伊集院は受話器を手にして、呆然と立ち竦んでいる。
大口の得意先からの、突然の取引停止の勧告。なにが起こったのか、皆目わからない。
あれだけ良好な仲だったのに、一体、なぜ。
会社に落ち度があったとは思えない。その得意先には、全身全霊を傾けて尽くしてきたのだ。
この得意先に受注を切られると、会社は倒産するしかない。
理由を訊いても、担当者はなにも答えてくれなかった。ただ、申し訳ないと、何度も謝るのみだ。つい昨日まで親しく会話をしていた担当者も、今の電話はあからさまによそよそしかった。
それから、伊集院は理由を知るべく奔走した。
幾人か、真相を知っていると思われる者がいたが、みな一様に言葉を濁すのみで、真実を語ってくれる者はいなかった。
ただ、憐みの目で、伊集院を見るだけである。
事の真実が判明したのは、会社が倒産して半年経った頃だった。
偶然、町で最後通牒を渡した得意先の担当者と遭遇したのだ。
鬼気迫る伊集院に詰め寄られて、その担当者はしぶしぶながらも真実を語ってくれた。
それは、伊集院の想像を絶するものだった。
その得意先の社長の愛人に頼まれて、愛人の親が経営する会社に鞍替えしたのだ。社員は、社長の意向には逆らえない。
ただ、それだけのことだった。
大手の優良企業に勤めていた杉田敏夫。
将来安泰を信じていた敏夫の期待は、バブルが弾けた時から裏切られた。家のローンが払えず早期退職の募集に応募するも、転職活動がうまくいかず、その頃から敏夫は荒れて、家族に当たるようになった。
そんな時、敏夫は不思議な体験をする。
幻のようなマッサージ店で、文字のポイントカードをもらう。
そこに書かれた文字の意味を理解する度に、敏夫は変わってゆく。
すべての文字を理解して、敏夫は新しい人生を送れるのか?
敏夫の運命の歯車は、幻のマッサージ店から回り出す。
夜の世界に慣れていない、ひたむきで純粋ながら熱い心を持つ真(まこと)と、バツ一で夜の世界のプロの実桜(みお)が出会い、お互い惹かれあっていきながらも、立場の違いから心の葛藤を繰り返し、衝突しながら本当の恋に目覚めてゆく、リアルにありそうでいて、現実ではそうそうあり得ない、ファンタジーな物語。
ふとしたことから知り合った、中堅の会社に勤める健一と、売れない劇団員の麗の、恋の行方は?
会社が倒産し、自棄になっていた男の前に現れた一匹の黒い仔猫。
無二の友との出会い、予期せぬ人との再会。
その仔猫を拾ったことから、男の人生は変わっていった。
小さな命が織りなす、男の成長と再生の物語。
奥さんが、元CIAのトップシークレットに属する、ブロンド美人の殺し屋。
旦那は、冴えない正真正銘、日本の民間人。
そんな凸凹コンビが、CIAが開発中に盗まれた、人類をも滅ぼしかねない物の奪還に動く。
ロシア最凶の女戦士と、凶悪な犯罪組織の守り神。
世界の三凶と呼ばれて、裏の世界で恐れられている三人が激突する。
果たして、勝者は誰か?
奪われた物は誰の手に?