特急「新宿さざなみ」の概要
◆基本情報◆
- 運行区間:新宿~館山
- 所要時間:2時間10分
- 運行本数:2~3往復
- 使用車両:E257系500番台
- 座席種類:指定席
- 車内設備:コンセント有り、Wi-Fi無し
- 車内販売:無し
特急「新宿さざなみ」は新宿から中央本線、総武本線、外房線、内房線を経由して館山までを結ぶ列車です。
定期列車として運行されている特急「さざなみ」」は君津発着となっている一方、特急「新宿さざなみ」は土休日を中心に運行される臨時列車で、館山まで運行されるため都心と南房総を結ぶ唯一の特急列車となっています。
特急「新宿さざなみ」の停車駅

特急「新宿さざなみ」は1日2~3往復運行されており、停車駅は全列車共通となっています。
特急「さざなみ」が東京から京葉線を経由して蘇我から内房線に入線するのに対し、「新宿さざなみ」は御茶ノ水辺りから総武緩行線に転線し、錦糸町手前から総武快速線乗り入れて、千葉から外房線、内房線に入線します。
また「さざなみ」は上り列車が朝方、下り列車が夕方のみに運行されるライナー特急として運行されているのに対し、「新宿さざなみ」は観光需要に対応するため下り列車は午前中、上り列車は夕方に運行されています。
特急「新宿さざなみ」の使用車両

特急「新宿さざなみ」にはE257系500番台が使用されています。
E257系はJR東日本が2002年から投入した汎用型特急車両で、中央線特急用には0番台、房総特急用には500番台がそれぞれ投入されました。
500番台は両端の先頭車が貫通扉車となっており、基本編成は5両と短めに設定されている他、グリーン車が連結されていないモノクロス編成となっています。
E257系500番台は千葉地区の殆どの特急列車に投入されましたが、すでに東京湾アクアラインの開通で千葉地区の特急列車は廃止や減便・減車が行われるなど衰退傾向にあったため、余剰となった車両は他地域での波動運用に使用されている他、5500番台に改造された編成もあります。
特急「新宿さざなみ」の車内とお勧め座席

「新宿さざなみ」は全席指定席となっているため、えきねっとか指定券券売機などで予約する必要があります。
お勧めの座席は東京湾が見える AB席側です。


普通車の様子。リクライニングシートの構造は同時期に製造されたE653系にほぼ同じですが、クッションは若干薄いように感じます。クッションが硬いという評価を受けがちですが、個人的にはそこまで気にならず、むしろ最近の車両のシートの雰囲気に近いという気がしました。
シートピッチは広めに確保されており、2時間程度の乗車であれば十分快適に過ごせます。
特急「新宿さざなみ」の景色と見所の紹介(新宿~館山)
・新宿~錦糸町【都心のど真ん中の車窓を特急列車から堪能】
新宿駅の7番線から出発した「新宿さざなみ」は新宿の高層ビル群を眺めながら、代々木で山手線と別れ東京の都心を東へ進みます。
首都高速4号新宿線と並走し千駄ヶ谷を通過すると、明治神宮の外苑を沿うように進み車窓からは国立競技場が見えます。
信濃町を通過すると御所トンネルで赤坂離宮の敷地の地下を通過し、四ツ谷を過ぎると江戸城の外堀に沿って進みます。
中央線が山手線の内側に線路を通せたのは外堀の敷地を転用できたからであり、この辺りの景色は注目したいところです。
飯田橋駅の南側には広い鉄道用地が広がっていますが、ここにはかつて「飯田町」と呼ばれる貨物駅があり、主に周辺にある出版社や印刷所で使用する紙を運搬する拠点として、1999年まで使用されていました。
現在跡地は保線車両の置き場や、ガーデンエアタワーとして再開発されています。
御茶ノ水手前で「新宿さざなみ」は中央快速線から総武緩行線に転線してから、御茶ノ水を通過します。
御茶ノ水周辺は駿河台と呼ばれており、江戸時代にこの台地を人工的に掘って作られたのが現在流れている神田川です。
あまりにも深く掘られているため、地下鉄丸ノ内線も御茶ノ水周辺だけ地上に顔を出します。
総武緩行線は中央快速線の上り線を立体交差するため、急な坂を登ってから神田川橋梁で神田川と中央快速線を越えます。
車窓からは昌平橋と、かつて万世橋駅があったレンガ造りの中央線の高架橋、さらには神田郵便局などを始めとした高層ビル群など、東京の都心の光景を高い所から見下ろすことができ、東京都内でも屈指の絶景区間と言えるでしょう。
神田川を越えて繁華街が見えると、秋葉原を通過します。
今ではサブカルの街というイメージが強い秋葉原ですが、昔はヨドバシカメラがある所に船着き場があり、鉄道で運ばれた荷物を船に積み替えるための物流の一大拠点となっていました。
秋葉原駅のホームを通過しているときに鉄橋を渡る音がしますが、この鉄橋の下には神田川から分岐する水路が流れていました。
秋葉原を通過すると国道4号線と、その上を通る首都高速1号上野線を越えます。
道路を中心に整然とした街並みが広がっていますが、これは関東大震災からの復興の際に建設されたもので、現在の東京の大半の街並みは関東大震災からの復興の際に、一から再設計されました。
浅草橋を通過すると隅田川を越えて、都心の外側へ向かいます。
総武線は隅田川が障害となり開業からしばらくは両国が終点となっていましたが、関東大震災の復興事業の一環で総武本線隅田川橋梁が建設され、悲願の都心へ乗り入れを果たしました。
復興事業では総武線の鉄橋以外にも多くの道路橋が建設され、永代橋や蔵前橋、言問橋などが知られています。

隅田川を渡ると両国を通過します。今でこそ各駅停車しか停車しない小駅というイメージがある両国駅ですが、隅田川橋梁が架かるまでは総武線の終点であり、千葉方面へ向かう全ての列車が発着するターミナル駅でした。
上野駅にも負けずとも劣らない優美な駅舎が残っているのは、かつて両国が東京有数のターミナル駅であったことを伝えています。

かつての両国駅の敷地は非常に広大で、両国国技館や江戸東京博物館がある場所も昔は両国駅の一部でした。
総武本線が1932年に都心への乗り入れを果たし、1972年には東京トンネルの開通により東京駅地下ホームへの乗り入れを果たした後も、しばらくは両国駅発着の千葉方面へ向かう優等列車が運行されていたようですが、現在は1本も運行されていません。
しかし現在のホームから1段下がったところに、両国駅がターミナル駅だった頃からあるホームが団体列車用ホームとして残っており、現在も団体列車等がたまに使用することがあるようです。

両国駅の団体ホームを通過すると、総武快速線の線路が地上に顔を出し錦糸町に到着します。

・錦糸町~千葉【総武快速線を猛スピードで疾走】
錦糸町は東京都の東部を代表する繁華街で、周辺の駅と比べてもその賑わいには格段の差が感じられます。

錦糸町からは総武快速線の線路を走ります。これまでは総武緩行線を走る各駅停車に遠慮するように走っていましたが、総武快速線内は速い列車しか走っていないため、特急「新宿さざなみ」もようやく特急列車らしい走りっぷりを見せてくれます。
平井駅を通過する際には進行方向の右側に非電化の線路が見えますが、これは越中島貨物線と呼ばれるもので、都内では珍しい現役の非電化路線です。
現在は東京レールセンターからレールを運ぶ工事列車が主に使用しています。

平井を通過すると荒川と中川を越えて、江戸川区に入ります。
荒川と中川の間には堤防があり、その堤防を環状2号線が通っているのが特徴です。

荒川と中川を越えると新小岩に到着します。新小岩は快速も停車する主要駅で、駅周辺には区内屈指の繁華街が広がっています。
小岩を通過すると大きなカーブを描いて、江戸川を渡ると千葉県に入ります。
千葉県に入って最初に停車する駅が船橋です。駅がある船橋市は約65万人の人口を誇る大都市で、駅周辺には錦糸町にも負けず劣らずな繫華街が形成されています。
船橋や津田沼辺りはあまり千葉という実感が湧きませんが、幕張手前にある幕張車両センターを見ると房総特急で使用されているE257系500番台や、千葉県内のローカル線区で活躍する209系やE131系など、主に千葉県で活躍する車両が停まっているのが見えるため、千葉に来たなという実感が湧きます。

稲毛を通過すると留置線のような施設が見えますが、これは黒砂信号場と呼ばれる施設で、元々は千葉気動車区と呼ばれる巨大な車両基地がありました。
千葉県は1970年代くらいまで大半の区間が非電化のままで、気動車王国と呼べる状態でしたが電化が進み、総武本線の線路も高架化されたため廃止されました。
現在は千葉で折り返す列車が使用したり、臨時列車や回送列車が時間調整のために留置するために使用しています。

・千葉~君津【本格的に千葉県エリアに突入!都心ではあまり見えない車両も見物】
千葉駅は千葉県を代表する巨大ターミナル駅で、千葉県内を走る大半の列車が乗り入れます。南に向かって二股に線路が分岐する複雑な配線が特徴で、行き先や列車ごとに特定の番線に発着しないランダム発着が行われています。
1963年までの千葉駅は現在の位置よりも東側にあり、線路も西に向かって二股に分岐していたため、東京から房総地区へ向かう場合はスイッチバックが必要でしたが、戦災からの復旧時に大移転工事が行われ現在の形に落ち着いています。

千葉駅からは外房線に入ります。千葉駅周辺は県庁所在地千葉市の中心地だけあり、多くのビルが建ち並んでおり非常に賑やかな雰囲気が感じられます。
京成千葉線と並走しながら千葉市の市街地を抜け、臨海地域の工場群が見えると蘇我に到着します。
蘇我は京葉臨海地域を通って東京へ向かう京葉線の起点であるため、千葉市内では千葉駅に次ぐ乗換の拠点駅となっています。
定期運行されている特急「さざなみ」と「わかしお」は東京から京葉線を経由しているため、千葉を経由せず蘇我から内房線に乗り入れます。
元々特急「さざなみ」と「わかしお」総武本線経由で運行されていましたが、総武本線の線路容量がひっ迫したため京葉線ルートに改められました。「新宿さざなみ」は昔ながらの房総特急のルートに近い形で運行されており、ここだけでもこの列車に乗る意義があると感じられます。
蘇我は京葉臨海工業地帯の各地に線路を伸ばす京葉臨海鉄道の起点となっており、構内には貨車が停まってる光景をよく見られます。
蘇我は木更津や館山等を経由して安房鴨川へ向かう内房線と、茂原や勝浦等を経由して安房鴨川へ向かう外房線が分岐する駅で両線を乗り継げば房総半島を一周することができます。
昔は両国を出発し外房線と内房線を経由し、房総半島を一周して再び両国に戻る循環急行なる列車が運行されていました。
内房線は東京湾アクアラインの開業や、海水浴客の減少に伴う沿線観光地の衰退などが原因で、現在定期運行されている優等列車はライナー特急と化した特急「さざなみ」のみですが、線路自体は本線並みの規格で整備されており、「新宿さざなみ」は最高速度120km/hほどで疾走します。
沿線に戸建て住宅が目立つようになると五井に到着します。五井は京葉工業地帯の中核を担う市原市の中心駅である一方、房総半島の奥地へ向かう小港鉄道が分岐しており、昭和時代から時が止まっているかのようなノスタルジーな雰囲気が漂っています。
五井を過ぎると海側の方向に巨大コンビナートの煙突や鉄塔が見えます。市原市は県内一の製造品出荷額を誇る工業都市で、特に重化学工業が盛んであり石油精製工場の煙突から火が上がっている様子も伺えます。
袖ヶ浦を過ぎると沿線には田畑が目立つようになり、東京湾アクアラインの高架を潜ります。
東京湾アクアラインは千葉県の木更津市と神奈川県川崎市を結ぶ自動車道路で、東京から房総半島(特に内房地域)への距離を大幅に縮小し、人流や物流に革命をもたらしました。
東京から房総半島への移動手段が自家用車や高速バスにシフトした一方、大打撃を受けたのが内房線を走る特急「さざなみ」で、アクアラインを経由する高速バスはJR東日本にしてみれば非常に手強い競合相手となっていますが、JR東日本の子会社であるJRバス関東は新宿・東京からアクアラインを経由して内房地域へ向かう高速バスを走らせているため、完全な競合相手という訳ではないようです。
アクアラインの下を通ってしばらくすると、内房線屈指の主要駅である木更津に到着します。
木更津市は昔から内房地域の中心都市として機能してきましたが、アクアライン開業後は内房地域の商業・経済の中心地という役割が更に強くなりました。
しかし木更津市内で多くの買い物客で賑わっているのは東京湾アクアラインのICに近い金田地区であり、駅周辺の寂れた市街地を見ると、木更津市市内における鉄道の存在感の低さが感じられます。
木更津からは房総半島の奥地へ向かう久留里線が分岐しており、久留里線で使用されている気動車の姿が見えます。
久留里線は千葉県内のJR線で唯一非電化のまま残っており、昔ながらの千葉県の鉄道の光景を見ることができます。

木更津を出発すると、ちょっとした山越えをしたのち君津に停車します。
・君津~館山【内房線屈指の絶景ポイント!天気が良ければ東京湾越しに富士山も】
君津は木更津と並ぶ内房線内の主要駅で、特急「さざなみ」や東京方面から直通する快速列車は当駅を終着駅としており、当駅から先は209系やE131系が活躍するローカル線区間となります。
内房線は当駅から先は単線となりますが、特急「さざなみ」はそこまで速度を落とすことなく猛スピードで突っ走っていきます。
上総湊を通過すると、いよいよ特急「新宿さざなみ」の車窓のハイライトである東京湾が見えるようになります。
天気が良ければ対岸の三浦半島や、さらにその奥に富士山が見えるため非常に見ごたえのある景色を楽しめるでしょう。
東京湾沿いを進むと浜金谷に到着します。浜金谷は鋸山ロープウェイの乗り場や、東京湾フェリーターミナルの最寄り駅となっており、富津市の一大観光拠点となっています。
タイミングがよければ、フェリーターミナルから発着する東京湾フェリーの船を見ることができるでしょう。
浜金谷を出発すると、進行方向の左前方に鋸山が見えます。鋸山は江戸時代に石材を切り出していた関係で、山の形が四角くなっているのが特徴で、切り立った崖の先端から下を覗き込む『地獄覗き』は、まさに内房エリア屈指のスリルと絶景を楽しめるスポットです。
トンネルで鋸山の下を潜ると、リゾート開発がされた東京湾沿岸を進んでいき保田、岩井、冨浦に停車していきます。
房総半島の南部は基本山がちな地形となっているため、海沿いを走る区間よりも山の中を分け入って走る区間が多くなります。
平久里川を越えて、館山市の中心部に入ると終点館山に到着します。
総評
車窓 :★★★★
スピード感:★★★★
お勧め度 :★★★★
景色がよくてスピードも速く、思った以上に楽しめた列車でした。
先述した通り特急「新宿さざなみ」は両国から総武本線を経由する、伝統的な房総特急の運行ルートに近い形で運行されているので、その点だけでも十分楽しめました。
スピードに関しては錦糸町を出発してからの勢いがすごく、房総半島に入ってもそこまでスピードを落とさずに突き進んでいるのが印象的でした。
内房線は景色が良いだけに、毎日特急列車が走らなくなってしまったのは残念ですが、休日であれば特急列車で東京から館山まで直行できるチャンスが残っているので、タイミングが合う機会には乗車することをお勧めします。