ミュージシャン、Youtuber、ライター……クリエイターとして、創作を楽しく、長く続けるためには、知っておくべきお金、ビジネスモデル、マナー、法律や契約のことが多々あります。クリエイターパートナー事業を展開する「しろしinc.」CEOの山田邦明さんは、弁護士としても、会社の代表としても、多くのクリエイターたちと仕事をしてきました。そんな山田さんが創作活動を続けていくために必須のスキルなどをまとめた著書『クリエイター1年目のビジネススキル図鑑』(KADOKAWA)が5月に発売になりました。今回は同書から、「税金の基本的な考え方」「確定申告( 青色、白色)」について一部抜粋します。
◆税金ってどんな種類があるの?
雇用契約による給与の場合、何らの手続きなく自動で税金を引かれて処理されます(天引きといいます)。そのため、会社に勤めている人は、税金を意識することが少ないと言えます。一方でクリエイターとして活動していく中で、給与以外の収入を得るようになると途端に税金が常に頭をちらつくようになります。そこで、まずはクリエイターとしておさえておくべき代表的な4つの税金の概観を見てみましょう。
【所得税】
1年間の所得に対して課される税金。所得によって税率が変化する。
【住民税】
自分の住む都道府県や市町村によって課される税金。
【個人事業税】
個人事業主の事業内容に応じて課される税金。
【消費税】
商品などを販売するときに課される税金。
◆税金はいつどうやって払えばいいの?
給与から税金の天引きがなされない場合、それぞれの税金によって支払いタイミングが異なります。支払い方法と合わせるとこちらの一覧になります。
【所得税】
2月16日~3月15日の間に確定申告を行い、納税する。
【住民税】
6月頃に届く納税通知書を受け取り、書類記載の期限までに納税する。
【個人事業税】
8月頃に届く納税通知書を受け取り、書類記載の期限までに納税する。
【消費税】
(対象者は)3月末日までに確定申告を行い、納税する。
「住民税」と「個人事業税」は、それぞれ届く納税通知書に記載されている金額を銀行等の金融機関で納税します。一方で、「所得税」と「消費税」は確定申告を自ら行い、その後納税することになります。「税金」は急に何か書類が届いて、お金が出ていく、と思っていると不安になるのですが、大きく4つの税金があって、それぞれ支払時期が決まっていると分かっていれば過度に怖がる必要はありません。また、給与の場合と比べて過度に損をしているということもありませんので、安心してください。
◆恐れることはない「確定申告」の常識
クリエイターが絶対に避けて通れないのが「確定申告」です。この確定申告の時期が近づくとSNSなどでは、クリエイターの悲鳴が多く聞こえますが、適切に理解しておけば、あまり恐れることはありません。ここでは確定申告についての理解を深めて、自分のやりやすい形を探していきましょう!確定申告とは、一般的に所得税の確定申告のこと。1年間の所得(売上から経費を差し引いた利益)をとりまとめ、所得にかかる税金を計算して確定させ、国(税務署)に納めるべき税額を報告(申告)する手続きのことをいいます。1年に1回、1月1日から12月31日の「所得」と「納める税額」を計算し、原則として、その翌年の2月16日から3月15日の間に税務署に報告・納税します。確定申告をしなかった場合、「納める税金に最高税率20%の無申告加算税がかかる」「納める税金に最高税率14.6%の延滞税がかかる」「青色申告特別控除の枠が、最大65万円から最大10万円に減額される」のようなリスクがあります。
◆私は確定申告すべき?しなくても大丈夫?
確定申告の対象者は、課税所得がプラスの方です。つまり、確定申告の対象かどうかは、
①売上の確定
②経費の確定
③各種控除の確定
を行い、課税所得を確定することで判断できます。売上については分かりやすいと思いますので、ここからは、「経費」と「各種控除」について見ていきましょう。
※ただし、課税所得がマイナスであったとしても、確定申告をすることは可能です。それによるメリットもあるので、気になる方はインターネットで「赤字 確定申告」などと調べてみてください。
◆経費なるかは「売り上げにつながるか」
経費とは、事業を行うために使用した費用のこと。つまり、その支出が経費になるかならないかの判断基準は、「売上につながるかどうか」です。そのため、同じ支出でも、事業内容によって経費になるかどうかが変わってくることがあり、それがクリエイターの混乱を招いているといえます。たとえば、「漫画」を購入した場合を例にしてみましょう。漫画家にとって他の人の漫画を研究することが自身の漫画の創作に活きるというのであれば、その漫画の購入代金は経費になります。一方で、完全に趣味で好きな漫画を買っている場合には、経費にすることはできません。このように、自身の事業の売上につながるか否かで分別し、経費を考えていきます。一般的には、このようにまとめることができます。
◆経費になるもの、ならないものとは?
【経費になるもの】
・事務所の家賃や光熱費等(自宅が事務所の場合は自宅の家賃や光熱費の一部を経費にすることができる)
・仕事に必要(常識の範囲内で「仕事に必要」と説明できればOK)な機材
・クライアントとの交際費
・仕事に必要な交通費
・仕事に必要な書籍や資料…など
【経費にならないもの】
・プライベートで使うもの
・住民税や所得税
・友人や家族との飲食費
・使っていない原材料
・在庫の商品…など
レシートや領収書。個人事業主になる前は、ただのゴミだと思っていたものが、金券に見え始めます。レシートや領収書をもらったら、しっかりと保存しておきましょう。飲み会や結婚式なども、あくまで売上につながる必要がありますが、経費にすることが可能です。あらゆる自分のお金を使う場面を、一度「経費になるか?」の観点で洗い直してみることをおすすめします。
◆寄付金、扶養…各種控除って何?
各種控除の中には所得控除というものがあります。代表的なものには、本人や家族などの1年間の医療費が一定金額を超えた場合に受けられる「医療費控除」、社会保険料を払っていると受けられる「社会保険料控除」、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料などを払っていると受けられる「生命保険料控除」。ふるさと納税を行うと受けられる「寄付金控除」、扶養家族がいる場合に受けられる「扶養控除」、合計所得金額が2,500万円以下の場合に誰でも受けられる「基礎控除」などがあります。これに加えて、青色確定申告をする場合には、「青色申告特別控除」などもあります(より詳しくは国税庁Webサイトで確認してみてください)。改めてまとめると「売上」を確定し、「経費」「各種控除」を引いてプラスになる人は確定申告が必要、マイナスの人は確定申告が不要、となります。なお、青色申告で「売上」ー「経費」がマイナスの際にも、来年以降に繰り越せる場合があるので、申告したほうがよい場合もあります。
<TEXT/しろしinc.CEO 山田邦明>
【山田邦明】
クリエイターパートナー事業を展開する「しろしinc.」CEO。岡山県津山市出身。京都大学法科大学院を卒業後、スタートアップ向け法律事務所で弁護士として活動。知的財産や資金調達に関する契約業務などに従事。 その後エンターテインメント会社アカツキに初期からジョイン。管理部門の立ち上げ、IPO業務の主担当として、上場に貢献

bizSPA!フレッシュ / 2022年7月19日 8時46分