誰もいないオフィスで、柴田はひとり佇んでいた。
ロッカーやパソコンなどはすべて運び出されており、十いくつかのスチールデスクのみが整然と並んでいるだけだ。柴田は、ひとつひとつ机を見回しながら、そこに座っていた社員の顔を思い浮かべていた。
苦しかったが、楽しくもあった三年間。
最初は、こんなものが売れるのかと始めた商売だったが、予想に反して、その商品は売れに売れた。そうして、一人で起ち上げた会社が、一人また一人と増えてゆき、やがて二十名近くになった。
ネットの威力とは凄いものだ。
商品が良かったのか、サイトの内容が良かったのかはわからない。
が、直ぐに売れたのが災いした。
柴田は、慢心してしまい、その商品が売れなくなった時のことを考えなかった。
人気が出るのも早かったが、凋落するのも早かった。
なぜ売れて、なぜ売れなくなったのか、その原因は柴田にはわからない。
それほど、有頂天になっており、一気に奈落に突き落とされたのだ。
この栄光がいつまでも続くものと錯覚し、贅沢三昧を味わっていたため、会社には蓄えがなかった。柴田にもだ。
「このままでは終わらない」
不屈の光を目に宿して、柴田が呟く。
一度失敗した者は強い。きっと、柴田は巻き返しを図ることだろう。
大手の優良企業に勤めていた杉田敏夫。
将来安泰を信じていた敏夫の期待は、バブルが弾けた時から裏切られた。家のローンが払えず早期退職の募集に応募するも、転職活動がうまくいかず、その頃から敏夫は荒れて、家族に当たるようになった。
そんな時、敏夫は不思議な体験をする。
幻のようなマッサージ店で、文字のポイントカードをもらう。
そこに書かれた文字の意味を理解する度に、敏夫は変わってゆく。
すべての文字を理解して、敏夫は新しい人生を送れるのか?
敏夫の運命の歯車は、幻のマッサージ店から回り出す。
夜の世界に慣れていない、ひたむきで純粋ながら熱い心を持つ真(まこと)と、バツ一で夜の世界のプロの実桜(みお)が出会い、お互い惹かれあっていきながらも、立場の違いから心の葛藤を繰り返し、衝突しながら本当の恋に目覚めてゆく、リアルにありそうでいて、現実ではそうそうあり得ない、ファンタジーな物語。
ふとしたことから知り合った、中堅の会社に勤める健一と、売れない劇団員の麗の、恋の行方は?
会社が倒産し、自棄になっていた男の前に現れた一匹の黒い仔猫。
無二の友との出会い、予期せぬ人との再会。
その仔猫を拾ったことから、男の人生は変わっていった。
小さな命が織りなす、男の成長と再生の物語。
奥さんが、元CIAのトップシークレットに属する、ブロンド美人の殺し屋。
旦那は、冴えない正真正銘、日本の民間人。
そんな凸凹コンビが、CIAが開発中に盗まれた、人類をも滅ぼしかねない物の奪還に動く。
ロシア最凶の女戦士と、凶悪な犯罪組織の守り神。
世界の三凶と呼ばれて、裏の世界で恐れられている三人が激突する。
果たして、勝者は誰か?
奪われた物は誰の手に?