さて、ここからが難関(苦笑)。
本作が評判悪いのはこの後半からなわけだ。
まったくマッドマックスらしくない状況に突入する。
砂漠で死にかけてたマックスは少年少女たちに救われる。
水のある土地。子供たちだけの集落。
彼らはかつて墜落した飛行機の乗客の生き残りで、外界を探索に行った機長の帰りをずっと待っている。
そして機長の教えに従い、“メモリー”と称して、こんなふうに文明が崩壊してしまった人類の過ちの歴史を口伝で伝承し続けている。
子供たちはマックスを機長とカン違い。鉄が空を飛ぶテクノロジーがあった事を知らず、マックスに飛ばせてと望む。出来るわきゃない。
外界に対する興味と恐怖があるのが子供なわけだが、一部が外の世界へ旅立とうとする。
マックス「ポケットに死神を飼ってるこの俺が言う。ここに留まれ」
外に出したくないのもムリはない。外には下品で野蛮でイカれててバイオレントなとんでもない連中がウヨウヨいるしな(笑)
イカれたバイカーとか狂ったハードゲイとかマスターブラスターとか敵にしてきたマックスにとっては、子供たちにとっても自分にとってもここを安住の地とするのが賢明なわけだ。
それともこれは、経験から語ってるのか、子供を外に出したくない親の感情なのか?
…俺ねぇ、ここらへんのシークエンス、あまり嫌いじゃないんだよ。
ピュアな子供たちと接する殺伐とした一匹狼マックスっていうギャップみたいな、らしくない展開・ドラマがかえって興味深いというかね。
見方によっては面白い方向に迷い込んだな、って感じ?(笑)
(女殺し屋みたいなのが…じゃない、子供嫌いの娼婦が子供を守って戦う『グロリア』って映画もあったな。シャロン・ストーンじゃなくてジーナ・ローランズの方ね。なんか印象に残ってる。)
それにね、この男・この世界観の行く末として、2方向あったと思うんだよ。
殺伐とした世界を極めっぱなしでイキっ放しか、どこかに何かしらをもってして着地するか。
で、後者に行ったわけだ。
このままじゃホントに人類は滅ぶよと。現代のあり方を見つめなおそうという。知らないけど。
でも俺にはそんなふうにも感じられる。前に言ったことあるけど
そして、それはこれだけ殺伐としたマッドマックスシリーズだからこそ、より効いてくるというか…
これだけ埃っぽくて血生臭い世界観でね、ついでに言やぁドッグフード食ってたりさ(笑)、この世界観で世界平和みたいなメッセージ性を含ませられると、少なくとも『ターミネーター2』よりは効くと思うけどね(笑)。
で、こんな後半が嫌いじゃない俺だけど、本作の日本のポスター&チラシのキャッチコピー「マックスがむかえた最強の敵!」はまぁ許すけど、
その下に書いてある「襲いかかる猛者たちのドームから激闘の荒野へなだれ込む! 壮絶! 史上最大の戦い!」ってのはね、ウソはついちゃいけないよって思うね(苦笑)。

一部の子供たちが集落を出ていってしまう。
追いかけたマックスはようやく彼らを見つける。そしてその先には煌々と灯る明かりが。
電気の無い世界で生きてきた子供たちにとって初めて目にする光景。
それはバータータウンだった。
侵入するマックスと子供たち。
たくさんの大人たちというのも、子供たちにとって珍しい光景(しかもインパクトある奴ばっか・笑)。
目にするもの出会うもの、すべてが新しい、珍しい。冒険だ。
(ただしここまでで、命を落とす子供が何人か描かれてるのも大事。)
子供たち「ここで何するの?」
マックス「小人を探す。頭がいい」
マスターをピュアな子供たちの生活に加えれば、きっと正しい文明を再興する。
独りぼっちになったマスターは、女王みたいなアウンティに恫喝されている。
マックスはマスターを連れ出すと、バータータウンの中で飾り物になってたトレインに乗り込む。

さてクライマックス。
マッドマックスシリーズならチェイスなしで終わるなどあり得ない。
というわけでトレインで逃げるマックスたちと、それをバイクや車で追うアウンティの軍団のチェイスが用意されている。
これは結構悪くないでしょ。PART2のクライマックス再びみたいな。
特にアイアンバー大活躍(笑)。思いっきりトロッコ?漕ぎまくってたり(笑える)、トレインに正面から突っ込んで爆発して生き延びてんだけどドリフの爆発ネタみたいに黒コゲになってトレインの先頭にビッタリ張り付いてたり(笑)、障害物をクリアし続けて「ふぅ」とか(笑)。
線路が途切れてて、マックスたちはトレインを降りると、遭遇した冒頭の略奪者の飛行機に乗り換える(廃車のトランクが地下空間への秘密の出入り口になってるのがいい味)。
飛行機だから滑走距離が要る。だが崖に行き着いてUターン。
ところが向こうからはアウンティの軍団が迫っていて、やはり滑走距離が足りない。
マックスは独りデューンバギーに乗って飛行機の前に出ると、軍団に突っ込んで滑走路を開く!
シリーズお馴染みの正面衝突もカマして、ツボは押さえてるんだよちゃんと。
…そういえばトレインの貨車はマスターの部屋になってて、文明機器がある。
子供たちの1人はソニックとか言ってレコードを使い方も知らず棒に紐で括りつけて宗教的な杖か何かのように持ってるんだけど、マックスがマスターのレコードプレーヤーでかけてやる場面が、なんかいいんだよな。
テクノロジーは過去の遺物で、この子供たちにとってそれは、今の俺たちにとってのアトランティス文明のような。
そしてマックスはテクノロジーの時代を知ってる。このへんにもマックスと子供たちの興味深いギャップがあるんだけど、レコードをかけてやる場面はなんていうのかなぁ、うまく言えないんだけど、ちょっと優しさとか切なさのようなものが漂う気がする。
(ついでに言えばそのレコードが英語の教材かなんかで、いきなり声が流れてきて子供たちがビクッとして、“では私の後に続いて言いなさい”みたいな言葉に従うのが微笑ましくて笑える。)

アウンティは「アンタもなかなかやるじゃない」と笑うと、マックスを殺さず立ち去る。なんか妙に爽やかな幕切れがいい。
軍団が去って独りになったマックスが滑走路のような平らな荒野を風に吹かれながら歩き出す、それをトラックバックしながら捉える映像も個人的に好き。
…一方、子供たちを乗せた飛行機はかつての都会の廃墟に辿り着く。街の廃墟ってのも俺の大好きな光景なんで、このラストシーンの映像も好き。
最後の夕闇?の街の光景なんか、SFみたいだ。



…というわけで、個人的にはシリーズで2番目に好きな本作。
俺的にPART1が劣るのは、メルが若すぎて軽い、まずこれ確実。
3のマックスは40代ぐらいに見える。シブい。カッコいい。(演じたメル・ギブソンはこの時まだ30歳になってない。)
俺は昔から若い奴にはあまりカッコよさを見出さなかったみたいで。『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファとか出崎版『宝島』のシルバーとか『ラストボーイスカウト』のブルース・ウィリスとか、人生刻んできたようなシブさと強さのある男を模範にしてきたからね。
あとねぇ、たぶん世界観が弱いのが原因かな。世界観っつーか景色ね。
いや1の風景もいいんだけどさ、俺的に中途半端っつーか、風景は異様なんだけどまだ荒廃しきってなくて、社会とか町というものがまだ機能している、それが俺が観てていまいちハマれないとこなのかも。
オーストラリアの田舎町観てたって面白くないもんな。でも荒野のハイウェイはいい感じという。
2は文明が失われて異様さと地球本来のスケール感だけが残った。これが画的にも雰囲気的にもすごくいい。
で、3の世界観は2の延長線上にある。文明の再興黎明期みたいな状態。1とはもう隔絶している。
2と3の世界観ってのはもはやファンタジーだからね。すこぶる埃まみれで荒っぽいファンタジーだけど、そこがいい。