人生でもっとも高額な買い物といえばマイホーム。購入金額は数千万に上るため、現金一括でという人は少数派。大半の人が住宅ローンを利用してマイホームの夢を実現しています。しかし、30年超に及ぶこともある住宅ローン返済期間中、契約時の収入が途切れることなく継続する保証はどこにもなく、いくら高年収の世帯であっても住宅ローン破綻のリスクをゼロにすることはできません。詳しくみていきましょう。
〇“1億円超”の高級マンション…メインの購入者層になりつつあるパワーカップル
大半の人にとって、人生でもっとも高額な買い物となるマイホーム。住宅価格は数千万に上るため、多くの人が住宅ローンを利用します。ところで、住宅ローン利用者はどれくらいの金額を借りているものなのでしょうか。国土交通省の『令和4年度 住宅市場動向調査』によると、新築分譲マンションの「購入総額」は5,048万円。うち、自己資金(頭金)は1,438万円であり、差額の3,610万円を住宅ローンで調達しています。
同じく新築分譲マンションを初めて取得した世帯の平均的な世帯年収は923万円。注文住宅や分譲戸建住宅を購入した世帯よりも200万円近く収入が多いことには注意が必要ですが、年収に占める返済負担率は17.4%と、余裕のあるプランでローンを契約していることがわかります。住宅ローンをいくらまで借りられるのかは、年収のほか勤続年数、他社での借り入れ状況などに左右されます。そのため、最終的に希望した金額を借りられず、マイホームを諦めざるを得ないケースも。実際、同調査では新築分譲マンション購入者の4.9%が「融資条件を厳しくしなければ融資不可」、3.7%が「融資は一切できない」と融資を断られる経験をしていることがわかっています。先ほどみた通り、新築分譲マンション取得世帯の世帯年収がほかと比べて高い理由は、都市部に続々と供給された高級マンションを購入した富裕層が平均を引き上げているため。世帯年収700~800万円の一般的な世帯だけを切り取れば、融資を断られた経験がある人の割合はもう少し高まるものと思われます。その点、夫婦共働きで、ともに高い収入を得ている「勝ち組夫婦」には大きなアドバンテージがあります。最近では、1億円超の高級マンションのメインの購入者層になっているともいわれますが、仮に世帯年収1,500万円の夫婦が、ペアローンで1億円のマンションを購入したとしたら、返済プランはどうなるのでしょうか。世帯年収1,500万円に対し、適正な返済負担率とされる20~25%を当てはめると、年間返済額は300万~375万円、月々の返済額は25万~31万2,500円で、1人当たり12万~16万円程度。夫婦2人の稼ぎから考えれば、無理な金額ではなさそうです。金利が0.5%、30年で返済するプランなら、借入可能額は8,500万円ほど。1,500万円ほどの頭金を用意すれば、“億ション”にも余裕で手が届きます。
〇住宅ローン破綻に至る確率は4%…「ペアローンなら買えるかも」はとくに慎重に
たしかに、「世帯年収1,500万円」が未来永劫続くのであれば、上記の住宅購入プランには“余裕”があるかもしれません。しかし、住宅金融支援機構の調査では、住宅ローン破綻に至る確率は4%程度、25人に1人の割合であり、決して珍しいことではありません。もちろん、前述のような勝ち組夫婦も例外ではないのです。まず、2人の収入が途切れることなく続くことを前提にペアローンを組んでいる場合は注意が必要です。天災などの外的要因によって、勤め先の業績が大きな打撃を受ければ収入は減るでしょうし、「子を産まない」という選択をした夫婦が想定外に妊娠し、ライフプランが大きく変わるケースも考えられます。女性が産後に職場復帰を果たすケースは珍しくありませんが、出産前のポジションに同待遇で復帰できるかどうかは約束されてはおらず、やはり収入減となることも考えられます。また、いまや3組に1組が「離婚」に至るという現実も見逃せません。ペアローンで購入した物件を売却するには双方の同意が必要とされ、片方が拒否すれば売却は困難です。また、ペアローンでは双方が連帯保証人になっていることから、どちらか一方がローン返済を渋るようなことがあれば、もう一方の負担が倍増することになるのです。話し合いの結果、仮に2人が売却に同意したとしても、物件の時価がローン残債以下となる「オーバーローン」の状態であった場合、売却にあたっては差額分に相当する現金を差し入れる必要が生じます。それを受けて「ローン返済を続けながら住み続ける」という選択をすればプラスαの住居費を覚悟しなければなりませんし、離婚を原因とする住宅ローンの名義変更は困難を極めます。住宅ローンの返済期間は、通常30年ほどの長期戦です。それだけの長い期間には、現時点では「余裕」と思われる返済プランにも、「まさか」の事態は起こり得ます。ローンを利用している限り、誰もが上にみたようなリスクを負っていることを忘れてはなりませんが、とくに「ペアローンなら買えそう」な水準の物件を検討している場合は、より慎重になるべきかもしれません。

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2023年11月26日 7時30分