「日本は治安がいい」の裏側
日本に住むと、本当に治安がいいなあ、と思います。車に物を置いておいても(本当はダメだけど)、田舎の方だと何かが盗まれるなんてことほとんど無いですね。夜女性が一人で歩いていても、他の先進国に比べて、安全な方だと思います。でも、ずっと考えて居たことがあります。他人に襲われることが少なくても、自殺が多くて、「社会の中で殺される」ことが多かったら、あんまりいい社会じゃないよね。ということで、調べてみました。2016年の統計がサッと見つけられたので、2016年のものです。まず、適当に選んで、アメリカと比較してみました。アメリカの2016年の殺人数は17250人。人口統計学では、10万人当たりの単位が良く使われます。2016年のアメリカの人口は3.234億人でしたので、殺人数は10万人当たり5.33人です。日本の2016年の殺人数は289人。2016年の人口は1.27億人でしたので、殺人数は10万人当たり0.23人です。10万人当たりの割合で見ると、アメリカでは約23倍も殺人事件が多いです。もちろん住んでいる場所などに影響されますから、一概に23倍のリスクがある、とは言えないですけど、日本の治安がいいのは確かなのではないでしょうか。では、自殺数は。アメリカの2016年の自殺数は44,965人で、10万人当たり13.9人です。日本の2016年の自殺数は21,897人で、10万人当たり17.3人です。さて、ここで他殺数と自殺数を合わせて比べてみます。アメリカの2016年の他殺と自殺数は、10万人当たり、19.23人でした。日本の2016年の他殺と自殺数は、10万人当たり、17.53人でした。他殺と自殺数を合わせると、アメリカも日本も大差ない気がします。よく、「アメリカは治安が悪いので、子供を留学でアメリカには出したくない」、などという親御さんの意見を耳にしますが、逆に「日本で子育てすると、高い確立で子供の心が病んで自殺するから、日本での子育ては不安」、というようなことを耳にすることはほぼありません。まあ、もちろん日本の治安に慣れていて、自己防衛感覚の薄い人が海外に行くと狙われやすいのは確かなので、親御さんの心配には一理ありですが。アメリカでは学校などで最近も銃による殺人事件などがありましたが、そういうことがあると、素早く対応をします。銃反対派がプラカードを持って、もっと厳しい銃の規制を訴えます。その一方で日本の自殺は。なんというか、音のしない、社会による静かな殺人、とでもいいましょうか。未だにカウンセリングなども充実せず、薄い対応です。自殺だと、他殺よりも対応する緊急性や必要性が少ないのかもしれません。批判覚悟で究極のことを言えば、心の病んでしまった人が、自殺ではなく、いじめの加害者やセクハラの加害者を殺すようになれば、もっと日本の社会も対応せざるを得なくなるのかもしれません。さて、他の国ではどうでしょうか。イスラエルのようなパレスチナとの紛争が長く続いていて、一見危なそうな国。古いデータしかなかったのですが、2007年の自殺数は10万人当たり5.8人でした。そして、2000年からの14年間で紛争による死者数が1101人なので、2018年の人口数を使って計算しても、14年間のトータルで人口10万人当たり12.88人。紛争のニュースを見て、なんて酷いんだ、と思いますが、その私たちの背後では、14年間で紛争で亡くなった10万人当たりのイスラエル人よりも多い人数が毎年日本で自殺してます。いやー、自殺って、本当に音のしない殺人だと思います。だって、みんなイスラエル・パレスチナ紛争の方が、日本の自殺問題よりずっと怖いとおもっているよね?多分。私もこの計算をしてみるまでそうでした。まあ、比較なので、比べるものによって、いろいろな視点が出てくるとは思います。ちなみに、14年間で、イスラエル・パレスチナの紛争で亡くなったパレスチナ人はイスラエル人の数よりもずっと多くて、7065人です。これは2018年の人口数を使って計算すると、10万人当たり155.3人。多いですね。でも、日本の14年間の自殺者数は、単純計算でさっきの2016年の自殺者数に14をかけると、10万人当たり245.4人なので、パレスチナに住んでても、紛争に巻き込まれて死ぬリスクよりも、日本で自殺するリスクの方が高いです。人間の性質というのは、世界中どこに行っても、そんなに違いがないものだと私は思っています。だからこそ、日本の治安の良さは、世界水準から見ると、不気味なくらいです。他殺という形で外に出るのか、自殺という形で内に出るのか。「治安がいい」に騙されてはいけない、と思った統計でした。