ドルチェヴィータ -3ページ目

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14Jul
- Surisuri 38
  スニちゃんの作業が始まった。サッカークラブの子どもたち用のマカロンから始めるらしい。大人たちは夜食べるけど、子どもたちは昼間に食べるからということと、メインのケーキのデコレーションの一部を先に作るということもあるようだ。ピンク、黄色、オレンジ、ミントグリーンのマカロン生地をどんどん天板に絞り出していく。スイスイと出して行くから簡単なのかなと思いながらシャッターを切っていると、不意に声がした。「あんた、お菓子をなめんじゃないわよ」「ハイ、ごめんなさい」クスクスと笑いながらビリョンさんが僕に飲み物を出してくれる。「料理はあとから調整できるけど、お菓子はそれができないから難しいよ。今年のケーキはみんな期待してるし」「悪かったな、毎年簡単なデコレーションで」「クッデのケーキも美味しいよ」「ヒョン、慰めはいいよ」「もう、クッデ、凹みながら仕込むと料理も凹むよ！」ビリョンさんとクッデさんのやり取りはリズム感が良くて聞いていて楽しい。予め許可を貰っていたので、僕はスニちゃんだけでなく、クッデさんやビリョンさんの姿も撮っていった。にほんブログ村
12Jul
- Surisuri 37
  「明日から作業に入るわよ」カフェから戻ると、既にスニちゃんが帰宅していた。「明日から？早いね」「メインのケーキの他にお土産用のプチケーキがあるからね。そっちのデザインがなかなか決まらなくて悩んだわ。去年までは大きなバスケットに入れてその場で子どもたちに食べてもらってたって言うから、今年もそのスタイルで行こうと思うの」「去年まではどんなのを振る舞ってたの？」「ドーナツにアイシングをかけたり、マドレーヌだったりらしいわ」「スニちゃんはどういう作戦でいくの？」「マカロンでいくわ。カラフルでバスケットに入れても見栄えするし。メインのケーキにもマカロンをデコレーションに使うから丁度いいの」デザートのことを話すスニちゃんは饒舌だ。「今回のメインのケーキはあんたのためでもあるんだから、頑張ってユノさんを射止めるのよ」なっ！「何言ってんの？ユノさんは…」「彼はバイだそうよ。そして最近おしゃべりの中にあんたの名前が出てくることが多いらしいの。ここで何もしないテはないわ」「なな、なんでスニちゃんがそんなこと知ってるのさ？」「ビリョンさんとクッデから聞いたのよ。本人も特に隠してはいないそうだけど、ここには梨泰院みたいなところはないから素振りに出さないだけなんですって」スニちゃんはすっと立つと、髪を軽くまとめた。「最後の詰めをしていて、今日は本当に疲れちゃったから外に食べに行きましょ。あのバルコニー席が空いてるといいんだけど」今夜の食事は晩才食堂か。にほんブログ村
11Jul
- Surisuri 36
  カフェWITHは午後の奥さんたちの波が引いてのんびりとしていた。「ミンくんはいつも一番いいタイミングで来るよね」マスターが笑いながら、オーダーしたブレンドコーヒーを出してくれた。「今年のケーキは楽しみだね。クッデヒョンのケーキも美味しいけど、女性パティシエのケーキなんてこのあたりじゃ滅多に食べられないから」ここのコーヒーとケーキも美味しいのになあ。「僕はシンプルなのしかできないから」とマスターは謙虚に笑う。【本日のケーキ】はガトーショコラだ。「今日も美味しいです」「ありがとう」コーヒーを飲んでため息をつくと、マスターがおや？という顔をした。「もしかして元気ないのかな？そしてそれは、ここに一人で来てるのと関係してるのかな？」いつの間にかカウンターにオーナーがいた。「勘が良すぎですね、オーナー」僕は他のお客さんがいないのをいいことに、聞かれるままに話していた。「んー、なるほどね。自分の知らないお姉ちゃんを知ってる男が気に入らないようだけど、それはもしかしたら双子特有のものかもしれないね」双子特有。言われてみればそうなのかもしれない。僕が一人で勝手に、スニちゃんの全てを知ってるかのように思っているだけなのかも。「あれれ？なんか余計なこと言っちゃったかな？」「いえ。そんなことないです。気づけてなかったことに気づけたっていうか、目からウロコ的な感じで…」そうだ、目からウロコが落ちた気がしたんだにほんブログ村
10Jul
- Surisuri 35
  食材の仕入れの関係もあって、翌日からスニちゃんはアトリエプラダに通い始めた。アトリエプラダには製菓道具も一通りあるらしい。「ここでパーティーをするときは、俺がケーキも作ってるから、道具は一通り揃ってるぞ。手入れもちゃんとできてるから心配ない」クッデさんが言った通り、アトリエプラダはスニちゃんがケーキを作るのに何の不自由もないらしい。実際に制作に入るところから、また撮らせてもらうことになっているけど、今はまだ打ち合わせ段階。ユノさんの好みを熟知したビリョンさんと話が合うらしく、毎日楽しそうだ。「アトリエプラダは花が一杯で、いるだけで気持ちいいわ。店内も韓屋作りをリノベーションした造りで居心地いいし」それはよく分かってるよ。アトリエプラダのウェブ用の宣材写真撮ったの僕なんだから。家でぐちぐち思いながら待つのも嫌だなあと思って、コーヒーを飲みにカフェWITHに行くことにした。にほんブログ村
09Jul
- Surisuri 34
  僕はクリームチーズサンドクッキーを一口で食べてコーヒーをゴクゴクと飲んだ。「アトリエプラダのクッデさんとは？」「ただの先輩後輩よ。向こうが調理で、私は製菓だったけど、だから、本来はヨ先輩ね」「でもでもっ、数年ぶりに会ったのにあんなに息ぴったりで作業できるの？」「ん？あぁバナナケーキを作ったときのことね。私はクッデの卒業制作の練習を越だったことがあるの。だからじゃない？」それだけであの息の合いよう？「何を考えてるのよ？」「…だって…数年ぶりに会ったのに息ぴったりでさ…」少し考えたスニちゃんは言った。「多分、私達似てるのよ。だから息が合ってるように見えるんじゃないかしら」二個目のクリームチーズサンドをゆっくりと噛みしめるように食べると、スニちゃんは、立ち上がった。「なんか色々あって疲れちゃった。シャワー浴びて寝るわ。ここの片付けよろしくね」その後姿はあまり疲れているようには見えなかったけど、僕は何も言えずにいた。にほんブログ村
08Jul
- Surisuri 33
  「コーヒー一杯分くらいだよ」「何を聞かされたの？」「返してくれってさ。スニちゃんは僕のお姉ちゃんなのに、弟の僕の前でヌナヌナって…」「テミンは製菓学校のときの後輩なのよ。その後私の店に来てもらったりもしてたんだけど、技術も熱意も素晴らしかった。店を閉めるときにも退職金を少し多めに渡したくらいよ」「ふうん」すると、スニちゃんはクスリと笑った。「あんた、子供の頃と全然変わんないのね。夕食はプデチゲよ。食材で足りないものは帰りがけに買ってきたから」海鮮メインのプデチゲはとっても美味しかった。シメのラーメンのとき、スニちゃんは諦めたような顔で言った。「何か聞きたいことがありそうね。早く食べちゃいましょ。話はそれからよ」そこから僕たちは無言でラーメンを食べて、後かたづけをした。僕がコーヒーを淹れているとき、スニちゃんは昼間焼いたクッキーにシロップを染み込ませてクリームチーズを挟んだ。「さ、何でも話すわよ」スニちゃんは両肘をテーブルに付いて手を組んで顎を乗せた。これは、学生の頃にも何度も見た姿だ。勉強、恋愛、いろんな悩みを聞いてもらって、僕の性的嗜好のこともその時に話した。「僕がソウルを離れている間に何があったの？」スニちゃんはクリームチーズのクッキーサンドをバクバクと食べて、コーヒーで流し込んだ。「パティスリーを一軒潰したのよ。みんな去っていったわ。テミンを除いてね。あの子は最後まで残ってくれた。でも二人で焼き菓子から生菓子まで、それまでと同じようにはできないわ。だから店を閉めたの」「病院には…？」「家に引きこもるようになって、気がついたらあんたがいたわ。そこら辺のことはお母さんたちに聞いたほうがいいと思う」一番聞きたくない質問が残った。にほんブログ村
- 再開します
  体調も回復（？）しましたのでお話の投稿を再開します。余談ですが、SMTの追加公演、当選しました。ボッチ参戦ですが。土曜日にグッズ買いに行き、月曜日に参戦ということになりそうです。楽しみが増えました。それでは、このあとお話を投稿します。お時間ありましたら。
04Jul
- Surisuri 32
  「テミン、何してるの？」玄関のドアが開いた音にも気が付かなかった。「ヌナ！やっと会えた！ご実家に行っても教えてくださらなくて、やっと釜山にいるってわかって迎えに来たんだ」スニちゃんは半分困ったような微妙な笑みを浮かべている。「まさか、ヌナがヨクッデ先輩と一緒にいるなんて思わなかたけど」「それは偶然なのよ。あと、私には釜山の水が合ってるみたいなの。当分ソウルには戻らないわ」僕が口を挟む余地は全くなかったけれど、本人の口から当分ソウルには戻らないと聞いて安堵していた。「そんな…もったいないよ！ヌナはソウルの一流店で焼菓子を作る人なのに…」「とにかくもうソウルに帰って」「僕は諦めないよ！また来るから！」テミンとやらは、スニちゃんに追い立てられるように出ていった。僕は一度テーブルの上を片付け、新しくコーヒーを淹れ、スニちゃんは部屋着に着替えて髪も一度ブラシを通したようだった。「テミンは結構長くここにいたの？」にほんブログ村
02Jul
- Surisuri 31
  疲れて寝込むかと思いきや、スニちゃんは午前中からアトリエプラダに打ち合わせに行っている。打ち合わせ相手は、あのクッデさんとビリョンさんだ。なんていうか、デコレーションに関してはビリョンさんが引き受けているらしく、メインの打ち合わせはビリョンさんとらしかった。♪〜突然訪ねてきたイケメンは、テミンと名乗った。スニちゃんが作り置きしていったクッキーとコーヒーを出すと、礼儀正しく「ありがとうございます」と行って、クッキーを齧った。「ああ、やっぱりヌナの味だ。変わってない」そのまま噛みしめるように1枚食べ終えると、コーヒーを一口飲んでまっすぐ僕を見た。「シムチャンミンさん、そろそろヌナを返してください。僕が働いているパティスリーで一緒に働きたいんです。もう、店のオーナーパティシエにも話は通してあって、いつでも来れるように整ってるんです」「ちょ、ちょっと待って！スニちゃん…姉はまだ療養中で」「知ってます。入院していたことも。でも、もうお元気になってるじゃないですか。こう言っちゃなんだけど、ヌナは釜山の片隅にいるような人じゃない」悪かったね、釜山の片隅で。「君。テミンくんていったっけ？姉がどういう状態で入院してたか知ってるの？やっとここまで来たんだよ。傍目には元気に映るかもしれない。でも念には念を入れたいんだよ」そのとき、リビングのドアが開いた。にほんブログ村
30Jun
- Surisuri 30
  「ねえねえ、来週の俺のバースデーパーティー、スニちゃんのケーキがいいなあ」スニちゃんの手土産のパウンドケーキに、クッデさんが生クリームとフルーツでアレンジしたデザートを食べながらユノさんが言った。「って、主役が言ってるけど、どうなんだ？お前はいつまでこっちにいられるんだ？」ドキリとした。そうだった。スニちゃんは療養でこの釜山に来ているだけだ。良くなればソウルに帰るだろう。僕としたことが、そんな大事なことをすっかり忘れてた。「いいわよ。バースデーケーキ承るわ。ここにいる人数分くらいかしら？」「そうか。人数はもう少し増えると思う。それから、バースデーケーキの他に配れる用のカップケーキみたいのも頼みたいんだが」「お土産？」「こいつがコーチしてるサッカーチームの子どもたちが昼間来るから、その子達に配るんだ」「何人くらい？」「20人くらいかな」「分かったわ。一つお願いがあるの」「ここ使いたいんだろ？構わないぜ」何？この空気感、イライラする。なんでこの二人こんなにトントン会話が進むんだ？「よう、シスコン。姉君とクッデが阿吽の呼吸なのが気に入らないようだな」ヒチョルさんがいつの間にか僕の隣りにいた。「そして、更に注意は必要だな。さっき、店の外で見知らぬイケメンに姉君のことを聞かれたぞ。奴は姉君のことを知ってるふうだったがな」え？どういうこと？にほんブログ村
29Jun
- Surisuri 29
  打ち上げ会場となっていたアトリエプラダは、バルーンやモール、リボンなどでパーティー風に飾り付けられていた。「ここらの若い店主たちは祝い事をここでするんだよ」「毎月決まった金額を出し合って、貯めていくんだ。ま、互助会みたいなものだな」華やかに変身した店内に圧倒されていた僕らの横には、ヒチョルさんとアトリエプラダのビリョンさんが立っていた。「今日の飾り付けはヒチョルのリクエスト」赤、白、金のバルーンがヒチョルさんそのもののようだ。「あの、これ、デザート代わりにでもしてもらえたら」スニちゃんがパウンドケーキとアイシングクッキーを包みから取り出すと、ユノさんが乗り出すようにクッキーを見た。「可愛いねえ！凄く可愛い！」1個1個がそれぞれ違う動物のクッキーを取り出すごとに歓声を上げている。その様子をスニちゃんは何か意味ありげに見ていた。にほんブログ村
28Jun
- Surisuri 28
  マンションに帰るとコーヒーの香りがした。「ただいま」「おかえり。あんたの分もあるわよ」スニちゃんが指した先には耐熱マグが置いてあった。「今淹れたから十分熱いわよ」なんとなく疲れているように見えるのは気の所為か。「疲れた？」「ちょっとね。残ったクッキーに飾りを入れて遊んだりしてたから。でも大丈夫よ」クッキーは割れてしまうかもしれないことを考慮して10枚くらい予備が出るように焼いていたけど、幸い1枚も割れてなかったので予備はそのまま残ったのだった。お皿に乗っていたのはウサギやクマなどのかわいい動物たち。しかも、色味はパステルカラーで、ヒチョルさんのところに作っていたものとは全然雰囲気が違っていた。「食べていいわよ」「その前にこれ撮らして」ダイニングのペンダントライトを少し下げて照明の代わりにしてシャッターを切る。撮り終えると、スニちゃんがクッキーをラッピングし始めた。「それ、どうするの？」「打ち上げに持っていくのよ。一応手土産のパウンドケーキも焼いてあるけど」いつの間に。だから疲れていたんだな。ラッピングの様子をじっと見ていたら、スニちゃんが呆れたような顔で言った。「あんたのおやつは明日作ってあげるわよ」そういう意味で見てたわけじゃないんだけどな。にほんブログ村
27Jun
- Surisuri 27
  途中でチラリと覗いて見たけど、美容室レラの部屋10周年イベントはかなり盛り上がっていた。こういう周年祝いのお花って胡蝶蘭が多いけど、今日は真っ赤なバラの花が店の外にまで溢れていた。「毎年のことながら凄いね。バラの香りが道のこっち側まで来てる。あのバラ、後日全部サシェにしてお客さんに配るんだよ。ヒチョリヒョンのサービス精神て凄いよね」うんうん、って、えっ⁉「…ユノさん」この場にスニちゃんがいなくて本当に良かったと思う。「今日はあの綺麗なお姉さんいないんだ？」「姉は人が多いところが苦手なので」「ふーん。チャンミン、店には行かないの？」「僕も混雑してるところはちょっと…」「そっか。あ、今夜の打ち上げ来るんでしょ？うちのクッデヒョンが腕をふるうから楽しみにしてて」「はい、そろそろ一度帰りますので、また後ほど」「うん。後ほどねー」ユノさんは手をヒラヒラと振ってアトリエプラダの方へ歩いていった。はー、なんかドキドキしちゃったな。にほんブログ村
26Jun
- Surisuri 26
  「素晴らしい！なんて素敵なクッキーなんだ！」出来上がったアイシングクッキーを見て、ヒチョルさんは大喜びした。開店10周年だから気合を入れたイベントにしたかったのだと、上気した顔で言い、打ち上げにもぜひ来てくれと僕たち二人を誘ってくれた。「打ち上げ会場は弁当屋のアトリエプラダだ。場所は分かるな？」ヒチョルさんはホクホクとラッピングされたアイシングクッキーを、これまた綺麗にデコレーションされたバスケットに詰めていた。アトリエプラダ…「あんた、相変わらず分かりやすいわね。表情がコロコロ変わりすぎよ」「えっ⁉そう？そうかなっ！そんなことないと思うけどっ」「どうせ、あの金髪の人のことでも考えてたんでしょ」「な、なな何言ってんのさ！なんで僕がユノさんのことを…」「あぁ、ユノさんていうんだっけ？」スニちゃんはニヤリとした。「スニちゃん！よくない顔だよ！」「あーら、私が気がついていないとでも？」スニちゃんは僕のセクシュアリティーのことをちゃんと理解してくれている。「私が釜山に来てから、何回あそこのお弁当をオーダーしたかしら？」「ぐっ…」バレていたのか！にほんブログ村
25Jun
- Surisuri 25
  帰宅するとスニちゃんは着替えて手を洗うと、ダイニングテーブルの上に広げられたクッキーをチェックし始めた。「ん、いいわね。割れてないし、ヒビもない」ベースになるクッキーはハート型をしている。ここにアイシングをしていくんだ。ケーキのデコレーションをしているのを見たことはあるけど、クッキーのアイシングというのは初めて見る作業だった。一言も発することなく、黙々と作業していく。僕は、そんなスニちゃんの様子をカメラに収めていった。真っ白なベースの上に、かすかにピンクが混ざったレース模様が施され【10th】とだけ書かれたリボンが横切り、最後に真っ赤なバラの花が乗った。これはあの美容室をイメージしているんだ。「綺麗だね」「当たり前よ。私が作ったんだから」アイシングクッキーも綺麗だけど、スニちゃんも綺麗だった。これで完全復活だと確信した。にほんブログ村
20Jun
- Surisuri 24
  マスターからの相談は、初めは信じられないものだったけど、実際に動画を見せてもらって驚いた。スニちゃんは単純に可愛いと言いながら、マスターにいろいろ提案をしていた。帰り道、スニちゃんは「どうなったか聞くのが楽しみだわ」と言いながらも心はアイシングへと移っているようだった。【美容室レラの店】は、なんていうか気分が上がる雰囲気のお店で、オフホワイトの壁に大理石の床、真っ赤な椅子、そしてライトが付いた大きな鏡が印象的だ。「レディを美しくするための場所だからな。見た目だけじゃなく気分も上げて行かないとなおかげで、デート前のお客様も多い」ピンクとブロンドが混ざった髪をしているオーナースタイリストのヒチョルは、とにかくレディファーストだ。「俺様の手にかかれば皆美しくなる」猫のような大きくて鋭い目で上から見下されると、一瞬ビビってしまうけど、話してみると案外人懐こくて本当に猫みたいな人だった。スニちゃんはその【レラの店】の開店記念日のスーベニールとして配るアイシングクッキーを作っているんだけど、どんな仕上がりになるのかな。にほんブログ村
19Jun
- Surisuri 23
  「スニちゃん、ここのオムライス美味しいんだよ」「なら、それにするわ」2人分のオムライスを注文して待っていると、壁にかけられている写真にスニちゃんが気づいた。「あの写真、あんたのよね？」「そうだよ。分かった？」「だって、あんたの部屋のベランダからの夜明けの景色じゃない。私も同じ景色を見たわ。最近は朝までぐっすりだけど」そう、スニちゃんは夜中に部屋を歩くことがなくなった。夜、ホットミルクを飲んでいるからなのか。僕としてはそうであってほしいところだけど。話しているとオムライスがやってきた。平らなチキンライスの上に、ぷりっとしたオムレツが乗っている。ナイフを入れても崩れないけど、食べるとふんわりしててたまらないんだ。「おいしい」スニちゃんもパクパク食べている。「スニちゃん、作れる？」「あんた、それはあたしの目の前でお菓子を買いに行くって言うのと同じよ。このオムライスが食べたいと思ったらここに来なきゃダメよ」「あ、そっか。そうだね」食後のコーヒーとプチデザートを運んできたマスターが、スニちゃんに話しかけてきた。「ごめんなさい、会話が聞こえてしまったんだけど、もしかしてパティシエさん？」「そうですけど」マスターはカウンターの奥にいると思われるオーナーを呼んだ。「ヒョン！スニちゃんパティシエさんだって！」オーナーがメガネを外しながら僕らのテーブルにやってきた。「あの事相談してみようか？」「そうだな」あの事？スニちゃんも不思議そうな顔をしていた。にほんブログ村
- お知らせ
  【Hug】カテゴリを読みやすくしました。当面【Share the world】は独立したカテゴリにします。振り回す形となってしまい申し訳ありません。お話の更新は【Surisuri】一本になります。お時間ありましたら。
18Jun
- Surisuri 22
  マンションから歩いて10分くらいのところにそのカフェ『WITH』はある。マスターは奇しくも僕と同じ名前のチャンミンさん。紛らわしいので、僕はマスター、マスターはミンくんとお互い呼んでいる。「いらっしゃいませー。お、ミンくん久しぶりだね」カウンターの中には、マスターではなくオーナーがいた。「チャンミニ、もうすぐ戻るから。えっと…こちらは？」「姉です。弟が良くして頂いてるようで。ありがとうございます」「ミンくん、こんなきれいなお姉さんいたの？てか、顔そっくりだね」「双子なんですよ、僕ら。姉のチャンスニです」「チャンスニ…じゃあスニちゃんだね、よろしく。ここのオーナーの片割れのユノです」このオーナーは人たらしで有名だけど、うちのスニちゃんはそんなのに引っかかったりしないから安心して二人のやり取りを見ていた。スニちゃんも外面丸出しでニコニコ対応している。3人で話していると、ドアベルがカランカランと鳴ってマスターが入ってきた。「あ、ミンくん、いらっしゃい。お待たせしちゃった？」「いえ、今来たとこですし、オーナーとお喋りしてたので」マスターは、食材の買い出しに行っていたという。「うっかり卵を切らしちゃってね」しっかり者のオーナーにしては珍しいことだと思った。にほんブログ村
- 通常運転に戻ります。
  【十字架】、一段落しましたので、本日から通常運転に戻します。で、次回から【Suri suri】を再開します。夕方までに更新できたらと思います。お時間ありましたら。