【サプリメントの位置づけ】

摂取すれば、確実に卵巣機能を高められ、妊娠の確率が高まるような栄養成分は、残念ながら、現段階では存在しません。


卵巣が健全に機能し、質のよい卵子が排卵される頻度を高めるためには、バランスのとれた食事とウォーキングのような有酸素運動、そして、不規則な生活を避けさけることが大切です。


そのうえで、欠けがちな栄養素を補充する意味合いです。

2012年度におこなわれた厚生労働省の『「統合医療」のあり方に関する検討会』においては、「統合医療」を、「近代西洋医学を前提として、これに相補(補完)・代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協働して行うもの」と位置付けることとしています

詳細は、厚生労働省『統合医療』情報発信サイト(http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/about/index.html)をご参照ください

当院でも、下記のサプリメントをオプションとして女性の方にお勧めする場合があります。

なんでも摂取すれば良いのではなく、なにを目的として、バランスの良い食事と伴に、何を補おうとするか考えて使いましょう!

 

【葉酸】

葉酸はビタミンB群の水溶性ビタミンで、妊娠を計画している女性は妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、1日葉酸0.4mgを摂取することで神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが知られています。 

 

【L-カルニチン】
L- カルニチンはアミノ酸の一種で、「エネルギーの原料である脂肪」と結合し、「焼却炉であるミトコンドリア」に脂肪をスムーズに運び込む補助をするといわれています。ミトコンドリアが活発に働くことによって、質の良い卵子や精子を育て、受精卵の細胞分裂をサポートし、活性酸素などの攻撃から細胞を護るなどの効果が期待されています。

 

【コエンザイムQ10】

卵子の質は細胞質のミトコンドリアの数や活性度で決定されると推定されています。コエンザイムQ10を摂取することで、ミトコンドリアの活性度が高まり、卵巣機能が向上する効果が期待されています。

 

【ビタミンD】 

ビタミンD欠乏では、インスリン抵抗性や多嚢胞性卵巣との関連性、卵胞発育や着床率低下の報告があり、ビタミンDが低下している場合にサプリが有効と考えられるのは、AMH低下の方、多嚢胞性卵巣症候群、月経困難症、乳がんリスク低下などが期待されています。


一方、子宮内膜症の方にはビタミンDの過剰摂取は逆効果になります。

 

【DHEA:Dehydroepiandrosterone】
DHEA は、男性ホルモンや女性ホルモンの元になる物質です。老化によって崩れていくホルモンバランスを整える働きがあり、老化防止に対するサプリメントとして注目されています。卵巣予備機能低下(AMH低下など)により卵巣刺激に対する反応不良が予測される場合に2〜3ヶ月前より内服することにより、発育卵胞数の増加などが得られる場合があります。

 

【アルギニン】

アルギニンは主に身体の中で一酸化窒素(NO)に変わります。NOは、血管を拡げ血流を良くすると考えられます。子宮内膜の血流量を増して受精卵の着床環境を改善する効果が期待されています。

 

【亜鉛】 

血中の銅濃度が高い場合に、妊娠率(着床率)が低下すること(BMC Research Notes 2017; 10: 387

厚生労働省の統計から、現代の日本人の食生活では銅の摂取量が必要以上に多く(必要量0.90mg/日、摂取量0.97mg/日)、亜鉛の摂取量が必要以上に低下(必要量10.0mg/日、摂取量6.5mg/日)していることが報告されています。

腸内の銅と亜鉛はどちらも小腸のMetallothioneinに結合して吸収されます。そのため、腸内の濃度が高い方がより多く吸収されることになります。


亜鉛のサプリメントは、腸内の亜鉛濃度を上昇させますので、結果的に血液中の亜鉛が増え銅が減ります。したがって、銅濃度が高い方には、着床改善の目的で亜鉛のサプリメントが有効となる可能性があります。