シリーズ記事
南北朝鮮
https://ameblo.jp/cluttered-talk/
前回は、それまでのおさらいを兼ね、関係主体の歴史話が中心だったので、あまり翻訳が進めませんでした。
とりわけ韓国籍の事情は、朴一教授がおっしゃるように、昨今の情勢の変化から「日本国籍への旨み」がなくなり、年々在日コリアンの帰化者数は減っているそうです。
‐朝鮮学校「無償化除外」から考える 在日コリアンの『二重国籍論』‐
私たち界隈としては、朝鮮籍/韓国籍問わず、無条件で在日コリアンの人々に「日本国籍をセット」で、それぞれ出身の国籍を「選択」してもらうべきだと思っているし、「一方に呑み込まれる」のではなく、過去の歴史と向き合い、この先の未来へ繋ぐには、「日本人と在日コリアンを分断する」今の社会から決別するために、ひいては地域の統合と平和のために、既視感にまみれた議論から脱するべきだと考えています。
【北東アジアの戦後史】
‐新シリーズ・朝鮮統一と日本を考える 最終章(日本自主化のプロセスと東アジアの平和樹立)‐
‐韓国に進出した日本の独占企業の話 最終回(日米独占資本の「相違」と平和国家の欺瞞)‐
‐シリーズ『日米同盟』の正体 最終回(米日韓の断ち切れぬ軛)‐
‐シリーズ こうして「在日」は生まれた その10(リアルにおける差別)‐
【在日コリアンの国籍問題】
‐シリーズ こうして「在日」は生まれた その8(在日朝鮮人の法的地位の問題)‐
‐シリーズ こうして「在日」は生まれた その8(朝鮮人を無国籍状態にした『日韓』の責任)‐
‐シリーズ こうして「在日」は生まれた その8(『韓国籍』の特権について)‐
‐シリーズ こうして「在日」は生まれた その9(「強制退去」と「差別化」)‐
‐シリーズ こうして「在日」は生まれた その10(『外人登録法』の差別問題)‐
‐朝鮮学校「無償化除外」から考える 在日コリアンの『二重国籍論』‐
재일동포의 귀화, 어떻게 볼 것인가? / YTN KOREAN
在日同胞の帰化、どう見るか?/YTN KOREAN
YTN KOREAN(2017/11/22)
https://www.youtube.com/watch?v=Bzwp98eilAw
動画本編は7分28秒以後です。
【ナレーション 7分30秒】
こういう「実利的な理由」で韓国籍を維持するケースが増えている以上、在日同胞の帰化など、(それは)必ずしも日本人に同化することを意味しません。
【タイトル 7分42秒】
『国籍を超えた全体性(共通理解)』
この中で朴一教授は、中国やアメリカ、ロシアのように「その国の国籍」を取っても、『コリアンジャパニーズ』として生きていくことを模索している若者がいることを指摘され、国籍を捨てることは「民族を捨てることではない」とおっしゃられていました。
なるほど、そういう方々もいらっしゃるのですか。
これは今までお話してきた『トニーさんの話』に少しだけ通じるものがありますが、やっぱり自分としては、過去の日本と朝鮮半島の「特殊な歴史」を考えると、制度的にしっかりとした「担保=二重国籍の選択的賦与」が一番妥当であると思っている。
誰しもがそういう「立派な考え」を持っているわけではないし、維持できる保証はどこにもない。
【ナレーション 8分08秒】
(いわゆる)『コリアンジャパニーズ』が、ただちに大韓民国の国民を意味するものでもないとします。
続けて朴一教授は、(自分の)お祖父さんや親父世代までは、1世~2世までの「韓国人そのままのアイデンティティ」を持っていたそうですが、今の3世、4世、5世になると「(純粋な本国の)韓国人と見なさない方が良い」としています。(つまり)『在日韓国人』という「独特のエスニック集団」があるわけで、それは日本人でも韓国人でもないとします。
たしかに、その指摘は正しい。
‐韓国メディアの朝鮮学校特集 その2①(日本に住む『朝鮮族』とは何か)‐
‐韓国メディアの朝鮮学校特集 その2②(在日コリアンは朝鮮半島を如何に見るか)‐
‐韓国メディアの朝鮮学校特集 その2③(ハンギョレの意識)‐
さらに深く読み解けば、「在日韓国人だけ」に限らず、『在日コリアン』という大きなくくりにおいて、主に朝鮮籍の人、北朝鮮の公民意識に重点を置く人たちや、南や北にも「属さない」植民地以前の朝鮮人としての立場を重要視する人たち、ひいては全体の在日コリアンに共有される『ワンコリア』のスピリッツだとか、きわめて複雑な重層的意識の中で、常に彼ら彼女らは生きている。
ここばかりは、巷にある映像や文字情報だけじゃ伝わらないし、直接在日コリアンの友人を持って、何年もやり取りを重ねなければ、理解できない問題だと思います。
とにかく、すっげー難しい問題だってこと。
【ナレーション 8分47秒】
韓国人でも日本人でもない境界線の中で、若いジャパニーズコリアンたちに、ひとつの国に対する帰属を強要することは、必ずしも良い結果ばかりを生むとは限りません。
2015年、日本の会社で起きた出来事です。
(その会社の)社長が在日同胞3世の職員を呼び出し、「なぜ本名で書かない?」と日本式の名前を使うなということでした。そしてある日、(多くの)職員の前で当職員を指して、「彼は実は在日韓国人の職員だから差別しないで親しく接しなさい」ということでした。
その職員はショックを受けて、訴訟をすることを決意し、300万円の慰謝料を請求しました。そして2016年4月、裁判は(告訴人の)勝訴で終わり、裁判所は、社長側に在日同胞職員に対して500万円の支払い請求を命じました。
【ユ・ヒョッス教授 9分45秒】
実際のところ、少なからず社長の「悪意」があったのは事実で、むしろ逆の事例の方が多く、会社では「外国人を使わない」名目のもとで、日本名を強要したり、その手の裁判は今まで多くありました。しかし『韓国籍を持つ人』に対して、「韓国名を強要した」のは珍しいと思います。
『在日男性に本名強要は違法=勤務先社長に賠償命令-静岡地裁 時事通信』
http://www.asyura2.com/15/senkyo183/msg/734.html
こういう事件が起きるのも、日本が歴史から逃げ続けてきた結果でしょう。常に「白黒曖昧な問題」として蓋をし続け、ヘイトスピーチの問題だとか、そうした「ツケ」が社会の至る所で噴出してきたに過ぎません。
それだから、マジョリティとマイノリティの「分断」は温存されたままだし、またネトウヨとネトサヨのゴチャゴチャした対立は続くしで、ホント飽きたよこういうの。
いいけげん、『本質』を掴み取れよと。
【ナレーション 10分20秒】
在日同胞たちが、「少数者としての権利や全体性(共通理解)」を守ることが、必ずしも祖国を志向している意味ではありません。いずれにせよ、彼らに韓国人としての「本当の名前」だという考えも、(本国のいる)韓国人の『固定観念』なのかもしれません。在日同胞の中で、一番慣れ親しんだ名前が、生まれたときから使ってきた『日本名』(通名)である場合も存在するからです。そんな在日同胞の多様な『全体性(共通理解)』のなかで、対して韓国社会はどのような態度で接していかなくてはならないのかを聞いてみました。
【タイトル 10分56秒】
『韓国社会に望むものとは?』 (主に「在日韓国人」の場合)
【ソ・キョンシッ教授 10分57秒】
「大韓民国国民」を出発点とする基準ではなく、歴史的な脈絡のなかで、ある人たちは残って、又ある人達は海外へと旅立って、しかし私たちは同じルーツを共有している『同胞(キョレ)』だということ。そう考えれば、(今までとは違う)風景や形として見えると思います。
【ユ・ヒョッス教授 11分24秒】
民族や韓国人としてのアイデンティティ、その全体性(共通理解)を持って存在することと、「韓国籍を持つ」のは、違う物事として考えることができます。そういう考えの上で、『韓国人としての全体性(共通理解)』を持って、それを継続して本国(韓国)にも良いフィードバックになれれば良いと、私自身は考えておりますし、認識を変えていかなければならないと思います。
【パク・イル教授 12分01秒】
ある意味においては、移民の子どもたちが、母国の言葉をしゃべれなかったり、文化を知らなかったりするのは「当たり前のこと」なんですよ。まずそこの前提から入って、在日という歴史的に形成された集団がいることを、ありてい(そのまま)に見て欲しいと、いわゆる「(本国の)韓国人が正しくて、在日が劣っている」という見方はしないでほしいなという風に、私は思います。
最後はちょっと違います。中国人の場合は、移民の子どもであろうと、しっかり自分たちの国の文化や考えを継承しているし、だから国は発展していくし、どんな「逆風」にも揺るがない。そして、英語ブロガーのMichikoさんもおっしゃられていましたが、(純粋な意味で)自分たちの国に「誇り」を持てない人間は、どの世界でも「バカにされる」という事実です。
だから、そういう考えに甘えてはならんと思います。
でも「在日と韓国人との優劣をつけてはならない」というのは納得です。
そして3人の識者の声をまとめると、在日コリアンは『在日コリアンとしてのカスタマイズ』をすれば良いというわけでしょう。
だったら、尚更『二重国籍』の方が、現実にマッチしていると思うのです。
海外事情に詳しい、英語ブロガーMichikoさんとの話でも、世界的にみて『確立された制度』である二重国籍については、徹底した歴史教育とセットで、日本社会に向けこの問題を周知し、在日コリアンは南北問わない「在日としてのアイデンティティ(日本で生まれ育った環境)」と「それぞれの国籍(韓国/朝鮮籍)」を両立する上で、この選択が最も現実的であると思います。
さらに、将来的に南北が統一すれば、統一した朝鮮の国籍と、日本の国籍を維持すれば良いわけです。
【ナレーション 12分30秒】
韓国と日本のあいだに挟まれた存在である在日同胞。国と国との『境界線』であるがゆえに、国籍に対する彼らの選択は、『国家と民族を超越した問題』として認識する必要があると、3人の教授はおっしゃいます。
もちろん、これは北朝鮮と日本に挟まれた「在日朝鮮人」にも言えることだし、そもそも在日コリアン自体が、朝鮮半島と日本に挟まれた存在であるといえる。
ご指摘されるように、短絡的な「民族問題」で済まされる問題ではないし、それがゆえに必要とされる『二重国籍論』ですが、もっと多くの人々が関心を持って、当問題に関する知見を蓄えなければ、到底向き合うことができないのは確かでしょう。
常に過去の歴史と向き合い、その最も「責任を負う立場」である日本が、在日コリアンに対する国籍認識を刷新し、社会的な分断と憎悪の根源を断ち切り、地域の国々と友好関係を築くためには、早急に着手せねばならない問題なのです。
<参考資料>
・友人の翻訳協力
・Youtube動画 『재일동포의 귀화, 어떻게 볼 것인가? / YTN KOREAN』
https://www.youtube.com/watch?v=Bzwp98eilAw
・Cluttered talk blab blab blab 『自分の国への正しい態度』記事
https://ameblo.jp/cluttered-talk/entry-12405434959.html
<ツイッター>
【歴史学を学ぶ大切さを伝えるブログ(ふーくん)】
https://twitter.com/XMfD0NhYN3uf6As
ブログランキングに参加しております。
皆さまのご支援が頂けるとありがたいです
(下のバナーをクリック)