外人登録法第九条一項によると、「外国人は登録原票の居住地以外の記載事項に変更を生じた場合、その変更を生じた日から14日以内に、その居住地の市町村の長に対し、変更登録申請書及びその変更を生じたことを証明する文書を提出して、その記載事項の変更の登録を申請しなければならない」と規定されています。

 

国籍の変更はこれに該当します。

 

『本人の希望による』として『韓国』に変更することの自由を認め、形式上その逆(韓国→朝鮮)を認めながら、その事務取扱上『国家機関発給の公的文書』の提出を要求しました。

 

この『国家機関発給の公的文書』は、国籍証明書などであり、朝鮮民主主義人民共和国国籍を有する在日朝鮮人が発給を受けることが不可能であることを、日本政府は百も承知でそうした措置を強行しました。

 

続いて『朝鮮』から『韓国』への変更登録は、『韓国駐日代表部』発行の文書の添付により容易にこれを手続き上認めることができるようにし、『韓国』から『朝鮮』への記載変更の登録の道を、事実上塞いでしまったのです。

 

さすがに日本政府のこの行政措置が、在日朝鮮人の基本的人権を侵害するものであるとし、1954年以降、例外的行政措置として『国家機関発給の公的文書』等の添付不可能な国籍変更申請『理由書の提出』という形に代わりました。

 

しかしそれは、

 

①親子夫婦等同一家族で国籍記載が同一でない場合

②婚姻その他の身分法上の変更が生じた場合

 

の以下二つに限られ、その他の変更登録は、市町村役場において申請そのものを受理しない方針を取っていました。それから時が過ぎ、この例外的行政措置すら、さらに制限されそうな始末であり、1963年2月5日参院法務委員会において、この点に関して稲葉誠一議員の質問があり小川入国管理局長への答弁が下記になります。

 

「朝鮮(北朝鮮)から韓国に行く場合にはおおむね市町村で処理し、韓国から朝鮮(同)に移る場合には本局へ上げさせるということになっているわけであります」

 

事実上、韓国籍から北朝鮮籍へ変更するときは本局に上げさせて処理し、北朝鮮から韓国に国籍を変更するときは、市町村段階で処理するという、あからさまな行政機関による「区別」による差別があり、ありていに言えば、一方は大臣の決裁を必要とし(韓国→北朝鮮)他方では市町村長の決裁で十分だとする(北朝鮮→韓国)という、まことに異常な事態が発生していたのです。

 

 

<参考資料>

 

・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第3巻 勁草書房