■質問内容
今まで採卵前にイノシトールのサプリを飲んでいたのですが、受精卵を凍結できて、移植準備周期になりました。こんどは、着床率があがったり、流産率が下がる効果が期待されているサプリがあれば教えてください!
■当院からの回答
現在、着床に関連して注目されており、摂取することが推奨される栄養素(サプリメント)は、不足すると着床率低下や流産に関与すると考えられているビタミンD、亜鉛、乳酸菌などになります。ただし摂取すれば必ずうまくいくと言えるものではありません。
★ ビタミンD
Fertil Steril 2014; 101: 447)
ビタミンDは、卵胞発育、着床、胎盤形成に重要な役割を担っていることが判明し、妊娠治療のみならず、不育治療、妊娠中の合併症(妊娠高血圧症候群、低体重児)の予防に繋がるのではないかと考えられています。ビタミンD不足では着床障害や妊娠率の低下を示します。
*どのような食品からビタミンDを摂取できますか?
- ビタミンDは野菜や穀類、豆、イモ類には、ほとんど含まれていません
- サケ、マグロ、サバといった脂肪性の魚はビタミンDの最良の供給源です
- 牛のレバー、チーズ、卵黄には、少量のビタミンDが含まれています
- キノコ類も、ビタミンDが含まれています
- ビタミンDは、多くの朝食用シリアル、いくつかの銘柄のオレンジジュース、ヨーグルト、マーガリン、豆乳に添加されています
*どうすれば効果的にビタミンDを増やせれますか?
J Bone Miner Res 2010; 25: 928
ビタミンD サプリは1 日で最も「食事量の多い食後すぐに服用する」のが良いとされています。
★ 亜鉛
WHO(世界保健機関)によると、およそ3人に1人が亜鉛不足であることが報告されてす。ます。亜鉛は様々な場面で必要な金属であり、生殖医学の領域では、受精、着床、妊娠予後に有利に作用することが知られています。
*亜鉛濃度と妊娠率
Nutrients 2019; 11: 1609.
妊娠前の血清亜鉛濃度は妊孕能に良好な影響を及ぼすことが示唆されています。
*亜鉛と不育症
FASEB J 2009; 23: 2244
不育症の検査項目のうち凝固機能検査のプロテインSとプロテインCは、血液が固まることを抑える働きがあります。その働きに異常があると、血液凝固が進み、子宮や胎盤で血栓ができます。亜鉛が不足すると、プロテインSのブレーキ機能が減少することが推測されます。
★ ラクトフェリン
プロバイオティクスとは、アンチバイオティクス(抗生物質)に対して提案された用語であり、共生を意味するプロバイオシス(probiosis、pro:共に、~のために、biosis:生きる)を語源としています。
子宮内フローラの治療は、善玉菌であるラクトバシルスを増加させるのが一般的な治療であり、乳酸菌膣錠やラクトフェリンのサプリを用います。
*ラクトフェリンの有効性について
- ラクトフェリンには女性生殖器内での細菌叢改善効があります。
- ラクトフェリン投与により子宮内・膣内にラクトバチルス優勢な細菌叢が形成されます
- ラクトフェリン投与により、炎症性サイトカインであるIL-6の血液&膣内の濃度が低下します
- 不妊治療への応用(子宮内膜のラクトバチルス増殖効果)が期待されます
*乳酸菌サプリメントの適応と方法
- 子宮内細菌叢検査(EMMA検査)でラクトバチルスが非優勢(90%未満)だった場合
- EMMA/ALICE 検査未実施でも、慢性子宮内膜炎が治癒しない、反復着床しない例
- 内服薬:当院処方ラクトフェリン3C:300mg(経口のみ)内服期間:1〜3ヶ月
- 膣座薬:乳酸菌膣錠で融解移植前日までに7錠(1錠/日)腟内挿入