ盛り上がらない。そのうえアクションもイマイチときているのだから尚更である。

正直、ハチオーグあたりは描写次第でメフィラス星人にも負けない人気キャラクターになれるだけのポテンシャルを秘めていたと思うのだが……狙いすぎて逆に鼻についた感じかなあ。



散々に言っているが良いところがなかった訳では決してなく、冒頭からクモオーグ撃破までの一連の流れは十分に見応えがあった。裏を返せばつまり「本作のピークは序盤」という事になるのだが、それでも面白いことには違いない。

「正義のヒーロー」である仮面ライダーが、敵とはいえショッカーの戦闘員たちを殴り殺し、血しぶきを上げながら顔面を潰していくショッキングな戦闘シーンは、「これが仮面ライダーの戦闘力か」と説得力を与え掴みはバッチリ。その後、主人公が望んで手に入れた力ではない事もスムーズに納得できるようになっている。

クモオーグも登場時間こそ短いものの敵の中では一番魅力的なキャラクターで、紳士的な口調と残虐な性格のギャップや、強キャラっぽい立ち回りから一転、空中に跳ね飛ばされ追い込まれてしまった時の小物っぷり、ライダーキックのお披露目役を全うした散り際もイイ。

本当に、ここまでは「流石は『シン』シリーズ!これは今回も期待できるな!」と思っていたのである。それがその後コウモリオーグ、サソリオーグと続いてしまったばっかりに……。

また、サイクロン号の変形シーンや、一文字隼人がバイクに乗って風を感じるラストシーン等、要所での見所はある。特に一文字隼人は、陰気なキャラクターばかりで気が滅入りそうになってくる中、数少ない軽妙かつ好感を持ちやすい性格となっており、シン・仮面ライダーで一番のお気に入りキャラクター。彼のおかげで、後半の陰鬱な展開がどれほど中和されていたかは計り知れない。

要所での見所はあるものの、全体として見たときの面白さは「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」に遠く及ばない。

シン・ゴジラは最終的に7回、シン・ウルトラマンは3回劇場まで足を運んだ(もちろんブルーレイや配信サイトでの視聴を含めればそれ以上)が、とりあえずこれは1回観れば十分か。




■すずめの戸締り

 


めちゃくちゃ面白かった。期待値は4作中ダントツ最下位だったのに、まさかこんなに面白いとは……。

そもそも何故本作の期待値がこんなに低かったかといえば、同じ監督の前作品「天気の子」がビックリするほどつまらなかったからである。

「天気の子」はテレビでの視聴だったので、その点で不利だったとは思う(同監督の作品は「君の名は」もそうだが、映像の美しさが見所の1つなので、その長所を存分に発揮できないテレビ視聴はそれだけで魅力が半減する)のだが、映画館まで観に行った弟が自分とほとんど同じ感想だったので、やっぱり内容自体ダメだったんだろう。ヒロイン以外何ら褒めるところが見つからない作品だった。

そんな前作からまさかの大化け。単純に主人公の珍道中がエンターテイメントとして面白いし、登場人物も良キャラぞろい。テーマ性を持たせてあれこれ考察したくなるだけの奥行きもあるし、ラストは伏線を回収して着地もバッチリ決める。テンポがよく最後まで退屈せずに観られた。

本作がこれほど名作になった理由として、まず「前作のダメだった部分がことごとく改善されている」というのがあると思う。具体的な例を2つ挙げよう。



①挿入歌の使い方が良くなった

同監督の作品と、挿入歌は切っても切れない関係である。特に社会現象となった「君の名は」は、前前前世をはじめとする挿入歌の功績によってヒットした面もあるので、後続の作品も同様の手法を採り続けるというのは理解できるのだが、「天気の子」はこれのやり方がよくなかった。

ふとした静寂が訪れるような、シンとした余韻に浸りたくなる場面でも、空気を読まずに挿入歌が流れて雰囲気をぶち壊しにしてくるのである。余韻もヘッタクレもあったものではない。

これに対し「すずめの戸締り」では、違和感のある挿入歌の使い方はほとんどなかった。



②キャラクターがおかしな行動を取らなくなった

「そんなの当たり前じゃん」と思うかもしれないが、いやいや、これができていない作品の何と多いことか。

要するに「なんでお前、そこでそんな事しちゃうの?」と言いたくなるような行動のことである。これが出てきた瞬間、そのキャラクターにはまったく感情移入できなくなり、視聴者としては置いてけぼりを食らう。酷いときは「何やってんだこいつ……」とイライラさせられる事さえある。

「君の名は」の時から「若者ならではの感情の発露」を表現したいためか、主人公たちが若干理解に苦しむ行動を取ることはあったが、それでも何とか許容範囲ではあった。

「天気の子」ではそれがさらに悪化し、ついていけなくなった。あるシーンを観たときなど「こいつ絶対やべー奴だろ」と、主人公を応援する気持ちすら消え失せた。

しかし「すずめの戸締り」ではそんなシーンはほぼ皆無で、安心して観ていられる(実を言うと序盤に「なんで?」と思うシーンはあったが、十分理由づけのきくレベル)。結果として、本作の登場人物たちが感情移入しやすい、良キャラクターぞろいである事にも繋がっている。
 ⇒ 特に主人公の1人である宗像草太は嫌味がなく素直に好感の抱ける青年で、前作主人公があまりに酷かったこともあり「なんだ、まともなイケメンも描けるんじゃないか!」と軽く感動すら覚えたレベル


また、本作では「地震」という日本人にとって最も馴染みの深い災害をテーマとして持ってきたのも大きかったと思う。

「君の名は」のときは隕石、「天気の子」のときは大雨がそれぞれ自然災害として登場したが、前者は大多数の人間にとって馴染み深い災害とは言えないし、後者も雨の量が多すぎてファンタジー世界の出来事にしか見えなかった。

しかし、「地震」である。日本で暮らしている以上、地震という災害とは決して無縁でいられない。実際に恐ろしい体験をしたという人も多いだろうし、かくいう自分も、地震の警報音を聞くと未だに身体が強張る。

もちろん本作は地震の啓発映画ではなく、地震という災害をファンタジーとして扱ったエンターテイメントである。それでも身近な災害がテーマになっているぶん心に訴えかけてくるものがあるし、中には「なるほど」と思わず感心してしまう場面や、考えさせられる場面もある。

それはやはり、日本人として「地震」という災害にある程度精通していたからこそ感じ取れた機微、面白さなのではないかと思う。


いずれにせよ、本作が非常にレベルの高いエンタメ映画である事には違いない。自分は「君の名は」から同監督の作品を見始めたにわかだが、3作品の中でも面白さは断トツ。次回作も俄然期待が高まってきた




■THE FIRST SLUM DUNK

 


人から勧めてもらった映画である。「元のアニメと声優が違うのが最大の欠点」らしいが、その欠点がまったくマイナス点にならない(そもそも元のアニメを見たことがない)自分なら、きっと楽しめるだろうと思った。

結論としては、物語部分に大きな驚きはなかった。何しろ原作の山王戦をほぼそのままなぞるだけなので、途中経過から結末まで全部知っている。自分はスラムダンクの中でも山王戦が一番好きで、何度も読み返しているのでなおさらである。

さすがにそれでは映画にならんと判断されたのか、宮城にスポットライトが当てられ過去を深掘りし、主人公とする物語がもう1つの軸となっている。「宮城にそんな重い過去があったのか……?」と若干の戸惑いを覚えるも、1つの成長物語としてきちんとまとまっている。

 ⇒ 調べてみると、本作に出てきた宮城の設定は、過去に掲載された短編漫画の中で一部明かされていたようだ。

 

なんで宮城なんだろうという疑問はある(宮城がセンターに立っているポスターを見たときも最初は違和感があった)が、他の4人に比べるとそこまでキャラクターが掘り下げられていないので、色々と後付けがしやすかったり等、使い勝手がよかったのだと思う。


ただ、元々が原作の主人公ではないぶん、途中から誰が主人公か分からなくなる弊害が発生していた。

そもそも、山王戦での湘北メンバーの活躍度合いは 桜木≧三井>流川>宮城>赤木 といったところで、空気という訳でもないが、大活躍したという訳でもない。

山王戦における宮城の一番の見せ場は「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!」だろうが、実際映画でも宮城の活躍はそこがピークで、あとは桜木が主人公のような扱いになり最後まで宮城の見せ場を食ってしまう(元々主人公なので当たり前だが)。

何より、試合展開としては最後まで意外性のない予定調和が続いてしまうので、少しぐらい試合内容も弄ってくれたほうが映画としては楽しめたのではないかと思う。

原作ファンとしては「『山王戦』という完成された試合内容を弄るなんて言語道断だ!」という意見もあるだろうし、その意見も大いに理解できるのだが、それでも猶自分はそう思う。

原作を知らずに映画を観た人は「最後までどっちが勝つか分からずにハラハラした」と言っていたので、案外、この映画を最も楽しめるのはスラムダンクを全く知らない人たちなんじゃないだろうか。

とはいえ原作ファンだからこそ楽しめる部分もちゃんとある。ラストの沢北が出てくるシーンは「原作のラスト後、こんな未来が待っているかもしれませんよ?」という世界を見ているかのようでワクワクした。映画なのに、まるで実際の試合を見ているかのような試合描写(演出と音響)も凄いとしか言いようがない。




■RRR



いい意味で自重しない、非常にボリウッドらしい映画だった。

普通の映画だったら「いやいや、これはやりすぎだろ……」「ここまでやったらリアリティが薄くなる」として敬遠したくなるような描写も、この映画ではお構いなし。

特にラストの戦闘シーン。ビームとラーマの2人が強すぎて、銃で武装した数十人のイギリス兵を相手に槍や弓で無双。このリアリティ何それ的な自重しなさっぷりが、いい方向に作用して最高のカタルシスと爽快感を生んでいる。っていうかラーマ、ついさっきまで歩けないぐらい負傷してたんじゃなかったんかい(笑)
 ⇒ 途中の解毒シーンといい、この無双シーンといい、この映画の監督はビームの薬草をゲーム世界の特効薬か何かと勘違いしているのではないだろうか。

もっと凄いのは、その後の爆破シーン。思わず吹き出しそうになってしまった。この建物は全ての部屋に満遍なく火薬を配備していたのだろうか?建物が順番に爆発していく様はもはやコントである。

途中までは割と暗い、重たいシーンもあるのだが、ラストはきっちりとハッピーエンドで〆る。とにかく「面白さ」と「後味の良さ」が追及されていて、自分はこういう映画が大好きだ。



音楽もキャッチーなものが多く、言葉の意味は分からないが、思わず口ずさみたくなる。物語もどんどん先に進んでテンポがよく、3時間という上映時間の長さを感じさせない。

キャラクター造形もいい。ビームとラーマの初登場シーンは、それぞれのキャラクターを視聴者にはっきりと印象付ける強烈なもの。「なんか凄え奴が出てきたぞ」と度肝を抜かれること請け合い。

ラーマの初登場シーンは、さもすると「命令に忠実な、冷徹な戦闘マシーン」という印象を与えかねないが、後のシーンでのフォローも欠かさない。ビームのためにわざと勝ちを譲ってあげたり等、めちゃくちゃ人情味に溢れたいい奴である。


ラストは死んだと思っていた人物が実は生きており「いやお前生きてたんかい!」と、もう何度めか分からないツッコミを心の中で入れてしまったのだが、ご都合主義と言われようとも、作品の「ハッピーエンド指数」を高めるためにはこれが必要だったのだろう。こういうご都合なら大歓迎である。




■まとめ

4本の映画を一気見して、面白さは すずめの戸締り>RRR>シン・仮面ライダー≒スラムダンク といった所だろうか。見る前の期待値とはほぼ真逆の結果となった。

まあ、「めちゃくちゃ期待値の高かったシン・仮面ライダー」と「まったく期待してなかったすずめの戸締り」に関しては、元のハードルに対する落差がよけいに評価に影響している面もあるかもしれない。

RRRに関しては内容は素晴らしかったのだが、まったく個人的な問題として、この時点で疲労がピークに達してしまっていた

何しろ朝9時に集合して、夜までずっと映画漬けになっていた状態からの3時間コースである。映画観るのって意外と体力使うんだね……。

そんな状態でこの名作に臨んでしまったのは勿体なかったかもしれない。心身ともに万全なら、1本目に観たのがRRRだったら、また違う評価になっていたかも。