あの日の父の一言は、
いまだに忘れられません。
「なんだその顔は…どうにかしろ」
実家に帰ったのは、
ほんの数ヶ月ぶりのことでした。
母に頼まれて、
季節の野菜をもらいに行っただけ。
短時間の滞在のつもりだったし、
メイクもせずに髪をひとつに
結んだだけのラフな姿。
実家だから
気を抜いていたのだと思います。
それなのに、父のその言葉。
冗談っぽく、
軽く言ったつもりだったのかも
しれません。
でも、わたしの心には
ぐさりと刺さりました。
カチンときました。
心の中では「失礼だなあ」と
思ったし、
「こんなにしんどいのに、
何が分かるの?」
とも思いました。
でも、それを顔には出さずに、
笑って流しました。
「もう、
お父さんったらひどいんだから~」
なんて軽口でごまかして、
その場は過ぎていきました。
でも、その夜です。
家に帰ってふと洗面台の前に
立ったとき、ふいにその言葉を
思い出して鏡を見ました。
「あれ…?」
目の下にはうっすらとクマ。
頬は下がり、
肌はどこかくすんで見える。
口角も下がっていて、
なにより…
目が笑っていませんでした。
まるで、知らない人が
そこにいるような感覚でした。
「これ…わたし?」
驚きとショックが、
いっぺんに押し寄せてきました。
以前のわたしは、
もっと明るい顔を
していた気がします。
肌ももう少し元気で、
表情も柔らかくて。
鏡を見ることは
そんなに嫌じゃなかった。
だけど今、鏡の中のわたしは、
まるで「疲れそのもの」
のような顔をしていて…。
ずっと感じていた
体の重さや気分の落ち込みが、
そのまま顔に出てしまっていたのです。
父の言葉は、
ただの失礼な一言
じゃなかったのかもしれない。
「最近のおまえ、ちょっとおかしいぞ」
「気をつけた方がいいんじゃないか」
そんなふうに、
わたしを気遣ってくれていた
のかもしれません。
もちろん、
あの言い方はないと思います。笑
でも、
わたし自身が気づかないふりを
していた「現実」を、
父が不意打ちで突きつけて
くれたんだと思います。
それまでも、
うすうすは感じていたんです。
「あれ?最近すぐ疲れるな」
「なんだか顔が老けた気がするな」
「気持ちが上がらないな…」って。
でも、それを認めたくなくて、
忙しさにかまけて
見ないようにしていた。
体調 のせいにするのも嫌で、
年齢 のせいにするのも嫌で。
「大丈夫、大丈夫」って、
自分に言い聞かせてばかりいました。
でも、あの鏡の中のわたしを
見た瞬間、
もう言い訳はできませんでした。
わたし、
今ほんとうに調子が悪いんだ。
このままじゃ、
どんどん自分を見失っていく
気がする。
その気づきが、
わたしの中でふわっと
何かを変え始めた気がします。
気持ちが沈んでいたぶん、
余計に「自分を見失っていた」
ことに気づいた時の衝撃は
大きかったです。
「わたし、どうにかしなきゃ」
誰に言われたわけでもなく、
そんな言葉が自分の中から
出てきました。
ただの肌荒れじゃない。
ただの疲れでもない。
これは、もっと根っこの部分で
体が悲鳴をあげている。
そう思った時、初めて
「今までのやり方では
もう立て直せないかもしれない」
と素直に思えました。
あの日から、
わたしは少しずつ自分を
変えていくことを
考え始めました。
大きな変化ではありません。
でも、「気づいた」というだけで、
それは確かな一歩だったのです。
この連載を読んで
くださっているあなたも、
もしかしたら今、
「鏡を見るのがつらい」
「最近、なんか違う」と
感じていらっしゃるかもしれません。
その違和感、
見過ごさないでください。
人って、
ふとした瞬間に気づくものなんです。
きっかけは、
人の何気ない一言だったり、
自分の中のちょっとした
ザワザワだったりします。
そのサインをキャッチできたら、
もう大丈夫。
あとは、
少しずつ整えていけばいいんです。
