政府による5年に1度の「年金財政検証」の結果が8月末に公表されました。年金水準は約30年後に現在より約2割下がる見通しなども示されましたが、公的年金が老後の大きな支えであることに、変わりはありません。日本の年金制度は「2階建て」になっています。国民年金(老齢基礎年金)が土台の「1階部分」で、保険料は月1万6410円(2019年度)。40年間保険料を納めた人が65歳から受け取り始めると、年金額は月約6万5000円です。会社員や公務員の場合、これに上乗せする「2階部分」の厚生年金にも加入し、より多くの年金額が受け取れます。毎月の給料から、原則厚生年金に含む形で国民年金の保険料も天引きされています。会社員は、1階と2階部分の保険料をまとめて支払い続けているのです。ところが、現在48歳以上の会社員は、もしかすると、大学卒業後にずっと会社勤めを続けていても、1階部分の国民年金を満額受給することができないかもしれません。国民年金が「任意加入」だった頃に学生時代を過ごし、任意で(自分の責任で)年金に入っていなかった、という扱いになっている可能性があるからです。

■「任意加入」時代に保険料を払わなかったツケ
国民年金は現在、20歳以上・60歳未満のすべての人に加入する義務がある「強制加入」の制度です。20歳以上の学生も、強制加入ですから保険料を払う義務がありますが、全体の65.3%が「学生納付特例制度」を利用しています。これは申請により在学中の保険料納付が猶予される制度です。この猶予期間については10年以内に国民年金保険料を追納すれば、将来もらえる年金額に影響はありません。でも、現在50歳前後の人が学生の頃、国民年金は強制ではなく、任意加入でした。20歳以上の学生でも国民年金が強制加入となったのは、1991年4月からです。それ以前の1961年4月?1991年3月に学生時代を過ごしたことのある人たちが老後の受給額で問題に見舞われるかもしれません。具体的には、1971年3月までに生まれた、現在48歳以上が当てはまりますが、その年代の人たちが20歳以上の学生だった頃に国民年金に入っていないと「任意未加入者」として扱われ、老齢基礎(あるいは65歳から受け取る)年金額で損することになるのです。具体的なケースで見ていきましょう。先日、ご相談に来られた会社員Aさんは1964年1月生まれの55歳、まさに「任意加入世代」でした。ねんきん定期便を拝見したところ、国民年金の加入期間は「0月」。大学を卒業してから会社員として働き続けてきたので厚生年金に加入してきたわけです。しかし学生時代に国民年金には加入していません。詳しい加入記録をねんきんネットで確認すると、1984年1月から1987年3月まで39カ月間が未加入でした。Aさんは1浪したので、20歳から23歳まで未加入の期間が3年余りと長引いていました。その結果、Aさんの老齢基礎年金の受給予定見込額は71万5092円と、19年度の満額受給額78万0100円に比べ6 万5008円少ないことがわかりました。仮にAさんが65歳から90歳まで年金受給すると、受け取り総額は満額に比べて162万5200円も少なくなります。Aさんはこの事実を知り、衝撃を受けたようでした。「学生時代の任意加入は親から耳にした記憶があります。就職したら厚生年金に加入するのだから国民年金も満額もらえるはずと、親も自分も軽く考えていました」と言います。

■60歳以降も保険料を納めると、年金額を増やせる
Aさんのように、国民年金が任意加入だった時代に加入しなかった場合には「任意未加入者」として扱われます。任意未加入期間については合算対象期間とされ、受給資格期間にカウントされるものの、年金額には反映されません。受給資格期間には含まれるのに年金額には反映されないので、「カラ期間」とも呼ばれます。Aさんはこのまま60歳まで厚生年金に加入すれば国民年金にも40年間加入したことになりますが、「カラ期間」があるせいで老齢基礎年金を満額もらえないのです。国民年金の保険料を納めることが可能な期間は、保険料の納期限から2年間です。特例措置として、納期限を延長する後納制度が設けられていましたが、2018年9月末で終了しました。「カラ期間」については保険料を追納することができないのです。Aさんは「万事休す……ですね」と落胆しました。しかし、満額の老齢基礎年金をもらえない人や、加入期間が受給に必要な10年に満たない人は、60歳以降に保険料を納めることができる「任意加入制度」があります。60歳以上65歳未満の5年間(納付月数480カ月まて゛)に国民年金保険料を納めることで、65歳から受け取る老齢基礎年金を増やすことができるのです。例えば、Aさんが60歳以降、任意加入制度を利用して国民年金の保険料を39カ月間納付した場合、納付総額は63万9990円で、年金増加額(年額)は6万3383円になります。これらの金額は令和元年度ベースでの試算ですが、Aさんが65歳から76歳まで約11年間年金受給すれば、年金増加額が保険料納付額を上回ることになります。
ただし、任意加入制度には4つの条件があり、すべてクリアする必要があります。①日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満であること、②老齢基礎年金の繰り上け゛支給を受けていないこと、③20歳以上60歳未満の保険料納付月数が480月(40年)未満であること、そして④厚生年金に加入していないこと――です。Aさんは3つ目までの条件をクリアしています。しかし4つ目については、60歳以降の働き方をどうするか、ということに関わってきます。現在、Aさんが勤務する会社の定年は60歳。それ以降は1年契約の嘱託社員になる再雇用制度があります。60歳以降も再雇用されて働く場合、厚生年金に加入し続けることになり、任意加入制度は利用できません。Aさんは60歳で退職し、個人事業主として起業することも考えていました。その場合は、厚生年金には加入しないことになりますから、国民年金の任意加入制度を利用できます。

■厚生年金も加入期間が長いほど、年金額は増える
ただ、Aさんにとって悩ましいのは、厚生年金に加入し続けると、任意加入制度が利用できないので老齢基礎年金(国民年金)を増やせない一方で、老齢厚生年金(厚生年金)の受給額は増やせるということです。しかも、60歳以降に厚生年金に加入すると、老齢厚生年金の経過的加算額が支給されるのです。厚生年金は加入年齢によって反映される年金が異なります。20歳から60歳までは老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬比例部分)、20歳以前と60歳以降は老齢厚生年金(報酬比例部分)+老齢厚生年金(経過的加算額)になります。つまり、60歳以降の厚生年金加入は、増えない老齢基礎年金を穴埋めする形にもなるのです(ただし、今の制度では70歳以降は厚生年金に原則として加入できません)。Aさんが60歳以降に39カ月厚生年金に加入すると、老齢厚生年金(経過的加算額)は6万3763円になります。納める厚生年金保険料は月2万7450円の39カ月分で107万550円です。国民年金の任意加入制度を利用する場合に比べ約43万560円多く保険料を納めることになりますが、Aさんが65歳から90歳まで年金受給する場合、受け取り総額は319万7275円と任意加入制度の場合より161万2700円多くなります。こうした制度について全然知らなかったAさん、60歳以降の働き方として「嘱託社員も悪くないですね」とのこと。60歳まであと5年、選択肢と対策がわかったことで不安が軽減したようでした。もう1つ、Aさんにお伝えしたのは、現在扶養内でパートをしているAさんの奥様について「扶養を外れて社会保険加入を考えたほうがいいかもしれない」ということです。というのも、年金財政検証の結果から、将来的に社会保険の扶養は縮小されることも予想されるからです。簡単にいうと、厚生年金加入者が増えれば年金財政はプラス効果が見込めるため、今後は扶養のバーが下がることも想定しておくべきです。

三原 由紀:プレ定年専門ファイナンシャルプランナー

東洋経済オンライン / 2019年11月2日 8時0分

 

 

司法統計によると、遺産分割の調停は7年間で2割も増えています(平成20年は1万202件、平成27年は1万2615件)。これは当事者同士の話し合いで解決できず、家庭裁判所へ持ち込まれるケースのことを指します。これらは遺族同士がもめにもめた結果、収拾がつかなくなったことを意味しますが、筆者が懸念するのは「2回目の相続」です。子にとって、親は父と母の2人。そのため、父→母という順でも、母→父という順でも、親の遺産を相続するタイミングは2回あります。例えば、1回目の父の相続でもめた場合、2回目の母の相続でもめたくないと思うのは当然です。同じ轍(てつ)を踏まないためには、どうしたらよいのでしょうか。
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は相談時)>
夫:福留浩二(70歳)  故人
妻:福留和歌子(66歳) 年金生活
長男:福留哲也(38歳) 会社員
長女:武田沙織(36歳) パートタイマー
■「どうせ俺が継ぐんだから」と言い出した長男
「長女には、また同じ思いをさせたくないんです!」
今回の相談者、福留和歌子さんはそんなふうに嘆きますが、和歌子さんが夫を亡くしたのは3年前。通夜から葬儀、そして四十九日の法要までの間、遺族は故人を失った悲しみに暮れていたので、ようやく遺産の話が出たのは逝去から半年後のことでした。遺品から夫の遺言書が見つからない中、遺産分割の協議が始まったのです。
・「どうせ俺が(福留家を)継ぐんだから、いいだろ? おふくろだって先は長くないんだから、いっそのこと、今!」
和歌子さんの長男、哲也さんはそう切り出したのですが、それは夫の遺産をすべて長男が相続することを意味していました。常識的に考えれば、次に亡くなるのは和歌子さん。そこで、和歌子さんの遺産に対して再度、相続が発生するのなら、最初から自分がすべて相続しておいた方が手間が省けるというのが長男の言い分です。長男は夫名義の土地に建物を建て、妻子と一緒に暮らしていました。長男の家は和歌子さんの家から目と鼻に先にあり、両親の老後の世話をするのは長男だというのが暗黙の了解でした。しかし、和歌子さんには長男だけでなく長女(沙織さん)もおり、母親としてはどちらもかわいい子です。長女は結婚して県外に住んでいるとはいえ、一方をひいきにするのは気が引けます。そのため、和歌子さんだけでなく長女にも相続を放棄してほしいと迫る長男のやり方は、少々乱暴でしょう。最終的に長男が相続するのなら遅かれ早かれ、結果は同じように思えますが、本当にそうなのでしょうか。今回の場合、法定相続分(法律で決められた相続分)は和歌子さんが2分の1、長男と長女が4分の1ずつなので、和歌子さんと長女には遺産を請求する権利があり、放棄するのが当然ではないのです。もし、長男の魂胆に生前に勘付いていれば、夫は遺言を残したでしょうが、残念ながら、長男は猫をかぶっていたので本性は分からずじまい。まさに相続が「争続」に変わった瞬間でした。
■夫の遺言がなかった反省を生かす
和歌子さんと長女が手をこまぬいていると、長男は次の一手を放ってきました。和歌子さんの家に弁護士事務所から手紙が届いたのです。「福留哲也氏から依頼を受けました。今後は私を通してください。哲也氏に直接連絡してはなりません」。和歌子さんと長男は親子なのに、「連絡するな!」とはあまりにも一方的です。和歌子さんは仕方なく弁護士と会ったのですが、「田舎ではそういう習わし(長男総取り)なんじゃないですか?」の一点張り。和歌子さんと長女が放棄する以外あり得ないという姿勢でした。和歌子さんは長女のため、やすやすと放棄するわけにいかず、弁護士との話し合いは平行線を辿ったのですが、それから1年後。今度は家庭裁判所から呼び出しの手紙が届いたのです。どうやら、長男が示談での解決を諦め、家庭裁判所へ遺産分割の調停を申し立てた模様。長男と和歌子さんの決裂は決定的なものとなりました。最終的には和歌子さんが譲歩し、長男の相続分を4分の1から2分の1へ引き上げ、和歌子さんは4分の1、長女も4分の1という形で調停が成立したのですが、逝去から解決まで3年もかかり、和歌子さんと長女は長い間、苦しい思いをし続けました。これほど長期化した理由の一つに、夫が遺言を残さなかったことが挙げられます。
・「私がいつまでも元気で健康ならいいのですが、私もいい年です。いつ何があるのか分かりません」
和歌子さんは弱音を吐きますが、やはり、夫が健在だった3年前と生活環境が変わったのは確かです。環境の変化は心身ともに負担が伴うので、以前に比べて病気やけがのリスクは高まっています。万が一の場合に備え、残された長女が困らないよう早め早めに遺言を作成しておくのが賢明でしょう。夫の遺産相続の反省を生かすという意味でも、遺言を残した方がよい理由は以下5つです。
(1)家庭裁判所の検認を経ずに遺産相続を進めることができる
・「(遺産分割の)調停は本当に嫌な感じでした」
和歌子さんはそう振り返りますが、検認とは遺言が有効かどうかを家庭裁判所がチェックする制度です。現在、高齢化の影響で亡くなる人が多く、検認を求める人が増えており、家庭裁判所は非常に混雑しています。検認の申し立てから完了まで半年以上待たされることが予想されます。検認の場合も家庭裁判所へ足を運ばなければなりません。しかも、裁判所内で見知らぬ調停委員や裁判官を相手に話すのは緊張しますし、遺言を巡って長女が長男と同じ部屋で待機するのは苦痛でしょう。そのため、和歌子さんは検認が不要な遺言を残すことを望んでいましたが、具体的にどうすればよいのでしょうか。
1つ目は「自筆証書遺言を法務局へ預ける」、2つ目は「公正証書遺言を作る」です。
1つ目の自筆証書遺言ですが、これは公証人役場を通さず自分で作った遺言のことです。自筆証書遺言でも法務局へ預ければ家庭裁判所の検認は不要ですが、この制度ができるのは2020年7月です。今回の場合、今すぐ遺言を作るのだから、新しい制度の開始に間に合いません。また、自筆証書遺言は(財産目録を除き)すべて和歌子さんが手書きをしなければなりません。「長女にすべて相続させる」という簡単な内容ならよいのですが、遺言執行人や報酬、葬儀の方法などを盛り込むと、もっと複雑で長文なので手書きは大変です。2つ目は公正証書遺言です。これは公証人の認証を得た公文書です。和歌子さんが公証人役場へ出向き、公証人の面前で署名をします。公証人が遺言の有効性を証明してくれるので家庭裁判所の検認は不要です。そのことを踏まえた上で、筆者は「遺言を公正証書にしましょう」と提案したのです。
■家族を亡くして、お金の心配をするのは大変
(2)口座を凍結されても必要なお金を引き出すことができる
「主人のときは、お金を引き出せなくて大変でした」
和歌子さんはそう回顧しますが、相続の場合、銀行に逝去の事実を伝えると本人の口座は凍結され、お金を引き出せなくなります。和歌子さんは夫が保険に入っておらず、一時金がなかったので、病院の医療費や施設の利用料、葬儀などの費用が発生して困ったそう。これらの費用を立て替えなければなりませんでしたが、大半の預金は夫名義で、和歌子さん名義の口座は限られていました。そのため、立て替え分を工面するのに苦労したようですが、故人を亡くして悲しみに暮れている中、お金の心配をしなければならないのは大変です。しかし、2018年7月に法律が改正され、口座が凍結されていても遺族が一定の金額まで引き出せるようになりました。具体的には「口座の残高×3分の1×法定相続人の人数(今回は2人)」ですが、残高が少なすぎて立て替え分に満たないようでは困ります。筆者は「残高が足りるように1つの口座にまとめましょう」とアドバイスしたのですが、残高を引き出すには、銀行名、支店名、口座番号が必要です。残された長女が、口座の在りかが分からないようでは元も子もありません。そのため、遺言には財産目録を添え、その中に和歌子さん名義の口座をすべて挙げておきました。

○亡くなった父親の遺産を巡って、長男側と、母親、長女側が「争続」状態に陥った一家のケースから、遺言を残すことのメリットを考えます。
亡くなった父親の遺産を巡って、長男側と、母親、長女側が「争続」状態に陥った一家のケース。後編の今回は引き続き、父親のときの反省を生かして、母親が遺言を残すことのメリットを見ていきます。
・遺言を残すことで長女が得られる安心
(3)遺言執行人を指定し、執行人の報酬を設定することができる
・「主人の名義変更はまだ終わっていないんですよ。いつになったら安心できるのでしょうか」
和歌子さんは、ため息交じりに言いますが、遺産分割の調停が終わってから3カ月が経過しようとしていました。しかし、預金や不動産の名義変更を誰が行うのか…調停調書(家庭裁判所が発行する書面)に書かれていないので、誰も動かずに時間ばかりが流れていきました。遺族を代表して遺産相続の手続きを行う人のことを遺言執行人といいます。遺言執行人は遺言の中で指定することが可能です。遺言執行人には遺産の名義変更だけでなく、遺品の整理を頼むこともできます。筆者は「一番大変なのは遺品をどうするかです。長女が困らないように、具体的に何を残し、何を残さないのかを一つ一つ挙げておきましょう」と助言しました。和歌子さんは長女に遺言執行人を頼みたいと口にしたのですが、大変な仕事を任せるのだから、報酬を設定することが可能です。和歌子さんの希望で報酬は100万円としました。長女は遺産の中から優先的に報酬を得ることが可能なので安心です。
(4)長女を安心させることができる
遺言によって誰かが有利になり、誰かが不利になるような内容を残すのなら、遺族に遺言の存在を知られた場合はトラブルになる可能性があります。誰にどのくらい相続させるのか…遺留分(どんな遺言を作っても残る相続分)を超えない範囲なら、自由に設定することができます。今回の場合、長女の上限は遺産の4分の3で、長男の下限は4分の1です。そのため、和歌子さんは遺言の中で長女に遺産の4分の3、長男に4分の1を相続させると書きました。さらに、将来的に和歌子さんの心身が衰え、人の助けが必要になった場合の話です。もし長女に一任する場合、身の回りの世話や介護、病院の入退院やデイケアなどの施設利用、買い物や掃除、食事の支度などを引き受けるのは大変です。長女の和歌子さんに対する貢献はお金のためではありませんが、とはいえ、和歌子さんがお金という形で報いたいと思うのは当然です。このように、法定相続分は長女、長男ともに2分の1ずつですが、遺言によって長女の取り分を増やせば、その分、長男の取り分は減ることを意味します。もし、遺言の存在が漏れたり、和歌子さんが「ちゃんと遺言を書いたから」と長女に伝えた結果、誤って口を滑らせたりして長男の耳に入ると困ります。なぜなら、長男は和歌子さんに対して「遺言を書き直してほしい」と迫ってくることが予想されるからです。筆者は「遺言のことを長女に伝えるかどうか悩ましいですね」と首をかしげたのですが、和歌子さんは長女を安心させるため、長男に隠しておくという前提ですが、長女に遺言の存在を知らせることにしたのです。
○遺言に財産目録を添えるメリット
(5)後から、別の遺産が出てくるのを防ぐことができる
「後から、私の知らない証券が出てきたので弱ってしまいました」
和歌子さんは当時、慌てふためいたようですが、調停調書には財産目録が添えられておらず、夫の「全財産」を把握していませんでした。調停調書には「ここで挙げた以外の財産は妻が相続する」という一文があったのですが、他の財産を見つけるたびに憎き長男に報告しなければならないのかと思うと、気がめいるのも無理はありません。筆者は「長女が振り回されないよう、遺言には財産目録をつけたらどうでしょうか」とアドバイスしたのですが、後から別の財産が出てくると、長女は長男と相続の話し合いをしなければなりません。残された長女が二転三転しないよう、遺言には財産目録を添付し、一つ残らず財産目録に盛り込みました。これで、長女は漏れなく財産を名義変更することができて安心です。

遺言公正証書

本職は遺言者・福留和歌子の嘱託により、証人*****、*****の立会の上、次の遺言の趣旨の口述を筆記しこの証書を作成する。

第1条 遺言者は財産のうち4分の3(豊橋市流山町4-19に所在する土地、建物を含む)を名古屋市中区下落合1-31-4 クレールマンション401 武田沙織に、4分の1を豊橋市流山町4-21 福留哲也に相続させる。

第2条 武田沙織が相続した豊橋市流山町4-19に所在する土地、建物は武田沙織の判断で処分して構わない。

第3条 武田沙織が相続した動産のうち、仏壇を除き、武田沙織の判断で処分して構わない。

第4条 本書遺言の執行者として以下の通り、指定する。
 住所 名古屋市中区下落合1-31-4 クレールマンション401
氏名 武田沙織

第5条 遺言の執行者の報酬を金100万円とする。

本旨外要件

会社員 遺言者 福留和歌子

上記遺言者は本職と面識がないので、法定の印鑑証明書をもって、人違いでないことを証明させた。

上記遺言者及び証人に読み聞かせたところ、各自筆記が正確なことを承諾し、以下にそれぞれ署名捺印する。

遺言者 福留和歌子
 証人 *****
 証人 *****

この証書は民法969条第1号乃至(ないし)第4号の方式により作成し、同条5条に基き本職が次の署名する。

*********************
 **地方法務局 公証人****

財産目録
1.不動産
 <土地>
 所在 豊橋市流山町 地番 4番19 地目 宅地 地積 197.00平方メートル

<建物>
 所在 豊橋市流山町 4番地19 家屋番号 4番19 種類 居宅
 構造 木造スレートぶき2階建 床面積 1階 64.00m2 2階 54.18平方メートル

2.預貯金
 豊橋銀行 流山支店 普通預金 355755 本証書作成時点で3085万1698円
ゆうちょ銀行 記号280 番号784521 本証書作成時点で50万1581円
 豊橋信用金庫 流山支店 普通預金 002587 本証書作成時点で3万445円

3.保険
かんぽ生命保険株式会社 証券番号 第785145号 受取人 武田沙織
 毎日生命保険相互会社 証券番号 ACE-89684 受取人 武田沙織

4.負債
なし

○長男は事実と向き合えるのか
このように、長男の暴挙のせいで、和歌子さんは「長女有利」の遺言をしたためるしかなかったのです。そのことは法律的に問題ないのですが、気持ち的には問題があります。長男が「母に疎まれていた」という事実を受け入れるには時間がかかるでしょうし、長男がいつまでも現実逃避を続ければ、また、夫のときのように遺産協議が長期化することになりかねません。何より、長男の行き過ぎた行動によって長男と長女の間に埋めがたい溝が生じたのは、残念でなりません。和歌子さんが天に召された後も、長男と長女が家族らしい付き合いをすることは難しそうです。

露木行政書士事務所代表 露木幸彦

オトナンサー / 2019年10月13日 9時10分(上)2019.10.14(下)

 

 

 

人手不足倒産の増加や高水準が続く有効求人倍率などを背景に、労働者派遣業に対する需要が高まっている。景気動向指数を見ても、近年は労働者派遣業が全体を上回っている状況だ。一方で、中小・零細企業を中心に派遣業者の倒産が増加している。帝国データバンクは、2008年以降の労働者派遣事業者の倒産動向について集計・分析した。それによると、18年の「労働者派遣業」の倒産件数は前年比2.7%増の76件で、3年ぶりに増加に転じた17年を上回った。負債規模別に見ると、18年は「5000万円未満」の倒産が68.4%(52件)を占めており、過去最多タイ。小規模倒産は15年以降に増加傾向で、17年に初めて構成比が70%を超えており、高止まりしている状態だ。帝国データバンク情報部の箕輪陽介氏は、「人手不足により売り手市場が加速するなかで、派遣スタッフの確保などで大手と中小・零細との格差拡大が進行していると見られる」と語る。空前の売り手市場といわれる今、派遣業界に何が起きているのか。箕輪氏に話を聞いた。

●大手への人材流出に苦しむ中小の派遣会社
――大手と中小で明暗が分かれている理由はなんでしょうか。
箕輪陽介氏(以下、箕輪)小規模事業者には2つの問題点があります。ひとつ目は、派遣スタッフが足りないこと。いい人材は大手が獲得してしまうため、スタッフ不足でビジネスが成立しなくなっています。2つ目は社員自体が不足していること。企業への営業活動や派遣スタッフの管理を行うためには一定の人材が必要ですが、その人材を確保できていないことが小規模事業者の大きな課題となっています。
――近年の派遣会社の倒産にはどのような特徴がありますか。
箕輪 石川県のプレミア・ジャパンは地元を中心に中堅規模に成長しましたが、リーマン・ショック後に経営が悪化し、中核社員の転職などもあって営業力が低下、17年いっぱいで事業停止となりました。静岡県の齊藤商事は主に工事現場への人材派遣を行っていましたが、同様に業績悪化で18年5月31日までに事業停止しています。大分県の日本ソフト工業はピーク時に約1000名の派遣社員を抱え、売上高は35億円を計上していました。しかし、東日本大震災で東北地方の工場が打撃を受けたことで受注が激減。13年には得意先が事業を縮小したため資金繰りが悪化し、17年3月に大分地裁に破産申請を行いました。派遣会社は人材がすべてなので、派遣スタッフや社員などの人材が流出してしまうと事業継続は難しくなります。この構図は物流業界も同じです。トラックなどのドライバーは条件のいいところに移っていき、人手不足に苦しむ運送会社が増えています。大手の派遣会社は福利厚生が手厚く、スキル向上などのサポート体制もしっかりしています。一方で、小規模事業者は派遣スタッフの囲い込みにコストをかけられません。人材の流動性が高まっていることで、必然的に小規模事業者には苦しい状況となっています。派遣業界に限らず、「攻勢に出る大手、消耗戦を強いられる中小」という構図は共通しています。
――人手不足の一方で、メガバンクなどの金融機関はリストラを続けていますね。
箕輪メガバンクではAI(人工知能)などを利用して人材の3割程度をカットし、省力化していくのがトレンドになっています。その3割の人材がどこに流れていくのかが問題ですね。今は、AIなどの技術革新によって少ない人材でビジネスを回す時代への過渡期といえます。
●改正派遣法で「派遣切り」「雇い止め」の危惧も
――特に地方の人手不足が深刻化していますが、地方の派遣会社の動向はどうですか。
箕輪 地方の場合、派遣先がほぼ固定されているケースが多いのですが、その派遣先が業績悪化したり事業所を閉鎖したりすると、派遣会社のほうも行き詰まってしまいます。そのため、地方の派遣会社の倒産も多いです。たとえば、前述した日本ソフト工業は精密機械メーカーのカメラファインダーの組立・加工などの業務に人材を派遣していましたが、派遣先業種の不況の影響を受けてしまいました。生産ラインを機械化するメーカーも多いため、今後も同様のケースは起きるかもしれません。
――15年9月に施行された改正労働者派遣法では、派遣社員の無期雇用への転換などの措置が設けられていますが、影響は出ていますか。
箕輪効果や弊害が顕在化するのは、これからでしょう。派遣社員が正規雇用になりやすくなることで、派遣会社とすれば新たな派遣スタッフを確保しなければならないため、困惑していることは確かです。また、本来は改正派遣法は派遣社員の処遇向上を推進するためのものですが、派遣先の「派遣切り」や「雇い止め」なども危惧されています。これらについても、引き続き注視していく必要があるでしょう。
(構成=長井雄一朗/ライター)

2019年4月9日 07:00 0

 

低金利が続いています。というより、金利は実質的にマイナス金利が続いています。マイナス金利とは預金者が利息をもらう代わりに、利息を払うことをいうのですが、すでに一部の法人預金では導入済みです。

○日本国債を持ち続けると元本割れする!?
市場関係者以外はほとんど見ていませんが、日本の金利はとても“ひどい”状態になっています。たとえば、日本国債の利回りは各年限でこのような水準です(各データベースより筆者作成、2019年9月27日時点)。
日本国債 2年:マイナス 0.33%
日本国債 5年:マイナス 0.37%
日本国債 10年:マイナス 0.25%
日本国債 30年:プラス 0.31%

これが意味するところは、読者が2年国債を今購入して満期まで持ち続けたとしても、利回りはマイナスなので元本割れするということです。単純計算では、1万円で2年債を買ったとすると、満期に帰ってくるのは9,934円にしかなりません(10,000 -(10,000×0.33%×2)= 9,934円)。日本で最も信用力が高い国債を買っても、持ち続けると必ず元本割れするわけですから、何のために国債を買うのかワケがわかりません。日本の国債ですから、まず信用リスクには問題ありません。格付けもA+(シングルAプラス:スタンダード&プアーズ)なのですが、マイナス金利で元本割れしますから、この格付けに意味があるかどうかも、ワケがわからなくなってきています。信用力では元本割れする可能性の低い日本国債が、持ち続けるとかならず元本割れするというパラドックスです。

○口座維持手数料が導入されたら?
既述の通り、機関投資家(銀行・証券・運用会社・事業法人といった大口投資家)の預金は実質的にマイナスになっています。つまり、普通預金や当座預金(小切手や手形を発行できる預金)にいくら何千億円預けていても、実質的な運用手数料が引かれます。嫌なら他の銀行に行ってね、です(他に行ってもマイナス金利ですが…)。なぜなら、銀行がその預金を日銀に預けて運用してもマイナス金利でしか運用できないからです。ということは、今後状況によっては個人預金にもマイナス金利が導入されるか、もしくは口座維持手数料が導入されるかもしれません。日本の銀行が口座維持手数料を過去に導入したのは聞いたことがありませんが、かつて米銀のシティバンク(リテール部門)が口座維持手数料を導入していました。コストをカバーするためには必要な措置ではあったのでしょう。実際、そのシティバンクを引き継いだSMBC信託銀行プレスティアでは口座維持手数料を導入しており、前月の月間平均総取引残高が20万円相当額(外貨)、または50万円(円預金)以下の場合は手数料が課されます※。ですので、日本の銀行が口座維持手数料を導入していないわけではありません。では、こうした手数料の支払いを避けるために預金者はどのように対応すればいいのでしょう。筆者が考える方法は以下の通りです。
(1)口座維持手数料のない銀行に移管する
(2)取引銀行をまとめ、口座維持手数料を課されない残高を保つ(一定額の定期預金を維持する)
もっとも、日本の全銀行が口座維持手数料を導入してしまうと防御策はないわけですが、その際は残高を常にゼロにしつつ当座貸越も設定せず、手数料を引き落とせないようにする等の過激な方法も”あり”でしょう。ある意味で、預金者が賢くなるチャンスではあります。

LIMO / 2019年10月3日 20時20分

 

 

クライドワークス(クラウドソーシングの業者)の副業のメリットデメリットを書きたいと思います。

○メリット
・自宅やネットカフェ等職場以外の場所にいながらにして小遣い稼ぎが出来る(ネット環境が整っていれば)
・仕事を選ぶことが出来る(自分に好きな仕事を受注してこなすことが出来る)
・自分の特技を仕事に生かせる可能性がある(あくまでも可能性)
・好きな時間に好きな仕事をすることが出来る


○デメリット
・単価の安い仕事が多い(単価の高い仕事もあるがある程度のスキルが必要なことが多い)
・単価の安い仕事であれば仕事を大量にこなさないと換金できない
大量に仕事をこなすと言うことはそれだけ労力や時間がかかると言うことです。
・20%の手数料が取られる(これが高いか安いかは不明であるが)
・仕事を終えて納品できても承認されるかどうかは不明である(承認されなければその労力や時間が無駄になる)
発注者がどういう基準で承認非承認にしているのか明確でないケースもある。
・承認非承認の判断結果が出るまでに時間がかかることがある(すぐに承認非承認の結果を出す人もいるがなかなか出さない人もいる)
この件については仕事の応募期限終了日から2週間以内に発注者が承認非承認の結果を出さない場合は全て承認になると言う仕組みになっている。しかし、仕事を受注して納品が終わってから承認非承認の結果が出るまでに時間がかかりすぎると言うこと思うのは僕だけだろうか(結構そう思っている人は多いようです)。発注者に直接催促(督促)をする(ポイントの有効期限の都合があるのでと催促(督促)すると)とある程度の人(発注者)が承認非承認の結果を出してくれますが、それでも承認非承認の結果を出さない人はいますね(「ひどい人(発注者)になると散々待たせて非承認にする」「大量に仕事を発注しまくる(それも単価が安い案件を発注しまくる)くせになかなか承認しない(忙しくて承認非承認の結果を出す暇がないのなら大量に仕事を発注するなよ)」など)。結局発注者側が「仕事を発注したいがお金を払いたくない(又は支払いを遅らせたい)」と言う理由で意図的に承認非承認を遅らせるということをしている人もいるようです。
・仕事を発注する「供給者」と仕事をこなす「需要者」のバランスにおいて問題がある(あくまでもこれは主観的意見です)
「単価が安くてもいいからお金が欲しい」と言う「需要者」が結構大量に登録しているのではなかろうか。


○結論
クラウドワークスでお金を稼いだ人もいるようですが稼げない人の方が多いように感じます。

 

インターネット上の求人広告サイトを巡り、求人情報を無料で掲載できると勧誘された事業者が、一定期間の利用後にサイト運営会社から高額な料金を請求されるトラブルが各地で相次いでいる。人手不足に悩む中小企業や個人事業主が標的になっており、支払いを拒んだ事業者側が訴えられたケースも出ている。悪質とみた京都や滋賀の弁護士が対策に乗り出した。
「無料で求人を載せませんか」。滋賀県内でレストランを経営する40代の男性に横浜市のサイト運営会社から電話があったのは4月上旬。ハローワークに求人を出した直後だった。感じのいい若い男の声。申込書には「初回無料キャンペーン」とあり、料金がかからないとの契約内容を何度も確認し、翌日に申し込んだ。約3週間後、32万円超の請求書が届いた。慌てて問い合わせたが、会社側は「契約時に説明した。申込書にも書いてある」と主張。細かな文字が並ぶ書面に改めて目を通すと、「解約申し入れがない限り、自動的に有料掲載へと移行」とあった。その後、民事訴訟を起こすとの督促状も届いたが、支払いには応じていない。男性は「移行の話は全く聞いていない」とした上で、「無料の『お試しキャンペーン』自体は珍しくない。タダだから怪しいとは思わなかった」と振り返る。県内の福祉施設で採用を担当する男性は、同じサイト運営会社の移行措置の「落とし穴」に気づきながら解約が遅れ、約30万円を請求された。「1件でも応募があればと欲が出た。わらにもすがる思いにつけ込んで許せない」と憤る。取材に対し、同社の担当者は「移行措置については必ず説明しており、契約に問題はない。悪質な同業他社と混同されている」などと話した。同様のサイトで共通するのは、電話で掲載を持ちかけ、2~3週間後に数十万円を要求するというものだ。消費者問題に取り組む各地の弁護士と情報交換する高良祐之弁護士(沖縄弁護士会)によると、同様の求人サイトは約20サイト存在し、相談は年明けから急増。沖縄や鳥取両県でそれぞれ50件程度の相談が確認されており、全国での被害規模は2千件を超す可能性が高いという。松林慧弁護士(滋賀弁護士会)らによると、京滋でも飲食業者や建設業者などから被害相談が寄せられている。背景には、深刻な人手不足があるとみられる。求人情報会社でつくる全国求人情報協会(東京)の調べでは、紙媒体を含む求人関連市場は約8530億円(2017年度)で、企業の採用難を背景に前年度より576億円拡大した。高良弁護士は「ネット求人は元手がかからないため、手っ取り早くもうけたい業者が中小企業を狙っている」と警鐘を鳴らす。同情報協会は3月、無料掲載をうたう求人広告に注意し、高額請求に対しては弁護士に相談するよう加盟社に通知した。広島では弁護団が結成されたほか、鳥取県弁護士会は注意を呼び掛ける会長声明を発表。京都弁護士会が6月に実施した無料電話相談には、京都府内外から7件が寄せられたといい、京都、滋賀の両弁護士会は今後も相談に応じていくとしている。

京都新聞社 2019/7/15(月) 13:00配信
 

 

 

 

・パート月収8万8000円未満は所得税が差し引かれないが……
パートやアルバイトで得る収入は、給与所得となります。給与所得の金額とは、年収から給与所得控除額を差し引いた金額になります。給与所得控除額は最低65万円ですから、 給与所得者の場合、パートの収入金額が103万円以下(65万円プラス所得税の基礎控除額38万円)で、ほかに所得がなければ所得税はかかりません。これが一般にいわれる103万円の壁になります。
ただし、アルバイトやパートの方の場合、長期休暇などである程度、時間が余裕があるときにフルタイムで働いてしまうと、その月の収入が多くなり、税金が引かれてしまうことがあります。 所得税法上、一定額以上の給与からは「源泉所得税を差し引く」ということが定められているからです。では、時給に勤務時間数をかけあわせたものが、即、手取りにならない基準はあるのでしょうか? 税金を差し引かれてしまった場合、その後どのように対応すれば税金を取り戻せるのでしょうか。とりまとめてみました。

・勤務先に課されている源泉徴収義務とは
所得税法上、一定額以上の給与からは所得税を天引きしなくてはならない義務が勤務先に課されています。 たとえば、月額給与、額面30万円をAさんに支払ったとして「Aさんに30万円満額支払ったから、Aさんから税金をとってくれ」というようなことは所得税法上認められておらず、勤務先が給与を支払う段階で天引きしなければならないこととされています。給与を支払う段階で天引きしなければならないので「源泉」といい、差し引く税目が所得税なので「源泉所得税」といいます。 そして、その事務手続きが勤務先にあるので「源泉徴収義務」というのです。

・給与から差し引かれる源泉所得税はこう決まる
たとえば、アルバイトやパートを始める場合、「扶養控除等(異動)申告書」という書式を勤務先に提出します。 この「扶養控除等(異動)申告書」という書式を勤務先に提出すると勤務先は「あっ、この人はココがメインの勤務先なんだな」ということになり源泉所得税額表の「甲欄」の記載に準じて源泉所得税を差し引く決まりとなっています。 源泉所得税額表は国税庁のホームページ等から入手することができます。具体的な源泉所得税額は社会保険料控除後の給与と扶養親族等の数の相関関係で決まります。設例を簡略化するためにアルバイトやパートの方を想定し扶親族の数が0人、社会保険加入対象外の方を想定して税額表を見ていきましょう。
そうするとアルバイトやパートの額面が、

・8万8000円未満→所得税差し引かれず
・8万8000円以上8万9000円未満→130円所得税を差し引く
といった具合に源泉所得税のルールが決まっていることがわかります。
毎月の給与から差し引かれる源泉所得税は正確ではない
しかし、逆からみると毎月の給与から差し引かれる源泉所得税は該当月の社会保険料控除後の給与と扶養親族等の数しか考慮されていないことになります。したがって、「学校のある時期はだいたい6万円程度なんだけど、休みの期間だけ10万5000円稼いだ」というような人の場合、10万5000円の月だけ
・10万5000円以上10万7000円未満→1030円所得税を差し引く
というようなことが起こることとなります。 しかし、この人を年収という観点からみると
・6万円×9カ月=54万円
・10万5000円×3カ月=31万5000円
となり、年収ベースでは85万5000円となります。年収ベースではかからないはずの所得税が、社会保険料控除後の給与と扶養親族等の数しか考慮されていないから差し引かれてしまっているのです。

・差し引かれてしまった源泉所得税はどう取り戻す??
給与所得者の場合、年収103万円までは税金がかかりません。しかし、上記の方の場合、年収ベースで85万5000円でも1030円×3カ月=3090円の源泉所得税が差し引かれ、その分手取りが少なくなっています。 この方が年末に同じ勤務先に勤め続ければ、通常、年末調整の対象者となり、年収換算で精算してくれるので1030円×3カ月=3090円差し引かれた源泉所得税が還付されます。 ただし、「アルバイトを途中で辞めた」あるいは「アルバイトを掛け持ちしている」というような人の場合、自分の年収を把握している人はアルバイト先ではなく、当事者本人ということになります。

・特定の月だけ収入が多ければ還付される可能性が大
「アルバイトを途中で辞めた」というような人は、年末調整の対象から外れますので、確定申告することによって差し引かれた源泉所得税が正確かどうかを精算することとなります。所得税の基本は1月1日から12月31日までの正しい所得の状況に基づいて税金を計算することにあるので、差し引かれた源泉所得税額が多ければ、確定申告によって税金が還付されることもありうるのです。 アルバイトやパートで源泉所得税が差し引かれたというようなケースで「スポット的に特定の月だけ収入が多かった」というような方は、還付される可能性が大きいといえます。 所得税の基本は働いた月ではなくあくまでも年収なので、年収ベースで税金を再計算するという視点を持つといいでしょう。


オールアバウト/2019年7月26日 11時30分

 

 

 

高齢となって最近、相続について考え始めました。妻は元気ですが、子どもはもともといません。自分の亡き後、身内の中で誰が財産を相続する権利があるのか気になります。法定相続人の範囲を教えてください。
◇ ◇ ◇
亡くなった人(被相続人)の財産を相続する権利が誰にあるかは民法で決められており、法定相続人と呼びます。遺言が残っていれば原則それに基づいて遺産を分ければよいのですが、残っていない場合、法定相続人の間で話し合って遺産を分ける必要があります。
 法定相続人になるのは故人にとっての配偶者と、子どもをはじめとする血族です。実際に誰が相続人になるかは前提により異なります。まず配偶者がいる場合、その人は常に法定相続人になります。相続に詳しい北野俊光弁護士は「法律上の婚姻関係がある場合が対象で、内縁などの事実婚は認められない。離婚していたら対象外」と話します。血族については優先順位が決まっており、高い人から順番に相続人になります。優先順位が最も高いのは子どもです。子どもがいれば、順位がそれよりも低い父母らは法定相続人にはなりません。ここでいう子どもには養子や認知を受けた婚外子も含まれます。相続時に子どもがすでに亡くなっていた場合、代襲相続といって、孫が相続人となることもあります。

■相続人いないと国の所有に
 相続が複雑になりがちなのが子どもがいない場合です。故人の父母ら直系尊属がまず相続人となり、みな亡くなっていれば権利が兄弟姉妹に移ります。さらに、その兄弟姉妹が亡くなっていれば今度は代襲相続により兄弟姉妹の子ども、つまり故人にとってのおいやめいにも権利が発生します。こうして相続人の関係は複雑となりその把握すら容易でなくなります。相続人がいない場合、遺産は原則として国の所有となります。家庭裁判所が相続財産管理人を選ぶといったことになります。弁護士などから選ばれた相続財産管理人は、債権を持つ人などがいないか確かめるため公告し、申し出て権利のある人には遺産を分け与えます。このほか故人と生前浅からぬ縁があった人は、特別縁故者として遺産の分与を受けられる可能性があります。例えば故人と生計をともにしていた内縁者や、療養に努めていた人です。期間内に申し出がなければ、残った遺産は相続財産管理人が現金化して国庫に納めます。
[日本経済新聞朝刊2019年6月29日付]