特急「ゆふ」・「ゆふいんの森」の概要
特急「ゆふ」・「ゆふいんの森」は別府・大分・由布院から博多を久大本線経由で結ぶ特急列車です。
特急「ゆふ」は1992年にJR四国から購入したキハ185系を導入し、急行「由布」を特急に格上げしたものです。
特急「ゆふいんの森」は1989年にJR九州初の本格的な観光列車として運行を開始しました。
由布院や日田などの観光地を有する久大本線と、観光列車である「ゆふいんの森」は非常に相性がよく、登場から35年が経過した現在でも絶大な人気を誇っています。
特急「ゆふ」・「ゆふいんの森」の停車駅
特急「ゆふ」と「ゆふいんの森」はそれぞれ3往復運行されています。
特急「ゆふ」は2往復が別府発着、1往復が大分発着となっています。
通勤需要もあるためか停車駅は多めに設定されています。
一方「ゆふいんの森」は2往復が由布院、1往復が別府発着となっており、停車駅も絞られています。
特急「ゆふ」・「ゆふいんの森」の使用車両
特急「ゆふ」にはキハ185系が使用されています。
キハ185系は国鉄末期に投入された特急型気動車で元々はJR四国が保有していましたが、豊肥本線と久大本線の急行列車を特急に格上げするために、JR九州が買い取り改造したうえで使用されています。
特急「ゆふいんの森」はキハ71系とキハ72系が使用されています。
キハ71系はキハ58形、キハ65形を改造した車両で、「ゆふいんの森」運行開始当初から使用されています。
元の車両はかなり古いですが、外観はもちろん床下機器も台車を除けばほぼ換装されているため、ほぼ新車と言ってもいいでしょう。
当初は3両編成でしたが、3号車がのちに増備され4両編成で運行されています。
キハ72系は「ゆふいんの森」が好評だったため、増発のために一から新造された車両で、1999年にデビューしました。
こちらも当初4両編成でしたが、4号車が増備され5両編成で運行されています。
初代から数えて3代目の「ゆふいんの森」車両のため、「ゆふいんの森Ⅲ世」とも呼ばれています。
2代目はキハ183系を改造した車両で、この車両は大村線の観光列車「シーボルト」に改造されたのち、「ゆふDX」として久大本線に復旧します。
現在は更に改造され豊肥本線の「あそぼーい!」で活躍しています。
「ゆふいんの森」は戦前のヨーロッパの豪華列車をモチーフにしており、デザインを担当したのは水戸岡鋭治氏です。
丸みを帯びた前面形状、全車両がハイデッカー構造、メタリックグリーンの配色は当時の鉄道業界に強烈なインパクトを与え鉄道列車に新たな価値を提供した記念碑的な車両となっています。
乗車レポート(2024/05/22)
この日は大分から由布院まで「ゆふ2号」、由布院から博多まで「ゆふいんの森2号」に乗車しました。
今回乗車する「ゆふ号」は4両編成でしたが、2号車の指定席に乗車しました。
2号車の1~6番目の座席はグリーン席を普通指定席として販売しており、指定席料金でグリーン座席を味わうことができます。
2+2列の配置となっており、他のJR九州のグリーン車両に比べると少しランクが落ちますが、あくまでも指定席扱いのため乗り得だと思います。
グリーン車だけありシートピッチも広く、フットレストも装備されています。
キハ185系のグリーン車は特急「ゆふ」か、JR四国で運行されている臨時列車「ゆうゆうアンパンマンカー」でしか乗ることができないため、割と貴重です。
・大分~由布院
大分を出た列車はしばらく大分市の郊外を走ります。沿線には住宅が多く人口も多そうです。
最初の停車駅である向之原を過ぎると、大分川が作り出した渓谷に沿って進みます。
絶景という程ではありませんが、対岸の山や広がる田園は結構雰囲気が良かったです。
湯平を過ぎると列車は大分川の険しい渓谷を進みます。
東側に大きくカーブし、土地が開けると由布岳が見えると列車は由布院に到着します。
外国人観光客からも絶大な人気を集めているためか、由布院到着前には4か国語での案内が行われていました。
・由布院~豊後森
由布院からは当駅始発の「ゆふいんの森2号」に乗車しました。
使用されている車両は新しく製造された「ゆふいんの森Ⅲ世」です。
「ゆふいんの森」は豪華列車というイメージがありますが、グリーン車は連結しておらず全席が普通指定席として販売されています。
フットレストは設置されていますがシートピッチも広く座席も快適なので、グリーン車未満普通席以上の豪華さがあります。
Ⅲ世の方はモダンなデザインとなっており、床や壁は木目調となっています。
「ゆふいんの森」は全車両がハイデッカー構造となっているため、デッキ部分には橋が架けられています。
バリアフリー法が厳しくなった現在このデザインを適用するのは難しいかもしれません。
3号車にはフリースペースとビュッフェが併設されています。
ビュッフェではお菓子や飲み物、ゆふいんの森グッズを買うことができます。
由布院を出た列車は大きなカーブを描きながら山の斜面を登っていきます。
そのため車窓からは由布院の街並みを見ることができます。久大本線有数の絶景ポイントではないでしょうか。
しばらくほとんど人気のない山の中を進み、約2kmの長さがある水分トンネルをくぐります。
水分トンネルを抜けると野上川沿いに走り、列車は玖珠盆地に入ります。
玖珠盆地に入ると山頂が真っ平な伐株山を見ることができます。
玖珠盆地にはこのような真っ平な山が集結しており、このような地形は全国でもここでしか見れないようです。
主要駅である豊後森に着く手前では豊後森機関区跡地を見ることができます。
日本でも有数の規模を誇る扇形車庫の廃墟が残っていることで知られており、割と最近になってい保存活動が行われた場所です。
・豊後森~日田
玖珠盆地を抜けると列車は玖珠川に沿って進みます。
ここでの見どころから車内から見える慈恩の滝です。
アテンダントからの案内もあり、「ゆふいんの森」も徐行運転を行うため、道中の名所となっています。
玖珠川は蛇行を繰り返しているため、久大本線はいくつものトンネルと橋梁を越えながら進んでいきます。
なんとなく高山本線に似ています。
険しい地形を走る割に久大本線の線路は比較的真っすぐなため、「ゆふいんの森」は割とスピードを出して走っていました。
山の中を抜けると沿線最大都市である日田に到着します。
水運の街として発展し、江戸時代には天領でもあった日田は流石に大きい街で、このような光景は大分以来です。
日田も由布院と並ぶ沿線屈指の観光地であるため、多くの乗降がありました。
・日田~久留米
日田を過ぎると久大本線は最後の山越え区間となります。
列車は三隈川に沿って進みます。
福岡県との県境部分に夜明ダムがあるため、川の色は「ゆふいんの森」と同じエメラルドグリーンでした。
山を抜けると列車は筑後平野に入り、ここからは博多までひたすら平坦な地形を走り続けます。
白壁通りで有名なうきは市を過ぎ、多くの建物が見えると久留米に到着します。
・久留米~博多
久大本線は久留米までで、ここから博多までは鹿児島本線を走ります。
久留米を出てすぐに列車は筑後川を渡ります。
「筑後三郎」の異名を持つこの川は九州最大の河川で、ここまで久大本線で辿ってきた三隈川、玖珠川も筑後川の一部です。
次の停車駅は鳥栖です。
鳥栖は九州随一の交通の要衝で、かつては九州一の規模を誇る構内を有していました。
現在も広い構内が残っていますが、これでも縮小された方で昔はサガン鳥栖のスタジアムも鳥栖駅の構内の一部でした。
その広大な敷地を横目に鳥栖貨物ターミナル駅を通過する際に、銀釜ことEF81-303号機が停まっていました。
博多手前での景色の見どころは水城跡です。
水城は7世紀に朝鮮半島にあった、王朝の百済からの侵攻に備えて築かれた巨大な土塁です。
高さは約5m、長さは約1.2kmあり、さらに西側に5kmほど続いていたようです。
久留米からだいたい30分ほどで終点の博多に到着します。
総評
・スピード感:★★★
・乗車時間 :★★★
・車窓 :★★★★
第一印象としては思ったより速かったです。
久大本線の最高速度は95km/hとローカル線としてはそれなりの規格ですが、「ゆふ」、「ゆふいんの森」共にその規格をフルで活かしているような走り方をしていました。
結構山深い区間でもスピードを出していたので、乗っていて楽しかったです。
「ゆふいんの森」は観光列車ではありますが、ほどよく豪華でほどよくスピードを出すので、観光列車と普通の特急列車とのバランスがよく取れている印象を受けました。
閑散期の平日に乗車しましたが、車内はほぼ満員で外国人観光客の姿も多くありました。
観光列車は乗るのが目的になり沿線にお金が落ちないという問題点がありますが、「ゆふいんの森」の場合は沿線に日田や由布院など魅力的な観光地があるため、今や「ゆふいんの森」は日田や由布院観光の一部として認識されていると思います。
車窓もよく沿線に魅力的な観光地が多くある「ゆふいんの森」は一番理想的な観光列車かもしれません。
博多方面に乗る場合は、進行方向左側の席をお勧めします。
伐株山や慈恩の滝など沿線の見どころは大体左側にあります。