監督:ミッジ・コスティン、出演:ウォルター・マーチ、ベン・バート、ゲイリー・ライドストローム、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・リンチ、ソフィア・コッポラ、ライアン・クーグラー、アン・リー、ロバート・レッドフォードほかのドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』。2019年作品。

 

ハリウッド映画の「音」作りがいかにして行なわれるか、具体的な音作りの模様や監督・音響スタッフ等のインタヴューを織り交ぜながら映画の歴史とともに解説していく。

 

 

 

 

映画サイトでこのドキュメンタリー映画のことを知って、映画評論家の町山智浩さんも作品紹介されていたので前売り券を買って公開を楽しみにしていました。

 

オマケでなぜか綿棒をもらいました

 

映画の音響については映像の編集ともかかわるので興味があって書籍などで読んだりしたことはあったし、ウォルター・マーチやベン・バートなどあちらの有名なスタッフのことは知っていましたが、詳しく勉強したわけではないので、ここで語られることはどれもが新鮮でした。

 

優れた映画は「音響」にも凝っていることがわかる。普段あまり注意して聴いていないような部分で工夫が凝らされている。

 

ロバート・アルトマン監督の『ナッシュビル』の幾重にも重ねられた「音」の処理に感動したという音響スタッフ。

 

反響音を使用して奥行きを表現したオーソン・ウェルズ監督・主演の『市民ケーン』がいかに画期的だったか。

 

自身が主演する音楽映画『スター誕生』で、いち早くステレオ上映を希望したバーブラ・ストライサンドの先見の明。

 

おなじみ『スター・ウォーズ』でのユニークな音作りの様子。現実に存在しない音がクリエイターたちの手で生み出されていく。その方法は想像以上にアナログ。あり合わせのストック音源に頼らず、またSF映画であっても電子音は使わずに生の音を録音して加工する。

 

 

SWのチューバッカの声はクマの鳴き声。ナグラで録音中のベン・バート

 

足音や水しぶきの音などの効果音のほとんどがADR(アフレコ)によってあとから付け加えられる

 

ドキュメンタリータッチのため同時録音だと思っていた「ガヤ」も、わざわざあとで人を集めて声や物音を録っている。

 

その模様はちょっとユーモラスでもあるのだが、演じている人々は真剣そのものだし、『アルゴ』や『グローリー/明日への行進』では、実際に多くの血が流された革命の経験者たちや、その当時と現場を知る人々が収録に参加してもいる。そこまでして「音作り」がされていることに何か厳かな気持ちになる。ただ映像に音をつけているだけではなく、音もまた映画そのものを形作る重要な要素。

 

映し出される数々の映画の中にはこれまで感想をブログに書いてきた作品だったり、今年やここ最近劇場で再上映されたものも結構あって、それらの映画の「音」をあらためて意識させられました。

 

スター・ウォーズ

ワンダーウーマン

ブラックパンサー

七人の侍

雨に唄えば

アルゴ

エレファント・マン

ゴッドファーザー

地獄の黙示録

インセプション

ダークナイト ライジング

アラビアのロレンス

ROMA/ローマ

マトリックス

 

 

監督のミッジ・コスティンは、まだ女性の音響スタッフがあまりいなかった時代から映画にかかわってきた人で、裏方ゆえに表舞台でなかなか脚光を浴びる機会がない音響スタッフの中でも特に有能な女性たちにスポットを当てている。彼女たちの情熱、仕事への愛が伝わってくる。

 

 

 

 

 

 

 

音響スタッフたちの「音」への強い関心。自然の音を注意深く聴き、そこから想像力を駆使して「映画」のための「音」を新たに生み出していく。それらはまるで現代アートのような試み。

 

迫力のある音を作り出すためにジェット機の飛行音に獣の鳴き声を混ぜたり、歴史劇の戦いの場面では甲冑のガチャガチャと鳴る音を車のキーで表現したり。

 

ドキュメンタリーとしてはオーソドックスな作りだし、語られているのはあくまでも“ハリウッド”の音響についてで、それ以外の国々の作品やスタッフたちにはほとんど触れられませんが、ハリウッド映画の最初期──まだ音がついていなかったサイレントの時代から同時録音が可能になって、やがてステレオ、5.1chサラウンド、デジタル化とその歴史を走り抜けていく中で音響スタッフが果たしてきた役割の大きさを知り、「音」の重要さに気づいたクリエイターたちによって発展してきたその過程を見つめるのはなんともエキサイティングでしたね。

 

技術の発達と機材の進化によってもたらされたものがいかに多いか。じかに聴いてみると実感できる。

 

「音」についての映画だから、やはりこれは音響設備の整った劇場で観てこそだと思うし。

 

映画は映像と音でできている。

 

僕たちは映画を観ながら、同時に映画を“聴いて”いるんですね。

 

 

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