元芸人として・・ -4ページ目

元芸人として・・

元芸人がお笑いについて真面目に語る場。多少の自己満足あり・・

 レギュラーさんといえば、「あるある探検隊」で現在大人気のコンビです。バラエティーにも引っ張りだこですし、CMも持っていて、順風満帆に見えるかもしれません。



 ですが・・・


 おそらく、今、ものすごく悩んでおられるのではないかと私は感じます。



 その悩みとは・・・。このままでは仕事がなくなるのではないかという不安です。おそらく、本人たちがそのことに一番気づいているし、わかっていると思います。


 そもそもこの「あるある探検隊」というネタが生まれたいきさつですが、関西で毎年年末に放送されている「オールザッツ漫才」という番組があり、その番組の中でするネタがなくなってしまったので、たまたまやってみたらウケたので、やりはじめたものです。


 流れは1パターンで、西川さんが気絶して、あるある探検隊を呼び、笑いを取りやすい、動きとあるあるネタを繰り返すというものです。


 今、レギュラーさんを見て私が思うことは、このあるあるネタの引き出しがなくなりつつあるという事と、飽きられないように、別のパターンを考えようとしておられるなということです。


 実際の話、大阪の舞台では、レギュラーさんは「あるある探検隊」を封印しています。また、テレビの中で別パターンの「あるある探検隊」をしている時もあります。ですが、今のところ、結果は芳しくありません。


 元々、レギュラーさんは「あるある探検隊」でブレイクする前から、ボケの松本さんの強烈なキャラクターと発想をメインにしたネタで、笑いをとっていたコンビでした。これから、じっくり力をつけていかれるかな?という時に、この「あるある探検隊」でブレイクしてしまったため、キャラクターと動きに頼らざるを得なくなっているのが、現在の実情です。


 これは、テレビの功罪だと感じるんですが、本当に力をつける前に、キャラクターで人気が出てしまい、(テレビでは、全て第一印象で決まってしまうので、発想とか構成よりも、わかりやすいキャラクター・動きが面白ければ、人気が出てしまうことが多い)飽きられてしまった後に、対応できる力がなく、仕事がなくなっていくというパターンで消えてしまった芸人さんがたくさんいます。一番最近の例であげるならば、波田陽区さんなどでしょうか。(波田陽区さんもギター侍は出来ればやりたくないと周りの芸人さんたちに言っておられたそうです。)


 レギュラーさんもこの流れに、入りつつあります。それを解決する方法は・・・・。「あるある探検隊」を捨てることです。ですが、これはものすごく怖いことですし、勇気も要ります。また1からのスタートになりますし、時間もかかるでしょう。


 ですが、レギュラーさんは元々、力を持っておられます。特に松本さんのキャラクターは、今居る芸人さんの中でも、強烈で稀有な存在です。必ず「あるある探検隊」を捨てても、また世に出てこられると私は思います。この才能を、飽きたという理由で埋もれさせてしまうのは本当にもったいないことです。

最近、ピン芸人さんが人気が出て来ていて、ブームと言われているそうです。

そういう現在の状況を作ったというか、広げる一因のひとつになったのが、この方じゃないかなと思います。

彼のネタの特徴は、ピン芸人なのにつっこみを担当していることです。この形を見出だした事が今の人気の理由だと思います。まさに「コロンブスの卵」と言えます。

それまでのピン芸人さんと言うのは、私の知る限りボケを担当する人しかいませんでした。一人でボケると言うことはつっこみがいないと言う事になります。つっこみがいなければ、笑いをとれる可能性と言うのは少なくなります。なぜなら、笑いの要素である「落差」をお客さんが理解できるかどうかで決まってしまうからです。ですので、ピン芸人さんというのは笑いをとりやすいキャラクターやギャグに頼る人が多くなりますし、そういう芸人さんしかいませんでした。

しかし、その中で陣内さんは音にボケさせ、自分はつっこみを担当するというスタイルを発見しました。これを見つけた時点で勝ちです。

正直な話、陣内さんは強烈なキャラクターを持っているかと言うと、そうではないので、このスタイルを見つけられなければ、今ほどの人気は得られなかったと思います。ネタを見ても、発想よりは構成力で笑わせるタイプだと思いますので、つっこみがなければ笑いになりにくいですし…。
このスタイルを見つけるのにも、苦労したのではないかなと思います。おそらく、自己分析をしキャラクタータイプではなく、構成力で笑わせるタイプだと自分で理解したのではないでしょうか。その弱点を克服し、長所を活かす為にはどうすればいいか?と言う事を懸命に考えられたのではないかなと思います。

今、自分でつっこむというスタイルで他の人がネタをすると陣内さんに似てると間違いなく言われるでしょう。それでは売れません。私もキャラクタータイプではなかったので、ピンになった時は、つっこみをいれないと笑いが取れなかったので、それではやはり陣内さんに似てるという評価どまりで、上に行く事はできませんでした。

もちろん、このスタイルを見つけた事が人気が出た大きな理由ですが、それだけではなく、ネタの構成力や発想を持っていたからというのもあります。ネタはしっかりと考えられているなと感じます。(ちなみに、陣内さんのネタの中で、個人的に一番面白いと思うのは、旗揚げゲームのネタ。構成の仕方は見事です。)

ただし、敢えて言わせていただくならば、最近のネタは練り込まれていないなと感じることが多いのが残念です。ちょうどバラエティーに出だした時期からなんですが、おそらく本当に時間が足りてないんだろうなと思います。もちろん、司会もきっちりとされていますし、トークの技術も持っておられますので、今のままでも大丈夫だとは思うんですが…。ただ、やはりこのスタイルのパイオニアでもあり、第一人者でもありますので、昔のようなしっかり練り込まれて完成されたネタで楽しませて欲しいなと感じる事もあります。
 ご無沙汰して申し訳ございません。仕事が忙しくなったもので・・・。

 ではでは、今回は今大人気の南海キャンディーズさんについてです。


 私にとっては、このお二人が人気が出るというのは非常に嬉しいことです。なぜなら、お二人とも前のコンビのときにお会いしたことがあるからです。以前は山ちゃんさんが足軽エンペラー、しずちゃんさんが西中サーキットというコンビで活動されてました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、足軽エンペラーさんは「ガチンコ!」の漫才道で最後まで残ったコンビですし、西中サーキットさんもABCの新人コンクールで審査員特別賞をとってましたし、元々将来を嘱望されてたコンビでした。そのころから、おもしろいな~と思っていましたが、南海キャンディーズを結成してからは、より勢いが加速しているし、おもしろいなと感じます。

 南海キャンディーズさんというコンビの特色は、キャラクターと発想です。まず最初に登場した後、彼らはそれぞれポーズを決めます。これがあることによって、多くの人がそれぞれがどんな人かというのが、理解できるのではないかなと思います。トークでもそうですが、この最初のキャラクター設定で定めた方向にボケていっています。

 具体的に言うと、しずちゃんさんはセクシーないい女というキャラクターです。少し山田花子さんとかぶるキャラクターなんですが、花子姉さんよりも面白い発想を持っていて、さらに山ちゃんさんのつっこみがそのキャラを際立たせているのが人気の出た理由だと思います。

 次回見るときに注目していただきたいポイントは、山ちゃんさんのつっこみのセリフです。言い方は悪いですが、ほとんどつっこんでいません。

 基本的に笑いは「落差」によって生まれるとお話させていただいておりますが、つっこみというのはその「落差」を指摘することによって、お客さんに気づかせ、笑わせるというのが基本です。山ちゃんさんのつっこみはほとんどの場合、「落差」を指摘しません。

 例えば、医者のコントをネタの中に入れる場合、彼らは設定からまずボケてきます。例えば、「山ちゃんが医者で、しずちゃんがサイ」という形です。(去年のM-1決勝のネタです)このボケの場合、普通ならば、「サイは関係ない」というようなつっこみが入るのが、基本です。(「落差」の指摘)ただ、彼らの場合、つっこまずにこの設定のままコントに突入します。そして、無理なのにある程度やってみてから、つっこみをいれます。
 
「この設定を広げる自信がないよ」

 このつっこみは落差の指摘でも何でもなく、ほとんどの人にとって予測できないセリフですが、的を得ているので、笑ってしまうでしょう。おそらく、楽屋で芸人さんたちも笑っているはずです。私も初めて聞いたときは、まったく予想外だったので笑ってしまいました。こういうつっこみができるのは基本がわかっているからできることだし、センスがいいなと思います。

 同じようなパターンでネタを作っているのが、おぎやはぎさんです。ただし、彼らとキャンディーズさんの違いは、キャラクター重視か発想重視かということです。簡単に言うと、おぎやはぎさんはネタ中ほとんど動きません。その分、発想を重視しています。ただし、発想による笑いは理解されない事もあるので、どちらが笑いやすいかといえば、キャラクターのはっきりしているキャンディーズさんの方になるだろうと思います。だからといって、おぎやはぎさんのほうが面白くないか?といえば、そんな事はありません。それぞれの特徴を活かす方法を考えた結果のスタイルの違いで、どちらも面白いなと思います。

 それと、彼らは漫才がうまくないように見えるかもしれませんが、これは、あきらかにわざとです。なぜなら、このスタイルは、お客さんに「どうつっこむのか?」と思わせる時間が必要になるからです。しずちゃんさんがボケてから、山ちゃんさんがつっこむまで、たいていの場合、1秒~2秒程度の間合いがあります。興味のある方はご確認ください。
まず初めに、これは批判が目的ではありません。あくまでも芸人さんがそれぞれの個性をどのように活かして、笑いを取っているか?を固く分析するのが目的です。

というわけで、最初に分析するのはキングコングさんです。なぜ彼らを選んだか?それは彼らの人気の理由が、一番わかりやすいのでは?と思うからです。
現在、「笑っていいとも!」や「はねるのトビラ」などバラエティー番組で大活躍中の彼らですが、まだNSC在学中の時に、ABC(大阪のテレ朝系列)新人グランプリを獲得したり、関西では早くからナインティナインの後継者と呼ばれ注目を浴びてたコンビです。

彼らはなぜ人気が出たのでしょう?もちろん面白いからというのが理由ですが、面白いの一言にもたくさんの意味があります。

彼らの面白さは、「タレント性」言い換えれば「華」にあります。
わかりやすく言うと、彼らの場合、面白くない事を言っても、面白く聞こえると言う事です。
みなさん、学生の頃クラスに一人は面白いという人がいたと思います。その人は目立つ存在の人ではありませんでしたか?その人が笑わせた内容と同じ事を地味な人が言っても面白くないですよね?
彼らはこの能力が特化しているなと私は思います。もちろん、それだけではなく話術ももっていたのが今の理由だとは思いますが。
ただ、彼らの場合は漫才師と言うよりはタレントとして活動していくと思います。M—1グランプリでも最近は、決勝まで残らないですし…。漫才師として彼らを見ると、まだまだ荒削りだなと思います。重要な部分のボケはほとんど動きというパターンが多いので、ボケが読めるし、あきられやすいだろうなと思います。私個人としては、華や話術の才能があれだけあるんだから、漫才師として技術を磨けばどうなるんだろう?という楽しみも持っています。

 漫才の世界に居て、学んだことというのはたくさんありました。それは、辞めてから今生きていく上で、役に立っていることもあれば、ほんとに感動したというものもあり、心に響く言葉というものがたくさんありました。そんな名言を紹介したいと思います。


 「別にええよ。君らの替わりなんて、いくらでもおるから。」


 これは、養成所に入って最初の授業で、あるコンビが授業に遅刻してきた時に、講師の先生がおっしゃった言葉です。若手芸人は関西だけでも何百組といます。もし仮に、オーディションなどに遅刻してしまった場合、替わりなんて当然、たくさんいるわけで、チャンスを絶対に逃すな!という事です。

 これを最初に聞いて、学生感覚丸出しだった私は、眼から鱗でした。プロなんだから、競争の世界にいるわけで、一度、チャンスを逃してしまうと次にまたチャンスが来るとは限りません。そのことを教えてもらった言葉でした。

 この言葉は、今も大事にしています。プロじゃなくても、あてはまることだと思います。


 「とりあえずで作ってきたネタなんか、見ないし、見る気もない。」


 これも同じく養成所時代に言われた言葉です。ネタ見せの授業で、どうしてもネタが最後まで完成できず、相方と相談した結果、とりあえず、中途半端な状態だけど、出来たところまでで見てもらおうということで、ネタ見せに臨んでしまった時に、言われた言葉です。

 当然だなと思います。一応、漫才をすることによって、お金をもらおうとしていたわけですから、そんな大事な仕事をとりあえずで適当に済ませるなんて、最もしてはいけないことです。これも考えの甘かった私には響いた言葉でした。

 この言葉も、今も忘れないようにしています。どんなことにもあてはまるなと思います。


 ちなみに、この時こんなこともおっしゃってました。


 「時間ないとか、言い訳にならんで。だって、昨日寝てるんやろ?」


 まさに、その通りだなと思います。

 芸人養成所で学ぶことは前回お話させていただいた「ネタ見せ」という授業以外にも、発声練習というものがあります。


 やはり、舞台に立って漫才をするうえで、見ている人に聞いてもらわないといけませんので、いかに聞き取りやすく、大きな声を出せるかという事も重要になります。


 ですので、どの学校でも発声練習という講座はもうけられています。私の場合は、実際に舞台で活躍されている方が講師で、役者の卵や歌手の方がしているトレーニング方法を教わりました。


 ありがたいことに「若手芸人さんって歌がうまい」というトラックバックをいただいたんですが、それは当然といえば当然のことです。歌手と同じ方法でボイストレーニングをしますので・・・。芸人時代、同期や先輩とカラオケに行っても、みんなしっかり腹式呼吸が出来ているので、声も出るし、うまかったです。私もほんとにへたくそだったんですが、養成所に入ってから友人に「うまくなったな」とよく言われました。


 

 そういった授業を1年間受けて、例えばNSCや松竹の学校だと、卒業後はたいていそれぞれの事務所が行うライブに出演して、認められれば仕事がもらえるようになっていきます。ただ、私の行ってた養成所はどこかの事務所が経営してるわけではなく、卒業前に大阪のプロダクション(吉本や松竹も含む)の方を招いて、オーディションを開催していました。その時に運よく、とあるプロダクションの方に声をかけていただいて、プロデビューすることが出来ました。ですが、その時に声をかけられなかった人もいますし、オファーを受けても断った人もいます。そういう人たちはどうするか?大阪だと、吉本興業にbaseよしもとという劇場があって、そこで行われるライブに出演して(出演料は自腹で払います)、認められれば吉本から仕事をもらえるようになるという塩梅に、オーディションを受ける日々になります。


 そういうことを学ぶ場所で、ほんとに勉強になったなと思いますが、その中でも一番印象に残っているのは、講師の方が授業中に時々話して下さる「芸能界で生きていく上で必要なもの」の話です。これは芸人をやめてからも、役に立つような話ばかりでした。考え方も変わりましたし、人間的にも少しは成長できたかな?と思います。

 今、ちまたでは漫才ブーム再燃か?といわれていますが、それに伴い、芸人になりたいという人が増えているそうです。


 どうすれば、芸人になれるか?主な方法としては、「芸人さんに弟子入りする。」もしくは、「養成所に入る。」という2通りの方法があります。


 最近は、誰かに弟子入りするという道を選択する人は少なくなっており、一般的には養成所に入るというケースが多くなっています。その傾向は、1期生から、ダウンタウンさんやトミーズさん、ハイヒールさんを輩出したNSC(吉本総合芸能学院)ができてから顕著になっています。


 かくいう私も養成所出身です。よく聞かれたりするんですが、そこではどんな事が行われているかという事について紹介させていただきたいと思います。


 ちなみに、この養成所は大阪だけで私の知ってる限り、4校あります。私はNSCではなく、他の所出身なんですが、どこも内容はほぼ同じみたいです。


 当然、タダではないので授業料が必要になります。私のときは1年間で約30万円でした。この金額は相場みたいで、NSCも含めて、他の所出身の人に聞いてみたところ、同じくらいだそうです。


 授業は4月から週に2回で1年間続きます。授業の内容ですが、おそらくどこも2本柱になると思います。それは・・・


 ①ネタ見せ

 ②発声


 この2つです。これを1年間繰り返しやりました。



 ネタ見せとは読んで字のごとく、ネタを作ってきて、実際にして、構成作家の方にみていただき、その後、講評を受けるという授業です。


 講評は「ここはこうしたら?」というくらいで、一から十まで教えてくれるというものではありません。私は今まで笑いのテクニックとかを偉そうに語っていますが、こんなことはほとんど習いません。基本は、自分から質問し、考えて身に付けていくというものです。ですので、よく言われたのが、「質問はどんな事でも構わないから、どんどんしてきなさい」という事でした。何も考えず、ただこなすだけで漫才ができるようになるわけではありません。自分から考え、疑問を持ち、わからないことは何でも聞いてはじめて、少しずつできるようになります。

 余談になりますが、私の学校の講師の先生はオール阪神・巨人師匠やトミーズさんのネタを書いている関西では有名な作家さんでNSCでも授業をしておられたんですが、こんなことをおっしゃてました。「やっぱり今、売れてる子らはほんとによく質問してきた。その中でも特に、ナイナイの岡村くんとかメッセンジャーの黒田くんは、毎回何個も質問を持ってきてた。しかも、質問に答えるとそれを全部メモにとってたわ。」


 ですので、すぐ辞めてしまう人というのが実は凄く多いんです。大阪のNSCは、毎年1000人近く入ってくるらしいんですが、ゴールデンウィーク前には約半分になり、夏が来た頃には100人くらいしか残らないそうです。ですが、養成所というのは門戸がものすごく広く、島田紳助さんがある番組で言ってましたが、年齢がクリアでき、ちゃんと面接会場に来れれば合格というレベルです。丸儲けだなと思います。


 では、なぜこんなに大量にやめていくか?基本的に芸人をやろうと思う人は、自分のことを面白いと思っています。まず、最初にこの思いを否定されます。私もそうでしたが、最初にするネタはほとんどの場合面白くありません。(最初からレベルの高い人もいますが・・・。)そして、講評の時に「これのどこが面白いの?」・・・。今までクラスの人気者で「面白い」としか言われたことないような人だとこれで撃沈する事もあります。そしてそれが毎週続きます。そして自信をなくすというパターンの人がゴールデンウィークまでにやめていきます。


 また、構成作家の方や芸人さんは、他の人のネタを見ても、まず笑いません。これはプロになってからもそうですが、ライバル意識もありますし、それよりも、ボケるだろうなというポイントがわかるし、少しでもいいところがあれば盗もうと考えているので、じっくり考えながら見ているのが原因かなと思います。私も、今でも漫才を見て面白いなとは思っても笑うということは少ないです。


 この笑いのない空間・・・。これが辛くなって、辞めていくという人も存在します。


 ここを乗り越える事ができても、次に夏頃、もう一度波がやってきます。


 それは「毎日こんなこと考えないといけないのか」という感情です。週に2回の授業でネタ見せをするので、それこそ毎日ネタを考えて、練習しないといけません。私の場合は、その時はコンビでしたが、基本的に週に2本作るようにして、まとまらなかった場合は前の授業でやって、「使えそうかな?」というネタを改良して持っていったりしていました。ですが、この「毎日考える」という事が出来ず、耐えれないという人もやはりいます。そういう人たちが夏には辞めていきます。これを乗り越えるのがNSCの場合は、入ってきた人の1割くらいだそうです。ここを越えると後はたいてい、最後まで残ります。


 私の場合、これをなぜ乗り越えれたか考えると、「悔しさ」かなと思います。ほんとに最初はひどくて、毎回面白くないといわれていましたので(笑)絶対、面白いことをしてやる。その思いがあったから、乗り越えれたのかな?と思います。




 

  パーツがある程度でそろった段階で、ようやく文章にします。


 この時留意することは、ただ1つ。「いかに無駄をなくすか?」ということです。


 若手の芸人の場合、ネタの持ち時間というのは、たいてい3分~5分というのが相場です。この限られた時間の中で、笑いを取らなければなりません。必要のない言葉というのは、入れてしまうと時間の無駄になるだけで、無意味になってしまいます。それを避けることを念頭に置くことが重要になります。



 ですが、まず最初にやることは、とりあえず一言一言書き出してみるということになります。これは、例えば結婚式のスピーチとかでもそうですが、頭の中でこういう話をしようとはっきり決めていても、実際本番になると、思ったとおりにいかないという様に、うまく伝えられないという可能性を消すために、最も確実な方法になります。


 ネタを文章化したら、次は実際に練習をしてみます。まず最初は、時間を測りながらしてみます。やってみて、長ければ削らないといけませんし、短ければ足さなければいけません。


 仮に、長かった場合、どう削るか?


 ・使っている言葉と同じ意味の言葉で、少しでも短くなる言葉に変える。

 ・ボケを外す。

 ・パーツの部分で新しいものを考える。


 私の場合は、たいていこの3つの選択肢から選んでいました。ですが、やはりボケを外すとか新しいパーツを考える作業というのは、なるべくしないようにとは考えていました。やはり、自分が面白いと思って残したものですので・・・。仮に、新しく考えて失敗してしまうとものすごく後悔しますので・・・。


 では、逆に短かった場合ですが、


 ・ボケを増やす。

 ・言葉を延ばす。


 たいていこの2パターンでしょうか?ですが、やはり言葉を延ばすというのはもったいない作業になってしまうので、ボケを増やす場合がほとんどでしょう。


 少し話がそれますが、若手の芸人でも少し売れてくると、10分とか15分の持ち時間が与えられたりします。15分間笑いを取り続けようと思ったら、ネタを作るのにかなり時間がかかってしまいますし、時間が長くなればなるほど、新しく一からネタを作り出すと、笑いが取れないという状態になりがちです。


 では、どうするか?5分のネタをつなぐんです。しかも、今まで舞台に立った時に、笑いを取れたネタをです。テレビだと長いネタを見る機会は少ないですが、舞台だと頻繁にありますので、興味のある方は是非ご覧ください。ただ、単純につなぐだけではなくて、組み合わせ方によって無理のないように「フリ」を変えていたりするので、考えてるなと感じていただけるのではないかなと思います。


 何度も練習を重ね、無駄を省き、洗練して、ようやく舞台に上がるネタの完成です。ですが、この段階ではまだ本当の完成とは言えません。このネタを持って、舞台に立ち、お客さんの反応を見て、悪いところ、うけなかった部分を進化させていかなければなりません。つまり、何度も何度も舞台でやってみて、洗練していってはじめて完成品が出来上がります。


 でも、頑張っても頑張っても、自分の思うように笑いが取れることは少ないんです。(私に力がなかったからですが・・)その分、笑いが取れた時の喜びは本当に何とも言えません。その充実感を一度味わうと本当に病みつきになりますし、前に進んでいこうというパワーにもなります。ですので、なるべく温かい眼で見てあげて欲しいなという願望はあります。みんな、本当に真剣に取り組んでいますから!プロの世界ですから、結果が全てというのは当然で、私の願いは甘いのかもしれません。ですが、全ての芸人に幸あらんことを!そう願ってやみません。

 


 


 

少し話が長くなってますが、ようやく続きです(笑)

と言う事で、ネタのパーツが揃ってきたら、次は組み立てる作業に入ります。
前述したように、この時の留意点は2つです。
�どれが笑いを取れそうか?また、笑いやすいのはどれか?
�話の流れがおかしくならないようにつなぐ

この点に注意して、組み立てていきます。

私のネタの場合、3つのパーツから成り立っていますが、③の「人が訪ねて来る」という部分は、発想メインになるので、雰囲気もつかめない段階でやってしまうと笑いの全くない状態になるので、最後に持ってくると言うのはすぐに決まりました。ですので、①・②どちらを先に持ってくるか?これに悩みました。一番最初のボケには、お客さんをつかむという大事な働きがあるので、できれば笑いが取れるものを使いたい。そう考えていました。ただ、おそらく②の部分の方が確実に笑いをとれるだろうなとは思いましたが、話の流れ上、①を先に配置する方がスムーズになるので、①を頭に持ってくる事にしました。


配置が決まった後は、つなぎの言葉を考えます。お客さんが「?」状態にならないように細心の注意を払わなければなりません。

ただ、このネタの場合はその苦労はほぼ無いに等しく、すんなりと決まりました。

その次に考える事は、私の場合は最後のオチです。それが12時間間違えていたという事です。正直な話し、しんどいオチにしてしまったなと思います(笑)本当は、オチも笑いが取れる方が、印象に残るのでいいんですが、我ながらこのオチは…と思います。これは余談になりますが、今の若手芸人さんのネタのオチを見ると結構適当かな?と思う事があります。理由は簡単で、オチで笑いを取るよりも、ネタの中身で笑いを取る事に集中力を使うので、オチは「?」にさえしなければいいかな?と思う心境は理解できます。ですが、理想はオチでしっかり笑いを取ると言う事です。

さて、これで大体の下準備は終わりました。ここからすることは何か?それは、ようやく文章にするという作業です。

 では、続いて②、③の部分についてです。


 ②集中したいのに邪魔される

 この部分のベースになっているボケは「いしやきいもの親父がかむ」ということです。これをどう広げるか?世の中には色々な騒音がありますが、考えた末「たけやさおだけ」を使おうという結論に至りました。実は他にも「隣から変な声が聞こえてくる」とか、「外で喧嘩してる」とかも考えたんですが、いいボケが思いつかず、「たけやさおだけ」を使って、確実に笑いをとろうと考えました。それが、「たけやさおだけ~。おいしいよ」というボケです。


 なぜこれが確実に笑いを取れるのか?最初に「いしやきいもの親父がかむ」というボケを入れると、それが「フリ」となるからです。


 どういうことか?不思議なもので「いしやきいもの親父がかむ」という事を聞いた後に、「たけや~さおだけ~」というフレーズを聞くと、人間の思考は「またかむのか?それとも・・・」という状態になります。これは同じパターンだから起きる現象です。笑いは「落差」が基本ですから、この思考を裏切ればいいんです。そこで私がチョイスしたのが「おいしいよ」と一言付け加えることでした。これは、予想できるようで予想できません。なぜなら、たけやさおだけは食べれませんので。

 このボケを活かす方法として、「いしやきいもの親父がかむ」というボケに一言、一読するとそんなに深い意味のあるとは思えない「おいしいよ」という言葉を付け加えました。ですが、この一言があるからこそ、後ろのボケがより活きるということは理解して頂けると思います。


 この技法は「繰り返し」という技法です。(勝手に私が名づけましたが・・・)一度使った言葉をもう一度、あるいは2度3度、関係のないところで使う。という技法です。


 このパターンを作ると、よほどのことがない限り、十中八九は笑いになるし、「面白いこと」ではなくても、笑いが取れるので、楽なんです。ですので、このパターンは普段の漫才でも頻繁に見かけることができます。たいていは3回使うというのがベストかなと思います。


 今、自分のネタのこの部分を振り返ると、もう1つボケを入れるべきだったなと思います。「繰り返し」のパターンを入れたので、この後ろのボケは発想で笑いをとれたなと思います。まあ、その発想が足りないのが、私のおもしろくない原因なんですが・・・


 ちなみに、いしやきいもの予定をカキ氷に変えたのは夏だったからです。それだけです(笑)


 ③いろいろな人が訪ねてくる

 この部分のベースは、「チャイムを連打される」ということでした。これが思いついた段階で少なくとも2パターンは作って、最初は普通に押されるというのを入れないと後ろが活きてこないということになります。


 まあ、ベタといえばベタな発想かなと思いますが、チャイムの音で笑いを取るということはほとんどの芸人さんが、ボケを作れると考えるでしょう。問題は内容です。なぜ「デビルビーム」なのか?最初の段階で連打されるというのは考えていたので、連射された時に面白い言葉を必死に考えた結果です。

 届いたものに関しては、発想だけですね。ただ、①の部分で、「親からの仕送り」というフレーズを使っているので、使わないともったいないなとは思いましたが。基本的に、チャイムの後は何でも良かったという感じです。(ただ、ドモホルンリンクルは俺は充分美白や!とつっこめば、「落差」が生まれるので、笑いはとりやすいかな?と思いましたが)

 

 正直、チャイムは笑いを取れましたが、残りの部分はすべりましたね(笑)でも、こういう発想の部分というのは、その人の「センス」とか「面白さ」が現れる部分なので、ここで笑いを取れてたら、まだ芸人してたかもしれないなとは思います。私の同期とか先輩で、この発想の部分が面白くて笑いを取れる人はたくさんいました。でも、その人たちでも、まだ売れているとは言えません。なぜなら、もっと面白い人がいるからです。そんなことを考えると、凄い人ばかりの世界だなと感じます。


 なぜ、こんなことを公開しているか?それは私のような全然売れないレベルの芸人でさえ、これだけ考えていたという事を知っていただきたかったからです。今、売れている人たちはもっと深くまで考えているし、考えるだけではなく、私には出来ませんでしたが、それを実際に実行できるという技術を持っています。当然、はじめから才能があって出来る人もいるとは思いますが、たいていの場合は、努力し続けてはじめて出来ることです。それがわかるだけに、「キャラがきもい」とか「見た目がきもい」とか言う理由で面白くないと決め付けられるのは、本当に悔しいです。