この前、「舞台関係の撮影をしていて、一番大変なことはなんですか?」という質問を受けました。
いろいろとあるんですが、真っ先に浮かぶことは、やはり、会場の形状です。
いわゆる「多目的ホール」と呼ばれる会場に多いタイプなんですが、会場全体が完全に「平面」になっているところです。
普通のホールでは「階段状に傾斜している客席」というものがありますが、多目的ホールは、「ダンス」なんかもできるように、会場は真っ平らになっており、椅子は、可動式で、倉庫から椅子を取り出してきて、会場に並べます。
平面だとなぜ困るかというと、客席に座る観客の姿が邪魔になるからです。
演奏写真を撮る際に、何も対策しないと、演奏者の体の下半分は、観客の後ろ姿によって隠れます。
また、高さがないので角度がなくなり、ピアノの場合、鍵盤が写りません。
こういう会場での対策は2種類あります。
①前方の客席をなくし、座れないようにする
しかし、こういう会場ではだいたい「観客を詰め込む」ことが多く、椅子を撤去することは難しいです。コロナがひどい時は、入場客数を制限していたため、ある程度は可能でしたが、「満席OK」の現在、椅子も目一杯入れないといけません。
そうなると、観客の姿が映り込むのはどうしようもないです。
②巨大な三脚を使い、カメラマンが脚立などに乗って、高い場所から撮影する
これが有効な作戦ですが、これもなかなか難しいです。
分野は違いますが、こちらのサイトを御覧ください。
このサイトの中に実物の写真がありますが、非常に危険な体勢で撮っていることがわかると思います。
若くて体力のあるカメラマンなら、なんとかなるかもしれませんが、我々、ロートルにはこのような撮り方は危険極まりないことでして。さらに、このような大きな三脚や脚立を会場に持ち込むには当然「自動車」が必要です。経費削減のための自動車を手放し、「電車」に切り替えた当事務所では、このような大きな道具は持ってこれません。
それでも、なんとか「椅子の上に立つ」「箱馬の上に立つ」などしてやりくりしていますが、疲労度がハンパじゃないのです。
肉体の疲労だけではなく、「うわあ、あの席に座高の高いお父さんが座って、手を伸ばしてカメラを上に上げて撮影している。演奏者にもろかぶりだよ! 参ったなあ。どうしよう?」という精神的疲労もすごいです。
また、こういう会場って、「舞台照明」に関して、設備の都合で仕方ないんですが、「きれいに光をあててくれない」ということも多く、その点でも神経を使います。
わがままで申し訳ないんですが、今後は、撮影申込時に「この会場は平面である」ことがわかっている場合は、「お引き受けできません。他の業者さんをあたってください」とお断りする場合もあるかもしれません。
そういうわけでして、写真撮影をプロに頼んで、ちゃんとした写真を残したいという場合、最初の会場選定の段階で、この手の「完全平面」の会場は避けていただけるとありがたいです。逆に言うと、どんなにうまいカメラマンに頼んでも、そもそも、会場の条件が悪いと、いい写真は残しにくい、ということをご理解下さい。
ご理解のほど、よろしくお願いします。