ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督、トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ジョン・C・ライリー他出演の『キングコング:髑髏島の巨神』。PG12。

 

1973年。特務研究機関のランダ(ジョン・グッドマン)はパッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)の部隊に護衛されて元特殊空挺部隊隊員のコンラッド(トム・ヒドルストン)を案内役に“地質調査”のために髑髏島に渡る。ヘリから次々と調査のためのサイズミック爆弾を投下する一行だったが、巨大な猿人に襲われヘリは全滅してしまう。

 

実は最初の予告篇を観た時にはあまりときめかなくて、なんとなくこれはスルーの方向かな、と思っていたんですが、やがて第2弾以降の予告でどうやら「怪獣映画」としての面白さに溢れた作品っぽい雰囲気を感じたのと、すでに鑑賞済みの人たちの評判も上々なので楽しみにしていました。

 

僕はキングコングというキャラクターそのものには昔からさほど強い思い入れがなくて、要するに見た目はデッカいゴリラなわけで、自分が幼い頃に慣れ親しんだ日本の個性的な造形の怪獣たちと比べると、ただ単に動物を大きくしただけの安易なモンスターとすら感じていたほど。

 

でも戦前にウィリス・オブライエンによるストップモーション・アニメで撮られた『キング・コング』(1933)が日本の円谷英二などに多大な影響を与えたことは知っているし、シャーリーズ・セロンがヒロインを演じた『マイティ・ジョー』(1999)やピーター・ジャクソン監督が撮った『キング・コング』(2005)も公開時に映画館で観て面白かったから、わりと自分には相性のいい巨大モンスターなのだろうな、とは思っていました。

 

今回はとにかくスカッとする映画を観たかったから、というのもある。

 

で、最初に言っておきますと、面白かったです!(^o^)

 

思いっきり暴れまくるコングの姿が観られただけでひとまず満足。

 

僕は2D字幕版で観ましたが、IMAX3Dだったらもっと燃えただろうな。

 

僕が観たのはぎり3月中だったから、春休み終了間際の中高生たちも大勢観にきていました。

 

残念ながら小さい子どもさんたちの姿は見かけませんでしたが。

 

惜しいなぁ、小学生が一番楽しめる(大きなお友だちを除く)と思うんだけど。

 

往年の“残酷映画”へのオマージュというかパロディみたいなショット(『食人族』や『カランバ』など)がいくつかあるのでそれが理由なのかもしれないけど、先日観た韓国映画『哭声/コクソン』が年齢制限なしなのにこの映画がPG12って、それはおかしいだろ^_^;

 

まぁ、12歳未満でも保護者の助言と指導(別に大人が同伴する必要はない)があれば観られるし、ぜひみんなで楽しんでくださいな。

 

 

さて、面白かったのは面白かったんだけど、じゃあ何か熱く語りたくなるような作品だったかというとそこまでではなくて、巨大生物同士の闘いが爽快だった、ぐらいの感想しかないのでこれ以上書くことがないんですが(;^_^A

 

とりあえずこれからご覧になるかたに申し上げておきたいのは、必ずエンドクレジットの最後まで席を立たずに観てください、ということです。

 

僕が観た回ではエンドクレジットの途中で学生っぽい人たちがゾロゾロとかなりの人数帰っていったので、「それはもったいないぞ」と。

 

まぁ、怪獣映画ファンやこの映画をずっと前からチェックしていたような人はすでにご存知だとは思いますが、エンドクレジットの最後にサプライズがありますから。

 

では、これ以降はネタバレがガッツリありますので、未見のかたは鑑賞後にお読みください。

 

 

これまでの「キングコング映画」のいくつかではコングは中盤以降は都会に連れてこられてそこで暴れていたんだけれど、今回は髑髏島(SKULL ISLAND)から一歩も出ないというのがなかなかユニークだったな、と。

 

完全に秘境探検映画のノリなんですよね。そしてそこにヴェトナム戦争映画がミックスされている(トム・ヒドルストン演じる“コンラッド”は『地獄の黙示録』の原作「闇の奥」の著者、またジョン・C・ライリー演じる“マーロウ”はその主人公の名前から取られている)。

 

 

 

 

それと、33年版をリメイクしたピーター・ジャクソン版のコングは見た目がほぼゴリラだったのに対して、今回のコングは二足歩行でより人間に近い体型になっている。

 

 

 

『北京原人の逆襲』(1977)に出てきた巨人みたいな。リブート版の『猿の惑星』のエイプたちにも似ている。

 

そういえば、この映画には『猿の惑星:新世紀 (ライジング)』で凶暴なボノボ“コバ”のモーションキャプチャーでの演技をしていたトビー・ケベルが出ていて、コングの攻撃で一人だけ隊からはぐれてモンスターの餌食になってしまうチャップマンを演じている。

 

今回彼はモーキャプは担当していないようだけど、コングの動きを演じたテリー・ノタリーは『猿の惑星:新世紀』ではエイプの一人を演じていた。

 

今年はその続篇『猿の惑星:聖戦記 (グレート・ウォー)』が公開されるし(ノタリーはこちらにも出演)、奇しくも猿人イヤーですなw

 

面白いのが、秘境冒険モノでありながらも、その手の作品で定番の原住民(先住民)たちはこの映画では平和で温厚な人々でけっして主人公たちに危害は加えないし、彼らが闘うシーンすらないこと。

 

ピージャク版『キング・コング』では(すでにうろ覚えですが)どういう人種や民族なのか皆目不明な黒塗りの“土人”さんたちがヒロインたち一行を襲っていた。

 

いろいろPC的に配慮したのか、彼ら先住民とコンラッドたち一行の間にはトラブルは起こらず、島民たちは最後まで協力的。

 

その代わり、コングを殺そうとする人間が悪役になる。その悪役を演じるのがボクらのサミュエル叔父貴。

 

 

 

悪役がいなきゃ映画が面白くならないからしかたないんだけど、このサミュエル・L・ジャクソンが演じるパッカード大佐がまたツッコミどころがありすぎるキャラで、そもそもジョン・グッドマン演じるランダやブリー・ラーソン演じる戦場カメラマンなどの民間人たちを無事に帰還させることを何よりも優先しなければならないのに、仲間の復讐に燃えて執拗にコングを殺そうとするところなんか軍人としては完全に無能。

 

おかげで死ななくて済んだ者たちまでもが無残に殺される(彼が断末魔に「マザファッ…」まで言いかけてコングにプチッて殺られるところは笑いましたw)。

 

だから、お話を真面目に観てると頭が痛くなるかもしれない。

 

これはもう、巨大モンスターたちが人間たちを襲ったり互いに殺しあうのを愉しむプロレス映画で、ストーリーはオマケみたいなもの。そう割り切って観ることが必要。

 

映画の冒頭で、「1944年」という字幕とともに墜落する2機の戦闘機。

 

乗っていたのはアメリカ兵と日本兵。

 

彼らは拳銃と日本刀で闘うが、コングの登場によって中断される。

 

ここで日本兵のイカリ・グンペイを演じているのは、アンジェリーナ・ジョリー監督の『不屈の男 アンブロークン』でも日本兵を演じてあちらではアメリカ兵を虐待していたミュージシャンのMIYAVI(『髑髏島の巨神』の彼の画像がまったくみつからないのだが、なんでだ)。

 

 

 

なんだか日本兵専門俳優みたいになっちゃってるけど、ずいぶんとイケメンな日本兵だよなw

 

この唐突な日米対決は、エンドクレジットのあとのアレを観ると意味がわかるということですね。

 

ちなみに、この時のアメリカ兵マーロウは1973年時ではジョン・C・ライリーになって、彼はグンペイのことを「ガンペイ」と呼んでいて字幕でもそうなっている。

 

 

 

「GUNPEI」を「ガンペイ」と読んだらしい。ガンダムみたいにw

 

ガンペイも大概だけど、「イカリ」はあまりにもね…。

 

コンラッドたちを襲うヘビに両腕が付いたような巨大モンスターもモロだし、喜んでる人たちもいるけど、個人的にはもうちょっと昔ながらの怪獣っぽい造形の方がよかったなぁ。

 

 

 

このオバケトカゲが暴れるシーンが結構長いので、正直僕はその部分は若干退屈してしまいました。

 

水牛が巨大化したようなモンスターが出てきて可愛かったけど、あれももっと空想的なデザインにできなかったんだろうか。あまりにまんますぎて。

 

これも『地獄の黙示録』オマージュなんでしょうかね 

 

ギャオスみたいな顔した怪鳥が大量に登場するけど、残念ながら口から超音波メスは発射しません。せめてもうちょっといろんな形態のモンスターが見たかった。

 

それは続篇のために取ってあるのかもしれませんが。

 

ここ最近ハリウッドで作られる映画に登場するこの手のモンスターってどれもなんか似たり寄ったりで、いまいち愛着が持てないんですよね。デザイン的に個性がないっていうか。

 

つくづくウルトラシリーズは偉大だったな、と思います。

 

マーロウがこのヘビだかトカゲみたいなバケモノに「スカル・クローラー」と勝手に名称を付けて悦に入ってるところなんかは、ヲタクってのはどこの国でも変わらんなぁ、と微笑ましいですが。

 

この映画にはキングコング映画やこれまでのさまざまな映画からの引用、オマージュが捧げられているようだけど、まず、監督さんご本人のヴィジュアルが^_^; どこのホビットだw

 

 ロード・オブ・ザ・リングではない

 

ピーター・ジャクソンもオタクだけど、彼が撮ったコングにはオリジナル版への強い愛情が感じられたのに対して、たとえば今回のコングはヒロインには恋愛感情を一切持たない。美女と野獣、というテーマがまったく存在しない。

 

そして一応、人間側の主人公であるコンラッドとヒロインのメイソンの間にもそういう雰囲気すらない。

 

ピーター・ジャクソンの『キング・コング』も見応えあって僕はけっして嫌いではないのだけれど(このタイミングにTVでやってくれないかなぁ。いや、DVDでも観られるけどみんなで一緒に観たいんですよ)、コングへの愛が溢れすぎてて上映時間が3時間以上もあったために僕は途中で居眠りしてしまった。

 

一方で、ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督のこの最新作は2時間以内に収まっていて観やすかったし、怪獣同士が戦うような映画を好む幼稚な観客にとって恋愛シーンなんて余分でしかないので、そこんとこはほんとに見たいものだけを見せる小学生スピリットが溢れてて好感が持てた。

 

ピージャク版もこの最新作もどちらもそれぞれ魅力があるのでどちらが上とか下とかいうのはないんですが、この『髑髏島の巨神』は今後の続篇を見据えたうえで作られているので、人間ドラマがコングの戦いのシーンを邪魔しないようにしてあって、小学生にはより観やすいんではないかな。

 

さっきから小学生小学生言ってるように、これは僕たちが少年時代(少女時代でも構いませんが)に映画館やTVで経験したワクワクする感覚に満ちた映画で、子どもが見たいものが詰まってるんだよね。

 

そして、映画本篇が終わったあとには僕たちを最高のプレゼントが待っている。

 

特務研究機関モナークで尋問を受けるコンラッドとメイソン。

 

彼らはそこで、巨大生物はあのコングだけではないことを知らされる。

 

壁画に描かれた巨大な翼竜と蛾、三つ首の竜とともに、特徴的な背びれを持った恐竜型の怪獣の絵が映しだされる。

 

そして場内に響き渡るあの咆哮。

 

わかってて観てたけど、やはりこのラストショットにはアガりましたね。

 

Godzilla vs. Kong』、2020年公開予定(※コロナ禍のため2021年に延期)。今から待ち遠しいです。

 

 

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