不眠症(入眠困難・中途覚醒)と整体治療
患者Nさん=41才-女性-主婦/会社員の症例
① Nさんの病歴・・・
患者Nさんは、25才の時の腹部手術とその時の手術ミスの後遺症により、それ以降この16年間の間に何度も腹部の疾患とその治療-手術を繰り返してきたそうです。その結果、今では下記の様な多くの愁訴に悩まされているそうです。
・胸の進行性のケロイド
・腹部の冷え、ガス、残留便、軟便
・会陰部が剥がれ落ちそうな排卵痛
・胆石症の発作
・体幹と首の不随意運動障害 (ジストニア)
これらの治療の為に20件を超える医療機関を受診されましたがどこも全く効果が出ず、そのせいか近年はうつ気味で、入眠困難(就寝後2時間以上眠れない)や中途覚醒(ほぼ毎日、1時間に一度目が覚める)などの不眠症も新たに加わった状態だそうです。
② Nさんの診察
・Nさんは、16年前に左右とも卵巣嚢腫の手術をされています。その際、手術ミスで膀胱と小腸の一部を切除してしまい、開腹手術の後もしばらく入院していたそうです。
・退院後もしばしばイレウスで入退院を繰り返していたそうです。
・12年前に前置胎盤の為に帝王切開をしています。その際、小腸に壊死部がある事が分かり、同部分の切除術もされています。
・最近の定期検診で、下腹部臓器に癒着している部位がかなり広がっていて、特に左右卵巣付近がひどいそうです。
・不正性器出血はないそうです。オリモノに特段の異常(☚悪臭・血性・膿性など)はないそうです。
・食欲は普通で排便は毎日あるそうです。ほとんど軟便で、血便などは無いそうです。腹痛もほとんど無いそうです。微熱などの全身所見もありませんでした。
・血圧は上が90mmHgで、下は60 mmHgだそうです。血液検査で異常を指摘されたことは一度も無いそうです。
・甲状腺の腫脹はありませんでした。
・左右の前頸部の筋肉群(頸部交感神経幹部)に著明な緊張と圧痛がありました。
・右鎖骨上窩に著明な緊張と圧痛がありました。
・頭顔面や上肢あるいは下肢に浮腫みはありませんでした。
・空咳は常時あるそうですが、痰や呼吸困難は無いそうです。
・胸部聴診上、特段の所見はありませんでした。
・右胸骨右縁(R1~7)に著明な硬化と圧痛がありました。
・腹部聴診上、グル音は弱く聴取出来ました。血管雑音は聴取出来ませんでした。
・腹部打診上、全般的に鼓音を聴取出来ました。
・腹部触診上、平坦-軟でやや膨隆気味ですが、腫瘤感や抵抗感はありませんでした。肝脾腫もありませんでした。しかし、腹部全般的に消化管平滑筋の緊張感-柔軟感(トーヌス)は無い状態でした。胆嚢底は右季肋部の下で少し膨張して感触で触診できました。表面は緊張しやや凹凸がありました。
・心肺系の既往歴はありませんでした。
③ 治療目標と整体治療
⑴ 頸部交感神経幹の絞扼を解放する
・頸部交感神経幹解放テクニック
⑵ Nさんの他の愁訴を改善する (下記参照)
・胸の進行性のケロイド
・腹部の冷え、ガス、残留便、軟便
・会陰部が剥がれ落ちそうな排卵痛
・胆石症の発作
・体幹と首の不随意運動障害 (ジストニア)
④ 経過と結果・・・
・他の愁訴と同時並行して不眠治療をしてきましたが、4診目まで効果は出ませんでした。しかし、5診目来院時に「少し寝やすくなってきました」とNさんは仰っていました。
・6診目、7診目と寝やすくなってきているそうで、8診目には「かなり快眠状態です。30分くらいで入眠し、その後は一度も目が覚める事無くグッスリと眠れる日が続いています」と、仰っていました。
⑤ 今回の症例の概説、、、
・今回のNさんの不眠の原因は、以前は「症候性うつ」と呼ばれる様な状態であったのかもしれません。つまり症候性うつとは、何らかの慢性疾患による身体的症状の持続による心労-抑うつ状態がその本体、と考えられている病態で、今回のNさんの症例はそれによる不眠症なのかもしれません。Nさんは上記の様に多数の複雑な身体的愁訴に長年苦しんでいるのですから、これが当てはまる可能性は高いと思われます。
・従って症候性うつは精神的なアプローチも大切ですが、第一義的には「その身体的愁訴の解消」にあり、それが解決すれば自ずとうつ状態も、つまり不眠症も改善していく可能性の高い病態だと考えられます。
・当然ですが、その身体的愁訴による不快感も睡眠障害の原因になりますから、それらの身体的愁訴を解消して不快感を減ずることも、不眠解消の治療目標になります。
・また、当院の治験例コラムでも何度かお話ししている通り、整体業界では不眠の大きな原因の一つとして「頸部交感神経幹の緊張」があります。同部への整体治療で比較的早期に不眠が改善するケースは多々あります。Nさんにもその徴候はありました。
● 「眠たさと倦怠感の整体治療」
患者Kさん=28才-男性/会社員の症例
● 「うつ病で睡眠薬を処方されている不眠症患者さんの整体治療」
患者Rさん=48才-女性-主婦の症例
・従って、Nさんには上記③「治療目標と整体治療」に掲げる様に、
⑵ Nさんの他の愁訴を改善する
各種整体治療と併行して、
⑴ 頸部交感神経幹の絞扼を解放する
・頸部交感神経幹解放テクニック
も毎回施術する事で、頚部交感神経幹の解放効果だけでなく、他の整体治療による多くの愁訴の軽減-解消効果の影響も加わり、その相乗効果により、わずか5診目から不眠改善の効果が発現してきたのでは、と考えます。
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