■質問内容 1

採卵をして、無事凍結できた胚を融解胚移植予定です。

採卵までの間 サプリメントは、葉酸、ビタミンD、ビタミンE、亜鉛、コエンザイムQ10(ビタミンAを含む) を飲んでいたのですが、胚移植周期もこのまま同じサプリメントを続けて大丈夫なのでしょうか?継続した方が良いもの、控えた方が良いものがあれば 教えてください。

 

質問内容 2

今まで採卵前にイノシトールのサプリを飲んでいたのですが、受精卵を凍結できて、移植準備周期になりました。こんどは、着床率があがったり、流産率が下がる効果が期待されているサプリがあれば教えてください!

 

当院からの回答

現在、着床に関連して注目されており、摂取することが推奨される栄養素(サプリメント)は、不足すると着床率低下や流産に関与すると考えられているビタミンD、亜鉛、乳酸菌などになります。ただし摂取すれば必ずうまくいくと言えるものではありません。

 

【葉酸】

葉酸はビタミンB群の水溶性ビタミンで、妊娠を計画している女性は妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、1日葉酸0.4mgを摂取することで神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが知られています。 

 

【ビタミンD】 

 Fertil Steril 2014; 101: 447

ビタミンD欠乏では、インスリン抵抗性や多嚢胞性卵巣との関連性、卵胞発育や着床率低下の報告があり、ビタミンDが低下している場合にサプリが有効と考えられるのは、AMH低下の方、多嚢胞性卵巣症候群、月経困難症、乳がんリスク低下などが期待されています。

 

ビタミンDは、卵胞発育、着床、胎盤形成に重要な役割を担っていることが判明し、妊娠治療のみならず、不育治療、妊娠中の合併症(妊娠高血圧症候群、低体重児)の予防に繋がるのではないかと考えられています。ビタミンD不足では着床障害や妊娠率の低下を示します。

 

【ビタミンE】 

「胚移植に際して子宮内膜が薄い」ことに対してのビタミンEがおすすめする場合があります。 ビタミンEは脂溶性のビタミンで、細胞膜や脂質に豊富に存在し、それ自体が酸化されることによって、多価不飽和脂肪酸の酸化を防止します。食品では、植物油 (コーン、大豆、サフラワー油) や小麦胚芽、種実類などに多く含まれます。

 

J Assist Repro Genet 2012; 29: 325

卵巣刺激を用いた人工授精において、クロミッド+ビタミンE(400 IU/日)とクロミッドのみを比較したところ、子宮内膜はビタミンE投与群で有意に厚くなりましたが、着床率と妊娠率には有意差を認めませんでした。 

 

【亜鉛】 

血中の銅濃度が高い場合に、妊娠率(着床率)が低下すること(BMC Research Notes 2017; 10: 387)が厚生労働省の統計から、現代の日本人の食生活では銅の摂取量が必要以上に多く(必要量0.90mg/日、摂取量0.97mg/日)、亜鉛の摂取量が必要以上に低下(必要量10.0mg/日、摂取量6.5mg/日)していることが報告されています。

 

腸内の銅と亜鉛はどちらも小腸のMetallothioneinに結合して吸収されます。そのため、腸内の濃度が高い方がより多く吸収されることになります。

 

亜鉛のサプリメントは、腸内の亜鉛濃度を上昇させますので、結果的に血液中の亜鉛が増え銅が減ります。したがって、銅濃度が高い方には、着床改善の目的で亜鉛のサプリメントが有効となる可能性があります。

 

WHO(世界保健機関)によると、およそ3人に1人が亜鉛不足であることが報告され、生殖医学の領域では、受精、着床、妊娠予後に有利に作用することが知られています。

 

 

以下の記事も参考にしてください。

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着床不全(母体要因の検査と治療)

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