『マッドマックス:フュリオサ』観に行く気なかったんだよ。
前作の『マッドマックス フューリーロード』(邦題『マッドマックス 怒りのデスロード』)劇場で観ての感想は当時ブログに書いてる。その時は高評価だったんだけど、のちにブルーレイで観たら不自然感がやたら目について。
要はデジタル映画なんだよ。俺の嫌いな。(この時とかこの時に理由を説明してる)
本来のマッドマックス、旧シリーズ
の魅力は
①メル・ギブソンの凄みとカリスマ性あるヒーローぶり
②交通事故のドキュメンタリー映画かってなぐらい命知らずなスタントと撮影で撮られたカーアクション
③オーストラリアで撮られた異様な光景・風景の良さ
④センスカッ飛び過ぎのプロダクションデザイン(衣装、小道具から車、セットまで色々)
で、②と③は生(リアル感、臨場感)の素晴らしさに満ちており、③と④は見事に世界観を成立させている。
テレビドラマは脚本と出演者で推進するものだが、映画は映像と音像で体感し疑似体験するものであるから、旧マッドマックスシリーズは映画的魅力に満ち溢れた素晴らしい映画だった。
『フューリーロード』はメイキング映像見るとちゃんと砂漠地帯みたいなとこで撮ってるしスタントもガッツリやって撮ってる。
ところが実際に完成した映画は全編デジタルで映像を加工しちまってる。砂嵐の内部のシーンみたいに撮影不能な場面はまぁいいでしょう。しかしそれ以外のシーンもみんなデジタル加工しちまって、エセ実写映画と化してる。
加工前の映像はロケ地といいスタントといい旧シリーズに負けず劣らずの映像でとても良かったのに。
70~80年代の生の凄さに溢れた映画を観て育ってきた俺からすると、CGやデジタル映像っていうのはものすごい安っぽさ・2次元感を感じるんである。
だから『フューリーロード』は俺の中で評価が落ちた。
で、『フュリオサ』の予告編見たら映像がモロにデジタル映画で、これ高い金払ってわざわざ観に行くもんじゃねェなと判断。(薄っぺらいデジタル映像なんぞはテレビやPCのモニター程度で見て十分。スマホで見たって構わねェぐらいだ。)
あともう1つ。
①の話。マッドマックスシリーズはガッツリ問答無用で漢の映画だった。そこが凄まじくカッコよかった。
ところが『フューリーロード』は男のマックスと女のフュリオサのW主演。でもまぁ許せる範疇ではあった。それぞれに良さがあって、フュリオサに偏り過ぎてもいなかったし。
しかし『フュリオサ』はタイトルからもわかる通り完全にフュリオサが主役。こうなると話は違ってくる。メル・ギブソンがいないどころか男が主役じゃないなら最早マッドマックスじゃないだろう。そのぐらい①は重要だった。
そうした諸々あって、観に行かないことにしたのだった。
んが。しかし。
エンタメを摂取したくて、自宅じゃなくて外で、なんか楽しみたいなーと。
今公開してる映画チェックするとコレといったのがない。そんな中で引っかかったのが『フュリオサ』の4D上映だった。
『フュリオサ』を映画として観に行くのではなく、単に4Dのアトラクションを楽しみに行こうか、と。
そういうワケで観る気なかった『フュリオサ』を4DXで観てきたのだった。
序盤のフュリオサの母親の活躍は見ごたえがある。キレッキレ。
しかしそれはマッドマックスの魅力とはまったく異なる。
それと、すっかりストーリーものになっちゃったなァと感じた。
いやストーリーというよりドラマで展開してはいくんだけど(「ストーリー」と「ドラマ」は違う)、フュリオサの流転の状況が描かれ続けて、ストーリー性を強く感じるんである。
『フューリーロード』はストーリーなんかないも同然で全編ほぼチェイスで展開して、そういう意味では映画として素晴らしかった。よくぞやったというね。
でも『フュリオサ』前半は物語を見せられ続けるという感じで、いや見ごたえはあるんで退屈はしないけど、マッドマックスじゃねーよなっていうかさ…。
ところが後半、チェイスやバトルシーンが多く展開するようになると、事態はとんでもないことに!
座席が揺れる揺れる揺れまくる! 気でも狂ったかぐらいの揺れっぷり!
あまりにガンガン揺れるんでシートから落ちそうになる(笑)。ちゃんと座ってんのにどんどんシートから身体が滑り落ちていくんだよ(笑)。何度座り直しても体が落ちてく。子供じゃないんだよ? 俺ガッツリ大人なんですけど?(苦笑) そのぐらい常軌を逸した揺れ。
両腕も脇を締めて体の中央寄りに置いてないとヒジが肘掛けにガツンガツンぶつかって痛ェ(苦笑)。
まぁ凄まじかったね。シートの可動域限界まで動かしてんじゃねェかっていうか『フュリオサ』の為にシート改造して可動域広げてねェかってぐらい超過激な動き方だった。
もうメチャメチャにされる。振り回されまくって蹂躙されるっていうかさ。
あまりに凄過ぎて笑っちゃったもの。たまんねーなコレ(笑)。
ジョン・トラボルタの言葉を借りれば「こいつぁトブぜ!」(by『ブロークンアロー』)
長州力の言い方を流用すれば“座ってみな。飛ぶぞ”
今まで何度か4Dで観てるけど最高峰な揺れっぷりだった。
スクリーンから目を離して客席を見ると、全部の座席が波打つようにすんげー揺れてる! それはもう見たことがないほど。
過去に4Dで観た時こんな座席動きまくってたっけ!? あまりのド派手な動きっぷりに、とんでもないものを見た気がした(笑)。マグニチュード9の大地震じゃないんだから。俺一応東日本大震災の被災者なんだよね… 今は都内在住だけどあの時仙台在住だったから、あの大地震を現地で食らってんの。その俺が言うんだから、いかにキテるかってことよ。
「安全のため、身長100㎝未満のお子さまは4DXをご利用いただけません。また、120㎝未満のお子さまは、保護者の方と一緒にお楽しみください。」
いやぁコレ「120㎝未満のお子さまは、保護者の方と一緒」でもヤベェぞ? 子供と老人はムリだろ!
「妊娠中の方、車いすの方、ご年配の方、体に疾患がある方、体調の優れない方、酒気を帯びた方、身体・精神的に敏感な方、車酔いしやすい方も4DXをご利用いただけません。」
まったくだ!
「貴重品や壊れやすいものはしっかりとお手元かスクリーン外に設置の専用ロッカーをご利用ください。(中略) お客さまの所持品が紛失・破損等した場合、保証はいたしかねますのでご了承ください。」
俺、4Dの時もバッグはロッカーに入れず膝の上に置いて鑑賞する人なんだけど、一応ファスナー閉めてバッグの口は塞いでたのよ。これ開きっ放しだったら中身飛び出してたんじゃねェの!?ってぐらいのクレイジーな揺れっぷりだった。
「お子さまの安全の為、チャイルドシートのご使用や、お子さまをひざの上に座らせての鑑賞は禁止させていただきます。」
もうムリムリ。転げ落ちるよ。
「水の出る演出は肘掛のスイッチ(右手側)でON/OFFを切り替えることができます。」
いいやオフっちゃダメだ。ぜひ全部堪能しよう。
水関係の場面、あと血の場面でも水飛んできたかな? 素晴らしいのは小便の場面まで水がハネてくる。悪ノリが過ぎる(笑)。
砂が巻き上がるような場面でスモッグが立ち昇るのはタイミングがちょっと遅い時もあったけど(煙ってゆっくり立ち昇るから、スクリーンの高さまで立ち昇った時にはもう次のカットに変わっちゃってたりね)、でもそうでない時は映像の手前に立ち昇るスモッグは立体感を生んでてナイス。
4Dあるある、無理くり動きをつけてて全然合ってない効果も多々ありつつも、
場内に風が吹く、銃撃で顔のすぐ傍をシュッとエアー、俯瞰や仰角でシートが前傾やのけぞり気味になる… 足元にもなんか来たし!
俺に言わせると4Dは映画において「体感」「疑似体験」足り得ないけどアトラクションとしては面白い。
そして『フュリオサ』はやり過ぎた(笑)。これ誉め言葉よ。ナイスだったよ。凄過ぎてもっかい行きたいぐらい。
ちなみに4DXは吹替しかなかった。
映画は基本的にはオリジナル音声で観るべき。ごく一部の例外は除く。昔のジャッキー・チェンとかサモハンのクンフー映画とか、『バッドボーイズ』シリーズなんかは吹替の方がイイ味出してたりする。でもやっぱ映画ってのは製作された国あるいは舞台になってる国を疑似体験できるのも面白味の1つなんで、基本的にその国の言語で観るべきなのだ。
でも吹替版のみってのは、4Dというアトラクション上映で字幕読むのは読んでるヒマねェだろ?ってことなのかね?
ま、今回は映画として観に行くのではなく あくまでアトラクションを楽しみに行くのでまぁいいかと。
で、本作の吹替は悪くなかった。ヘタクソな奴いなかったし。
映画としての感想は、
見ごたえはあったけど、やっぱデジタル臭が強い。そんなのはもうマッドマックスじゃない。
それに今回フュリオサを演じたアニャ・テイラー=ジョイの目力が凄いけど、あれデジタル加工してるでしょ? ありのままの映像じゃないはず。であるならアニャ・テイラー=ジョイの演技が凄い!って誉めるのはちょっと違う。
(実際問題 顔に不自然感がある。ハリウッドで実写映画化された『銃夢』のようなデジタルで作られたキャラのような。これはもう日常での女性の写真の画像加工からしてそう。アレの不自然感たるや、捕獲された宇宙人レベルだもんな。あれが魅力的と思ってる神経が理解できない。)
それから、フュリオサ=女が主役なんで、そういう意味でも「マッドマックス」じゃないよなっていう、①の話よ。
そもそも女性が主役のアクション映画ってファンタジーになっちゃうんだよ。しょうがないんだけど。生物学的にそもそも無理がある。体躯とか筋力の問題の話。
女にも女の強さがある。でもそれは殴ったり蹴ったりバカスカ銃撃ったり猛スピードで走行してるトラックの底部にしがみつくとかではない。
ガタイのいい女のアクションなら魅力ある。説得力も皆無というわけではない。でもフュリオサってスレンダーじゃん。『フューリーロード』ではシャーリーズ・セロン、今回はアニャ・テイラー=ジョイが演ってるけど、どっちも細身。『フューリーロード』のフュリオサにはたしかパワー系なアクションシーンはあまりなかったから説得力あまり削いではいなかった気がするが、今回はバリバリパワフルなアクションなんで、この細い人じゃ到底無理でしょうよっていうね。(シャーリーズ・セロンだってガンガン戦う諜報員役な『アトミックブロンド』みたいなのはやはり説得力に欠ける。)
マッドマックスは迫力が身上なんで、女性が主役ではそれを満たせないんである。
だからドラマ的には悪くないけど、デジタル映画であることと女のアクション問題とが相まって説得力や力強さは遺憾ながら低い。
あと④の話、今回はプロダクションデザインが弱かったね。カッ飛んでない。良かったのはディメンタスの乗ってたやつぐらいじゃない? バイク3台で引っ張ってる台車みたいなのに乗ってる。手綱持っててバイクに繋がってて、『ベン・ハー』の戦車レースの4頭馬車みたいな。バイクでアレをやっちゃうセンスがスゴイ。普通思いつかねーよ。思いついてもやろうとはしない(笑)。でもそれぐらいで、あとは特にコレといったのなかったろう?
パラグライダー良かったけど、あれはプロダクションデザインとは別の話だし。あれで映像&アクションが3次元になるのは良かったね。しかも離陸から空中上がってトラックの連中とバトり始めるまでワンカットで見せるのがまたナイス! カット割りまくり糞編集な映画だらけの現代でよくぞカット割らずに見せてくれた! これが映画だよなっていう。体感だよ体感。
それと要注意なのは、本エントリの冒頭で俺的に『フューリーロード』は劇場で観た時は高評価だったがブルーレイで観返したら評価落ちたって言ったろ? あれたぶんね…
『フュリオサ』も今回劇場で観て、かなり迫力あった。けどこれは音で騙されてるんだろうな。
CGとかデジタルって所詮コンピュータが作り出したものだからどうしても平面的なシロモノであり2次元感がついてまわるのは宿命的なんで、音響でカバーしてやらないとならない。映像だけだとペラペラだから迫力ある音響をつけてやると、映像の平面ぶり・人工感・不自然さ・空気感や質感の無さなどを観客に対して結構ごまかせるんである。
でも円盤でも配信でも自宅で観るとなると、大きめのモニターを持ってたとしても、デカいスピーカーまでは繋いでないだろ? 俺もそうだ。モニターはちょい大きめだけど、繋いでるスピーカーは¥3000ぐらいの安い小さいやつ(それでも何も繋がずテレビなどのスカスカ音質の内臓スピーカーから音出すよりはちょっとマシではあるけど。あとマンション=一応他人と共同生活といえるのであまりデカすぎる音も出せないし…)。
そういう自宅環境でデジタル映画を再生すると、デジタル映画のペラさを音響でカバーするというのが通用しなくなる。だから劇場鑑賞であんだけ迫力あったのがショボくなるというね。
『フュリオサ』もこのパターンになるだろう。音、結構迫力あったからね。裏を返せば映画館以外で観たらこんな迫力は感じない。デジタル映画の正体が露呈する。音でごまかされてるという事実がね。
でも端から映画としては期待せずアトラクションを楽しみに行った俺的には大満足した“イベント”だった。映画鑑賞というより最早イベント。ネットで感想見ると、なんかどうも実際問題『フュリオサ』の4DXの揺れは通常より凄いらしいね? (MX4Dではなく4DX。本作MX4Dでもやってるけど、そっちの揺れがどの程度かは知らない)。エキサイトメントが欲しい人は4DXオススメ。後半からきまくりやがるからさ、ぜひ楽しんでよ(笑)。
ワタクシはシアタス調布で観てきましたよん。
通常より凄い=イレギュラーなら、この機会にまたいっとく必要が絶対ある!と個人的には思ってる。
こんな体験はもう2度とできないかもしれない。希少価値かも!
“あのエキサイトメントを再び味わいたい!”と今後別の映画の4D上映観に行っても、こんなに凄まじく振り回される4D作品はもう現れないのではないか?
この先ずっと俺的にはどの映画の4D観ようとも物足りなく感じることになるんだろうな…
イッちゃった世界に踏み込んじゃったみたいなさ、もう戻れません、どれもこれも物足りない! あぁ『フュリオサ』最高だったな! チクショー! あの時に戻りてェよ。
…って、今まだやってっから!
だからまたライドオンするぜ!
ブチ上がれ!
これに乗り損ねたら
この波はもう2度と来ない!
今しかないんだ!
…元々は観に行く気なかった映画を、まさかこんなにアツく語ることになるとは思わなかった(笑)。
映画自体が気に入ったんじゃなくて、『フュリオサ』仕様の4DXが気に入った!ってことなんだけど。
もうなんだか気分は『ハートブルー』のラストのサーファー&犯罪者パトリック・スウェイジみたいな。最高の波が来てるのに警察が逮捕に押し寄せてきてて、最後にやらせてくれ! 生涯でこんな機会はもう2度と来ないんだ!って。
『フュリオサ』4DXもたぶんそう。今後こんなイカれた仕様の4DXはもうないんじゃないか? こんな機会はもう2度とないかもよ?
あともういっこ。
監督は旧作から現在まで全作ジョージ・ミラーだけど、『フューリーロード』の時も60代後半であれだけパワフルな映画撮ったのが凄かったけど、『フュリオサ』撮影時は77歳!? おじいちゃんでしょ普通に言えば。本当に全編ミラーが監督として仕切って撮ったのなら激賛すべきでしょ。シルベスター・スタローンに負けず劣らずのパワフルじいさんだよ。人としてかくありたいというね。歳食うと体力も落ちるけど情熱も失うからね。