特急「ソニック」の概要

特急「ソニック」は博多から中津・大分・佐伯を結ぶ特急列車です。

博多から大分を結ぶ特急列車は「にちりん」として運行されていましたが、民営化後のイメージ、サービスアップのため883系が導入された列車に「ソニックにちりん」の名称が与えられました。

その後、大分を境に系統分離が行われ、博多から大分を結ぶ大半の列車は「ソニック」に改められ現在に至ります。

「ソニック」は「音速の」を表す英単語で、英単語をそのまま名称に採用される特急列車は珍しいです。

その名の通り九州最速のスピードを誇る高速特急列車で、日本でも2番目の俊足ぶりを誇ります。

博多から大分までの所要時間は最短で約2時間です。

 

 

特急「ソニック」の停車駅

基本的には太字の駅にしか停まらない速達タイプの列車と、停車駅の多い列車がそれぞれ1時間おきに運行されており、JR九州では最も活発な運行が行われている特急列車です。

博多から大分を結ぶという需要がある一方、通勤需要も拾うため通勤時間帯の列車は停車駅が多くなっています。

一日1往復だけ大分県最南部の駅である佐伯まで向かう列車があります。

また、大分から中津、博多から中津を結ぶ列車もそれぞれ1往復設定されています。

 

 

特急「ソニック」の使用車両

特急「ソニック」には883系と885系が使用されています。

883系は「ソニック」が運行を開始した1995年から投入されました。

「ワンダーランドエクスプレス」の愛称が付けられたこの車両を設計したのは水戸岡鋭治氏で、遊び心あるデザインが取り込まれています。

印象的な前面デザインはヨーロッパのトラックを参考にしているようです。

性能面では交流電車としては初の振り子式車両となっており、カーブの多い日豊本線でも速度を落とすことなく走行することが可能となりました。

以前は酒瓶やさきいかがそこらへんに転がっているほど治安が悪かった日豊本線の特急列車でしたが、883系の登場によって速くて子供も楽しめる特急列車へと変貌しました。

2000年には885系が投入され、時刻表などでは「白いソニック」と案内されています。

こちらも水戸岡氏がデザインを担当しており、ヨーロッパの高速鉄道の車両を参考にしているようです。

この車両も883系同様振り子式車両のため、性能はさほど変わりません。

 

この日は博多から大分まで全区間乗車しました。

今回は「ソニック25号」のグリーン車に乗車しました。

まずはデッキ部分ですが赤や青など原色をふんだんに使用したデザインが特徴的で、当時の鉄道車両としては画期的だったに違いありません。

グリーン車は2+1列の配置となっています。

883系といえば夢の国のネズミによく似た形状のヘッドレストが特徴ですが、これは全席共通です。

グリーン車座席の形状は普通車座席とあまり変わっておらず少し安っぽい印象を受けますが、地味に電動リクライニング機能を備えています。

グリーン車なのでシートピッチは広く、フットレストも設置されています。

また、窓側席のみですがコンセントも設置されています。

883系のグリーン車の最大の魅力は前面展望を楽しめるトップキャビンです。

このスペースがあるのはグリーン車がある1号車のみですので、このスペースに立ち入るためにグリーン車に乗る価値は十分にあると思います。

左側にある業務用冷蔵庫はなんなのでしょう?

なお前面展望を楽しめるのは博多から小倉であれば上り列車、小倉から大分であれば下り列車です。

 

・博多~小倉

大都市博多を出て最初の見どころは多々良川に架かる名島橋です。

登録有形文化財にも指定されている名島橋はアーチの構造が美しい橋ですが、鹿児島本線の車窓からはあまりよく見えません。手前に見える橋は西鉄貝塚線の橋梁で、名島橋をイメージしてかアーチ状の構造となっています。

その奥にある橋は鹿児島本線の貨物線の橋梁で、さらにその奥にある橋が名島橋となっています。

福岡市を過ぎるとこのような長閑な風景がしばらく続きます。

福岡市と北九州市は意外と距離が離れており、途中には峠越えのような区間もあります。

遠賀川を越えると九州第二の都市である北九州市に入ります。

折尾、黒崎といった北九州市内の主要駅に停車した後はかつて日本経済を支えた工業地帯に沿って進みます。

戸畑を過ぎると北九州市のランドマークである若戸大橋を見ることができます。

列車は北九州高速2号線に沿って進み主要駅の小倉に停車します。

 

・小倉~中津

小倉で「ソニック」は進行方向を変えるため、座席の方向転換を依頼するアナウンスが流れます。

ここからは1号車が先頭車となるため、前面展望を楽しむことができます。

列車は先ほど通過した西小倉をまた通過して、日豊本線に入ります。

西小倉駅の近くには小倉総合車両センターがあります。

九州鉄道の時代に開設された非常に歴史のある車両工場で、九州で使用されている車両の新造・改造なども請け負っています。

この日は415系の廃車体(?)が置かれていました。

日豊本線に入線した後も「ソニック」のスピードは落ちることなく福岡県を南下していきます。

しばらくは平凡な景色が続きますが、豊前松江を通過すると周防灘に沿うように走ります。

この時は干潮だったのかかなり潮が引いていました。

山国川を渡ると大分県に入り中津に到着します。

 

・中津~大分

中津を過ぎると次の別府まではノンストップで走り続けます。

しばらくは田園地帯を走りますが、宇佐を過ぎると峠越えの区間となります。

この峠は立石峠となっており、豊前国と豊後国の境と言われています。

西屋敷を過ぎると上下線の線路が大きく乖離します。

上り線は旧来からの線路でかなりグネグネしていますが、下り線は「新立石トンネル」という長いトンネルで峠を貫いています。

このトンネルを猛スピードで抜けきり、立石を通過すると日豊本線は少しだけ単線区間となります。

単線区間になってもスピードはほとんど落ちることなく走り続けます。

ポイント分岐でも弾性ポイント分岐が採用されているためか、ほぼ最高速度で突っ込んでいました。

単線区間は隣の中山香駅までで再び複線となりますが、杵築から日出までまた単線区間となります。

▲対岸に見える街は別府で、高い山は高崎山?。

日出を過ぎると別府湾に沿って進むため、別府湾を望むことができます。

しばらく別府湾沿いを進み別府に到着します。

▲左側の対岸は国東半島、右側の対岸は大分市の工業地帯。

別府の市街地を過ぎると次の街は県庁所在地の大分市ですが、別府と大分の間には急峻な山が聳えており、列車は別府湾の際を走ります。

隣には大分県の二大都市を結ぶ国道10号線(別大国道)が通っています。片側三車線の非常に大きい道路ですが、大分県の二大都市を結ぶまともな一般道はこれしかないため、九州屈指の交通量を誇ります。

そんな車たちを颯爽と抜き去る「ソニック」は乗っていて爽快です。

写真には写っていませんが、後ろを振り向くと別府の市街地と立ち上る湯煙を望むことができます。

大分市の市街地に入ると大分に到着します。

 

総評

スピード感:★★★★★

乗車時間 :★★★

車窓   :★★★

 

九州最速の特急列車だけありとにかく速かったです。

「ソニック」が走る区間は全て最高速度130km/hに対応しているため、常にトップスピードを出して走っているような感覚でした。

日豊本線はカーブが多く決して線形がいいとは言えませんが、それを振り子式車両を使い力技で高速でぶっ放す姿は乗っていて爽快です。

単純に一番スピード感を味わえる特急列車だと思います。

なお、早めにネットで予約すると通常の5割引きくらいの値段で利用できるのでお勧めです。

博多から大分までグリーン車を使っても5,000円少々でした。