「コーヒー一杯分くらいだよ」

「何を聞かされたの?」

「返してくれってさ。スニちゃんは僕のお姉ちゃんなのに、弟の僕の前でヌナヌナって…」

「テミンは製菓学校のときの後輩なのよ。その後私の店に来てもらったりもしてたんだけど、技術も熱意も素晴らしかった。店を閉めるときにも退職金を少し多めに渡したくらいよ」

「ふうん」

すると、スニちゃんはクスリと笑った。

「あんた、子供の頃と全然変わんないのね。夕食はプデチゲよ。食材で足りないものは帰りがけに買ってきたから」


海鮮メインのプデチゲはとっても美味しかった。

シメのラーメンのとき、スニちゃんは諦めたような顔で言った。

「何か聞きたいことがありそうね。早く食べちゃいましょ。話はそれからよ」

そこから僕たちは無言でラーメンを食べて、後かたづけをした。

僕がコーヒーを淹れているとき、スニちゃんは昼間焼いたクッキーにシロップを染み込ませてクリームチーズを挟んだ。



「さ、何でも話すわよ」

スニちゃんは両肘をテーブルに付いて手を組んで顎を乗せた。

これは、学生の頃にも何度も見た姿だ。

勉強、恋愛、いろんな悩みを聞いてもらって、僕の性的嗜好のこともその時に話した。

「僕がソウルを離れている間に何があったの?」

スニちゃんはクリームチーズのクッキーサンドをバクバクと食べて、コーヒーで流し込んだ。

「パティスリーを一軒潰したのよ。みんな去っていったわ。テミンを除いてね。あの子は最後まで残ってくれた。でも二人で焼き菓子から生菓子まで、それまでと同じようにはできないわ。だから店を閉めたの」

「病院には…?」

「家に引きこもるようになって、気がついたらあんたがいたわ。そこら辺のことはお母さんたちに聞いたほうがいいと思う」

一番聞きたくない質問が残った。



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