民藝好きの人なら誰でも知っている超有名店。
長野県松本の喫茶を併設した民藝旅館『まるも』
大学生の頃、松本民芸館へ行った時に泊まりたくて、初めて泊まり、また半世紀ぶりに泊まってきました。
旅館まるもは、時代がまさに江戸から明治へと移り変わる慶応4年(1868年)に創立、現在の建物は明治21年建築。築130年の古い建物 白壁に黒々とした木の面格子が映える風情あるたたずまい。木造三階建の旅館は、旅館というより昔ながらの旅籠の雰囲気。家具は松本民藝家具。できる限り「そのまま」を残していて、昔の日本らしい宿泊ができる貴重な宿。部屋は8部屋で、大人気でなかなか予約が取れません。
昨年も先月も泊まりたい日には予約がとれず、今回ようやくタイミングよく取れました。
昔は夕食で民藝の器に郷土料理が食べられましたが、現代は朝食付きか素泊まりのみ。料金は1万円くらい。
普段朝食は全く取らないのですが、まるもの素朴な朝食は人気が高く、今回は朝食付きでお願いしました。

女鳥羽川沿いにある昔ながらの白壁に海鼠塀の洒落た宿
館内は半世紀前にお邪魔した時にタイムスリップした様に何も変わらず
昔のまま 中庭を囲って廊下があり落ち着いた雰囲気で松本民藝家具を使い、ポイント的に民藝創始者の柳宗悦や、バーナードリーチ、濱田庄司、などの作品がかけられています。

夕食は、まるもから女鳥羽川沿いを歩いて7分。
ここも予約がまず取れないが、うまくとれた長野県で一番好きな店、『蕎麦と料理 滿(mitsu)』で、素晴らしい食事をいただき、
さて、翌日
日本らしい朝ごはん。

お漬物、煮物、お味噌汁も美味しく
どれもちょうど良い感じの味付けです。
あれ! このお皿やお茶碗。 特徴のある装飾技法。
宿泊費が1万円位で宿泊者皆が食べる普通の朝食なのに。使うだろうか?
なぜ? まさか。
でもこの器の模様は間違いない。

どう見てもその器は成形した陶土を半乾きの状態の時に、縄文人のように組紐を転がして縄目のくぼみを作り模様を入れるこの装飾技法。
人間国宝 島岡達三の代表的装飾技法の縄文象嵌(じょうもんぞうがん)皿とお茶碗です。
少し象嵌の模様が単純で深みが浅いので、念の為、器の底を確認してみると、


やはり、なるほど。
島岡達三特有の陶印がありません。
初期の島岡の象嵌の模様はまだ浅く単純で、銘も入れていないので、1950年代後半だと予想ができました。
島岡達三は東京工業大学で柳宗悦・浜田庄司ら民藝運動の思想に共鳴し、戦後、栃木県益子で濱田庄司の弟子となります。(1946年)
初期の島岡は濱田と似たような釉薬、そして登り窯を使い作品を作っていたため自ずと「濱田庄司のコピー」が作られていますが、3年間の濱田窯での修行の後、濱田に付いて全国各地の博物館や大学へ赴き、古代土器の標本複製の仕事を手伝う中で縄文への傾倒が生まれていき、1950年代後半から1960年代に、李氏朝鮮の象嵌や、組紐師だった父の影響も受けて、縄文象嵌技法が生まれていき、77歳の時に「民芸陶器(縄文象嵌)」で人間国宝へなりました。
河井寛次郎と濱田庄司は民芸運動開始の後は民藝は民の技であるから、私も『作家ではなく、一陶工にすぎない』と生涯、作品に銘を入れていませんが、島岡もそれに倣って、陶印はつけませんでした。しかし、その後、縄文象嵌技法を確立するころから、作家を意識してきたのでしょう、民藝から「作家」へと変節し、銘を入れるようになります。
寛次郎の親戚縁者以外の直弟子で、生涯銘を入れなかったのは、唯一、生田和孝です。
生田さんは私の父の高校の頃からの親友で、河井寛次郎のところで修行した後、丹波で作陶をして、戦後の丹波焼再興の3人の祖の一人ですが、自分はただの陶工だからと、文部大臣賞をとった後も生涯作品に銘は入れていません。河井寛次郎の精神の継承者かといわれましたが、55歳で他界します。
生田さんは個展をした時に売れ残った皿や器などがあると、よく父の元へ送っていただいていたので、私達家族は毎日の食事は生田さんの様々な器で食べていました。 温かみのある使い勝手の良いお茶碗達でした。
さて、まるも旅館の朝食ですが、普通の朝食に雑器と共に人間国宝の器を使うとは。
民藝の本筋をちゃんと理解されていて、すごく嬉しかった。
民藝品とは多くの無名の職工が、無心で使う人に心地よく使って欲しいと生み出してきたもの。
使われるために生まれてきたものです。器も生きています。どんなものでも飾って死蔵するものではない。
使ってあげることにより、器も生きて時代がつき、良い味わいの器となっていきます。
私も、器も生きもの、器への感謝の気持ちで河井寛次郎や濱田庄司、バーナード・リーチ、島岡達三などの器も飾りながら、他の雑器と同じように料理に使っていますが、使うことでさらに愛着が増しますね。
まるもさんは、島岡達三の器が戸棚の奥にしまわれていたのを見つけて、人間国宝だし、飾ろうかどうしようか迷われて、使ってあげることが一番器のためだと、最近使われるようになったそうです。
食べログなどに投稿されているまるも旅館の食事の器を見ると、この島岡達三の写真はまだ載っていませんから、直近に始められたのでしょうね。 とても素晴らしいと思いますし、何よりもこういう心で使われていることが、本当に嬉しかった。
(写真の最後は私が使っている島岡達三の 柿釉緑釉 縄文象嵌皿と、三色赤絵角皿で、これも料理に使用しています)


今回もまた
楽しさを
心の機に織り込ませていただきました。
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まるも旅館
長野県松本市中央3-3-10
0263-32-0115


























































































