秋めいて、翳りゆく部屋・・・「ユーミン・サウンド」10曲選 | 徒然逍遥 ~電子版~

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こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。

訪問ありがとうございます。

 

その昔、まだ小学生だったが、ユーミン(荒井由実)の記事が掲載された雑誌で初めてその名に触れた。恐らくはアルバム『ひこうき雲』(73)か『MISSLIM』(74)がリリースされた頃だったと思う。当時、女性のシンガー・ソング・ライターとして、そして所謂ニュー・ミュージックの旗手として大注目のアーティストだったのだ。

まさかあの彼女の歌声を今でも耳にするとは予想だにしなかった時代である。

もっとも、特に個人史的に大きな影響を及ぼしたといふ事実は無く、ただ気付けば懐かしさを喚起させる楽曲群をつい口ずさんでいる程度なんだが。
それでも、かなり親しみを感じるアーティストであることには変わりがないので、ここらで気に入りのユーミン・サウンド10曲をチョイスしてみたよ。


【ユーミン・サウンド10曲選】
やさしさに包まれたなら(荒井由実)
74年、3枚目のシングル2ndアルバム「MISSLIM」にアルバムVer.が、初のベストアルバム「YUMING BRAND」(76)にシングルVer.が収録。


イメージとしては、春。中学生くらいの少女が、田舎道を走行する自動車の開け放った窓に載せた腕に顔をもたせて風に吹かれて景色を眺める。そんな画に伴奏するにぴったりの優しい曲に思える。牧歌的でカントリーソングを連想する。
若い映画ファンには『魔女の宅急便』(89)のエンディング・テーマとして知られているのではなかろうか。しかしむしろ、『となりのトトロ』(88)の自転車搭乗シーンなどに似合うような気がする。
個人的には歌詞よりも楽曲自体に惹かれる傾向が強いのだが、ユーミンに限ってはどちらも気になることが多い。

やさしさに包まれたなら

 

あの日に帰りたい(荒井由実)
75年、6枚目のシングルベストアルバム「YUMING BRAND」(76)収録。


歌詞パート“青春のうしろ姿を”とか謳いあげるが、21歳かそこらで既に老成したかのような歌詞を紡ぐといふのはやはり天賦の才ゆへか。『市民ケーン』(41)を世に問うたオーソン・ウェルズも26歳くらいだったが、ケーンの人生と末期をあれほどまでに描ききるとは。そんなことを連想させる。

ボサノバの曲調といふのもどこかアンニュイでもの思いに耽る雰囲気にぴったりだ。

あの日に帰りたい


翳りゆく部屋(荒井由実)
76年、7枚目のシングルベストアルバム「YUMING BRAND」にアルバムVer.収録。


イントロにパイプ・オルガン使用で掴みはばっちり。歌詞も“わたしが今、死んでも”と、不吉極まりない。演歌じゃあるまいに、当時のニュー・ミュージックには有り得ない表現だろう。

もちろん今だってJ・ポップにそんな歌詞は見受けられない。驚きの大胆な試みである。タイトルからして不安感横溢だ。が、サウンド的にはさほど陰気でないのが面白い。

陽が傾いてきた今日この頃、ふと思い出す楽曲。

翳りゆく部屋


卒業写真(荒井由実)
75年、3rdアルバム「COBALT HOUR」(75)収録。ハイ・ファイ・セットのデビュー・シングルでもある。


もはや解説不要の卒業ソング筆頭だ。ユーミンの歌詞がイメージ映像として脳裏に投影される。高架を走る電車。車内の吊り革。都会の雑踏。ハンガーに掛けられたスーツ。卒業アルバム。夕陽が射す校舎。片想い。“あなたは私の青春そのもの”のフレーズに心震える。
十人十色、それぞれの学生時代の痛痒い記憶を召喚させる力がある。最高に好きな曲だ。

卒業写真(ハイ・ファイ・セット)


中央フリーウェイ(荒井由実)
76年、4thアルバム「14番目の月」収録。ハイ・ファイ・セットへの提供でも知られる。


容易に映像化できるほどに描画的な歌詞が特徴。タイトルからして具体的である。調布基地=調布飛行場。競馬場=府中競馬場。ビール工場=サントリー武蔵野ブルワリー。但し、当時から調布基地は日本に返還されていて、すでに米軍基地としての機能は果たしていなかった。

歌詞は極めてロマンチックである。エンディングは主人公たちがそのまま夜空にフェードアウトしていくかのような余韻を残す。

中央フリーウェイ


埠頭を渡る風
78年、12枚目のシングル。同年発表の6thアルバム「流線形'80」に収録。


確かに夜間走行のクルマを想起させる音作りで疾走感に溢れている。

個人的にはあまり好ましく思えないマイナー調のサウンドなのに妙に心惹かれる。不思議である。これがユーミンの底力なのか。

タイトルも頬をなでる夜の潮風の感触を思い出させる効果あり。彼女の作品は五感を震わせるマジックが仕込んである。それも魅力のひとつであろう。

埠頭を渡る風


冷たい雨(荒井由実)
79年、7thアルバム「OLIVE」収録曲。75年、バンバンに提供した「『いちご白書』をもう一度」のB面。76年、ハイ・ファイ・セットがカバー。


「ルージュの伝言」を上回るヘヴィな歌詞内容。はっきり言って、修羅場に突入である。

なのに、ポップで軽やかなサウンドの対比が面白い。個人的にはハイ・ファイ・セットのカバーによる山本潤子Ver.が好きだ。

冷たい雨(ハイ・ファイ・セット)


DESTINY
79年、8thアルバム「悲しいほどお天気」収録。


超メジャー曲なのに、意外やシングルカットされていない。
巻頭から疾走感たっぷりの快調な滑り出し。ごきげんなナンバーかと思わせておきながらこれまた歌詞が鬱陶しいほどに真っ正直な心情描写で戸惑いを覚えるほど。

ただ、後半“冷たくされて、いつかは”あたりから転調してドラマチックに盛り上がる。ここは最高に素晴らしい音作りで、最近の表現ならトリハダもの。全体を通じて打楽器とピアノが際立つところがツボ。
歌詞は、女性心理をここまで開示していいのか。と、こっちがへどもどするほど舌鋒鋭くかつ軽快。中島みゆきではこうはいくまい。

安いサンダルの販売促進に寄与しただろうか?

DESTINY

 

青春のリグレット
85年、17thアルバム「DA・DI・DA」セルフカバーとして収録。


何と言っても“私を許さないで、憎んでも覚えてて”がインパクト大。最後の最後に“だって、せいいっぱい愛した。あなたを愛した”と〆る。さすが青春。

印象的なのは、TVドラマ『金曜日には花を買って』で、篠ひろ子が不倫相手の世良正則に決別を明言した際に“私を憎んで、覚えていて”みたいなセリフを吐いていたこと。ドラマは86年ごろだから、もしかしたら脚本家がこの歌からヒントを得たのかも知れない。

84年、麗美に提供した楽曲だが、当時ユーミンも三十路に突入。落ち着いて本当の意味で青春を回顧できる年齢になったのだろう。天賦の才を持つ者も、経験値を積むことでよりリアルな皮膚感覚で作詞作曲歌唱ができるようになったのではないか。

青春のリグレット

 

SWEET DREAMS
87年、22枚目のシングル19thアルバム「ダイアモンドダストが消えぬまに」アルバムVer.収録。


これは唯一歌詞を度外視して好みの曲でのチョイス。どこか懐かしさを感じさせる音作りに惹かれた。言うなれば竹内まりやが歌いそうな雰囲気でもある。

『波の数だけ抱きしめて』(91)にも起用されているが、もうこの頃はトレンディ・ドラマと連動してお洒落なアーティストとして見られるようになっていたと思う。バブリーな空気感漂う時代のアイコンだったのだ。

彼女と同じく女性の情念を歌わせても、中島みゆきは飽くまでも真っ向勝負である。ユーミンは、そこをポップでシティ感覚に満ちたカッコいいお化粧を施す。演歌系とエンタメ系の違いとでも言へようか。

SWEET DREAMS


次点:ルージュの伝言(荒井由実)
75年、5枚目のシングル3rdアルバム「COBALT HOUR」(75)収録。


内容的には結構ヘヴィな歌詞なんだが、軽やかなアメリカン・ポップスとでもいふべき作風で耳残り度の高い愛すべきサウンドだ。『魔女の宅急便』(89)のオープニング・テーマに起用されている。いきなり導入部で本作が流れるといふミスマッチ感覚に驚いたものだ。

ちょっとコアな動画が面白かった。カバーではなくユーミンの歌唱でどちらも聴き応えあり。

ルージュの伝言(DRUMパート強調)

ルージュの伝言(アナログ盤で聴く)


番外:ひこうき雲(荒井由実)
73年、2枚目のシングルB面1stアルバム「ひこうき雲」収録。


弱冠19歳でありながら作詞作曲しかも編曲まで手掛けるといふ天才性を発揮。マジで邦楽ニュー・ミュージック界のオーソン・ウェルズと言いたいほどだ。
“あの子の命は、ひこうき雲”のパートが凄い。♪の配列が、シロートでは一発で歌唱できない並びとなっている。しかも都合三回リピートされるが、それぞれビミョーに違っているように聴こえるのだ。松任谷正隆がその才能に惚れ込むのもむべなるかな。

ユーミンの原点。本人も我々も特別な思い入れがあるのでは。

ひこうき雲(Live ver.)

ひこうき雲

 


さてさて、40年あまり前のこと、カセットテープが傷んでしわが寄ってしまうことがままあった。俗に言う“ワカメ”である。ユーミンの歌声は凄く不安定でゆらゆらしていて、まるで“ワカメ”になった古テープのように聴こえたものだ。スタジオ録音ですらそうなのに、ライヴ音声での音を外しそうで外さない歌唱には聴いてるこっちが緊張の連続。

しかし、綱渡りのようにビミョーなバランスを崩さず堂々と人前で披露するんだから脱帽モノである。


繰り返しになるが、楽曲重視メロディ重視の自分でも、ユーミンの作品は歌詞と曲が絶対不可分の関係にあると思える。これすなはち、ユーミン作品の完成度の高さを物語っているのではなかろうか。

いや、どのアーティストだってそりゃそうだろう。と言われるかもしれない。だが、彼女は別格である。ZARDなどではこうはいかない。歌詞を無視しがちな自分が注目せざるを得ないのは珍しきこと。彼女の全曲を網羅して聴いていたわけじゃないけれど、少なくともこれら10曲に関してはそう言へよう。


本日も最後までお付き合い下さりありがとうございました。

 

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