上越線の概要
上越線は群馬県の高崎から新潟県の宮内を結ぶ路線です。上州国と越後国を結ぶことから「上越」と名乗っています。
上越線開業以前は関東と日本海側最大の都市である新潟までを結ぶルートは、信越本線を使用し長野や直江津を経由する遠回りルートしかありませんでした。
そこで上越国境に聳える谷川連峰のにトンネルを掘り、関東と新潟を短絡的に結んだ路線が上越線です。
上越新幹線開業後線内を走る定期優等列車は特急「草津」を除き全て廃止されてしまいましたが、貨物輸送の大動脈として現在も活躍しています。
上越線の使用車両
上越線では管轄支社が変わる水上を境に使用される車両が異なります。
高崎から水上の高崎支社管内では211系3000番台が使用されています。
211系は国鉄末期からJR発足直後の時期に製造された近郊型車両で、ステンレス車体とスタイリッシュな前面デザインが特徴的です。
2010年代前半までは東京の近郊路線で使用されていましたが、115系置き換えのため2010年代半ばから高崎地区のローカル線に投入されました。

水上から宮内までの新潟支社管内ではE129系が使用されています。
E129系は新潟地区向けに製造された一般型電車で2014年にデビューしました。
115系など旧型車両の巣窟となっていた新潟地区待望の新型車両で、E233系をベースに設計されています。
車内はセミクロスシート、当然ながら耐寒設備も備えており新潟地区のほぼ全ての電化区間で活躍しています。

車窓案内(越後湯沢→津久田)
・越後湯沢→越後中里
越後湯沢を出発すると上越新幹線の高架とリゾートマンションを見ることができます。
こんな山間の町に高層マンションが何棟も聳え立つ光景はなかなか異様な光景です。
元々湯沢は三国峠の麓になる知る人ぞ知る温泉地という場所でしたが、上越線の開業により東京からアクセスしやすい温泉地として発展し、上越新幹線の開業で栄華を極めました。
一時期はバブル崩壊で暴落したリゾートマンションも、近年はリモートワークの普及でワーケーション先として注目されています。

上越新幹線はすぐ大清水トンネル群に入ってしまいますが、上越線はしばらく地上を走ります。
岩原スキー場前を出発すると岩原の大カーブと呼ばれる大きなカーブを曲がります。
このような大カーブがあるということは距離を稼いで急こう配を登っている証拠であり、上越線はここから上越国境越えに向けて坂を登り続けることになります。

次の越後中里はスキー場と直結していることで有名ですが、新潟側における上越国境越え手前の最後の街となります。

・越後中里→水上
越後中里を出発すると本格的な上越国境越え区間に差し掛かります。
上越線は魚野川を渡る手前で上下線が大きく離れます。
ここから湯檜曽までの上下線はそれぞれ全く別の時期に建設されており、上り線は1931年に上越線が開業した当時の路線をそのまま使用しており、下り線は複線化のため1967年に開業しました。

上り線は川を越えるとループ線で一気に高度を上げていきます。ループ線は全てトンネルで覆われているためあまり実感はできませんが、ずっと右側にカーブしていることが実感できると思います。
トンネルを抜けると下り線と合流し毛渡沢橋梁で毛渡沢を越えます。
上り線の橋梁は石造りの橋脚が見事な橋梁で、土木遺産にも指定されています。奥には上越国境越えを控える関越自動車道も見え、上越国境越えのボトルネックという雰囲気が感じられます。

毛渡沢を越えると土樽に到着します。土樽は元々信号所として開業した駅で、川端康成の小説「雪国」の冒頭でも語られています。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号場に汽車が止まった。」という有名な書き出しがありますが「国境の長いトンネル」は清水トンネルのことであり、信号所のことは土樽駅のことです。
現在下り列車がこの線路を走ることは無いので川端康成の追体験をする事は叶いません。
土樽を出発すると清水トンネルに入り、いよいよ上越国境越えが始まります。
清水トンネルは19331年に開通したトンネルで、当時の日本の物流に大きな革命をもたらしました。
明治時代に清水国道と呼ばれる清水峠を越えるための近代的な道が整備されましたが、過酷な環境に耐えることができず開通から僅か1年足らずで崩壊し、それ以降人類が清水峠を近代的な交通手段で越えることはできずにいました。
それから約半世紀が経過し当時の土木技術の粋を集めて建設されたのが清水トンネルです。
かつては三国街道を経由したり、碓氷峠を越えて長野を経由しなければ越えられなかった清水峠をわずか数分で越えられるというのは、先人たちの苦労に感謝しなければなりません。
清水トンネルを抜けると群馬県に入ります。日本海側と太平洋側の気候を分ける分水嶺となっている谷川連峰を抜けると、天気が一変していることがよくあります。
この日も新潟側は曇っていましたが群馬側は快晴でした。
群馬県に入って最初に到着する駅は土合です。トンネル駅として知られる土合ですが、トンネル内にホームがあるのは下り線で、上り線のホームは地上にあります。最近は駅にグランピング施設が併設されたり、駅舎内でカフェが営業するなど駅自体が観光地として開発されています。

土合から湯檜曽にかけては上越国境越え区間で最も景色の見応えがある駅です。
線路は山の斜面の中腹に建設されています。線路のために元々山だったところを整地して線路を敷いたのでしょう。
ループ線の手前ではこれから走る線路と、湯檜曾駅の上りホームを見ることができます。
なお昔の湯檜曾駅はこの山の中腹に設置されていたようで、現在もホームの跡が残っています。

トンネル内でループし、高度を一気に落として湯檜曽川と湯檜曽の温泉街を越えると湯檜曽に到着します。

・水上~津久田
水上からは高崎支社管内となるため、必ず乗り換えが必要になります。
水上は群馬県有数の温泉地として知られており、利根川沿いには大きな旅館が見えます。
温泉街が見えたあたりから上下線が分かれ、上り線はトンネルの中に入り、下り線は利根川に沿って進みます。
この辺りは諏訪峡と呼ばれる渓谷となっており、下り列車であればこの渓谷を車窓から見ることができます。
またこの辺りからは時折谷川連峰を見ることができます。
群馬県側からだと基本的に順光になるためとても綺麗に見えます。
後閑辺りになると周囲の土地も開けます。この辺りからだんだん南下するにつれ雪の量も少なくなります。
後閑の次の駅は沼田です。沼田は河岸段丘のお手本のような地形をしており、奥に見える丘の上に沼田市の市街地が広がっています。
沼田を出発し利根川を渡ると、列車は利根川に沿って進みます。上越線と言えば水上以北の景色がよく取り沙汰されますが、高崎支社管内も結構景色がいいです。特急列車が走っておらずロングシートの車両でしかこの景色が見られないのは少し残念です。
津久田辺りまではひたすら利根川に沿って進みます。
河岸段丘の壁面が見事で、上越線高崎支社管内の景色のハイライトでしょう。