患者Nさん=41才-女性-主婦/会社員の症例
患者Nさんは、生理痛はほとんど無いそうですが、排卵痛が強く、何年も前から「会陰部が抜け落ちそうな重い痛み」があるそうです。婦人科で色々な治療をされたそうですが、あまり効果が無かったそうです。鍼灸や漢方、整体、マッサージ、接骨などを試しましたが、どれも効果がなく、相変わらず排卵時には苦しいそうです。
・Nさんは、16年前に左右とも卵巣嚢腫の手術をされています。その際、手術ミスで膀胱と小腸の一部を切除してしまい、開腹手術の後もしばらく入院していたそうです。
・退院後もしばしばイレウスで入退院を繰り返していたそうです。
・12年前に前置胎盤の為に帝王切開をしています。その際、小腸に壊死部がある事が分かり、同部分の切除術もされています。
・最近の定期検診で、下腹部臓器に癒着している部位がかなり広がっていて、特に左右卵巣付近がひどいそうです。
・不正性器出血はないそうです。オリモノに特段の異常(☚悪臭・血性・膿性など)はないそうです。
・食欲は普通で排便は毎日あるそうです。微熱などの全身所見もありませんでした。
・血圧は上が90/60 mmHgだそうです。現在は、血液検査で異常を指摘されたことは無いそうです。
・胸部聴診上、特段の所見はありませんでした。
・腹部聴診上、グル音は弱く聴取出来ました。血管雑音は聴取出来ませんでした。
・腹部打診上、全般的に鼓音を聴取出来ました。
・腹部触診上、平坦-軟でやや膨隆気味ですが、腫瘤感や抵抗感はありませんでした。子宮底は触診できましたが、可動性はありませんでした。
⑴ 小腸や膀胱、子宮、卵管-卵巣などの下腹部臓器の癒着を解放する
⑵ ダグラス窩の癒着を解放し、同部の過敏状態を軽減する
⑶ 卵管-卵巣を定位置に戻して卵管采と卵巣を近づけ、排卵された卵子(卵胞液)を腹腔(特にダグラス窩)に流出させないようにする (☚水路を解消する)
・平滑筋テクニック
・子宮底解放テクニック
・卵管-卵巣解放テクニック
・5診目来院時、
・9診目来院時、
・会陰部痛は排卵時の一日だけですから、子宮頸管炎や腫瘍、あるいは外陰部炎や膣炎・膣癌などの慢性・進行性の疾患による可能性は低いと思われ、可能性として、排卵された卵子又は卵胞液がその痛みを誘発する刺激源である事は、容易に想像できます。
・また、今回のNさんの排卵痛部位は会陰部ですから、このケースのほとんどは「ダグラス窩」に起因する事が大半です。従って、上記事実を整理すると、以下の仮説が成り立ちます。
❶…ダグラス窩が(内膜症などで)過敏な状態になっていて、少しの刺激で痛みが生じやすくなっている
❷…ダグラス窩に向けての卵子(卵胞液)の「水路(ミズミチ)」が形成-構造化されている
➌…排卵された卵子と卵胞液が水路から容易にダグラス窩に滲出し同部が刺激され、排卵痛が生じる
・②の「Nさんの診察」でも記した通り、Nさんは婦人科疾患やその治療による医療ミス、帝王切開、その後の後遺障害などにより、腹部臓器が手術時の操作や血液、尿、糞便、膿、月経血、卵胞液などで「かきまぜられて」います。つまり、体幹の最下部に位置するか弱い婦人科臓器=子宮、卵管、卵巣はその影響をもろに受け、上記❶~➌の病理構造が成立してしまっているのかもしれません。
・この仮説従って治療計画を立てると、当然
⑴ 小腸や膀胱、子宮、卵管-卵巣などの下腹部臓器の癒着を解放する
⑵ ダグラス窩の癒着を解放し、同部の過敏状態を軽減する
⑶ 卵管-卵巣を定位置に戻して卵管采と卵巣を近づけ、排卵された卵子(卵胞液)を腹腔(特にダグラス窩)に流出させないようにする (☚水路を解消する)
となり、
・平滑筋テクニック (☚消化管や膀胱の癒着の解放)
・子宮底解放テクニック (☚ダグラス窩の解放と子宮の定位置への矯正)
・卵管-卵巣テクニック (☚卵管と卵巣の癒着を解放し、定位置に矯正する)
を、施術する事にしました。
・結果は予想以上の好結果で、治療開始後、初回の排卵から効果が現れ排卵痛がゼロだったことは、非常にラッキーだったと思います。
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