患者Sさん=24才-女性・パン製造販売店員の症例
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患者Sさんは、数年前から両下腿の後面=ふくろはぎにピリピリとした熱感様の痛みを感じるようになったそうです。
痛みは常時ありますが、立ち仕事なので、午後になるとかなりつらいそうです。病院でのレントゲン検査でも異常はなく、接骨院や整体、マッサージ、カイロプラクティックを受診されましたが、変化はないそうです。Sさんは別件で来院されていましたが、本症も併せて治療することになりました。
・痛む部位は主に下腿の後面-下半分の全面に渡る範囲だそうです。同部に発疹などはありませんでした。
・身長は156cmで体重は49kgだそうです。血圧は上が105mmHgですが下は覚えていないそうです。
・食欲はあり何でも食べるそうです。特にケーキ類などがお好きだそうです。
・高校生の時、甲状腺ホルモンの数値がやや低かったそうですが、成人してからは改善しているそうです。甲状腺は通常程度に蝕知でき、萎縮や腫脹・腫瘤はありませんでした。
・いわゆる不眠症の徴候はなく、普通に就寝しているそうです。ただ、仕事の関係上起床時間は朝の4時半ですから、普段は早めに寝ているそうです。
・両眼の軽度の痛み(違和感)があるそうです。瞳孔の位置は正中で、大きさは左右対称でした。眼球突出・陥没、眼瞼下垂、斜視はなく、眼振はなく眼球運動も正常でした。
・めまいや耳鳴りはないそうですが、朝から夕方まで頭がボ~ッとしてクラクラとふらついて歩行することが、数年前から週に1~2回ほどあるそうです。
・副鼻腔炎や口内炎はないそうです。
・就寝時だけでなく、日中でも気が付いたら歯を食いしばっていることがあり、歯医者より歯ぎしりの跡があることを指摘されているそうです(部位は覚えていないそうです)。
・通常の手足の動作に異常はないそうです。不随意運動や手の振戦もありませんでした。
・指-鼻試験やバレリーウテストは陰性でした。
・嚥下障害や構語障害もないそうです。
・慢性的な肩、首、腰のだるさがあるそうです。
・頸部前面-後面-側面の筋肉群が全面的に腫脹・緊張し、それぞれ圧痛がありました。両下肢の筋肉群も大腿四頭筋や内転筋群・ハムストリングを中心にパンパンに緊張していて、著名な圧痛がありました。
・軽度のS字型脊柱側弯症がありました。また、左側頭骨の制限がありました。
・月経周期は27日で、月経期間は5日タイプだそうです。月経血の量は普通くらいだそうです。生理痛はある時とない時がありますが、排卵痛はモヤモヤとした不快感があるそうです。その部位は下腹部やや左だそうです。
・お通じは下痢と便秘を繰り返すタイプだそうです。
・胸部及び頸部の聴診上、血管雑音等の特段の所見はありませんでした。
・腹部聴診上、血管雑音はなくグル音は通常程度に聴取できました。
・腹部触診上、全体的に軽度膨満感がありました。肝脾腫はありませんでした。右季肋部、盲腸部、S字結腸部から臍部にかけて緊張と圧痛がありました。腫瘤感はありませんでした。
・両下腿の静脈瘤はないそうですが、靴下の圧痕は深くありました。下腿の皮膚を術者の手指で囲むとスジが生じました。下肢の神経学検査で異常はありませんでした。
・学生時代はバレーボールなどをされていましたが、卒業後はほとんど運動はされていないそうです。時間があるときは読書することが多いそうです。
⑴ 下肢~腹部の静脈/リンパ管の排出力を改善する
・下肢静脈還流促進テクニック
・平滑筋テクニック
・腸骨はがしテクニック
・門脈開放テクニック
・皮膚ストレッチ・つまみテクニック
・運動-ストレッチ指導
・初診治療直後から、下腿の熱感様の痛みはほとんど消失していました。
・別件の治療のためにその後も通院されていましたが、2診目以降「両下腿の後面=ふくろはぎにピリピリとした熱感様の痛み」は解消していましたので、運動-ストレッチによる再発予防について説明して、本症の治療を終了しました。
・Sさんの今回の愁訴である「両下腿の後面=ふくろはぎにピリピリとした熱感様の痛み」は、足首の靴下の圧痕、デルマトームや末梢神経支配領域に合わない疼痛部位、熱感様の痛み、下腿皮膚のスジ、ケーキ類の多食、運動不足などから、ペインフルセルライトである可能性が高いと思われます。本症は何らかの原因によって古い脂質が排泄されにくくなり皮膚内に蓄積して生じますが、一番の要因は運動不足があります。
・Sさんも学生時代はスポーツをされていたようですが、その後はほとんど運動らしいことから遠ざかり、立ち仕事がメインになっていることから、栄養過多の上に下肢の静脈還流が障害され、古い脂質が下肢皮膚から排出しにくくなってしまったのかもしれません。現在は改善しているようですが、高校生時代に甲状腺ホルモンが一時期減少していたことも関連があるのかもしれません。
・本症はいわゆる坐骨神経痛などと間違われやすく見逃されやすい疾患ですが、しかし飽食の時代と言われて久しい昨今、特に運動不足な方に少なくなく(☚特に女子に多い=便秘や婦人科疾患などの下腹部の問題が影響か?!)、似たような愁訴をお持ちの方に対しては常に意識すべき疾患だと思います。
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