特急「とかち」・「おおぞら」の概要
・基本情報
- 運行区間:札幌~帯広・釧路
- 所要時間:4時間(札幌~釧路)
- 運行本数:5往復(とかち)・下り5本、上り6本(おおぞら)
- 使用車両:キハ261系
- 座席種類:全車指定席(グリーン車有り)
- 車内設備:コンセント有り(グリーン車のみ)、Wi-Fi無し
- 車内販売:無し
特急「とかち」・「おおぞら」は札幌から函館本線、千歳線、石勝線、根室本線を経由して帯広・釧路を結ぶ特急列車です。
「とかち」は帯広を終点とし、「おおぞら」は釧路まで運行されます。
道央と道東を結ぶ特急列車として長らく活躍しており、かつては滝川から根室本線経由で道東へ向かっていましたが、石勝線開業後は千歳線、石勝線を経由するルートに改められました。
「とかち」の名前はは帯広などがある十勝国が由来となっています。
「おおぞら」は北海道初の特急列車に採用された由緒ある名称で、かつては函館~札幌~旭川を結ぶ特急列車に使用されていました。
「おおぞら」の名前は北海道の大地の上に広がる大きな空をイメージして名づけられました。
特急「とかち」・「おおぞら」の停車駅


特急「とかち」の停車パターンはほぼ統一されているのに対し、特急「おおぞら」の停車パターンは列車によってばらつきがあります。
基本的に走行距離が短い「とかち」の方が停車駅が多く、「おおぞら」の方は停車駅を絞っています。
特急「とかち」・「おおぞら」の使用車両

特急「とかち」・「おおぞら」にはキハ261系1000番台が使用されています。
キハ261系1000番台はJR北海道の汎用特急型気動車として、2007年から2022年まで製造されました。
先代のキハ281系とキハ283系には振り子式車体傾斜装置が搭載されましたが、キハ261系には空気ばね式車体傾斜装置が搭載されています。
構造がシンプルでメンテナンスコストが安いことから空気ばね式が採用されましたが、負担軽減や安全性向上のため現在は使用されていません。スペックよりも安定性を重視した運用が行われています。
一方で驚異的な加速力を有しており、振り子式を搭載しなくても先代の車両たちと遜色のない所要時間を実現しています。
2007年に「とかち」で運用を開始したのち、2020年からは「おおぞら」にも投入され、現在は全ての列車がキハ261系に統一されています。
基本的には4両編成での運行が行われていますが、旅客需要に応じて両数の調整が行われています。
特急「とかち」・「おおぞら」の車内とお勧め座席
特急「とかち」・「おおぞら」のお勧め座席は札幌から帯広までならCD席、帯広から釧路までならAB席です。
CD席は逆光にならない上、北海道の広大な平野や山を見ることができるので、内陸部を走る区間はCD席を確保するべきです。
池田を浦幌を過ぎた辺りから太平洋に沿って走るため、海岸沿いを走る区間であればAB席を確保するべきです。
太平洋側なので若干逆光気味にはなりますが、逆光を差し置いても素晴らしい景色を堪能することができます。


こちらは普通車の様子。JR北海道標準の普通座席となっています。
JR北海道の特急列車は基本的に長時間乗ることになるので、普通座席ながら居住性は高いと思います。
JR北海道ではお馴染みのチケットホルダーも設置されていますが、コンセントは設置されていないのでスマートフォンのバッテリー残量には注意が必要です。


こちらはグリーン車の様子。2+1列の広々とした座席が設置されています。
グリーン車には全席コンセントが設置されているため、長時間の移動でも充電の心配をする必要はありません。

一部の車両にはデッキに充電スぺースが設けられており、ここで充電することが可能です。
スマホをここに置きっぱなしにするのは防犯上問題がありますし、長時間占有するのもモラル的に問題があるので短時間の利用に留めた方が良いでしょう。
特急「とかち」・「おおぞら」の景色の見所紹介(追分~釧路)
・追分~新得【道内一の高規格路線「石勝線」を爆走】
追分から新得までは石勝線を走ります。石勝線は追分から夕張を結んでいた夕張線の一部区間を改良したうえ、南千歳から追分、新夕張から新得の手前にある上落合信号所まで新線を建設し開業した路線で、道央と道東を短絡するルートとして建設されました。
今回乗車した追分は、その名の通り鉄道路線の分岐点として発展しました。石勝線が開業する前追分は室蘭本線沿線の空知炭山や、夕張で採掘された石炭などの鉱物が集積する物流の拠点として栄華を極めました。
国鉄が認定する12の鉄道の街に道内では岩見沢と共に選ばれ、道内有数の巨大な機関区を併設していました。
しかし石炭産業の衰退とともに追分はその役割を失い、現在は石勝線の新線区間と旧来からの区間が合流する駅となってい
ます。
現在も広大な鉄道用地の跡が残っており、北海道の鉄道の栄枯盛衰を偲ばせる光景を見ることができます。
川端を過ぎると列車は夕張川の渓谷に沿って走ります。100年以上前に建設された線路を特急列車が高速で走れるよう改良されていますが、基本的な線形は変わらないのであまり速く走ることはできません。
山間部を抜けて盆地に入ると新夕張に到着します。新夕張からはかつて夕張市の中心地へ線路が延びており、当初は夕張線として石炭輸送をメインに活躍していましたが、夕張線が石勝線に編入されると「夕張支線」としてしばらく活躍を続ていました。
しかし、夕張市の人口減少に伴い夕張支線の利用客も激減し、自治体の方から廃止を提案する形で2019年に廃止されました。
廃止からまだ数年しか経っていないことから、現在も夕張川を渡る橋梁の跡がほぼそのままの形で残っています。
新夕張から新得の手前にある上落合信号所までは石勝線として、1981年に開業した新しい路線です。
北海道の背骨とも呼ばれる日高山脈を石勝線はいくつもの長大トンネルで貫いており、特急列車もほぼトップスピードで走ります。
新夕張から新得までは約90km離れていますが、その間に駅は僅か2つしかありません。
そのため石勝線では駅の間にすれ違いや、待避を行うための信号所が至る所に設置されています。
また石勝線は北海道でも有数の豪雪地帯を走るため、分岐点はスノーシェルターで覆われており、万全の雪害対策が行われています。
石勝線は大部分がトンネルであまり景色を楽しめる路線でありませんが、たまに走る地上区間からの光景は見事なものです。
北海道でも指折りの僻地の中を猛スピードで走り抜ける爽快感を味わえます。
周囲の景色が少し開けると占冠に到着します。
占冠がある占冠村は四方を険しい山に囲まれた村で、かつては陸の孤島とも呼ばれていましたが、石勝線の開通によって北海道の各主要都市と結ばれました。
その結果行われたのが、隣駅のトマム周辺で行われたリゾート開発です。
当初は「石勝高原」という駅名でしたが、後に現在の駅名に改められています。
トマムに建設されたリゾート施設は運営母体会社の経営破綻などにも見舞われましたが、現在は星野リゾートが経営する「星野リゾートトマム」となり、道内を代表するリゾート地として多くの観光客が訪問しています。
近年はインバウンドが盛況なためか、ほぼ全ての列車が停車する駅にまで成長しています。
トンネルの中にある上落合信号所で、石勝線は根室本線と合流し、石狩国と十勝国を隔てる狩勝峠を越えます。
根室本線の狩勝峠越え区間は元々国道38号線に沿うように建設され、そこからの車窓は日本三大車窓に選ばれるほど美しい物だったとされています。
しかし旧来のルートは非常に線形が悪いため、大きなカーブと新狩勝トンネルなどの長大トンネルで峠を越える、現在のルートが完成しました。
その後1981年に石勝線が開業すると、石勝線は上落合信号所で根室本線と合流し、新得に至るルートが完成しました。
元々根室本線は道央と道東を結ぶ主要ルートとして活躍していましたが、石勝線の開業により特急や貨物列車はほぼ全て石勝線経由に改められたため、根室本線の滝川から新得はローカル線に格落ちしました。
2016年には台風被害で被災し、代行バスによる運行が続けられましたが、復旧しても今後の採算が見通せないという理由で2024年に廃止されました。
そのため現在の上落合信号所は、石勝線を走る列車しか通過しません。
広内信号所を過ぎると、石勝線は大きなヘアピンカーブを描いて、急こう配を下っていきます。
進行方向の左側からは防風壁や木に阻まれてよく見えませんが、遠くにこれから向かう新得の町並みが見えます。
・新得~帯広【食料自給率1100%!日本の食糧を支える十勝平野を走る】
新得からは根室本線の旅が始まります。新得は十勝平野の西端にある町で、蕎麦の生産で有名です。
十勝清水を過ぎた辺りから、広大な十勝平野の景色が見えるようになります。
十勝平野は食料自給率1100%を誇る日本一の農業生産地帯で、一面に畑が広がっています。
その畑を強風から守るため、等間隔で防風林が並んでいるが特徴的で、十勝平野を象徴する光景と言えます。
芽室から帯広にかけては、十勝平野の経済力の高さを伺える光景が見られます。
帯広の隣町である芽室はトウモロコシの生産量日本一を誇る農業の町である一方、帯広市のベッドタウンとしても発展した町です。
駅周辺には何棟もの食料品倉庫がある一方、多くの民家や商店が建ち並んでおり、芽室町の発展ぶりがよく分かります。
大成から西帯広にかけては工場が建ち並ぶ、工業地帯を走ります。
中でも目を引くのが十勝平野で大量に取れる甜菜を砂糖に加工する、日本甜菜製糖の工場です。
ここ以外にも帯広の工業地帯には食料関係の工場や走行が数多く点在しており、農業をベースとした工業も盛んであることが伺えます。
西帯広を通過すると十勝地方の物流の拠点である、帯広貨物駅があります。
帯広貨物駅は現在も貨物列車が乗り入れており、主に大量の食料品を輸送するために活躍しています。
駅周辺には何十棟もの食料品倉庫が建ち並んでおり、「食糧を守ります」という力強いメッセージを掲げた倉庫も見受けられます。
柏林台の手前から根室本線は高架線の上を走り、帯広の市街地を見渡せるようになります。
帯広市は十勝地方の中心都市であり、約16万人の人口を誇る道内有数の大都市です。
駅に近づくにつれ高いビルが何棟もの並ぶようになり、札幌から乗車した人であれば、札幌以来の都会的な光景を見ることができます。
帯広は北海道お土産の定番商品を展開する六花亭と柳月と本社があるお菓子の街でもあります。
「とかち」から「おおぞら」に乗り継ぐ場合大体1時間程の時間があるので、六花亭の本店に行ってマルセイバターサンドや賞味期限3時間の「サクサクパイ」を買うのもいいですし、柳月の本店に行ってあんバタサンや三方六を買うのもいいでしょう。
・帯広~釧路【旅のハイライトは太平洋と、北海道の最果てを感じる湿原の景色】
帯広からは特急「おおぞら」に乗り換えて、更に東へ進みます。
札内川を渡ると、先ほどまでの帯広の都会的な雰囲気は終わり、再び十勝平野らしい長閑な光景が続きます。
十勝川を渡ると、次第に山が近くなり十勝平野の終端に差し掛かると、池田に到着します。
池田は帯広から釧路の間では拠点的な町で、特にワインの生産が有名です。
かつては池田から陸別や足寄を経由して、北見へ向かう池北線が分岐しており、国鉄が廃止対象に選出したのちに第三セクター会社が設立され「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」としてしばらく運行を続けていましたが、2006年に廃止されました。
池田を出発すると十勝川に沿って南下し、浦幌を過ぎると峠を越えて厚内を通過します。
厚内は十勝振興局に含まれていますが、雰囲気的には十勝を越えて釧路に入った気分になります。
厚内を過ぎるといよいよ太平洋が見えてきます。ここから釧路にかけては一部区間を除き、基本的な海沿いを走ります。
海から離れて、内陸部を走るようになっても景色の見所は尽きません。
道東の釧路エリアは自然のまま残っている湿原が数多くあり、特急「おおぞら」の車窓からも見渡せます。
内地では大半の湿原が田んぼなどに転用されており、自然のまま残る湿原は少ないですが、北海道の東端に来れば広大かつ人の手が加わっていない湿原をいくつも見ることができます。
また湿原ではボコボコと盛り上がった草の塊がいくつかありますが、これは谷地坊主と呼ばれるもので、冬から春にかけて見ることができます。
尺別信号所の近くでは廃墟と化した集落の建物がいつくか見えます。尺別はかつて炭鉱の操業で栄えた集落でしたが、炭鉱の閉山と共に人口が激減し、駅も2019年に廃止されました。
北海道で過疎が進行している地域では、一旦開拓された集落から人がいなくなり、再び自然に戻っていくような場所が数多く見られます。
音別川を渡って音別の市街地を抜けると、根室本線は海岸沿いに走ります。
国道38号線もここでは内陸部を走っているため、根室本線の釧路以西では最も海に近づく区間となります。
海岸線や川の河口部はほどんど人の手が加えられておらず、北海道の最果てを走っている気分に浸れます。
海から離れると、根室本線は「馬主来沼」と呼ばれるこの辺りの湿地帯では最も大きい沼の畔を走ります。
釧路周辺は雪が少なく、多くの湿地帯は乾燥しきっていますが、この沼では水が凍っている様子が見えます。
茶路川を渡ると白糠に到着します。白糠は国鉄再建法による特定地方交通線に選ばれ最初に廃止された、白糠線が分岐していたことでマニアの間では知られています。
庶路を通過すると「コイトイ川」と呼ばれる変わった名前の川を渡ります。「コイトイ」とはアイヌ語の「波が砂丘を崩す所」という意味の言葉が由来となっており、川が砂丘を削り取って海に流れ込んでいる光景が見えます。
またこの辺りは水産加工業の倉庫や工場がいくつかあり、かつて漁業で栄華を極めた道東らしい光景が見えます。
阿寒川を渡り、大楽毛を通過する際に王子製紙の釧路工場が見えます。
大楽毛の駅構内は広大な空き地が広がっていますが、かつては製紙に使用する資材の搬入や製品の搬出を行う貨物列車が発着していました。
現在は王子製紙の子会社の工場として使用されているようですが、工場の煙突から煙が立っておらず、大規模な生産はもう行われていないかもしれません。
釧路市の中心地と郊外を隔てる新釧路川の手前には新富士と釧路貨物駅があります。
東海道新幹線にも同名の駅がありますが、こちらの方が歴史が古いです。駅名が被ったのは単なる偶然ではなく、静岡県富士市で創業した富士製紙が、現在の場所に工場を設立したことに由来します。
富士製紙は紆余曲折を経て日本製紙となり、釧路市の製紙業をリードする工場として長らく活躍してきましたが、2021年に製紙事業は廃止され小規模な事業所が残るのみとなりました。
新釧路川を渡り、釧路市の中心街に近づくと終点釧路に到着します。
総評
- 車窓 :★★★★★
- スピード感:★★★★
- お勧め度 :★★★★★
北海道のダイナミックな車窓を楽しむにはもってこいの列車だと思います。
険しい山岳地帯から広大な平野、荒涼とした湿地帯など内地では絶対に見れないような車窓が多く、4時間の乗車も飽きることが無いでしょう。
お勧めの座席は帯広までならCD席がお勧めです。どちら側も景色が良いですが、CD席なら逆光にならず景色を楽しめます。
帯広から釧路では反対にAB席がお勧めです。若干逆光気味ですがこの区間の最大の見所は太平洋と、その手前に広がる荒涼とした大地なので、逆光を我慢してでも見る価値は十分にあります。