特急「しなの」の概要
・基本情報
- 運行区間:名古屋~名古屋
- 所要時間:3時間
- 運行本数:13往復
- 使用車両:383系
- 座席種類:自由席、指定席、グリーン車
- 車内設備:コンセント無し、Wi-Fi無し
- 車内販売:無し
特急「しなの」は名古屋から長野を中央本線、篠ノ井線、信越本線を経由して結ぶ特急列車です。
日本初の振り子式車両である381系が初めて導入されるほど、ほぼ全区間に渡りカーブが連続する厳しい山の中を走ります。
また、日本で最後まで「L特急」を名乗っていた特急列車でもあります。
日本有数の俊足特急列車であり振り子式車両で急カーブを猛スピードで駆け抜ける姿が、特急「しなの」の伝統となっています。
列車名は長野県の旧国名である「信濃」が由来となっています。
特急「しなの」の停車駅

全ての列車が停車する駅は千種、多治見、中津川、木曽福島、塩尻、松本、篠ノ井となっています。
全区間を乗り通す需要は勿論のこと、長野県の二大都市である長野と松本を結んでいるため、この区間の需要も大変多いです。
また、多客時には松本から大糸線に乗り入れ白馬から発着する列車もあります。
2016年までは大阪から発着する「大阪しなの(愛称)」も設定されていました。
特急「しなの」の使用車両


特急「しなの」には383系が使用されています。
383系は先代の381系同様振り子式車両ですが、制御付き振り子式車両のため乗り心地は改善されています。
パノラマグリーン車を連結した6両編成と増結用の4両編成、2両編成が存在し、最大10両編成で運行されています。
デビューからすでに30年が経過したため、新型車両による置き換えも計画されています。
新型車両の385系は特急「しなの」伝統の振り子式車両、パノラマグリーン車を引き継いでおり、デビューが楽しみです。
乗車レポート(2024/11/13、2026/01/14)
今回は名古屋から塩尻、塩尻から長野と2回に分けて乗車しました。
まずは車内の紹介をします。
普通車の様子。かつて「ワイドビュー」を名乗っていただけあり、大きな窓が特徴的です。
JR東海の車両らしく普通席にもフットレストが設置されています。
グリーン車は2列+2列の配置ですが、クッションは肉厚で座席幅も広いので2+2列のグリーン車としてはかなり快適だと思います。
383系はパノラマグリーンを採用しており、最前列の座席からはパノラマ展望を楽しむことができます。
しかしパノラマ展望は基本最前列でしか堪能できないため、しばしばぼったくりと言われることもありますが、常に混雑している特急「しなの」においてグリーン車は割と空いているので、静かな空間を手に入れるために課金するのも有りだと思います。
・名古屋~中津川
名古屋を出た列車はしばらく東海道本線、東海道新幹線、名鉄線と並走し金山から名古屋市の東に進みます。
中央本線は比較的名古屋市の中心部の近くを走るためビルやマンションが断続的に続く光景を見ることができます。
東海道本線や関西本線よりも名古屋の都会っぷりを感じることができます。
特に片側数車線にも及ぶ幅の広い道路と、高速道路は車社会名古屋を象徴する光景と思えます。

名古屋中心部へのアクセス駅である千種を過ぎると、ビルやマンションも減り郊外の雰囲気が漂います。
庄内川を越えると名古屋市内を抜け春日井市に入ります。
春日井市は名古屋市のベッドタウンとして発展した都市で、沿線にはマンションや新興住宅が目立ちます。

高蔵寺を過ぎると景色の雰囲気が一気に変わり、庄内川の渓谷を走るようになります。
この渓谷は古虎渓とも呼ばれており、ついさっきまで名古屋近郊を走っていたとは思えない光景です。

愛知県と岐阜県の境は険しい山で阻まれており、中央本線はいくつものトンネルで越えていきます。
特に県境にある愛岐トンネルは約3kmほどの長さがあり、中央西線では最も長いトンネルとなっています。
現在のトンネルは昭和40年代に作られたもので、開業当時のトンネルは「愛岐トンネル群」として保存されています。

山間部の区間を過ぎると急に土地が開け、東濃地方の中心都市である多治見に着きます。
多治見から先は土岐川に沿って進みますが、この辺りからカーブも多くなり勾配もきつくなるため、山岳路線の雰囲気が漂うようになります。
まだまだ名古屋の近郊圏で長編成の普通列車が行き来していますが、沿線の雰囲気は非常に長閑なので違和感を感じます。

美乃坂本はリニア中央新幹線の岐阜県駅建設予定地であるため、大規模な工事が行われていました。
名古屋から1時間ほどで主要駅の中津川に到着します。
・中津川~塩尻
中津川は名古屋近郊の東端に位置する駅で、ここから先が中央西線の深淵とも呼べる区間となります。
中津川を出てしばらくすると民家も途切れ、落合川と木曽川の合流地点に築かれた落合ダムを見ることができます。
ここから中央西線はしばらく木曽川に沿って進んでいきます。

岐阜県最東端の駅である坂下を過ぎると、長野県に入り南木曽に到着します。
南木曽は妻籠宿の玄関口としても知られており、ここから中央西線は中山道に沿って進みます。
いわゆる「木曽路」と呼ばれるエリアで、非常に険しい道のりながら東西の都を結ぶ超主要ルートとして重宝されていました。
特急「しなの」に乗れば木曽路の険しさを手軽に感じることができます。
「木曽路はすべて山の中」と言われる通り、この辺りの中央西線は急カーブと急こう配が連続する山岳路線となっていますが、特急「しなの」はそんな線形をもろともせず、約100km/h近いスピードで木曽路を駆け抜けていきます。
十二兼を過ぎると名古屋から続いた複線区間も一旦終わり、塩尻までは複線と単線区間が入り混じるようになります。
本当は全線複線化されるのが理想ですが、とてももう1本線路を敷く余裕もないような場所が多く、これ以上複線化されることはないでしょう。


中央西線は中山道に沿っているため、宿場町ごとに駅が設置されているのも面白い点です。
特に須原手前では須原宿の街並みを見ることができ、間口の狭い民家が宿場町であった名残を感じさせます。

上松の手前では木曽路随一の景勝地である寝覚の床を見ることができます。
浦島太郎が玉手箱を開けて夢から覚めたという逸話から、寝覚の床と呼ばれているこの渓谷は特急「しなの」からほんの一瞬だけ見ることができるので、見逃さないようにしましょう。

▲寝覚めの床の脇を通る特急「しなの」
名古屋から1時間半程で主要駅の木曽福島に到着します。
中津川から塩尻の区間で唯一全列車が停車するのがこの木曽福島で、駅周辺には木曽路随一の市街地が形成されています。
江戸時代には福島の関が置かれており、中山道でもかなり重要なポジションに位置していました。

藪原を過ぎると木曽路最大の難所である鳥居峠に差し掛かります。
木曽川に沿って走るのもここまでで、太平洋側と日本海側との分水嶺となっています。
昔は越えるのに相当苦労したと思われますが、現在は中央西線、国道19号線共にトンネルが掘られており、簡単に峠を越えることができます。
鳥居峠を越えると、中山道最大級の宿場町として栄えた奈良井を通過します。
現在も「奈良井千軒」と呼ばれていた江戸時代の宿場町の雰囲気を色濃く残しており、観光地として知られていますが、中央西線からその様子を伺うことはあまりできません。

奈良井からは奈良井川に沿って進みます。信濃川水系のため最終的には日本海に流れます。
木曽漆器で有名な平沢や、関所があった贄川を過ぎると木曽路も終わりを迎えます。
洗馬を過ぎると松本平に入り、久しぶりに開けた土地を走るようになります。
沿線にブドウ畑が見えると、主要駅である塩尻に到着します。

・塩尻~長野
塩尻から先はJR東日本の管轄となり、篠ノ井線に入ります。
松本平は長野県内第2の人口を誇る盆地で、特に塩尻から松本には人口が集中しているため、断続的に市街地が続きます。
県内第2のターミナル駅である松本を過ぎると、奈良井川・梓川越しに北アルプスの山並みを見ることができます。
北アルプスといえば大糸線が有名ですが、篠ノ井線から望む北アルプスも素晴らしいです。

▲奈良井川と梓川の合流地点の奥にそびえる北アルプス。
明科から先は再び山越え区間となり、篠ノ井線は長いトンネル区間に入ります。
1988年に完成した第1~第3白坂トンネルは、地滑りなど自然災害に対して脆弱だった区間を付け替えるために掘削されたもので、旧線は現在遊歩道として整備が進んでいます。
第1~第3白坂トンネルは複線化を見据えて複線の規格でトンネルが掘られましたが、国鉄の経営難を理由に複線化されることはありませんでした。
このトンネル区間を抜けると長閑な里山の中を走ります。
篠ノ井線は松本と長野という県内の2大都市を結ぶ主要幹線ですが、両都市は険しい山によって隔たれており、沿線に大きい街はありません。
西条からは善光寺街道に沿って走り、西条付近は街道の宿場町の面影が感じられます。

冠着を過ぎると、開業当時は日本一の長さを誇った冠着トンネルに突入します。
蒸気機関車の時代にはトンネル内で機関士が煙に巻かれて窒息死する可能性があったため、松本側の坑口にはトンネル内を換気するための巨大な送風機が設置されていました。
この冠着トンネルを抜けると、日本三大車窓の一つである姨捨を通過します。
標高が高い姨捨から眺める善光寺平の景色は本当に見事で、三大車窓に選ばれるのも納得です。
夜景がきれいなことで知られていますが、冬の朝もお勧めです。


▲昼の姨捨からの善光寺平


▲夜の姨捨からの善光寺平
篠ノ井線は標高の高い姨捨から善光寺平の平地へ向かうため、盆地を形成する山の際に沿って線路が敷かれています。
姨捨から稲荷山の間には、桑ノ原信号所と呼ばれるスイッチバック式の信号所があり、普通列車が特急列車や貨物列車をやり過ごすための施設として現役で稼働しています。
篠ノ井線は長野県内の2大都市を結ぶ超主要路線であり、大量の特急列車や貨物列車が行き来していますが、ほぼ全区間が単線であるため駅以外にもすれ違い設備を用意する必要があります。
坂の途上に列車を停めることは昔の技術では不可能だったため、本線から外れた平らな土地に列車を停めるスイッチバック方式の信号所が設置されました。

篠ノ井で篠ノ井線の区間は終了となり、ここから長野までは信越本線となります
北陸新幹線が金沢まで延伸開業した際に、篠ノ井から長野は引き続きJR東日本が管轄することとなったため、現在も信越本線となっています。
わずか10kmほどの距離ですが、長野県内でも特に列車本数、利用客が多い区間であるためJR東日本が管轄していると思います。
この辺りは善光寺平の真ん中であるため久しぶりの直線区間となり、北陸新幹線も並走します。
川中島を過ぎると、長野県北部を代表する河川である犀川を渡ります。
犀川はこの後千曲川と合流しますが、犀川と千曲川に挟まれたエリアを川中島と呼びます。
犀川を過ぎてしばらくすると県庁所在地の長野に到着します。


総評
車窓: ★★★★★
スピード感:★★★★★
お勧め度 :★★★★★
第一印象はとんでもなく速いという印象でした。
単線区間のポイント分岐など速度を落とさざるを得ない場所は多かったですが、速度を出せる区間では常に全速力で走っているイメージでした。
「しなの」が走っている区間は非常にカーブが多いですが、振り子式車両のためお構いなしに速度を出している印象を受けました。
車窓に関しては北アルプスや姨捨からの善光寺平など純粋に景色のいい区間もありますが、景色の移り変わりが楽しめるのも「しなの」の車窓の特徴です。
速度が速いうえ、景色のバリエーションも豊富なので3時間乗っていても全く飽きません。
また、中津川から塩尻では大部分が中山道と並走しており、歴史ロマンを感じられるのも「しなの」ならではの楽しみです。走りも景色も超一級の特急列車でした。
パノラマグリーン車は長野行きの列車のみ前面展望を楽しめることができます。
グリーン車なので当然特急料金は高くなりますが、「しなの」は指定席も自由席も基本混んでいる一方、グリーン車はあまり混んでいないことが多いため、非常にコスパは高いと思います。