他にも細かいところで観所ありまくり。

冒頭でブッ壊れた車(いきなり転がり落ちてくる眼球飛び出た遺体がナイス!)からマックスが漏れてるガソリンを集める場面、ボロ布かなんかでアスファルトにこぼれたガソリンも拭いてるんだけど、よく見ると血も混ざってるよね(笑)。
こういうとこも妙にディティールが細かいというかいい味出してるというか。

マックスが死者の持ち物漁ってる時に出てくるムキだしのオルゴール。
(核戦争後の荒廃した世界なんで、もう娯楽がほとんど無い。だから人はなんてことないちょっとした物とかを大事に持ってたり愛着もったりする。)

その後、なんかボボボボ…というかブブブブ…というか、意味不明な効果音が流れ始める。これも奇妙でイイ!

マックスは自分の車からガソリンを抜き取る野郎がいたら生きては逃がさんとばかりに、車体底部に爆弾を仕掛けている。ついでにその横にはナタも隠している。
この細部にまで行き届いた警戒心がまたそそる(笑)。

文明が破壊された世界なんであらゆる物が不足していて、武器も銃よりボウガン(弓矢を銃のように撃つやつ)がメインウェポンっぽい。族がボウガンを腕に装着してるのが機能性も画的にもいい。

族に捕まった石油施設の人間(マックスがガソリンくれと駆け引きしに行くとこから本作のドラマが動き出す)の光景がまたイカれてる。
車の屋根~フロントガラスに逆さに括りつけられてたり、車の先に後ろ手で磔にされてたり(しかもクライマックスではそのままタンクローリーに激突!)する。

施設の人間の中に女戦士がいる。この手の彩りや潤いの一切無い世界観で女は貴重。他にかわいい女のコも出てくるけど、通常の日常生活で見るより8割増で魅力的に見える(笑)。
そういえばジャイロキャプテンのセリフ、「思い出すなぁ…女の肌…マニキュア…香水…自転車のサドル…パンティー…覚えてるか」 よくわかんないのも混ざってるけど(笑)、荒んだ状況では女性の存在・魅力は異常にハネ上がる。
で 女戦士、結構美人なうえ、コスチュームがダイナミックなプロテクターでカラーは女性らしく(?)白! この女性意外にガタイがいいのか、かなり似合ってる。
女性が貴重な世界観とビジュアルの良さが相まって魅力的!

施設の中に野生児みたいなのがいるんだよ。猿みたいな、ライオン少年みたいなのが(笑)。
マックスによくなつくようになる。ブーメランがお気に入り。ちなみにウェズの愛人(♂)はこの子のブーメランで前頭部ザックリぶち割られて死亡(笑)。
人間関係を構築する気はないマックスは一緒に来ないか、人間らしい暮らしをしないかという人々の誘いを無下に断りとっとと出ていくのだが、
…たぶんもう人を喪う辛さが嫌なんだろうね。あと長らく独りでやってきて、他人の存在が煩わしくなったのかもしれない。
しつこくついてこようとするこの子を冷たくあしらって突き放すとこは寂しいなぁ…ちょっと泣ける。子供もかわいそうなんだけど、マックスの心情もわからんでもない。

ジャイロキャプテンは1人乗りのヘリを所有し、略奪者をハメて生き延びてきた、明るくて楽しい感じな男(マックスとは友情はないが損得だけでもない、奇妙な人間関係を展開してく)。殺伐とした本作の一服の清涼剤の1つ(笑)。
このヘリ、文明が崩壊した荒野の世界観な本作の風景の中では異質でいい味出してる。

本作鑑賞には缶詰必須(笑)。
ジャイロキャプテンから石油施設の情報をリークされたマックスが数日間、施設を様子見してる場面の野宿ぶりがいい感じ。野宿したくなるよなぁ(笑)。
食い物に事欠いてるし冷蔵庫なんて結構なモンはない世界なんで、マックスの食糧は缶詰である。しかもドッグフード!(笑) これも憧れたなぁ。思わずシャケ缶とか食いながら観たりさ(笑)。

…挙げ出したらキリねーな。
細かいとこでいい味出しまくりな小物とかアイディアがわんさか。
これはあれなのかな、前作はまだ“日常”があったじゃん、でも本作は文明が崩壊したから、世界観を支えるものがごっそり欠落、それを埋め合わせるようにいろんなアイテムやアイディアが投入されてるんじゃないかと思うんだけど、その投入したものがセンス良すぎ・悪ノリ効きすぎであまりにもナイスなんだよな(笑)。
結果的にオンリーワンといっていい独特な世界観を確立。



映画史に残る作品だよ。
この迫力、スケール感、臨場感、世界観。
凄い。素晴らしい。
シナリオを映像化する事ではなく、映像と音こそが「映画」なんだよ。視覚と聴覚にアクセスするのが映画なんだ。
観ないで書くつもりが思わず久々に観ちゃったんだけどさ、まぁもの凄い映画だよな、改めて観ても(笑)。

本作、中~高校生くらいの頃の俺にとってものすごく心地良い映画だった。
というのは荒涼とした世界観がたまんなかったわけ。
学校も会社も社会的ルールも煩わしい人間関係もない世界を、イカしたレザールックでドライブ三昧。広大な大地で野宿。
当時の俺にとっていわゆる“核戦争後の世界”というのは憧れだった(不謹慎な話なんだけどさ・苦笑)。
自由な世界というかね。
特に本作は好き勝手な格好して地球をほっつき歩くみたいな感にハマッたというか。
映像もスケールあるけど、精神が広大なんだよ。

あとバイオレンスの凄さはやっぱ特筆に価する。暴力を忌避してないどころか暴力が当たり前の世界。
文明が発展して暴力や死(特に日本のメディアは死体を見せないよね)からかけ離れてくけど、暴力や死こそがやはり現実であり真実であってね。
たしかに人は文化的になった事で獣ではなくなったんだけど、地球とか生態系といった現実で生きてる以上、やはり肉体とか戦うとか死といったものはついてまわる。
そこを如実に見せつけるのもまた映画の特質だと思うよ。
テレビじゃ出来ない。それは倫理規定っつーの? そういう問題もあるけど、それよりもテレビと映画の映像の質の違い。
奥行きや質感のある映画の映像と違って、平面的でドライなテレビ番組の映像ではそういう生々しいものは捉えきれないんだよ。

社会生活の日常でしか意識がまわってない人間には、こういう映画は撮れない。
本作を観る事は、広大&ハードな精神世界に触れる事でもある。