大企業であれば2万人が一人1万円の経費を1年間で削減してくれた効果は2億円になりますが、
従業員5人の小さな工務店が一人1万円の経費削減をした効果は5万円です。
小さな会社が経費を削減しようと思っても、
そもそもかかっている経費が少なすぎて、インパクトのある経費削減をする費用がありません。
せいぜいコピー用紙の裏紙を使うとかその程度の削減です。
コピー用紙の裏紙を使うことで地球環境に貢献したいという強い意志でやっているなら素晴らしい活動ですが、経費削減のためにコピー機の裏紙を使うという発想なら貧素な発想と言わざるを得ません。
従業員5人のコピー用紙の裏紙の削減効果など知れていますし、どちらが表か解らなくなり業務効率が下がります。
小さな会社がコピー用紙の裏紙に躍起になるくらいなら、どうやって利益を増加させるかに躍起になった方が財務的なインパクトは大きいということです。
何が言いたいかというと、5万円を削減するのではなく、5万円を有効に投資して10万円に増やす方法を考える方が簡単だということです。
ビジネスが小さい会社のほうが、少額でも収益が増加するインパクトが絶大ということです。
例えば、社員5人の会社が5万円の投資をすることで従業員の労働時間が1日30分短縮できたとしましょう。時給1200円で250日働いたとして、
5人×600円(0.5h)×250日=75万円
時給換算すると年間75万円の削減になります。
5万円投資して75万円に増やしたことと同じです。
例えば。その5万円の投資は、ファイル共有するためのNASとバックアップハードディスクの費用だとしましょう。
NASを買って共有フォルダを購入しただけでは、効率良くファイル共有するノウハウがないので、ITコンサルタントに1日8万円支払って、効率的なファイル共有の仕組を構築してもらったとします。
それでも5人が30分を削減した効果=75万円に投資した費用は5万円+8万円=13万円です。
この13万円をケチって75万円分の時間を放置して改善しないわけです。
経費削減ばかりして投資せず、自社の能力が上がりませんから、仮に仕事がまとまって入ってきても処理できません。
要するに売上が現金に変わるまでの時間が長すぎるのです。
ですから、忙しいだけで資金繰りが楽になりません。
売上がないわけではないのに現金が残らないのです。
すなわち、利益というのは、組織の能力を上げた分のリターンなのです。
能力が低いまま売上を上げると利益は下がるのです。
ほどよい分量で仕事をしていたときの方がまだ儲かっていた。
ということが起こります。
能力に投資しない経営者は、キャッシュフローが良くならないという理由から、
さらに売上を上げてキャッシュインを増やそうとします。
そうすると、能力が低いためマルチタスクによる仕掛りに拍車がかかり、
業務は混乱しスループット(納品回収)がさらに遅くなり、
売上が増えているはずなのに現金が減っていき、
借り入れが増えていくというスパイラルにはまります。
このスパイラルに入った経営者がしてしまう最悪の意志決定が経費削減です。
経営者が組織の環境や能力アップに投資してこなかったために起こっている事態なのに、
社員の給与をカットしたり、外注先のコストを下げたり、
ただでさえ忙しい業務なのに裏紙の使用を強要したり、
老朽化した設備を買換えずにそのまま使わせたりするのです。
そうして関係者のやる気まで下がっていきます。
するとさらにスループットが遅れるので資金繰りがより悪化します。
このような状態でも学ばない経営者がする意志決定が広告宣伝費に費用を投じることです。
キャッシュインを増やせば資金繰りが回るという理由から、
社内の業務改善はせずに、社外からのキャッシュインを増やそうとします。
問題はスループット(現金回収)の遅さ、すなわち能力不足なのに、
広告宣伝をしてさらに忙しくしようというわけです。
思惑通り忙しくなると何をしはじめるかというと、
忙しくて納期が間に合わないという理由で人を雇います。
仕組がないからパートなどでは勤まらず、
正規雇用の中途採用で50~60代の人を雇うのがよくあるパターンです。
そうすると、ただでさえ資金繰りがキツいのに、
正規雇用の給与と社会保険料が経費に上乗せされます。
ただし、この時点でも設備は古いままで、能力アップにもコストをかけていませんから、
スループットは遅いままです。
それで人件費上乗せして資金繰りをさらに悪化させて、本来売上を上げるべきベテランの時間を新人の教育に割かれ、売上も頭打ちになると、自転車操業で回っていたキャッシュフローが破綻します。
経営者はこの状況を従業員のやる気や主体性などのせいにします。
それでも倒産せずになんとかやっていけるのはなぜかというと、
ひとえにビジネスが小さいからという理由だけです。
気合いで稼いで来ればなんとか持ちこたえられる程度のビジネスだから、
なんとかしのぎながら潰れないようにやっていっているというのが学ばない経営者の実情です。
これが何十年にもわたって続きます。
小さな工務店を経営する経営者の方に申し上げたい。
あなたの意志決定一つで会社が良くも悪くもなるものを
自分以外の問題だと決め込んでいては、いつまでも状況は変わりません。
意志決定とは主に、お金の使い方です。
経営者のあなたがお金の使い方を誤っているばかりに、
利益が出ていないのだということを
経営者のあなた自身がしっかりと自覚しなければいけません。
売上から得た現金は、設備や能力アップの投資にあてて、
売上増加しても楽々対応できるようにスループットを高速化して、
キャッシュを残せるビジネス構造にするのです。
これらの投資を怠っているのに、
闇雲に経費節減と言って、微々たる投資をケチっているようでは、
先細りのビジネスで、利益を出すどころか、
借金増やして耐え忍んでいるだけです。
付き合わされている従業員は夢も希望も描けずに、
面白くもなんともないのです。
年商1億円未満の経営者は、削減できる経費は知れていますから、
何でもかんでも経費削減ではなく、収益増加のための投資に意識を傾け、
キャッシュインをどうやって増やすかを考えた方が財務状況は良くなります。
もし、あなたの会社が儲かっていないのなら、
従業員の問題ではありません。
経営者であるあなたの意志決定(主にお金の使い方)の問題です。
今までとはまったく違う考え方で、お金の使い方を変えていくのです。
決算書を見てみてください。
何にお金が使われていますか?
収益構造を変えたければ、コスト構造を変えるのです。
それは、経営者であるあなたにしかできません。